音楽業界の“ミュージックラヴァー”がキュレーションする新イベント『Real Finder』

 音楽業界の“ミュージックラヴァー”がキュレーションする新イベント『Real Finder』が12日に、東京・下北沢GARAGEで開催された。近年新卒募集も少ない音楽業界では若手と呼ばれている、個性派ぞろいの4人のキュレーターが、毎回ニューカマーをブッキング。イベントタイトルの『Real Finder』には、「real find(掘り出し物)×finder(発見者、探知機)」という意味合いで、オーガナイズするスタッフとミュージシャンの新しい出会いのきっかけでもあり、また観客にも、まだ見ぬ音楽を発見する場所になって欲しいという思いが込められている。同イベントに、aoihr、AIRBAG、ジオラマラジオ、secondrateの4組が出演。個性あふれるサウンドと歌で、観客を楽しませた。

secondrate

secondrate(撮影=塚本弦汰)

 記念すべき第1回目のトップバッターは5人組バンドのsecondrate。Seike(Vo.Pf)による楽曲はどこか懐かしさも感じさせ、聴くものに情景を映し出すメロディメイカー。SeikeとSaki (Vo.Gt)の歌声は楽曲のカラーを広げ、幅広いジャンルで展開。オープニングナンバーは「君と僕が出会った時、初めて僕は未来の君になる」で、幕は開けた。疾走感溢れるビートに、切ないメロディラインと言葉で、バンドのカラーを打ち出し、オーディエンスを扇情させていく。KingkingPangpang(読み:きんきんぱんぱん DJ,ButtonPusher)も、楽曲に合わせパフォーマンス。特に別れをテーマにした楽曲「回想電車」で、つり革を小道具に腕を左右に揺らし視覚的にも楽しませた。4曲目に披露されたグルーヴィーな「オトナモード」では、タイトルのごとくSakiの少し大人になった歌声をソウルフルに響かせ、アダルティでおしゃれな空間に。そして、この日の最後に演奏された「プラネタリウム」は、ストリングスが印象的なアップチューン。ハンドマイクで感情を注ぎ込むように歌い上げるSeike。正統派とも言えるポップロックサウンドでライブハウスを満たした。

aoihr

aoihr(撮影=塚本弦汰)

 2番手に登場したのはアベシュンスケのソロプロジェクトであるaoihr(アオイハル)。エレクトリックギター1本による弾き語りスタイルでの演奏。そこにルーパーと呼ばれる演奏を録音し再生させる装置を使用し、事前に録音した音を呼び出しながら、オーケストレーションを作り出す。幻想的なサウンドの上に、ガラスのように鋭いヒステリックなギターサウンドが、独特な世界観を作り出していく。時に歌に寄り添うように、時にライブハウスをノイズで埋め尽くすようなシューゲイズしたサウンド。そこに乗る歌は、どこか背徳感を感じさせる。『もしもナンバーガールが再結成して「PPAP」を演奏したら』という動画を投稿し、2曲目には自身のお気に入りだというNUMBER GIRLの楽曲「透明少女」をカバー。そこにも彼独自の世界観と解釈が垣間見れた。ラストは「僕と春」を届けステージを後にした。

ジオラマラジオ

ジオラマラジオ(撮影=塚本弦汰)

 ライブも後半戦へ。3番手は5人組バンドのジオラマラジオ。メンバーは松村廉(Vo、 Gt、Syn)、栗林瞭(Dr)、渡邊拓哉(Ba)、榊原未菜(Key、Cho)、Ho Naganuma(Gt)の5人。不思議なバンドだ。個々の熱量が違うベクトルにあるかのような感覚、だがバラバラというわけではなく、そこから生まれるサウンドはオリジナリティに溢れている。聴くものの感情を揺さぶりかけて来る松村の歌は、独特な心地よさがある。そこに広がりを加える榊原のコーラスワーク、その榊原は「絵空模様」でマイクを手に取りメインボーカルを務め、流れに変化を促す。トップバッターのsecondrateも、男女ツインボーカルで情景を映し出すのが得意なバンドだが、同様なバンド編成ながらも、ジオラマラジオはまた違った、セピア色の光景を我々に見せてくれた。

AIRBAG

AIRBAG(撮影=塚本弦汰)

 この日、トリを飾ったのは4人組ロックバンドのAIRBAG。クガイトシキ(Vo、Gt)は「全曲、出来たばかりの新曲で挑みます」と宣言。洋楽のエッセンスを感じさせる、エッジの効いたロックサウンドがライブハウスに響く。ドラムは瞬発力がありダイナミックにグルーヴし、それに絡み合う安定感のあるベース、スラップ奏法など多彩な奏法で魅了するギター、そして、そこに乗る凛とし存在感のあるクガイの歌声で一体感のあるサウンドを紡いでいく。楽曲もラウドなナンバーから、体を弾ませたくなるファンキーでダンサブルなナンバーまで、様々なロックナンバーを確かなテクニックで届けた。出来たばかりの新曲たち。これからライブを重ねていくことによって、どんどん変化していくことが、容易に想像できるパフォーマンスだった。

【取材=村上順一】

セットリスト

▽secondrate

1. 君と僕が出会った時、初めて僕は未来の君になる
2. H.A.Y.A.R.I.
3. 回想電車
4. オトナモード
5. 二番線
6. プラネタリウム

▽aoihr

1.少女漫画
2.透明少女(NUMBER GIRLカバー)
3.僕と春

▽ジオラマラジオ

1.コンクリート
2.ミツバチ
3.薄荷
4.ライナー
5.絵空模様
6.HEPBURN

▽AIRBAG

1.新曲
2.新曲
3.新曲
4.新曲
5.新曲
6.新曲

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