森山直太朗(撮影・杉能信介)

森山直太朗(撮影・杉能信介)

 森山直太朗の劇場公演『あの城』が14日、東京・下北沢の本多劇場で開幕した。

 本作は、『森の人』(2005年)、『とある物語』(2012年)に続き3作目となる森山直太朗の劇場公演。音楽ライブだけでは伝えきれないステージ表現への取り組みとして始まった公演で、音楽ライブとも演劇とも違う独自性の高い作品を劇場空間で上演する。脚本・演出を手掛けるのは、森山の楽曲共作者であり詩人の御徒町凧。

 森山と共に舞台に立つのは、皆本麻帆、富岡晃一郎、町田マリー、黒田大輔という個性的な俳優陣と、今年開催された15周年記念ツアーのバンドメンバーも務めたミュージシャンの河野圭(Piano)、西海孝(Guitar)、朝倉真司(Percussion)、須原杏(Violin)、林田順平(Cello)。音楽監督を河野が務めるほか、西海と朝倉は俳優にも挑戦する。

公演のもよう。左から、西海孝、森山直太朗、皆本麻帆、朝倉真司、富岡晃一郎、黒田大輔、町田マリー(撮影・杉能信介)

 敵国に侵略されて「あの城」から逃げてきた人たちの物語。森の奥に身を潜ませ、「あの城」に思いを馳せながら野営を続ける、ナオタリオ(森山)、ミナ(皆本)、ダン(富岡)、カレン(町田)、エトー(黒田)、ニシミ(西海)、ティンジ(朝倉)。彼らがこのまま逃亡を続けるべきか、危険を冒しても城に戻るべきかという問題に直面しつつも、なんとか日々を続けていく姿が、ときにコミカルにときにあたたかに描かれる。

 圧倒的な存在感を放つ森山の歌と、全員でつくる劇という、一見、共存は難しいのではないかと思われるようなものが、独特のバランスで存在する本作。詩人である御徒町ならではの世界が個性派揃いの出演者によって表現され、ひとつの流れの中に音楽があり劇があるような、本作だけのカタチが見事につくりあげられていた。また、通常森山がライブを行うホールに比べると格段に小さい“劇場”というサイズ感を生かした歌の演出の数々も印象的で、この公演でなければ味わえない体験が詰まった作品となっている。

 上演時間は“休憩のようなもの”込みで約3時間。楽曲は、森山がこれまでに発表しているものに加え、書き下ろしの新曲も披露される。公演は10月1日まで東京・本多劇場にて上演。10月22日午後8時からWOWOWでの放送も決定している。【文=中川實穗/写真=杉能信介】

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