16歳の女子高生シンガーソングライター・坂口有望(さかぐち あみ)が7月26日、シングル「好-じょし-」でメジャーデビューを果した。坂口有望は13歳の頃にギターを手にして、14歳頃から地元・大阪でライブ活動を始めた。自身手焼きのデモCDを1000枚売り上げ、10代才能発掘プロジェクト『十代白書 2016』で準グランプリを獲得。早くからその才能を開花させていた。10代のリスナーを中心に共感を集めるラブ&ポップな楽曲。幼い頃から漠然と「BIGになりたい」と夢見ていたことを着実に、驚くべき早さで実現させてきた彼女。坂口が今作に込めた想い、今の10代の音楽事情、学業との両立など、アーティストとしてだけではない、10代の多感な様子を語ってもらった。
メジャーデビューはドッキリかと思った
――メジャーデビューしましたが、現在の心境は?
今はやっと実感が湧いてきたのですが、メジャーデビューの話が最初に出てきたときはドッキリかと思ってしまうくらい、信じられなかったです。音楽の経験もそんなに長くなく、2015年くらいからのスタートだったので、こんなに早くメジャーデビューさせてもらえるとは思いませんでした。
――メジャーデビューをするまでは弾き語りの路上ライブがメインの活動だったのでしょうか?
最初は大阪の三国ヶ丘FUZZというライブハウスで演奏したのですが、ライブの宣伝のために路上ライブを始めました。
――ライブハウスに出演したきっかけは?
お客さんとしてライブハウスに行ったときに、ブッキング担当の方が「音楽をやっているんだったら出てみる?」と言ってくれて。ちょっとゆるい感じというか、みんなが気軽に弾き語りができるようなイベントでサザンオールスターズさんの「TSUNAMI」など2曲演奏しました。そこからまた呼んでもらえるようになりました。
――「TSUNAMI」は坂口さんが生まれた頃にリリースされた曲ですね。どのようにこの曲と出会ったのでしょうか?
YouTubeでカバーの動画を観て知りました。オリジナルのサザンさんよりも先に、カバーのほうで知りました。
――楽曲との出会いはYouTubeなどが多い?
そうですね。まわりの友達もそういう子が多いです。あとはダウンロード購入した音楽を聴いたりしています。私自身、YouTubeにはミュージックビデオ4本と他にもちょこちょこ動画を上げています。
――最初にダウンロード購入した楽曲は何でしょうか?
Kiroroさんのベストアルバムです。幼稚園の先生がKiroroさんの曲が好きで、お遊戯会でみんなと一緒に歌ったのを覚えていたのでアルバムを買いました。
バンドがやりたかった
――10代才能発掘プロジェクト『十代白書 2016』では準グランプリを獲得されていますね。
大阪の10代のバンドマンやアーティストは結構みんな受けるコンテストなのですが、気軽な気持ちで受けてみました。周りはバンドばかりで、シンガーソングライターが2割、バンドが8割くらいの比率だったと思います。
ファイナル会場の大阪・BIGCATのステージに立ちたいという思いがずっとあって。中学生の時にBIGCATに立てたらいいな、と思っていたら、本当にそのステージに立てたので、それがまず嬉しくて達成感がありました。準グランプリを穫ったときは、喜びたいけど悔しいという思いでした。
――手焼きのデモCDを1000枚売り上げたそうですね。これはご自身で制作したものだったのでしょうか?
3曲入りで200円のデモCDをライブハウスの方と一緒に作りました。録音はレコーディングスタジオでやって、ジャケットは友達に描いてもらったり、歌詞カードもライブハウスの方に手伝って頂いたりして。
――どれくらいの期間で1000枚を売ったのでしょうか?
1年弱です。
――この頃からミュージシャンとして活動していきたい、という思いはあったのでしょうか?
それはずっと前からありました。BIGになったアーティストのデモ音源って、レアになったりするじゃないですか? だから自分も絶対そうなろうと思って、デモを作るときに1000枚という制限をかけました。絶対レジェンドにするぞと思って(笑)。
――13、14歳の頃にはすでにアーティストとしてメジャーで活動していこうと思っていたのですね。他になりたいものなどはありませんでしたか?
全然なかったです。
――路上ライブは緊張しませんか?
緊張よりも、人が自由に立ち止まっては立ち去るので、それが少し怖かったです。
――どんな曲を弾き語りしていましたか?
自分のオリジナル曲をやりつつなのですが、人を集めたいので1曲目はカバーをやったりしました。クリープハイプの「二十九、三十」をやったり。その動画がYouTubeにアップされていて、それがきっかけで観に来てくれる人がけっこう多くて「繋がっているな」と感じました。
――お客さんは多い時でどれくらい集まりますか?
200人くらい来てくれます。たくさんの人が集まってくれると凄く嬉しいです。去年までは結構やっていたのですが、今年はあまりやっていないです。
――路上ライブで辛かったことは?
冬は凍え死にそうです(笑)。寒いし、誰も立ち止まってくれないし声は震えるし…。
――高校生でメジャーデビューして、まわりの反応はどうですか?
めっちゃお祝いしてくれました。「メジャーデビューをしました」という発表をした数日後に、体育祭だったのですが、最後に学年全員で先生も一緒にサプライズでお祝いしてくれました。
――クラスメイトはみんな知っている?
そうですね。みんなTwitterを通して知ってくれたみたいです。次の日の朝にはみんな知っていて、「おめでとう」と言ってくれました。
アコースティックギターとの出会い
――坂口さんはアコースティックギターでの弾き語りスタイルですが、ギターを手にしたきっかけは?
“ギターを持っている人”=“格好良い”という感じがあったので、興味本位で始めました。それが小学校6年生の時です。最初は基礎からやろうとしたのですが、あまり面白くなくて、しばらく弾かなくなりました。そのあと、中学1年生の夏休みからまた弾き始めて、それからずっと弾いています。初ライブは中学2年生の最後の方です。
――ギターの練習はどのようにやりましたか?
見よう見まねです。習ったりしていなかったので、基礎を飛ばして色んな曲をカバーして練習していました。気付いたら弾けるようになっていました。
あと、ギターを買ったときにコードの本が付いてきて。それを参考にしつつ、という感じでした。でも最初にやっておくべきところを飛ばして、まず曲の練習から入りました。
――そのほうが上達も早そうですね。ギターの練習で苦戦した点は?
やっぱりその方が楽しかったです。苦戦したことは、手が小さいので…(笑)。最初はなかなか綺麗な音が鳴らなかったです。
――今日はずっと作曲をなさっていたそうですね。今持ってきているTakamine(ギターブランド)のギターはずっと使っているのですか?
はい。Takamineのギターはネックが薄いからコードが押さえやすいです。最近また新しいギターを買いました! めっちゃマイナーなのですが、「Franklin Guitars」というブランドのギターです。楽器屋さんで10本くらい試奏して、たまたま見つけたのですが、弾いてみたら凄くいい音で。Franklin Guitarsは珍しくて、けっこう高価なのですが、ヒビが入っていたので安く買えました。このギターはネックが太くてちょっと苦戦しています。もう今は、ライブでもそのギターで演奏しています。
――作曲はいつ頃から始めましたか?
ライブを初めてからです。最初は作り方がわからなくて手探りでした。歌詞を書くのは好きで、小さい頃からメモを取ったりしていて、詞の内容はあったのですが、それにメロディを付ける作業は自分にはできないことだと思っていました。
ライブハウスの店長さんに「曲を作ってみなよ」と言われた時に初めて「メロディってこんな感じで作るのかな?」という風に作っていって。何もわからない状態で作り始めました。
――曲はどういうときに作りたいと思いますか?
曲を作ろうとする種みたいなものは、常にアンテナを張って探しています。ちょっとでも引っかかったり、気になったりしたことがあれば、すぐメモしたりしてそこから広げていくことが多いです。
――最初にテーマがあってから作ることが多い?
そうですね。テーマは最初に「こういう曲をつくろう」と思ってから、作るのですが、曲のタイトルは最後に決めます。テーマが先というのは決まっているのですが、曲が先、歌詞が先、というのはまだ探索中です。
――曲は言葉から生まれてくることが多いのでしょうか?
それが比較的多いです。
――今回もそのような感じで作っていった?
まだ作曲に慣れている訳ではないので、色々試しています。「曲が先、歌詞が先」ということをわざと決めないでやっています。
――「好-じょし-」はどの部分から作っていきましたか?
まずノートに書き留めていた歌詞のフレーズを広げていきました。サビの<君がいなくなったって ご飯はおいしい ちゃんと味もする>という部分から。その部分がノートに書かれていて、「これを曲にしよう」と思いました。
――楽曲のサウンド面は、坂口さんからも意見を言ったり?
自分の意見も言いつつ、プロデュースして下さる岡部晴彦さんと相談し、つつ作りました。意見を言って、それを音にしてもらって、また考えるというやりとりをしながら、徐々に出来上がっていきました。
――アレンジも自分でやってみたいと思いますか?
当分は難しいかなと思うのですが、いつかは自分でやってみたいです。
――「好-じょし-」のまわりの反応はどうですか?
自分の曲はゆっくりのバラードや切ないものが多いのですが、この曲は自分の中でけっこう変化球みたいな感じで、今までにない、新しい感じです。だから、どういう反応があるのか不安だったのですが、今までの切ないような曲を聴いてきてくれたファンの方も「好き」と言ってくれて、めちゃめちゃ嬉しいです。
――2曲目「紺色の主張」も同時に作った曲ですか? 洋楽テイストでクールな印象を受けました。
この曲は中学3年生のときに作った曲です。メロディーをけっこう練りました! ノートに書き留めてある歌詞から、メロディーを「フフフン」と歌いながらケータイで録音して作っていきました。
――3曲目の「16さいのうた-Studio Live Ver.-」は?
これは最近作った曲です。2月に16歳になって、それからすぐ作りました。16歳という年齢は貴重だと思います。子供でもなく大人でもない、その中間みたいな。その歳で感じる“揺れ”をみんな感じているので、それを曲にしました。今まで「14才の唄」も「15歳の詩」も作ってきたので。
――面白いアプローチですね。すると来年は「17歳のうた」も?
そろそろ終わりかな、と思います。これからその調子で作っていったら、30歳あたりになったときにお酒の曲になったりしそうで(笑)。
――それはそれで聴いてみたいですね(笑)。「好-じょし-」はどのようなテーマを歌っている曲でしょうか?
私は女子校に通っているのですが、同じクラスの友達から“恋バナ”を聞いて「恋ってこういう感じなんだな」と思って、恋の曲を作ろうと。失恋ソングなのですが、女子校の女の子って普段は気が強いですが、恋愛になると弱い乙女になったりする。そういう所が「カワイイな」と思って。「強がり」と「か弱さ」という、可愛らしい矛盾を曲にしました。
――レコーディングはスムーズに進みましたか?
3月にやったのですが、スイスイと進みました。
――アコースティックギターの録音もされたようですが、他の楽器に挑戦したい?
最近は鍵盤で曲が作れたらいいな、と思っています。小さい頃にエレクトーンをやっていたことがあるのですが、曲を作れるレベルにまではまだ達していないですね。
お気に入りミュージシャン
――好きなミュージシャンは?
チャットモンチー、クリープハイプ、TAYLOR SWIFT、Journey(米ロックバンド)などです。
――洋楽もけっこう聴く?
そうですね。日本の音楽と半々くらいで聴きます。お父さんが洋楽好きということもあったのですが、最初に海外のTVドラマ『glee』を観て、それがきっかけでジャーニーを知って。そこから洋楽にのめり込みました。
――テイラー・スウィフトはどんなきっかけで好きになりましたか?
昔から好きだったという訳ではないのですが、テイラーを知ってから彼女がデビューした頃のアルバムを聴いたら、“弾き語りの女の子”というイメージが強かったので。楽曲も凄く良くて衝撃を受けました。
――影響を受けた日本のミュージシャンは?
チャットモンチーには凄く影響を受けました。この前ライブにも行ったのですが、めっちゃ格好良かったです。
――今、音楽以外でハマっていることは?
「写ルンです」で写真を撮ることです。現像するときに、CDに焼いてもらって、それをPCに移してInstagramに上げることが周りで流行っています。
――スマホで撮らずにあえて「写ルンです」で?
レトロな感じで写ります! この前修学旅行で北海道へ行ったのですが、そこでもパシャパシャと撮りました。
――坂口さんは学校ではどんな子ですか?
みんなのことを笑わせたい人です。率先してボケたりしますが、授業中はきちんとして、切り替えはちゃんとしています(笑)。
――学校の授業で得意科目は?
英語が凄く好きです!
――音楽の授業はありますか?
あります。音楽か美術の選択制で、私は音楽を選んでいます。
――内容はクラシックのことが多い?
そうですね。あとはリコーダーを吹いたりもしますが、クラシックなど音符を追うような感じと、ギターのコードの感じはまだリンクしない部分もあります。
――これから音楽の理論的な勉強をしていこうと思います?
音楽的なことを学ぶ方よりも、歌詞を書くのが好きなので言葉について学んだりはすると思います。文学の勉強をしたいと思います。本は小説を読むことが多いです。おとといから読書感想文の宿題で芥川龍之介さんの本を読んでいます。
――その頃の小説だと、昔の文体や漢字で表記されていたりしませんか?
そうですね。今は普通にひらがなで書く言葉が漢字で書かれていることがあります。
――今作のタイトル「好-じょし-」という言葉はシンプルに凝っていて面白いですね。
こういう言葉遊びみたいなものが好きです。
――文学から曲のインスピレーションが湧いたりしますか?
はい。本を読んだり映画を観たりすると思いついたりします。
――漫画やアニメは見ますか?
漫画は読み方がわからなくて一切読まないです。違う順番で読んだりしちゃうので。
――珍しいですね。
そうですよね。宿題で古典の漫画を読んでくるというのがあったのですが、漫画は読めないから、それと同じ小説をわざわざ買って読みました。『源氏物語』などですね。古典などもけっこう好きです。
BIGになりたい
――メジャーでの楽曲と、それ以前の楽曲での大きな違いは?
アレンジが確実に違います。インディーズの頃はアコースティックな感じを残しつつアレンジしてもらうのですが、今回の「好-じょし-」は管楽器が入っていたり凄くポップな感じに仕上がっています。この曲はこのバンドアレンジがとても合っていると思います。
――バンドはやってみたい?
もともとバンドがずっと好きでやってみたいと思っていました。でも周りにバンドをやってくれそうな人がいなくて、一人でバンドをやっている感覚でライブをやっています。
――友達でバンドをやっている人はいない?
いますが、趣味でやっていくという感じです。他にやりたいことや勉強もあるから、音楽はちょっと楽器を触るくらいという人はいます。
――まわりではどんな音楽が流行っていますか?
K-POPのTWICEなどが流行っています。バンドの音楽もけっこう聴いている人はいるのですが、あまり多くないです。
――まわりの友達も音楽はダウンロードで購入するのが主流ですか?
はい。AppleやLINE MUSICで買っています。CDで買うときは特典などがあるときでないと、なかなか買わないみたいです。
――Twitterでは現在2万人近くフォロワーがいますね。どのようなことを更新しますか?
音楽ではないこともつぶやきます。クラスのみんなと同じようなことをつぶやいている感じです。友達はみんなやっていますね。やっていない子の方が少なくて、クラスに2、3人くらいじゃないかと思います。LINEはクラス全員やっていて、TwitterとInstagramが同じくらいの人数がやっています。前は毎日のように更新していたのですが、今は前ほどではなくて、テスト期間になったりしたらあまりつぶやかなくなったり…。
――高校生でテスト期間もありますし、音楽活動との両立は大変ではないですか?
そうですね。でも、テスト期間中で自分のやりたいことができないときに、そのイライラみたいな気持ちを歌詞にぶつけたりします。
――楽曲はどんな世代の方に聴いてもらいたいですか?
特に同世代の方に聴いて頂いて共感してもらえるととても嬉しいです。同じ世代の周りの人からインスピレーションを受けた自分のことを歌にしているので。
――最後に、これからの活動について意気込みをお願いします。
今しか書けない曲があると思うので、とにかくたくさん曲を書いて、それをできるだけたくさんの人に聴いてもらえるようになりたいです。昔から漠然としてあった「BIGになりたい」という夢に近づけるように地道に頑張ります。BIGになりたいという夢を持っていれば、ライブハウスや会場のキャパもついてくると思うので頑張ります!
【取材=平吉賢治/撮影=編集部】
作品情報メジャーデビューシングル「好-じょし-」 ESCL-4898 M1.「好-じょし-」作詞・作曲:坂口有望 編曲:岡部晴彦 ライブ情報『サマーセンチガール~初のバンド編成ワンマンライブ~』 8月26日ワンマンライブ:大阪・心斎橋 FUN J twice |