私の歌をみんなの生きる糧にして、當山みれい 未来へ紡ぐ想い
INTERVIEW

私の歌をみんなの生きる糧にして、當山みれい 未来へ紡ぐ想い


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年07月31日

読了時間:約10分

「願い E.P.」は“みんなが心の底から泣ける曲”をコンセプトに制作したという當山みれい

 シンガーソングライターの當山みれい(19)がミニアルバム『願い E.P.』をリリースした。中学生の時に米・ニューヨークへ留学し、全米トップのゴスペルチーム「Gospel For Teens」で、アジア人として唯一のリードボーカルで活躍した他、MIREI名義で全米デビューした経歴を持つ才女。今作は“みんなが心の底から泣ける曲”をテーマに、自身のルーツである洋楽R&Bをベースにしながら、日本人特有のわびさびを感じさせるものになった。幼い頃から音楽に救われてきたと言う彼女は「私の歌をみんなの生きる糧にして欲しい」と話す。今作ではフィンランドのアーティストとコラボした曲なども収録。制作中のエピソードや彼女の考える恋愛観などについて話を聞いた。

初めての真剣な恋から学ぶことは多い

當山みれい

――「願いE.P.」のリード曲「願い〜あの頃のキミへ〜」は、童子-T feat.YU-Aによる2008年のヒット曲のカバーですね。どうしてこの曲をやろうと?

 今後に向けて、自分のルーツである洋楽のヒップホップやR&Bだけじゃなく、日本語の歌で、今まで多くの人に受け入れられた曲は何だろう? とたくさん聴いていった中で浮上したのが、約10年前に着うたなどで流行った「願い」です。

 改めてじっくり聴いた時は、まるで自分のことを歌ってくれているみたいで、すごく感動しました。それで、童子-Tさんとは以前にボーカルディレクションをしていただいていて面識があったので、直接「カバーさせてください」とお願いをしたところ、快くOKのお返事をいただきました。

――自分のことを歌っているように思えたのは、歌詞が、今の自分の気持ちとリンクしたということですか?

 はい。失ってから気づく、その人の大切さと言うか…。恋人だけじゃなく、自分にとっては、今まで支えてくれたスタッフさん、友だちや家族などへの様々な気持ちも入り交じって、自分の中ですごくハマったと言うか。グサッと胸に突き刺さりました。

 原曲は、本気で恋をして失恋する歌です。大人の恋愛観なのですが、それを大人と子どもの中間である19歳の私が、等身大の言葉と声で歌うことによって、より同世代のみんなに伝わるのではないかと思いました。

――イントロなど原曲を活かしたところもありますが、童子-Tさんがラップしていたところは、當山さん独特のラップっぽい歌い方になっていて、歌詞も違っていますね。

 歌詞は、童子さんのバースと時系列で対比するように、韻を踏みながら書いています。原曲の男の人の気持ちに対して、じゃあ女の人はどういう気持ちかな? と、想像を含めて自分ならこうするだろうと置き換えながら書いていきました。

――歌詞にスタンプが出てくるのは、今の當山さんらしいですね。

 童子さんの原曲にはメールが出て来ますが、それはあくまでも当時のガラケーの象徴で、今はほとんどの方がスマホなので、メールよりはLINEだろうと思って。

 こういった情景描写が細かく出来て、なおかつ歌っても気持ち良いのが、ラップの良いところですね。私はラッパーではないので、歌にちょっとラップ風のフロウを入れていく感じになりましたが、ラップと歌の良いところ取りをした結果、こういう歌い方になったという感じです。

――「あの頃のキミへ」というサブタイトルは?

 昔の上手く行かなかった恋愛があったからこそ、また次に誰かを好きになったり付き合ったりしたときに、今度はこうしようと思うわけで。過去を振り返りながら、気持ちは前を向いている感じです。

 誰にとっても初めての真剣な恋は、きっと学ぶことが多いと思います。大抵の人は、そういう最初の恋のことを覚えていると思うし、当時は辛い経験だったとしても、年月を経てその経験があって良かったと思えている人は多いのではないでしょうか。そういう気持ちが、ちゃんと伝わったら良いと思って歌っています。

――今の自分があの頃の自分に何かを伝えるとして、何歳の自分に何を伝えたいですか?

 例えばこの曲がヒットした2008年、小学4年生だった自分に対しては、「もっとお母さんに料理とか家事を習っておきなさい」と伝えたいですね(笑)。

 私は大阪出身で中学生の時に留学して、帰国してすぐ東京で1人暮らしをするようになりました。最初の頃は、学校に行ってレッスンに行って、家に帰るともうクタクタでした。効率の良い家事のやり方などいろいろ教わっておけば、もっと自分の時間を作れたのではないかなと。

「涙活」のおかげで最近は涙もろい

當山みれい

――今作の収録曲は、他に「First Heart Break」、「Goodbye My Love」、「Missing you」と、タイトルからも分かる切ない曲が多いですね。元々そういう曲が好きなのですか?

 本来の私は、強気と言うか(笑)。例えばデビューシングルの1曲「I Wanna NO feat.SHUN」では、「みんなもっと自分の意見を言おうや!」と、手を力強く引っ張るように歌っていました。それが、今作で切ない楽曲が多くなったのは、昨年11月にリリースしたシングル曲「君のとなり」で、「涙活」とコラボした泣けるMVを制作して頂いたことがきっかけです。

――「涙活」は、涙を流してストレスを発散する活動で、イベントなども開催されていますね。

 はい。自分自身でも、泣くことによって忘れていた気持ちを思い出したり、ふさぎこんでいた気持ちが前向きに変わった経験があったので、「涙活」にとても共感して。実際に「君のとなり」は、「涙活」とコラボしたMVが、とても大きな反響をいただきました。

 それに涙には、悲しい涙だけでなく、嬉し涙や悔し涙など、いろいろあって。感情が揺り動かされた時に、言葉にならない気持ちが涙となって流れますよね。それで、そんな涙を流すくらい、心を動かす曲をいっぱい作りたいと思うようになりました。そうして今回の1枚は、“みんなが心の底から泣ける曲”をコンセプトに決めて制作したので、切ない曲ばかりが集まりました。

――収録曲のひとつである「Missing You」は、その「涙活」で生まれたショートフィルム『明日への約束』のテーマソングですね。小さな女の子が、病気のお母さんとの約束を健気に守って大人になっていく様子が描かれていて感動しました。

 曲を作る時には、このショートフィルムがすでに出来ていて、それに合う曲を作って欲しいというオファーでした。映像を何度も見返して、すごく言葉を考えましたし、作っている途中で私の親戚が亡くなるという経験もしました。そういった自分の想いや経験を踏まえて、主人公の女の子の健気さや、手を貸したいけど貸すことが出来ないもどかしさを感じているお母さん、どちらの気持ちも込めて、どの立場でも感情移入して聴いてもらえるように、と作ったのが「Missing You」という曲です。

 最近は「涙活」の経験もあってか、涙もろくなってしまって。先日はテレビで『はじめてのおつかい!』を見て、涙が止まらなかったです。

――「First Heart Break」と「Goodbye My Love」の2曲では、フィンランドのアーティストとコラボされていますね。

 フィンランドとアジアのアーティストが集まり、交流を図りながらコラボしたり曲を作ったりする会合が、ヘルシンキでおこなわれて。そこで出会ったチームで作りました。

 歌詞や言葉は私がとりまとめて、オケはフィンランドのアーティストがとりまとめて作ったのですが、みんな自分の意見を言いたい放題で、「ここはこうしたほうが良い」、「いや、こっちのほうが良い」など、1曲についての議論を何時間もおこなって作りました。普段は基本的にひとりで、誰かからアイデアやヒントをもらいながら作ることはないので、すごく新鮮で楽しい体験になりました。

――リズムやトラックが、いわゆる洋楽R&Bとも違っていて、独特の空気感を持った曲になっていますね。この2曲も、「泣ける曲」というテーマを決めて?

 はい。すでに「泣ける曲」というコンセプトが頭にあったので、それをみなさんに伝えて作りました。作詞の面では、フィンランドや北欧の若者の恋愛観や経験談をいっぱい聞かせて頂きました。面白いのは、失恋にまつわる思い出やシチュエーションは、国や言葉は違っても変わらないということ。

 それこそ歌詞に出てくる、色違いでお揃いのマグカップが残された、香水のにおいで相手を思い出すなど。共通したエピソードを発見しながらの作業で、とても楽しかったし勉強にもなりました。

――恋愛における気持ちのあり方は、国境を越えるだけではなく、きっと時代も越えるのでしょうね。

 いつの時代も、心の奥深いところにある気持ちは、きっと同じではないかと思います。表題曲「願い」は約10年前の曲ですが、自分たちを取り巻く環境も持っているアイテムも、まったく変わってしまったと思いますが、そこにある“恋心”や“想い”は、今も同じです。だからこそ、この「願い」という曲が、今の私や聴く人の胸に、グサッと刺さったと思います。

自分の中にある二面性、どちらも歌で表現したい

當山みれい

――今回、「E.P.」という形態にしたのは、どうしてですか?

 出すのが決まって、この曲を入れたい、あの曲も入れたいと、意見を出していたら、いつの間にか5曲になって。海外ではよくあるリリース形態で、自分の楽曲提示方法のバリエーションのひとつとして、こういうのもありかな? と思いました。

 最初はダウンロードで1曲でも2曲でも聴いてもらって、それで興味を持っていただいたら、CDを手に取っていただいて。この曲順で、ひとつのストーリーを感じながら聴いてほしいです。

――今回は泣ける曲がテーマになっていましたが、今後もそういう曲を?

 自分自身いろいろな表情を持っていて、普段はわりと強気がメインで、言いたいことをはっきり言うタイプなのですが、ひとつのことに悩み始めると、どんどん落ち込んでいく自分もいます。強気と弱気、自分の中にある二面性を、どちらも歌で表現していきたいです。

 以前は、とりあえずみんなで盛り上がれる格好良い曲が良いと思っていましたが、今は聴く人の心を動かして、みんなの気持ちに寄り添える曲をどんどん出していきたいと思っています。

――大人のリスナーも増えていきそうですね。

 実際に「願い」に対して、当時リアルタイムで聴いてくれていたであろう、お姉さん方からたくさんの応援のコメントをいただきました。逆にライブに来てくださるのは、大人の男性方が多いです。そういう私より歳上や、大人の人たちにたくさん聴いてもらって、甘酸っぱい気持ちを思い出してもらえたら嬉しいです。

――今後の目標みたいなものは?

 ワンマンで全国ツアーをやって、各地のみんなのところへ会いに行きたいです。こちらから会いに行って、誰かの気持ちを揺り動かしたりとか、みんなの日常を明るく照らしたり、少しでも“頑張るぞ!”と思ってもらえたら嬉しいです。

 私自身、昔からいろんな音楽を聴いて、そういう気持ちになれました。休みの日も、遊園地に行くよりもライブに行きたかったし。音楽を自分の生きる糧にしてきました。今度は私の歌が、みんなの生きる糧になれたら嬉しいなと思います。それが、今の私の一番の「願い」です!

(取材・撮影=榑林史章)

 ◆當山みれいとは 1998年7月27日生まれ。大阪府出身~NY経由、19歳。2013年に全米トップのゴスペルチームに所属し、アジア人として唯一・異例のリードボーカルに抜擢され、全米デビューも果たした。2014年、シングル「Fallin‘ Out/I Wanna NO feat. SHUN」でメジャーデビュー。iTunesのR&B/ソウルチャートで1位を記録。EP「Memories」をリリース後、2年間の潜伏期間を経て、2016年、1stアルバム「My Way」で本格派シンガーの実力を再び見せ付け、同年にはRADIO FISHの初コラボ相手として指名されたことでも話題を呼んだ。2017年、高校を卒業。まだ大人ではないかもしれないけど、もう子供では無い。そんな"今"にしか歌えない感情・メッセージを圧倒的な歌唱力で叫ぶシンガーとして新たな活動を着実に続けている。

作品情報

當山みれい
「願い E.P.」

【初回生産限定盤】(CD+DVD)2100円(税抜)SRCL-9464
【通常盤】(CDのみ)1750円(税抜)SRCL-9466

▽CD収録内容
M1. 願い~あの頃のキミへ~
M2. 光
M3. First Heart Break
M4. Goodbye My Love
M5. Missing You

▽初回生産限定盤DVD収録内容
01. 願い~あの頃のキミへ~ Music Video
02. Missing You Music Video(ショートフィルム「明日への約束」)

ライブ情報

▽After School Swag Vol.5
8月2日 東京・渋谷club asia
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