広島出身4人組バンドのGoodbye holidayが7月19日に、2ndメジャーフルアルバム『A LA QUARTET』をリリースする。2008年に広島で結成され2015年に「革命アカツキ」でメジャーデビュー。メンバーは児玉一真(Vo、Gt)、福山匠(Ba)、大森皓(Gt)、山崎晃平(Dr)の4人編成。今作は「4人の自己プロデュースで良いものが出来たことが自信になった。好きな曲を一品選んで下さい、絶対あなたの好きな曲があるはず」という想いから“アラカルト”と“カルテット(四重奏)”を併せ持った造語で『A LA QUARTET』と名付けられた自信作。バンドの王道路線をブラッシュアップした「夏の彗星」や新境地となる「room」の制作背景など、児玉と福山の2人に話を聞いた。
映画のタイトルを合体させた
――メジャーデビューをされて2年が経ちますね。何か変化はありましたか?
児玉一真 この2年間あっという間でした。色々と大変なこともありつつ…。自分達の思っているように、まだ行っていないというのが現状です。現状でもっと売れておきたかったという思いがありまして…。
――様々なタイアップもあり、バンドの知名度は高いと思いますが。改めて結成の経緯はどのようなものだったのでしょうか?
児玉一真 結成の経緯は僕と福山(匠)が同じ歳で、しかも大学が一緒でそこで結成しようということになりました。今とは別の同じ歳のギター担当が当時はいて、そこにドラムの山崎晃平が入りました。彼は高校の後輩で、僕達の2つ年下です。僕らが新しくバンドを始めるにあたって、ドラムを探しているということを聞いたらしく、「一緒にやってくれませんか?」と声をかけられて4人で始めました。
そこから山崎が先に大学進学で東京に行きまして。僕らは広島に残っていたのですが、その2年後に僕らは大学を卒業して、2人で東京に行きました。当時のギターは理由あって東京には行けなくて。そのタイミングで「いいギターがいる」と山崎の紹介で大森(皓)にバンドへ入ってもらったのが、2009年です。そして、その4人で東京での活動を開始しました。
――Goodbye holidayというバンド名は既に広島の頃から?
児玉一真 そうです。バンド名の由来は、あまり気取っていない自然体のバンド名がいいということでした。福山がよく映画を観るのですが、「観た映画リスト」があって、その中から良さそうな言葉を探して合体させました。
――ちなみに何と何の映画を合体させたのでしょうか?
福山匠 『グッバイ、レーニン!』と、キャメロン・ディアス主演の『ホリデイ』です。まず“グッバイ”という響きが何か良いというのと、“ホリデイ”が合うということで。
――何か後づけで意味を込めようとはしませんでしたか?
福山匠 「俺達に休日はいらねえ」みたいな?(笑)。周りから勝手に言われたりしましたが、自分達で後づけということはなかったです。
――メジャーデビューのきっかけは?
児玉一真 東京に出てきて自分達だけでやっていたのですが、次の年くらいに今の事務所から声がかかりまして。そこで全国流通盤を出したりしていって、そこからライブ活動も頻繁になってきました。そして今のレーベルに声をかけられまして。
――東京に来てからはトントン拍子だったのですね。広島と東京とでは音楽の違いについてどう感じますか?
児玉一真 今はどうか分かりませんが、僕達が東京に出てきたばかりのときは、東京の方がずっとレベルが高いと思いました。広島だったら、当時自分達で曲を作ってやっているバンドなんてほとんどいませんでした。だから、僕らも大学の頃はそんなにガッツリと活動できていなくて、サークルの演奏会に出たり、という感じでした。バンドシーン自体そんなに盛り上がっていませんでしたし。
――それはちょっと意外ですね。奥田民生さんの出身地であったり、バンドシーンなどは活発という印象を持っていました。Goodbye holidayの武器はどこだと思いますか?
福山匠 歌だと思います。
――児玉さんは小さい頃からずっと歌を歌っていたのでしょうか?
児玉一真 幼少期は覚えていないのですが、学生時代は歌うことが大好きでした。中学生の頃はカラオケにもよく行っていました。その頃はBUMP OF CHICKENさんがメチャクチャ好きで、弾き語りでコピーをしていました。カセットテープに録って自分で聴いて「もうちょっとこうした方がいいかな…」という感じで、楽しんでいました。
歌詞を書くときは基本的に落ち込んでいるとき
――福山さんの歌詞には二面性があると感じました。どういった心境のときに歌詞が出てきやすいでしょうか?
福山匠 歌詞を書こうと思って、そのモードに入るということは難しくて、ただただ言葉が出てくるときは、基本的に落ち込んでいる時です。切ない気持ちにならないと出てこないといいますか。
――明るい内容の楽曲でもそういう心境の方が出てきやすい?
福山匠 はい。どの楽曲でも一カ所、切なくなるようなポイントがあって、そこが出てきてから、それを中心に広げていくということが多い。でも今作では色々な書き方をしています。今までは“共感してもらわなきゃ”ということが目的の一つで、整合性がとれていて、一つの読み物としても完結していなければいけないのではないか、という気がしていました。
ですが、例えば「Hot & Spicy」、メロディと言葉が気持ち良く絡み合って、聴いている人の耳に何となく言葉と一緒に残れば、それで音楽的な楽しみになるのではないかと思って、そういう作り方をした楽曲です。
――メロディと言葉のはまり方が気持ち良いし、ファルセットの部分が凄く耳に残ります。他の楽曲ではどういった作り方をしましたか?
福山匠 「手紙」はシンプルに、ただただ一直線な気持ちを書いています。何のひねりもなしに、ただ「ドン」とあるようなラブソングが一つ欲しくて、書いた曲です。「海辺のイエスタデイ」は昭和感を出そうと思って、昭和のアイドルが歌うような感じにしました。
――「海辺のイエスタデイ」はその感じが伝わってきますね。歌詞に関して、昭和っぽいというイメージはどのあたりに?
福山匠 漠然と、アイドルではないのですが、松任谷由実さんなどのイメージもありました。あと「恋するフォーチュンクッキー」のような秋元康さんの持つ、昭和っぽいイメージにしたいなと思って書いた楽曲です。そういう漠然としたイメージで全体を捉えていて、あとは「素直に頑張っているよ」という」思い出を追いかける感じとか、そういう情景描写を主として書きました。
――「静寂の嵐」は曲調からも気持ちを落として歌詞を書いたのが伝わって来ますね。
福山匠 (笑)。これは完全に落としました。まず、児玉さんからデモが上がってきたときに、最初のサビが終わったあとに変わったメロディがくっついていて、どこまでがサビで、どこまでがAメロBメロなのかがよくわからなかった。
でも、そういう柔軟な発想は今までなかったので、こういうタイプの曲もあっていいと思いました。ここまでのものだったら、歌詞もそこまで共感しやすいものにしなくてもいいと思って、一つの詩として完結させるようなものが相性が良いと思いました。デモを聴いたときは気分が凄く暗かったので、これは本領発揮だなと。暗いモードに落として書きました。
――この楽曲を歌い上げるのは辛いのでは? その感情を言葉に出す訳ですし。
児玉一真 それがけっこう楽しかったです。ここまで歌い切るという感じのものは今まであまりなかったもので。録音では1、2テイクくらいしか録っていない、感情がブワっとする感じで歌っていますが、新鮮で楽しかったです。歌い切ったというか、「出し切った、これで大丈夫です」という達成感がありました。
――ライブでも楽しみな楽曲ですね。
児玉一真 立ちすくませて呆然とさせたいです。
「夏の彗星」は“Goodbye holidayの王道”です
――全体的に夏をイメージさせる楽曲が多いですが、そこは意識されて?
児玉一真 たまたまです。「夏の彗星」は夏を意識して作りましたが、それ以外の曲は意識していませんでした。コンセプトもいつも決めずにスタートして、楽曲が揃ったときに見えるということが多いです。
――今作で決め手になった楽曲は?
児玉一真 やはりリード曲の「夏の彗星」です。この曲は最後のギリギリにできた曲です。この曲ができるまで全部で12、13曲出そうという予定で、どれもリードになりうる良い曲が揃っていましたが「これぞリード」という、Goodbye holidayらしい明るい曲調の抜きでた楽曲がなかった。この曲ができたことによって、アルバムに一つ軸が出来てまとまりました。“Goodbye holidayの王道”です。
――楽曲は割とスムーズにできますか?
児玉一真 時期にもよります。たくさんできる時期もあるし、そうでもないときもあります。今作はどんどん書ける時期で20、30曲はデモがありました。その中から厳選した曲です。他にも入れたい曲がたくさんありました。
――すぐに次作が出来そうですね。インストの「家路」をインタールード的に収録した意図は?
児玉一真 これもギリギリで、僕の思いつきで突っ走って作ってしまったという感じです。アルバムを通して聴いて、ここでインタールード的に雨の音が入ってきたら、次の「桜花転生」に感情移入して入れるなと思って提案しました。
――「桜花転生」に引っ張られてできた楽曲?
児玉一真 そうですね。「静寂の嵐」のなかにも雨の音が入っていたりするのですが、それも流れで聴いていると、「桜花転生」も“雨”という言葉から始まるし、それに繋がるような感覚です。せっかくのフルアルバムだし、そういったちょっとした繋がりがあってもいいかな、と思いました。
――ただのインタールードとして挟むのではなく、ちゃんとタイトルが付いているのがいいですよね。
児玉一真 ギリギリで作ったので、「桜花転生」のイントロにする話もあったのですが、せっかくだから1曲にしたいと思いました。ならばタイトルが必要ということで福山君に「タイトルをお願いします」と。
――タイトル付けを投げるということはよくある?
福山匠 非常に多いです。
児玉一真 僕が書いた曲でも、「じゃあ、タイトルを付けてくれない?」ということは多いです。
――逆パターンも?
福山匠 「決めてくれ」という話はたまにするのですが、誰からも答えが返ってこないので結局自分で付けます(笑)。
PCを開いて起動するまで1時間
――今作の制作期間は?
児玉一真 2カ月くらいです。オケ録りは短期集中型で4、5日くらいしかやっていないです。歌録りも3、4日で録りました。
――かなりの短期スケジュールだったのですね。
児玉一真 そうですね。ちょうど前回のミニアルバムのツアーがあったりしたので、その合間にやったりと。でも集中してできたので良かったです。
――レコーディングで何か新たなチャレンジはありましたか?
児玉一真 新しい曲はアレンジャーさんなしで自分達だけで作っていったので、その点もあります。信頼しているミックスエンジニアの方と一緒に音を作っていきました。
――ミックスエンジニアの方もディレクター兼という感じで?
児玉一真 もうそんな感じですね。今までもその方とは何度かやらせて頂いていて、信頼関係もあって、作って下さる音を信頼していたので安心して音作りができました。
福山匠 新たなチャレンジといえば「海辺のイエスタデイ」は作曲が大森君なのですが、レコーディングで「音が全然楽しそうじゃない」と言い出して(笑)。それで僕が立って演奏してみたら、ちょっと演奏が活き活きし始めて、大森君も立って弾いたらサウンドが凄く楽しげになりました。
そこから「立って弾くのっていいんじゃない?」という話になりまして。エンジニアの方も「音が全然変わる」と仰ってくれて。立って弾くと、基本的にノリがちょっと前のめりになる。それが楽曲の活き活き感に繋がったという実証を得ました。それで「Refrain」と「海辺のイエスタデイ」は立って演奏してレコーディングしました。
――ノリとの関係性があったのですね。
児玉一真 座って弾くと、どうしても少し前屈気味になるのですが、立つと体が反ります。本当に感覚的な話だと思いますが、物理的にも少し音が明るくなる影響がある気がします。
――「room」は今作のなかで曲調が異質ですよね。これは少し空気感の違うものを入れたいという思いがあったから?
福山匠 「room」はドラムとベースをシンセで打ち込んで制作しました。これも僕らの中では新しい試みでした。
児玉一真 そうですね。僕らの今までの楽曲の中でもやってこなかったような、一番新しい種類の曲になります。デモの段階で僕が作って、それを聴いてもらうまでは候補に残ると思っていなかった。遊び感覚で作ったのですが、ウケが良くて「新しいし、ちょっと入れてみようか」ということで採用されました。
――ライブで生のグルーヴでやっても面白そうですね。この楽曲のイメージはあったのでしょうか?
児玉一真 やりたいですね。どうやってやろうかと、今考え中です。既存の曲のどのあたりに寄せよう、という感じはあまりありませんでした。ループでリズムがある上にギターを乗せて、それにメロディを付けていったという流れでした。
実は今まで僕はPCを持っていませんでした。最近やっと手に入れて、このアルバムのデモからPCを使って曲を作るようになりました。それでPCを使って初めて作った曲がこの「room」なんです。だから遊び感覚というか、試しにやってみようという感じで作り始めた曲です。
――このご時世に珍しいですね。今までPCが嫌いだったり?
児玉一真 機械があまり得意ではないというか…すぐウィルスに侵されてしまって。だから「俺はPCを持たない方がいい」みたいな感じで(笑)。家にいてもバンドで曲が作れるというのは、すごく便利だと思いました。もっと早くやっていれば良かったなと(笑)。
――福山さんはPCで制作されますか?
福山匠 PCはあるのですが、かなり古いものですぐフリーズしてしまいます。PCを開いて起動するまで1時間くらいかかるので、ほぼゴミです(笑)。だからデータのやりとりで僕は苦労していますね…。フリーソフトのDAW(デジタルオーディオワークステーション)を使ってフリーズしまくりながらベースを録って送っています。
――起動するまで1時間ってメンバー宅に直接行った方がいいのでは?
福山匠 確かに(笑)。でも色々考えながら、という点では、いいです。
――歌詞を書くときはノートで?
福山匠 ケータイです。そこは便利な方がいいなと思いまして。
絶対あなたの好きな曲があるはず
――今作のタイトル『A LA QUARTET』の意図は?
児玉一真 “アラカルト”の意味も“カルテット(四重奏)”の意味も両方入れたかった、ということがあります。“カルテット”というのは、4人の自己プロデュースで良いものができたというところが自信になった部分が大きかったです。
“アラカルト”というのは、このアルバムのコンセプトをどうしようという話の中で、色んな曲がありすぎて、一つのコンセプトにまとめるのは難しい。どれもいいし、どれをリードにしてもいけるという手応えもありました。
でも、色んなタイプの楽曲があるからこそ、全曲気に入ってくれる人はそうそういないと思いました。例えば「静寂の嵐」が好きな人は「純白のドレスを君に」や「手紙」はもしかしたら、受け付けないかもしれないし。
――曲調がガラっと違いますからね。
児玉一真 極端に色々な曲がたくさん入っているのですが、どれか一つは気に入ってくれるだろう、という思いがあります。だから「あなたの好きな曲を一品選んで下さい、絶対あなたの好きな曲があるはずです」という意味を込めて、『A LA QUARTET』とつけました。僕らとしては、全曲に自信があるので、だからこそ「どれでもどうぞ」ということが言えたというところがあります。
――最後にツアーに向けてのメッセージをお願いします。
児玉一真 久しぶりのワンマンのツアーなので、とにかく楽しみです。『A LA QUARTET』の曲は全曲やりたいです。ライブを意識して書いた曲たちなので、バンド感、ライブ感をしっかり出せたらいいなと思います。ライブで聴いて、もっと「この曲いいな」と、もっと思ってもらえるように、ステージングを含めて色々考えてやっていきたと思います。
福山匠 僕達は対バンでまわって、Goodbye holidayの名前だけしか知らなかった方が、ライブを観て「良かったです」とCDを買ってくれることが多かった。今作はバラエティー豊かなので、どれか一つでも気に入る曲があるだろうし、この豊かさがライブで色んな方向に振り切れながらも、ちゃんと歌を中心に据えて少しでも皆さんの心に刺さればいいなと思います。感性の豊かさをライブで再現したいです。
(取材・撮影=村上順一)
作品情報
Goodbye holiday 「A LA QUARTET」
発売日:7月19日
品番:AVCD-93708/B
価格:3400円(本体価格)+税
POS:498806493708/0
形態:ALBUM+DVD
品番:AVCD-93709
価格:2800円(本体価格)+税
POS:498806493709/7
形態:ALBUM
DISC-1(CD)
1.夏の彗星
2.Refrain
3.ハザマステップ
4.共鳴列車
5.手紙
6.純白のドレスを君に
7.海辺のイエスタデイ
8. room
9.Hot & Spicy
10.サイエンスティック・ラブ
11.静寂の嵐
12.家路
13.桜花転生
14.ANSWER
DISC-2(DVD)
M1.奇跡の星MUSIC VIDEO
M2.十ヶ条MUSIC VIDEO
M3.パラダイムシフターMUSIC VIDEO
M4.サイエンスティック・ラブMUSIC VIDEO
M5.”KNOCK!! KNOCK!! KNOCK!! ~はよ上がりんさい~”
【 東京編~マジ人多すぎなんだけど。~】Digest
Movie@TSUTAYA O-WEST
1.十ヶ条
2.桜花転生
3.純白のドレスを君に
4.パラダイムシフター
5.KNOCK