シンガーソングライターの清水翔太が28日に、7枚目のオリジナルアルバム『FLY』をリリース。2007年に米国・ニューヨークにある音楽の殿堂『アポロシアター』のステージに“平成生まれの日本人”として初めて出演。翌年2008年にシングル「HOME」でデビュー。加藤ミリヤとコラボした「FOREVER LOVE」などヒット曲を数多くリリースしている。昨年は、ラップを披露したシングル「My Boo」がSNSなどで話題を集めた。いわゆる“R&Bシンガー清水翔太”というイメージを良い意味で覆すことになった、最新アルバム『FLY』について、清水は「ソングライターとしての自分に従って、好きなことを書き、好きなように作ったまで」と話す。デビュー10周年を迎えた清水翔太は今、何を思い、何を感じて制作しているのか。
一歩先を行く新しいキャッチーさ
――『FLY』は、ミディアムナンバーが中心のアルバムですが、最初にどういうアルバムを作ろうと?
頑張って売れそうな作品を作ろうかな、と。売れそうなと言うのは、売れるために何かへ寄せて作るということではなくて。自分は今表現したいことをわりと好きに表現できているので、そういう今の自分の音楽の世界観の中で、売れそうなものということです。
例えば「My Boo」が、とても多くの方に届いたので、その流れを上手く前作の流れの中に織り交ぜて行けたらいいな、と思いました。だから、歌詞は自分の好きなことを言っているだけですが、音的な部分では、もう少し広いところまで届くものが、前作よりもあるかなという感じがします。
――トラックは、わりとシンプルなものが多く、その代わりに歌詞の言葉がスッと入ってくる。歌と歌詞を伝えるためのアルバムと言うか。
そういう細かいことは、正直あまり考えませんでした。歌詞も、本当に自分の思ったことを書いただけだし、音も何かにすごくこだわったわけではなくて。その時に作りたいと思ったまま、作っているだけです。テーマなどを考えずに、好きに書いて作った結果という感じです。別にテーマを設ける必要性はないと思っているので。
――テーマがあったほうが、指針になって作りやすいのかな? と思いますが。
テーマがあるということは、そこに合わせて作らないといけないので、そういう作り方では、僕は楽しめないです。とにかく僕は、自分の好きなことを自由に書きたいだけで、その中で自分が良いと思うものを集めて、アルバムにしている。条件を最初につけて作るのは面倒臭いし、つまらないので、それはやりたくなくて。
――では、アルバムのタイトルは、どういう風にして考えるのですか?
テーマがないので、後付けで考えるほかないですね。今回は、「FLY」という曲が、この中で自分の想いや考えを代表していると思ったので、その曲のタイトルをそのままアルバムタイトルにしました。前作『PROUD』の時もそうでしたが、曲が揃ってから、その中でメッセージが一番強いものをタイトルにしています。
――その「FLY」は、どういうことを書きたいと?
タイトルは、ライブをしている時の感覚を単純に表していて。ツアーも控えていたし、ライブをやっている時の楽しさを書きました。
――<夢を自由に書けるペン 林檎やパインに刺すには勿体ねえ>というフレーズもありますね。このくだりは、クスッとしてしまいました。
これ、もしかしたら「PPAP」をディスって見えるかな? とも思ったのですが、全然ディスっているわけではないので。
――あと<決して迷わず怖れず>というワードも気になりました。曲を作る過程で、怖さや不安を感じる時は?
今は全くないです。昔はありましたが。ヒット曲を狙って書いていたときのほうが、怖さはあったと思います。何かを狙って作るということは、偽りの言葉も多いので、自分の気持ちが乗っていないわけで。でも聴いた人は、それを僕の全てだと思ってしまう。そういう怖さがありました。
今は、歌詞でも歌っていますが、腹をくくって好きなことを言っているので、何を言われても動じないと言うか。自分は言いたいことを言い切っているだけだから、怖さはないです。自分の意図しないことを言って、それで評価されたり批判されたりすることのほうが怖いです。
――そういう風に腹をくくれるようになるまでは、時間がかかりましたか?
まあ、かかりましたね。でもきっと、売れなかったから、そういう気持ちになれたのだと思います。「売れるためにはこうする必要がある」と、いろんな人から言われて、それをやった結果売れないという時期が、けっこう長いこと続いたので。「じゃあ、もう好きにやらせてくれよ!」という流れで、今に至っていて。
――好きなようにやったら、売れたと。
売れたというほどは売れてないけど、「My Boo」が、すごく多くの人に広がったので。そこで、清水翔太と言うのは、周りからあれこれ言うよりも、好きなことを思い切りやらせて、その中にキャッチーな光みたいなものを感じた時に、みんなで一斉に全力でサポートしていくみたいなやり方が良いと、スタッフ間でそういう話になったのだと思います。
でも、それをやるには僕を理解する必要があるわけで。理解するってすごく難しいですよね。要は、僕の作品の中にあるキャッチーさを見つけて欲しいということで、それは普通の人には見つけづらいものではあるのだけど…。既存のJ-POPの売れそうなキャッチーさとは違う、一歩先を行くような“新しいキャッチーさ”を見つけて欲しいです。
――我々からすると、清水さんはすでに知名度や人気もあって、売れているという認識です。清水さんの中では、どうなったら売れたと思える?
CDが売れない時代で、でもCDが売れないとダメだと思うし。今は配信で多く聴いて頂いているので、CDじゃなくても良いのではないか、と思う部分もあるし。ライブを主とする考え方もあるので、まあ難しいですよね。だから、何をもって売れるとするかは、自分の中の感覚でしかないけど。でも、もっともっと売れたいです(笑)。