元Cymbalsの沖井礼二と、清浦夏実によるロックバンドのTWEEDEESが21日に、ミニアルバム『a la mode』をリリースする。2015年に結成され、同年3月にアルバム『The Sound Sounds.』でメジャーデビュー。翌年7月には2ndアルバム『The Second Time Around』をリリースし、今作は初となるミニアルバムとなる。ユニークな転調やリズムが詰め込まれながらも、キャッチーなメロディがポップな一面を担うバランスの取れた作品。彼らの活動は、メンバー2人の間にある、約20の年齢差というジェネレーションギャップに向き合うところから始まったのだという。現代社会で失われがちな、その「世代を超えたコミュニケーション」という物が彼らの大きな武器になっている。これは将来の社会モデルとも言えそうだ。そんな彼らの創作や、新譜、最近考えている事についてなど話を聞いた。※「a la mode」頭文字の「a」は正しくはアクサン・グラーヴアクセント符号付き
ジェネレーションギャップは驚きの源泉
――このユニットが結成される経緯についてお伺いしてもいいですか?
沖井礼二 僕はCymbalsというバンドをやっていて、彼女はソロで歌っていました。出会った時には、既にお互いの音楽を聴いたことがありました。僕のライブに彼女が遊びに来てくれて、その時に彼女のCDを貰って。その音源は聴いたことがあったのですが、彼女が歌っているとは知らなかった。それで、聴いてみたら「あの曲の人だったんだ!」という驚きを覚えて。その日のうちに連絡を取って、メールとかスカイプで話しても波長が合うので、知り合って翌日くらいにバンドを組みました(笑)。
清浦夏実 割とひらめきのあるファーストコンタクトでしたよね。私も沖井さんがやっている音楽が凄く好きでした。私は楽曲提供を受けて活動していたので「これは絶対挨拶して、あわよくば曲を作ってもらおう」と思っていました(笑)。そしたら朝までその日に飲んで…まさかバンドを組むとは。
沖井礼二 僕も2003年Cymbalsを解散してから、一緒にできる女性シンガーを探していました。それで色々な人を見たり聴いたりしました。上手だったり、綺麗な人というのは世の中に沢山いる。でも、バンドを組みたいと思う程、ピンと来た人はそれまでいなかったですね。もう諦めようかと思っていました。僕は作編曲家ではありますが、TWEEDEESを始めてから、身に染みてわかったことは自分がバンドマンという事でした。だから、そういう人を意識的に、若しくは無意識的にも探していたのでしょうね。
清浦夏実 私はバンドを組んだのはこれが初めてです。ましてや音楽を始めるのも、流れでやってきた様な人生なので、自主的に何かを始めるのもTWEEDEESが初めてという。ゼロからのスタートでしたね。
――バンド名の由来は?
沖井礼二 洋服の生地のツイードからです。「Tweedy」という言葉の中に「リラックスした」とかトラディショナルな意味があるし、気合いれてやるよりはそちらの方が良いだろうと。それから“e”が沢山あって格好良いとか。普通なら“Tweedy”になるのですが「TWEEDEES」にしたらエゴサーチしても我々しか挙がってこないので。
Cymbalsでも、それ以降でもバンドをやったりはしていて。それなりに自分も経験を得て「こういう風にやればバンドは上手くいくんだよ」くらいのつもりだったのですが、いざTWEEDEESを始めてみると、やはりゼロからのスタートですよ。バンドというのは生き物みたいなもの。僕ら2人でバンドというよりも、「TWEEDEESというものがあって、それを育てていくのが我々2人」というところがある。それが求める事をやっていかなければいけない、という意味で予測がつかないところもあったりして。子育てみたいなものですね。意外と経験って役に立たないなと。
清浦夏実 子育て方針で相当ぶつかったりもします(笑)。
沖井礼二 最初は僕も「こういう風にやれば良いんだよ」という感じで言おうかなと思っていたのですが、彼女は「沖井さん、正直それ古いです」と平気で言う(笑)。
清浦夏実 「全然わかってくれない」とか思いながら(笑)。ジェネレーションギャップしかなかったです。沖井さんがまずこれを聴きなさい、あれを聴きなさいと、英才教育をしてくれて。それに対して割と取捨選択をしていたら、結構傷つけてしまったみたいで(笑)。もちろん「良いな」と思うものもありますし、聴き方がわからないものもあって、ストレートに「古い」と言ってしまいました。
沖井礼二 当時は混乱しましたね。段々わかってくるのですが、ポップスというものは10代・20代の若い人の物じゃないですか。つまり僕がどれだけ「これが良いよ」と言っても彼女が良いと思わなければ、良くはないわけですよ。だから、まずは彼女が良いと思うものを作らなければ、事は始まらないなと。やっている内にわかってくる事もある。
清浦夏実 逆に最近私が気になっている物とかを沖井さんに教えたり、という事もしました。
沖井礼二 僕がおすすめするものは60年代のものから、21世紀のものまであるのですが、その中で予想しなかった反応を彼女がする時があります。「何でこれに食いつくんだろう?」みたいな。で、それを並べてみるとなんとなく共通項が見え始めてきて。彼女の世代が僕の聴き方とは違う聴き方をしている事に気づきましたね。
清浦夏実 沖井さんに教えて貰った中でよかったのは、The RAH Band(80年代イギリスのバンド)とかですね。可愛い感じがしました。
沖井礼二 それもわからなくもないのだけど、「そこに反応するのか」と思いました(笑)。それから60年代のモータウンに食いついてみたりとか。他にも色々。彼女から紹介してもらったものでは、シンリズム君とかTomgggとかですね。彼らは多分、僕らの世代がレコード屋で探していた様な感じじゃなくて、YouTubeでばっと捕まえてくる。彼らの音楽は、ジャンルで上手く言えないのですが、ポップにできていて、僕らでは思いつかない様な物。キラキラしていて人工感もありながら、可愛いところもある。方法論は違うけど、僕がポップスという物に思い描いていたものを「若い人が高い完成度で作っている」と知らしめられましたね。とても勉強になりました。
――ある種のジェネレーションギャップを埋める所から始まったと?
沖井礼二 埋めようとはしなかったですね。
清浦夏実 もはや理解できないかも(笑)。
沖井礼二 「理解し合えない」という事を、理解し合ったみたいな感じです。でもそのジェネレーションギャップが「驚きの源泉なんだ」という事をお互いにわかったので、それを逆に利用しようというところはあるかもしれません。
清浦夏実 これは他のバンドにはない強みだと思います。
沖井礼二 楽曲作りはお互いの作ったメロディを広げていって、というのもありますが、ワードで連想していく方法もあります。今回のミニアルバムで言えば「悪い大人のワルツ」という曲があるのですが、「『悪い大人のワルツ』というタイトルを思いついたので、ワルツを書いてください」と彼女からメールが来て。それで、「ワルツを書くかどうかは別として『悪い大人のワルツ』というワードは凄く格好良いな」と。結果的に3拍子系の楽曲を書きました。
清浦夏実 なので曲先というのもあるしワード先というのもある。テーマとかトピックとか。
沖井礼二 そうだね。ワード先は結構多いし、好きだよね。1stアルバムでも「『あなたにはがっかり』という曲で始めようぜ」という話もしていましたし。その時は僕が提案したんですけど。タイトルとかワードがあると、そこには背景とか風景を想像するじゃないですか。そこにBGMを付けるのが多分好きなのでしょうね。言葉に対してのサウンドトラックみたいな。
――お2人のユニットですが、ライブは基本バンドセットなのでしょうか?
沖井礼二 基本的にバンド編成でやっています。
清浦夏実 サポートメンバーも入れて。
沖井礼二 会場の関係とかで色々な形態があるのですが、今一番多いのはドラム、鍵盤、僕がベースとボーカルの4人編成ですね。それで大音量みたいな。少し前はもう1人鍵盤とギターが入ったり。
清浦夏実 サポートメンバーは沖井さんと私が昔からお世話になっている人の混合バンドみたいになっていますね。
沖井礼二 ライブにジェネレーションギャップとか、美意識の違いは感じていませんね。
清浦夏実 作品を作る段階で、美意識みたいなものの折り合いはついているので。そこをどうライブのアレンジとして膨らませていけるか、凝縮していけるかという作業をしています。いかんせん、TWEEDEESの曲は難しいなと私は思いながらやっています。
沖井礼二 プレイヤーの全員が難しいですからね。
清浦夏実 なので皆一生懸命やっています(笑)。
沖井礼二 1番最初にライブをやった時は事前に5時間のリハーサルを12、13回やりましたね。でも、出来る様になればリハの回数も減りますしね。それはどのバンドでも同じだと思います。ただ、皆初めてやる曲じゃないですか。作った僕らも初めてやる曲です。TWEEDEESがどうなっていくのかというのは、やってみないとわからないという感じはありました。譜面を渡してすぐできるような曲じゃないです。決まり事も多いし。そこは苦労しましたね。
――お客さんの反応はいかがでしたか?
沖井礼二 どうなのでしょう。我々としても「これがTWEEDEESです」と、とにかく力一杯やる以外はない訳です。以前の僕や、清浦の活動というものを追いかけていて、思っていた物と違うと思った人もいたかもしれませんね。「別物だけど、よかった」という人も勿論いたと思います。でもこちらには直接感想が入ってこないですからね。もちろんエゴサーチはしますが。ツイッターとかだとネガティブな意見はあまり返ってこないから(笑)。
清浦夏実 お客さんに対して何を思うかというのはあまりなくて。始めて3年になりますが、それぞれの元々やっていた活動とTWEEDEESは違うものになってきているのだというのは徐々に理解して貰えているのかな、というのも感じていますね。
沖井礼二 Cymbalsを知らなかったりとか、清浦のソロ活動を知らなかったファンも結構増えてきています。それは望ましい事でもあるのですが。大学生くらいの子が意外と増えてきていてありがたいですね。一番聴いて欲しいのはそれくらいなので。
TWEEDEES2017年のモード
――それでは新作『a la mode』についてもお伺いしたいです。
沖井礼二 これも先にアルバムタイトルがあってから曲になりました。
清浦夏実 このタイトルは私が出しました。
――意外です。90年代っぽい感覚の言葉だなと感じたので。
清浦夏実 全く意図はしていません。
沖井礼二 アルバムの最後に「プリン賛歌 ~20th a la mode edition」が入っています。「プリンだからアラモードだろ!」という感じだった(笑)。
清浦夏実 アニメ『おじゃる丸』が20周年という事で主題歌の「プリン賛歌」をカバーしています。副題を付けなきゃいけなくて「a la mode」という言葉が浮かびました。でもこの言葉はTWEEDEESに似合っているから「アルバムタイトルにしちゃえば良いんじゃない?」というところからスタートしたのです。
沖井礼二 意味合いも「最新型の」とか、「最先端」とかなので。我々としてもこれまでフルアルバムを2枚出してきて、新しいモードに入ってきている感触があったのでぴったりだなと。今までTWEEDEESは「我々が考えるところの王道ポップスをやる」と考えてはやっていました。でもそれを探り探りやってきて、何となくその尻尾を掴んだ感触というものが、2ndアルバムを録り終えた頃からあって。段々と構想も出来てきたので、それを形にしたかったんです。
そのタイミングで『おじゃる丸』が20周年で「プリン賛歌」をカバーする事になりました。全てはここから始まったんです。やるからにはただのカバーじゃなくて、きちんとTWEEDEESの音楽にしなきゃ駄目じゃないですか。でも曲自体はメロディが綺麗な曲なので、どうアレンジしても「良い曲」になってしまうんですよ。これはエグいくらいTWEEDEESにしなきゃ駄目だなと。番組プロデューサーも「好きにやってください」という感じだったので心強かったです。それにあたって、僕らの音楽というものを客観的に見直せました。その上で「ミニアルバムを作る」という話だったので、今までの作品とは違うものになりましたね。
清浦夏実 「シティポップが流行っている」という時代の流れは理解しているのですが、そこに投げている訳ではなくて、TWEEDEESはTWEEDEESに投げているわけなので。意外とそういう作為が少ないバンドだなと思います。
沖井礼二 「これが流行っているから、これをやる」という感覚はないですね。これが流行っているからというので制作すると、リリースするタイミングにはもう流行遅れ。多分健全に生活していれば、2017年6月の空気を吸っている訳なので「今我々が何を聴きたいか」という感覚の方が近いと思います。
――<マロは>とか<たも>など雅な言い回しがTWEEDEESの音楽に合っていました。
清浦夏実 あれはおじゃる丸の気持ちの歌なので、最初どうやって歌おうかなと思ったのですが、監督が「ワガママに歌ってほしい」と。NHKだし、教育だし母性を持った感じで歌。歌のお姉さん的に。そうしたら「そうじゃない」と言われてしまって。「おじゃる丸は、5歳児でワガママで、プリンがとにかく大好き。そういう気持ちを前面に出してほしい」と指示を受けて、ニュアンスを変えたらOKを貰えました。
沖井礼二 ボーカルは音程とか色々ありますが、結局は“役者魂”だと思います。ただ音程が良いだけで、無表情な歌手もいる。彼女は芝居に長けた人だったので、その時の監督のディレクションに対する反応は僕もびっくりしました。しかも清浦夏実らしさを失わずに、きちんと役に引き寄せたなと。
清浦夏実 TWEEDEESの曲として違和感のないものにしたかったですし、20年前の曲をカバーさせて貰ったので、それを上回るものにしもしたかった。プレッシャーは相当ありましたね。
沖井礼二 今回の我々のアレンジはオリジナルとBPM(テンポ)は同じです。「同じBPMでビート感をどれだけ今に引き寄せる事ができるか」という挑戦はしています。
ペンが止まらなくなっていた
――他の曲はいかがですか?
沖井礼二 最初に作ったのはどれだったかな? 今回のアルバムはどれも並行して作っているので。「君は素敵」の原型は去年の秋にはあったよね。あとは「Birthday Song」が一番最後に出来たっていうのは覚えてる。あれはまだできて1カ月くらいしか経ってない。
清浦夏実 最後の2カ月に凝縮されています。
沖井礼二 レコーディングが始まっても僕は曲を作り続ける。「もっと良い曲ができるかもしれない」と思うので。関係者の人からも「本当に出来上がるんですか?」とか言われながら(笑)。
清浦夏実 でも曲をつくるのは沖井さんだから、私もわからないです。毎日状況が変わるので。「どうなるんだろう?」という感じで、最後の1週間まで気が抜けなかったです。
沖井礼二 なので、どれが最初にできたか、という印象はあまりないです。印象に残っているのは何かなあ。先ほども話しましたが、「君は素敵」はメロディは去年の秋の時点で思いついていました。2人とも気に入っていたのですが、「もっと良い曲になるはずだ」と思ってAメロとBメロを何パターンも作りました。ギリギリまでやっていましたね。
清浦夏実 考えすぎてましたよ、あれは。
沖井礼二 それで結局「私、一番最初のバージョンが好きでしたけどね」という一言で、「そうかなあ、そうかもしれない」と録ったのが結果的に良かったのは印象的ではありました(笑)。
――その何パターンかのメロディというのは曲として綺麗に繋がりますよね。優劣というのはどこでつくんですか?
沖井礼二 それを上手く説明できれば良いのですが。楽曲提供も色々とやってきて、「こういう曲を作ってください」というものがあるとするじゃないですか。そこで与えられたイメージとかで曲を作って判断するのは、クライアントなわけです。でも自分達のバンドだと、自分達で判断しなければいけないではないですか。Bメロが7パターンできても、明らかに「こっちの方が良いよね」ということがある。でも、それは上手く言えないですが「今のTWEEDEESのモードがそれなんだ」としか言い様がないと思います。
清浦夏実 「君は素敵」に関しては、肯定的な歌詞が書けて自分でも良かったなと思っています。ボーカルとコーラスの歌い分けも上手くできたなと。
沖井礼二 僕としては割と1stアルバムで「月の女王と眠たいテーブルクロス」というTWEEDEESの象徴的な楽曲があるんです。作曲者として、同じ主人公に登場して欲しかった。「歌詞の中に同一人物が存在するか、同じ世界観で」とお願いしていたわけです。
清浦夏実 それを作詞し終わった後に言われて、7割ほど書き替えました(笑)。あと1週間しかないという焦りもありながら…でも最初に書いたものよりも良くなりました。私的には「君は素敵」が一押しかなと思います。
沖井礼二 僕は「Birthday Song」が好きですね。一番最後に思いついたからというのもありますかね。その頃は自分でも訳がわからなくなっています。制作の終盤は変な脳汁が出てるから、変なところで転調していたり、何でそんな動きなんだ? とか今聴くと思う。結構自動操縦で作っているところがあるので、今聴き直しても驚きが多くて。その興奮が冷めやらないのかもしれません。
――歌うには難しい曲も多いと感じました。
清浦夏実 頑張らなきゃいけないですね。特に「未来のゆくえ」なんてプログレかと思いました。「Birthday Song」が自動操縦でできた曲だとすれば、「未来のゆくえ」は沖井さんの今まで培ってきた技術が集結しているような気がします。ノックアウトされます。
沖井礼二 ちょっと話が逸れますが、「この時期にミニアルバムを出したい」と提案したのは僕です。フルアルバムを2枚出して、来たるべき3枚目を出したいのだけど、その前に、1度自分を客観視したものを、シングルでない形で出したかった。ただ「2017年のミニアルバムは90年代のそれとは違うよな」と思っていたので、「全部新曲のベスト盤を作ってやれ」と考えました。
それはフルアルバムじゃできない事なので。ストーリーとか緩急とか考えずに全力疾走で。それでそのアルバムが出るのが6月。それをイメージして出てきたのが、「未来のゆくえ」のあの転調とメロディとリズムです。筆が止まらなかったですよ。「ポップスを作ろう」という想いが強すぎて、結果的にポップスからはみ出した感じです。
――ボーナストラックの「PHILLIP -TWEEDEES ONLY ver.」も素晴らしかったです。
沖井礼二 2ndアルバムでムハンマド・イックバル(日本のシティポップに影響を受けた、インドネシアのバンドのボーカル)とデュエットするという話があって、そこから着想を得た曲です。外からの刺激があると新鮮で楽しいですね。
――海外ではチャートを見ると、ほとんどに客演が入っていますが、それについては?
沖井礼二 90年代とかに比べて、ジャンルの壁はどんどん無くなっているじゃないですか。やっている方はそう感じていて、逆にお客さんの方が「私はこういう音楽が好き」という感じで閉じている印象もあります。その細分化を飛び越えたい人も演奏者で増えているので、飛び越える方法として最適な、客演は今後増えていくでしょうね。
清浦夏実 歌う側としても楽しいですね。TWEEDEESの2人では出せない事が出来るというのは面白いです。勿論、出張も楽しいですし。そういうコラボレーションはどんどんやっていこうと思っています。
沖井礼二 うん。やれたらいいね。
TWEEDEESの関係は未来社来のモデル
――ライブも決まっています。
清浦夏実 はい。まず7月に2マンイベントを企画しています。『Victoria’s Circus Vol.2』というものです。8月からは東名阪をまわる『ショウほど素敵な商売はない~「a la mode」TOUR2017』が始まります。『a la mode』の曲も、今までの曲もてんこ盛りでやりたいと思います。
沖井礼二 もうリハーサルも始まっています。バンドとしての季節も変わるので、やり慣れた曲も表情が変わってきますね。新しい曲でも簡単そうなもので難航したり、レコーディングとは違う作業なので、頑張りたいと思います。その場の空気で変わりますから。会場によってテンポが変わる曲も当然ありますし。演奏中にテンポを上げる時もあります。それはバンドだからできる事ですよね。
そういう意味ではこの前、ポール・マッカートニーのライブを観に行きました。あの人はイヤモニ(イヤー・モニター:耳に付けて自分の音を聴く装置)を使わない。全部生でそのままやっている。今はバンドの演奏だけでなく同期(生演奏に合わせて、演奏する打ち込みの音)を使う現場も多いですが、彼は全く使わない。
清浦夏実 気にしすぎない事にしようと思いました。自分を信じようというか。「ポール・マッカートニーがそうやっているなら、我々もそこを目指すべきだな」と感じました。イヤモニを否定するわけではないのですが。
沖井礼二 ライブだからこその融合感ですよ。ライブハウス位の大きさだったら当然そうでなければいけないけど。大きな会場になると演出が入ってその中で、「自分のやるべき事をこなす」という事になりがち。でもポールはそうではなくて、ライブハウスでやることをそのままやっていた。それが驚きでした。
――最近気になっている事などはありますか。
清浦夏実 去年から急に山に登るのが好きになりました。先週も行ったし、一昨日も行ってきました。山は裏切らないですよ(笑)。こういう仕事していると、理不尽な事もあったりします。でも、一歩一歩、歩いていけば山の頂上にたどり着ける。それが凄く楽しい。最初はずっと1人で行っていたのですが、ようやく最近登山仲間ができました。
沖井礼二 僕はまた最近になって、レコード集めに火が付きましたね。それは昔みたいに音楽を分析している様な感じではなくて、もうちょっと趣味に近い感覚なのが不思議です。あとは英国の事ばかり考えています。
90年代はレコード集めに、新宿・渋谷に散々行きましたね。「世界で1番レコード屋の密度が高い街」と言われていました。毎日毎日レコード屋に行っていたのですが、手ぶらで帰るのが嫌だった。だから、着ぐるみの中に入るバイトをしながらレコードを買うお金を稼いでいました(笑)。
本当にヴァイナル(レコード)ジャンキーが渋谷をウロウロしていて、喋ったりはしませんが「こいつ、またいるな」と。そういうものがあの頃の文化を創っていたのだなと思います。
今そういう場が無くなっていまいましたからね。レコード屋自体も減っていますし。それを無くしちゃいけないという人たちも最近沢山います。そういう人達と最近友達になったりしています。それもまた僕がレコードに興味を持ったからだと思う。当時は参考にしたくて聴いていたのですが、今は純粋に聴きたくて買っている感じが楽しいですね。昔は音の質感とか気にしなかったのですが、今は音の質感が好きで聴いています。
僕自身、ずっと「MP3で良いじゃん」と思っていました。ところがTWEEDEESのアナログ盤を出した時にびっくりして。久しぶりに針を交換して聴いたら、アナログ用にマスタリングしたわけではないのに、音が良いということに驚きました。昔はその違いがわからなかったのです。今はそれがわかる様になってどんどんレコードを買っていますね。
清浦夏実 沖井さんが面白がっているのを見て、私もレコードデビューしました。レコード屋さんってどこに行っても敷居が低くて志が高い感じです。皆親切だなと思います。お店のカラーとかを感じるのも楽しいですし。
――こういう関係って良いですよね。世代を超えたコミュニケーションは今日本で失われている気がするので。TWEEDEESの関係性は社会のモデルになる様な気がします。
沖井礼二 見出しが出ましたね(笑)。冒頭にも話しましたが、世代差というのはTWEEDEESにとって大事な要素なのかなと思います。
清浦夏実 それに素直ですよ。沖井さんも私も。
沖井礼二 20代の女子に素直って言われている(笑)。
清浦夏実 違う違う、褒めているんですよ。お互いに良いと思ったものを素直に受け入れられるから成立しているのだと思います。意外と年代差はありながらも、バンドをやる時はフラットにしてくれています。
沖井礼二 僕はもうすぐ50歳になります。でも、ポップスは若い人の音楽なので身近に良いサンプルがいるというのは良い事ですよ。
清浦夏実 私は沖井さんがいる事で近道できていると思っています。色んな知識を自分でアーカイブしていくのではなくて、彼から取って飲み込んで、というショートカットが出来ている。だから利害関係も一致していると(笑)。
(取材=小池直也)
作品情報
TWEEDEES mini album 「a la mode」(アラモード) 6月21日 リリース COCP-39984 2200円+税 M1.未来のゆくえ |