かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホールでライブをおこなったザ・クロマニヨンズ(撮影=柴田恵理)

 4人組ロックバンドのザ・クロマニヨンズが19日に、東京・かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホールで、全国ツアー『ザ・クロマニヨンズTOUR BOMBOROLL 2016-2017』東京公演をおこなった。昨年11月2日にリリースした、通算10枚目のアルバム『BOMBOROLL』を引っさげて、同月17日の長野・CLUB JUNK BOXから今年4月22日の福岡・石橋文化ホールまで全国56公演を展開。55公演目となったこの日は同アルバム収録曲全曲に、「タリホー」や「ギリギリガガンガン」などの楽曲を加え、アンコール含め全23曲を熱演。ロックアイコンに相応しい、衝動的なエネルギーに満ち溢れたパフォーマンスで、オーディエンスを魅了した。東京公演の模様を以下にレポートする。

演奏を楽しんで行ってくれ!

ライブのもよう(撮影=柴田恵理)

 ご機嫌なロックンロールナンバーがBGMとして流れるなか、シンフォニーヒルズに続々とオーディエンスが入ってくる。会場は名前の通りオーケストラにも対応したホール。この場所でザ・クロマニヨンズの4人が、数分後には爆音を奏で大暴れすることを想像すると、ライブハウスとは違った期待感が高まっていく。

 定刻を少々過ぎたところで、前説をおこなうスタッフ。注意事項を喚起しながらも、オーディエンスのテンションを煽り立てていく。「ロックの真の宝物を見つけ出してください」の言葉をきっかけに会場は暗転。マジシャンの姿に変身したスタッフが、マジックを披露する。そのマジシャンによって、ステージ中央後方に掲げられた『BIMBOROLL』のアルバムアートワークが巨大化すると、SEが響き渡り、メンバーがステージに登場した。甲本ヒロト(Vo)は手でシャツを自力でなびかせ、強風に煽られるようなパントマイムで、ステージ中央まで歩んでいく。

 ライブは疾走感溢れる「おれ今日バイク」で幕を開けた。ヒロトによる、バイクのアクセルを吹かすパフォーマンスが、ライブの加速度を上げていく。会場のテンションは序盤からアクセル全開で突っ走る。一体感のあるシンガロングが包み込んだ「光線銃」、曲名通り、まさに“最大限”のパフォーマンスが高揚感を煽った「マキシマム」、街中で見た車にインスパイアされて生まれた楽曲「デトマソパンテーラを見た」と、ニューアルバムから4曲立て続けに披露。

 MCではヒロトは「かつしかな娘ですけど…」と“ふつつかな娘”と掛けたダジャレで会場を沸かせるも会場の反応をみて「MCは料金には入ってないので、演奏を楽しんでいってくれ〜!」と投げかける。そして、「ハードロック」へと突入する。天井から電飾が数十本登場し、星のように瞬くなか、ラウドなビートに、真島昌利(G)のソリッドなギターサウンドが絡み合う。

 言葉のリフレインが快感を与えてくれた「モーリー・モーリー」、小林勝(B)がブリっとしたベースサウンドを放つと、会場からは大歓声。それを受け「スピードとナイフ」へ。真島のサステインの効いたギターソロもスパイスに。オーディエンスのシンガロングが更に大きく響き渡り、一体感は増していく。そこから、<Ah〜>とヒロトの雄叫びが会場を震撼させた「ムーンベイビー」と、エンディングのヒロトによるブルースハープの音色もアクセントとなり楽曲を彩った。

 2度目のMCでは、この地が葛飾ということもあり、映画『男はつらいよ』の寅さんネタでオーディエンスをイジる場面も。そして、「最高の時間を楽しんでくれ!」と、ヒロトのエモーションあふれるパフォーマンスが光る「ナイアガラ」を披露した。タイトルのごとくスケール感の大きなサウンドは大地を揺るがすよう。そして、レゲエチックなサウンドで聴かせた「焼芋」では、ストレートなロックサウンドとはグルーヴを変え、オーディエンスをまた一味違った世界観へ誘った。

 真島のセクシーで表現力豊かなリードフレーズが楽曲を彩った「誰がために」。ピッキングハーモニクスを混ぜたり、ビブラートでギターを歌わせていく。一分の隙もないギターソロはオーディエンスの耳を引き寄せるようだった。「ピート」では華麗に回転したり、先ほどのソロとはまた違ったアバンギャルドな奏法で魅せる真島。会場を視覚面でも楽しませる。

もうひと暴れ!ふた暴れ!!

ライブのもよう(撮影=柴田恵理)

 ここでシャツを脱ぎ、上半身裸になったヒロトは「ライブは楽しいなあ〜」。下腹部を触りながら、「生まれた時からついてるんだよな。大して役に立たないけど」と軽い下ネタで煽り極上のロックチューン「ペテン師ロック」を披露。ヒロトのエモーショナルでダイナミックなブルースハープが聴くもののボルテージを上昇させる。またホールの響きも手伝って、ブルースハープはゴージャス感あふれる音色だったことも印象的。張り裂けそうなロックサウンドを放出する4人の凄まじい存在感に、オーディエンスも釘付け。

 続いての「エルビス(仮)」では、<オイ!オイ!オイ!!>と会場から響き渡る声。その声をもっと聴かせてくれと言わんばかりに、マイクを客席へ向けるヒロト。「エイトビート」では、ヒロトの築き上げた拳に呼応するかのように、オーディエンスも腕を掲げた。バンドが出すサウンドを全身で浴び、体を震わすヒロトの姿が印象的であった。

 桐田勝治(Dr)がスタンディングでオーディエンスを煽り、始めたのは「雷雨決行」。ヒロトは真島のギターソロ中に、指をメガネのように目元に当てがい会場を見渡す動作。そして、ヒロトと真島の歌声が重なり合い、ハーモニーが会場に広がる。<今日は最高♪>とこの言葉に偽りなし「ギリギリガガンガン」へ。ここに集まったオーディエンスの笑顔が、今日のライブの出来を物語っていた。

 ライブはラストスパートへ。ザ・クロマニヨンズには小細工など必要ない。ロックスピリット溢れるサウンドと、自分たちが「一番楽しんでやる」といった、スタンスから放たれるパフォーマンスは、オーディエンスの心を掴んで離さない。そして、ニューアルバムでも最後を飾った「大体そう」で会場全体を一つにし、本編を終了した。

 手拍子とメンバーの名前をコールするオーディエンス。アンコールに応え再びステージにメンバーがタオルを掲げながら登場。それに合わせオーディエンスもタオルを掲げる。ヒロトは「もう少しやりましょう。もうひと暴れ! ふた暴れ!!」と投げかけ、2ビートのアッパーチューン「笹塚夜定食」を披露。“食い逃げ”のスリリングさをぶつける圧巻のテンション。

 そして、ザ・クロマニヨンズはこの楽曲から始まった、2006年リリースで第一弾シングルの「タリホー」を届けた。そして、<Yeah♪>のコールアンドレスポンスが揺るぎない一体感を生んだ「ナンバーワン野郎!」。聴くものの背中を後押ししてくれる力強いナンバーに、両手を挙げてノリまくるオーディエンス。踏んだアクセルを緩めることなく、アンコール3曲を駆け抜けた。

 4人が照明を浴びステージ前方で立ち並ぶ。オーディエンスの顔を焼き付けるかのように、客席を見渡す。言葉こそないが、今日を楽しんでくれたことへの感謝を伝える。4人への感謝を込めた大きな歓声が鳴り響くなか、東京公演の幕は閉じた。

(取材=村上順一)

セットリスト

『BOMBOROLL 2016-2017』

4月19日 東京・かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール

01.おれ今日バイク
02.光線銃
03.マキシマム
04.デトマソパンテーラを見た
05.ハードロック
06.もれている
07.モーリー・モーリー
08.スピードとナイフ
09.ムーンベイビー
10.ナイアガラ
11.焼芋
12.誰がために
13.ピート
14.ペテン師ロック
15.エルビス(仮)
16.突撃ロック
17.エイトビート
18.雷雨決行
19.ギリギリガガンガン
20.大体そう

ENCORE

EN1.笹塚夜定食
EN2.タリホー
EN3.ナンバーワン野郎!

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