デビュー1周年記念ライブで堂々としたパフォーマンスを披露した欅坂46

 欅坂46が、6日に東京・国立代々木競技場第一体育館で『欅坂46 デビュー1周年記念ライブ』をおこなった。デビューから1年が経ち、瞬く間にアイドルとして大きな飛躍を果たした彼女たちが、その成長ぶりを示すように堂々としたパフォーマンスを披露。派生グループなどの曲を織り交ぜながらこれからの更なる活躍を期待させるステージで観客を魅了した。

 デビューシングル「サイレントマジョリティー」が、この日からちょうど1年前になる2016年4月6日に発売された。以降、オーディションに合格しながら一時参加を辞退した長濱ねる(18)が再度このグループに参加することを決意、これがきっかけで派生グループとしてけやき坂46(ひらがなけやき)が結成された。現在では欅坂46のファミリーグループとして活動を続けており、2グループとも徐々にその活動範囲を広げつつある。そして彼女たちはこの1年で4枚のシングルをリリース、さらにNHK『紅白歌合戦』に初出場する快挙を成し遂げるなど、大きな注目を浴びている。

 彼女たちは昨年末に東京・有明コロシアムで初のワンマンライブを開催。さらに成長した姿を披露すべく、この日を迎えた。会場には1万2000人のファンが、観客席を最前列からフロア、1階、2階席までビッチリと埋めていた。さらには最後列には立見者まで出るなど、その壮観な光景は現在いかに彼女たちが注目を集めているかを表しているようでもあった。

大きな欅の木のオブジェ

会場を埋め尽くす観客と緑のサイリウム

 ステージは、予定より15分と少しの時間押して開始した。暗転とともに欅坂46のライブのオーバーチュアが会場に流れると、そのリズムに合わせてフロアの観衆が皆一斉に「Oh! Oh!」と叫びながら、緑色のサイリウムを振る。1万2000人の観衆による“緑の世界”は、その音圧もあって、圧巻というほかに言葉が見つからない。そしてリズムは、やがて徐々にうねりを上げるノイズ音が響き渡るとともに止まった。ステージ側のプロジェクタには、主要メンバーの平手友梨奈(15)をはじめとしたメンバーの、これまでの道のりを振り返ったインタビュー映像が映し出された。

 インタビュー映像が終わると、ステージには黄昏色の照明が照らされる。この日のステージには大きな「欅の木のオブジェ」がその存在感を示し、その周りには「Happy Birthday」という一文を作るアルファベットが、欅坂46の1周年を文字通り祝い、飾るように配置されていた。そしてインタビュー映像が終わると、会場にはフラメンコを思わせるリズムとハーモニーが会場に浸透していく。オープニングナンバーの「サイレントマジョリティー」のイントロだ。そしてステージ後ろから、スモークに包まれた彼女たちがステージに現れた。

 「サイレントマジョリティー」は、彼女たちのデビュー当時からそのクールなグループのカラーをイメージさせるものとして、周囲から注目を浴びた楽曲だ。<夢を見ることは 時には孤独にもなるよ 誰もいない道を進むんだ この世界は群れていても始まらない>華やかなイメージを受けがちなアイドルという世界と比べると、その詞のちょっと“ドキッ”としそうなイメージにギャップを感じられる。かつて“ギャップ萌え”という言葉が流行したが、それと似たイメージでもあるように感じられる。

 しかし、全員でこの言葉を紡ぎ華麗に舞いながらも、真剣な表情を見せる彼女たちの姿にはそんな簡単な言葉では済まされない、何か聴く者、見る者が強烈な引力で魅かれるような、特別な魅力が感じられる。ルックスや歌声から見られる可憐な彼女たちの、重苦しさすら感じられるシリアスで複雑な思いのようなもの。歌が持つその本来のイメージを、1年を経て彼女たちはすっかり自分たちのイメージとして確立したようだ。

彼女たちのグループとしての個性

堂々としたパフォーマンスを披露した平手友梨奈

 「手を繋いで帰ろうか」では、一気に明るい雰囲気に。詞の中には恋心や、若き日の初々しい心持ちなど、きらびやかな青春のイメージが描かれる。さらにキャプテンの菅井友香(21)と守屋茜(19)が、お互いに想いを持った者同士の振る舞いを演じて詞に描かれる世界観をより鮮明にしていく。次に欅坂46の現メンバーとして最後に加入した長濱を表しているような「乗り遅れたバス」、平手のソロで披露される「山手線」、今泉佑唯(18)と小林由依(17)のアコースティックユニット「ゆいちゃんず」による「渋谷川」、そしてクラシカルなストリングスの前奏から「キミガイナイ」へと、流れるようにステージは進んでいく。

 ここまではデビューシングル「サイレントマジョリティー」に収録された楽曲が披露された。続いて披露された「ひらがなけやき」は、セカンドシングル「世界には愛しかない」の楽曲で、初めてけやき坂46の担当する歌として収録されている。この楽曲以降はリリースされたシングルの順に、その収録曲とタイトル曲といった形で順に披露するセットとなった。

 こうして並べて聴いてみると、セカンドシングル「世界には愛しかない」、サードシングル「二人セゾン」、最新シングル「不協和音」それぞれのセクションで、その構成にグループとしての色が明確に示されているようにも見える。それぞれのセクションに欅坂46としての曲、けやき坂46としての曲、さらにはソロやゆいちゃんず、あるいはスペシャルユニットの楽曲と、グループとしてのスタイルも確立されている。これから新たにリリースされるシングルや曲に対しても、新たなユニットの構成を楽しみにできるとともに、一方で明確なスタイルを打ち出していることで、改めて「欅坂46」というグループの色を強く感じることができる。

 またそれぞれのセクションの楽曲には、近年主流となっている四つ打ちのリズムを主体としたダンサブルなカラーの楽曲と対照的に、70~80年代の日本で流行した「ニューミュージックムーブメント」で見られたような、どこか懐かしいリズムやメロディ、ハーモニーを感じさせる色が感じられる。そんなスタイルを何の不自然さもなく自分たちのパフォーマンスとして披露できているところに、彼女たちが強い個性が光っている所以が存在するようにも感じられる。

 一方で20曲目の「エキセントリック」では、グループ全体でのパフォーマンスとして初めて全員ストリートファッション、制服以外の姿で、ヒップホップ系のダンスを見せるなど、新たな一面も見られた。

ライブ全編から見えた欅坂46の本質

欅坂46

 この日はライブ本編で全25曲を披露、ラストは最新シングル曲「不協和音」。クライマックスを目前に、彼女たちの目が鋭い光を放つ。<不協和音を 僕は恐れたりしない>その詞に描かれた世界は、1曲目の「サイレントマジョリティー」を髣髴とさせる。デビューから1年の期間を経て、彼女たちは自分たちのいろんな姿を、彼女たちなりの形で表現することに挑んできた。

 その結果こそが、この日これまで披露した楽曲、ステージングに現れ、彼女たち自身が何者であるかを強く物語る。そして中盤の楽曲を中心に、ちょうどオープニングナンバーと対照的な位置にあるこの楽曲は、欅坂46の本質を強く表現しているようにも見えた。

 彼女たちは最後のポーズで、欅坂46の象徴的なマークである三角形を形作った。これまで彼女たちの一挙一動に注意深く反応し、興奮を高めていた観衆は、この日一番の歓声を上げ、彼女たちを称えた。さらに観衆のアンコールに応え、登場した彼女たちは欅坂46、けやき坂46合わせて登場し、この日を迎えた感謝の気持ちを語るとともに、新たに2年目を迎えることへの決意を表しながら、最後に昨年の初ワンマンでも披露された「WーKEYAKIZAKAの詩」を披露し、この日のステージを締め括った。

 この日は緊急告知として、けやき坂46のメンバー増員を目的としたオーディションが、今夏におこなわれることが発表された。サプライズでその発表を受けたメンバー一同が驚きの声を上げる中、けやき坂46の佐々木久美(21)は「たくましい先輩になれるように、これからもっと頑張ります」と突然のことに驚き、少し震えたような声ながら、しっかりとその決意を言葉にした。

 その言葉を菅井は優しくフォローした。その様子は、ちょうど自分たちがデビューした時、そしてけやき坂46が誕生し、欅坂46はグループの先駆者として、同じような思いをしたことを思いだしてのことのように見られた。そんな彼女たちの姿には、けやき坂46の曲「ひらがなけやき」の一節のイメージが浮かぶ。<一本の欅から 色づいていくように この街に 馴染んでいけばいい>それは、まさしく新たな時を迎えた彼女たち自身に向けられた提言のようにも見えた。(取材=桂 伸也)

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