内田真礼、新たな「思い出」を更新した2日間のワンマンステージ
代々木第一体育館でワンマンライブをおこなった内田真礼
声優、歌手、女優の内田真礼(うちだ・まあや)が2月25日・26日、東京・渋谷の代々木第一体育館でワンマンライブ『Smiling Spiral』をおこなった。
2009年に声優としてデビューした内田は、2014年放送のアニメ『悪魔のリドル』のオープニングテーマ「創傷イノセンス」で歌手活動をスタートさせた。さらに一大アニソンイベント『Animelo Summer Live 2015 ~THE GATE~』に出演を果たし、2016年には初のワンマンライブを東京・中野の中野サンプラザで開催。シンガーとしてデビューしてから今までにフルアルバムとミニアルバムをそれぞれ1枚、さらに4枚のシングルをリリースと、着実にそのキャリアを積み上げている。今回おこなわれた代々木第一体育館は、5000人規模の大きなホールであり、まだ2回目のワンマンステージであることを考えると、異例のライブとも思えるが、1月に急きょ追加公演が発表され、25日・26日とツーデイズ開催となったことからは、いかに沢山の根強いファンが彼女のステージを待っていたのかがうかがえる。2日間のステージで動員数は1万3000人にものぼったというこのライブ。今回は2日目、26日におこなわれたステージの模様を以下にレポートする。
様々な才能を開花させる一方で、距離の近さを感じさせる親しみ
ステージから入り口まで縦に長く伸びたフロア、そしてそれを両側から挟む1階席、2階席。ステージからは、その縦方向に向かって花道が伸びており、その途中、会場の中心に当たる位置に丸いステージが開かれている。そのガイドラインは、鍵穴のような軌跡を描いている。2階構成になっていたステージに彩られたカラフル色彩と、会場に流れていた「C’mon Everybody」や「のっぽのサリー」などの60’sのスタンダードが人々を、どこか懐かしくも、ポップでワクワクするような空間に誘っていた。
ステージ開始前、会場のスクリーンには内田のプライベートを追う特別映像が流れた。「内田真礼の『SA寄ります』」と題されたその映像は、まだ車の運転に慣れていない内田が、車に乗って高速道路のサービスエリアに寄るという他愛のないもの。しかし、料金ゲートを抜け高速に入った際にみせた焦る表情には、どこか人を楽しくさせるような笑顔が垣間見える。無事サービスエリアに到着し、ホッとした表情を見せる内田に、まだステージも始まっていないのに会場のファンは大きな拍手を送る。様々な才能を開花させ、心境著しい内田だが、その一方で、どこか距離の近い親しみを感じさせる一面だ。
定刻を10分ほど過ぎたころだろうか。会場は暗転、そして再び照明の明かりが照らされたステージでは、バックバンドのメンバーが、SEで流れた60’s的なナンバーをインストで披露。ひとしきりプレーが終わると、スクリーンにはライブのタイトル『Smiling Spiral』の文字が映し出される。そして再び演奏が始まると、ステージ1階の真ん中の扉が開き、中から沢山のダンサーが飛び出し、それについてアメ車の上に立つ内田がいよいよ登場した。その車に乗って、内田は花道を通り中央ステージまで進んでいく。真っ白にところどころ赤いチェックのデザイン、そして頭には大きなリボン。その白のイメージに合わせて、会場は白のサイリウムで塗りつぶされた。
ステージ上はさながらお祭り騒ぎ、興奮は最高潮に
1曲目の「Shiny drive, Moony dive」からすでに会場は異常なほどの興奮に包まれていた。「内田真礼 2nd LIVE Smiling Spiral! 今日はみんなで楽しんでいくよ!」内田は叫んだが、それをいうまでもない、といわんばかりに観衆の大きな歓声が内田に返される。サーフソング的なノリ、後ノリ8ビートと、内田のこの日の衣装ともあいまって、ここは60年代のアメリカのダンスフロア。ウキウキが止まらないとばかりに、はじける様な笑顔を360度すべての観衆に振りまく。「みんな元気かい! 私も元気だよ!」「ライブ、みんな楽しんでくださいね!」。その言葉のたびに大きな歓声で返す観衆。さらには内田が早くもコールアンドレスポンスを呼び掛けるなど、その興奮は高まるばかりだ。
そしてMCの後はフッとステージから消えたかと思うと、続く曲とダンサーの登場に合わせ、内田は黒のドレスに。4曲目の「Resonant Heart」からは、ストレートに疾走するようなナンバーが続く。激しく波打つようなフロア、そしてスタンド。ついにはカーゴに乗ってフロアを移動し、さらに観衆との距離を近くする内田に、観衆の興奮はこれでもかといわんばかりに高まるばかりだ。しかし「創傷イノセンス」ののちに、ダンサーたちによる幻想的なダンスパフォーマンスが終わると、内田は全身白に花柄をあしらったドレスで登場。「Moment」からはバラードやソフトなサウンドを披露、元気なだけではない、また違った自分の一面を見せる。前日のライブを振り返りながら、内田は語った。「今日はね、昨日より落ち着いていますよ。昨日は最初『フェスかな?』と思ってた。でも今日は『私のライブ』です!」多くの観衆に支えられて今、この場にいることを改めて実感する内田。その感謝の気持ちを表すかのように、アコースティックアレンジによる「Life is like a sunny day」へ。
そしてステージも後半に入り佳境に近づいてきた。一度内田がステージからはけると、ステージには小太鼓、大太鼓、そして小鼓の和太鼓アンサンブルが登場する。和のセッションの展開に看守も最初は困惑気味だったが、徐々に盛り上がりを見せるそのプレーに、徐々に手拍子を送る。そして、そのリズムに合わせさらに演奏は始まり、この日様々な衣装へ早着替えでも観衆を楽しませていた内田は、次は着物を彷彿させる白の襟巻きを巻いたドレスで再び登場する。着物や忍者のようなスタイルのダンサーもステージを盛り上げ、ステージ上はさながらお祭り騒ぎのよう。さらにはバックバンドのメンバー紹介からインストナンバーのプレーを挟み、「ラストスパート、始めます!」という一声で、会場の興奮は再び最高潮に達した。
新たな「思い出更新」を目指して
いよいよライブもクライマックス。「Hello,1st contact!」「ギミー!レボリューション」と、内田のファンにはたまらないキラーなナンバーがさらに興奮を煽っていく。サビのメロディからキメまで知り尽くしたファンたちのサポートが、内田の歌声をさらに大きく、楽しいものにしていく。そして、ラストナンバー「Smiling Spiral」へ。まさにこの日のライブのテーマを表すかのように、内田も、ダンサーたちも、そして観衆も、すべてが「Smiling Spiral」に包まれていた。サビの言葉が、内田の歌からも、観衆の歓声からも聞こえる。お互いの言葉が、お互いの気持ちをさらに高ぶらせる。そしてエンディング。
「ありがとうございました!」その言葉とともにステージを去った内田。そして鳴り響くアンコール。再び登場した内田は、5枚目のニューシングルリリースが決定したことを発表しつつ「楽しくて楽しくて、我を忘れてしまった…」と絶句しながら、この日を迎えるにあたって実は不安を抱えていたことを明かし「でも、ステージが終わっちゃうの、嫌なんだ」と、一抹の寂しさを見せる。そしてここまで自身を支えたスタッフ、観衆への感謝を述べながら、アンコール最後のナンバー「Hello, future contact!」へ。最後は観衆とのコーラスもしっかりと決めエンディング。しかし「もう1回!」「もう1回!」とアンコールをせがむ観衆に向け、予定のなかったセカンドアンコールを実施。「最高の2日でした! 本当にありがとう!大好きだよ!心からみんなのことを愛しています!」内田はそう叫び、再び「Smiling Spiral」を披露する。「みんな、またね!」最後の内田の声とともに、2日に渡る内田のステージは、幕を閉じた。
演奏が終わってもステージ右、左、そして花道の一番先へと、手を振り観衆への感謝の気持ちを表す内田に、観衆は<You can do it!ガ・ン・バ・レ!>と「Smiling Spiral」の一節を連呼し、内田への思いを伝えていた。「幸せはね、積んでいけるんですよ、思い出は更新できる」アンコールの際、内田は語った。そしてライブ終了後、スクリーンには「思い出更新!!」と内田が書いたメッセージが映し出されていた。多くの観衆に支えられ、この日を迎えた内田。「あっという間のライブだったな!」ライブが終わり、家路につこうとしていた観衆の一人が語っていた。きっと次の更新も、そう遠く待つこともなく訪れるに違いない、彼の一言は、間違いなくそうだろうと思わせてくれるような一言だった。
(取材=桂 伸也)
セットリスト
『内田真礼 Smiling Spiral』 2017年2月26日 @東京・代々木第一体育館 01 Shiny drive, Moony dive encore 2nd encore |