ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

 世界的に権威のあるロックの祭典『THE CLASSIC ROCK AWARDS 2016 + LIVE PERFORMANCE』が11日、東京・両国国技館で開催された。世界に名だたるミュージシャンが一堂に会し、豪華共演を果たした。米ロックバンド・メガデスのデイヴ・ムステインと歌舞伎役者の尾上松也が総合司会を務め、アワードの授賞式に加え、ライブパフォーマンスがおこなわれた。さらに、スペシャルバンドによるセッションや、受賞アーティストによる気持ちの入った圧巻の演奏でオーディエンスを魅了した。エリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並び、世界3大ギタリストの1人と呼ばれる、ジェフ・ベックも、当日来場した、ジミー・ペイジとの共演は残念ながら果たされなかったが、「Beck's Bolero」など3曲を披露した。

Cheap Trickが「The Showmen」を受賞

 小雨が降るなか、両国国技館には、ロック界のレジェンド達のセッションを楽しもうと多くの人が詰めかけていた。定刻を20分ほど過ぎたところで会場が暗転すると、巨大な和太鼓と笛の音色が鳴り響き、そこにロックギターサウンドが加わり、和と洋のミクスチャーサウンドがオープニングを盛り上げた。さらに、司会の尾上松也による前口上がおこなわれ、『THE CLASSIC ROCK AWARDS 2016』の幕は開けた。

 もう1人、司会を務めるメガデスのデイヴ・ムステインに紹介された1つ目の賞は「The Showmen」で、2017年にデビュー40周年を迎える米ロックバンドのCheap Trickが受賞した。この賞は観客を立ち上がらせ、その真のショーマンシップで私たちに笑顔をもたらすスターへ与えられる賞。

Cheap Trick(撮影・Michiko Yamamoto)

Cheap Trick(撮影・Michiko Yamamoto)

 トロフィーを受け取り、リック・ニールセン(Gt)は「日本武道館に戻ってこれて嬉しいよ」とジョークを交えコメント。そして、楽器を手に取り、1曲目は代表曲「I Want You to Want Me」を披露。約40年のキャリアから放たれるロックサウンドは紛れもなく本物。貫禄のサウンドが国技館に響き渡った。「Dream Police 」や「Surrender」など全4曲を披露し、鷲づかみしたギターピックを客席に豪快に投げるリックや、ロビン・ザンダー(Vo)の太く伸びやかな歌声で“The Showmen”の称号にふさわしいステージを魅せた。

リッチー・サンボラが受賞

 続いての賞は「Classic Songwriter」。元BonJoviのギタリストのリッチー・サンボラが受賞した。リッチーは「ソングライターというのは人生をハッピーにしてくれるような曲を書くのが大切だと思っているんだ。僕らBonJoviを受け入れてくれたみんなから、たくさんの愛をもらった。僕のソングライターとしての肥やしになったと思う。どうもありがとう!」とコメント。演奏にはギタリストのオリアンティをゲストに招き、椅子に座りながらのアコースティックセットで聴かせた。ダブルネックのアコギを手にしたリッチーと、オリアンティによる軽快なセッションから1曲目は「LIVIN' ON A PRAYER」。ブルージーに憂いを帯びたサウンドを、リッチーとオリアンティの歌声で届けた。

 名曲はどんなスタイルでも聴くものを魅了する。他にリッチーは12弦ギターで神秘的なアルペジオが印象的だった「Wanted Dead Or Alive」や、レゾネイターギター(編注:アコギの1種。音量を増大させるためのアルミの円形共鳴板がブリッジの下に取り付けられている)に持ち替え、スライドバーを使用したり演奏の幅広さを見せた。叙情的なサウンドでメロディをしっかりと浮かび上がらせたアレンジで聴かせてくれた。

リッチー・サンボラとオリアンティ(撮影・Michiko Yamamoto)

リッチー・サンボラとオリアンティ(撮影・Michiko Yamamoto)

 そして、アジアで最もパフォーマンスが評価されているアーティストに送られる「Asian Performance」には、タイのロックバンドSlot Machine(スロット・マシーン)、フィリピンの歌姫Sarah Geronimo(サラ・ヘロニモ)の2組が輝いた。Slot Machineは「MRT」を披露。KARINYAWAT DURONGJIRAKAN(Vo)のエモーショナルなハイトーンボイスが国技館に響き渡り、バンドが作り出すダンサブルな16ビートのロックグルーヴがオーディエンスを釘付けにした。

Next GenerationにBAND-MAID

 続いてパフォーマンスしたのは「Japan Next Generation」を受賞したBAND-MAID。メイドの格好でハードエッジなロックサウンドを奏でる彼女達。小鳩ミク(Gt.Vo)の「おかえりなさいませ。ご主人様、お嬢様」の挨拶に続き、彩姫(Vo)の「お給仕始めます」の言葉からパフォーマンスはスタート。「Thrill(スリル)」を披露した。途中、機材の不調があったものの、その可愛らしい見た目からは想像できない、激しいサウンドを轟かせた。さらに、国技館にメイドというギャップがさらに新鮮さを加えていた。最後に小鳩がお約束の「萌え萌えキュンキュン」とおまじないをかけ、ステージは終了した。

BAND-MAID(撮影・Michiko Yamamoto)

BAND-MAID(撮影・Michiko Yamamoto)

 Sarah Geronimoは、フィリピンで10万枚売れれば大ヒットと呼ばれる音楽市場で、異例の20万枚をセールスしている歌姫。美しい容姿からは想像しがたい、ロックスピリットに溢れた歌声を披露した。抑揚をつけた彼女の歌は、オーディエンスの感情を揺さぶっていった。同じくフィリピンからはBambooも駆けつけ、歌唱。侘び寂びの効いた楽曲展開とダイナミックな歌声で会場を包み込んだ。

 そして、舞台裏で活躍する人に与えられる「The V.I.P」にはラジオDJでタレントの小林克也が受賞。イースタンエリアを代表する、将来クラシックロックとなりうる可能性を秘めたアーティストに捧げられる賞、「Eastern Breakthrough Band」には日本のロックバンドであるONE OK ROCKが受賞した。彼らのライブパフォーマンスはなく、VTRでの出演となった。

 TAKA(Vo)は受賞の喜びを「ロックのファンの皆さんに対して、僕らも精一杯これからも良い音楽届けていけるように、気持ちを込めて歌っていきたいと思っています」と語り、「世界でツアーをするということに僕らもちょっとづつ慣れてきましたけど、世界でツアーをするということは日本でのライブが減るということで、待っていてくれている日本のファンの皆さんたちには、特別な気持ちがあります。外の世界を見てきたからこそ、自分たちの国のファンの大切さを改めて再認識できましたし、音楽をもって繋がれているという実感が持てました」と世界で活躍し、改めて日本のファンへの特別な気持ちを抱いたことを話した。

YOSHIKI「ART OF LIFE」を熱演

 続いて、アジアの象徴に捧げられる賞「The Asian Icon」をX JAPANのYOSHIKIが受賞した。YOSHIKIは「ロックのレジェンドであるジミー・ペイジやジェフ・ベック、ジョー・ペリー、リッチー・サンボラ…たくさんのミュージシャンとこうして同じ舞台に立てることは、大変喜ばしいことです。アジアのロックバンドも、今は世界中で認知されていると思うし、もし西洋と東洋で音楽の壁があったとしてもそれは限りなく小さな、些細なものになっていると思います。ここまでサポートして頂いた、すべての方に感謝します。X JAPANは様々な苦難を乗り越えてきました。ファンの支えがなければ乗り越えられなかったと思います、改めて感謝いたします」とコメント。

YOSHIKI(撮影・Michiko Yamamoto)

YOSHIKI(撮影・Michiko Yamamoto)

 アクリル製のピアノの前に座ったYOSHIKIは「今年は多くの才能あるミュージシャンが亡くなりました。ジョージ・マーティンさんとは、昨年のクラシック・ロック・アワードでご一緒しました。そして、尊敬してやまないデヴィッド・ボウイさんも逝きました。この曲はデヴィッド・ボウイさんに捧げます」と今年1月に他界したデヴィッド・ボウイさんの「Space Oddity」を、ストリングスカルテットとともにピアノで奏でた。優しいタッチで流れるような指使いで、楽曲を表現していった。

 そして、スクリーンにHIDEとTAIJIの名とX JAPANの軌跡とも言える映像が流れる中、ピアノで「ART OF LIFE」を演奏。そのピアノの旋律はHIDEとTAIJIに送るレクイエムのようにも聴こえた。そこにストリングスの音色が切なさと悲しみを表現しているように響いた。時に優しく、時に力強く、儚く散っていくようなドラマチックな演奏に、オーディエンスは静かに聴き入っていた。

スペシャルバンドによるセッション

 音楽評論家の伊藤政則氏の紹介から「Album Of The Year」に、英ロックバンドのDef Leppardのアルバム『Def Leppard』が輝いた。フィル・コリン(Gt)とジョーエリオット(Vo)がトロフィーを受け取った。フィルは「素晴らしいサプライズだ。Album Of The Yearを貰えるなんて最高に嬉しい。たくさんの人にお礼が言いたいんですけど、日本のファンにもお礼が言いたいです。今年亡くなったロックレジェンドも沢山いるので追悼の意を表したいと思う。ありがとう!」と感謝を述べた。

Def Leppard(撮影・Michiko Yamamoto)

Def Leppard(撮影・Michiko Yamamoto)

 そして、ここからはスペシャルバンドによるセッションが始まった。独ロックバンドのスコーピオンズ「No One Like You」と「Rock You Like A Hurricane」をギターのルドルフ・シェンカー(Scorpions)によるソリッドでスケール感溢れるサウンドと、ボーカルのジェフ・キース(Tesla)のロックスピリッツ溢れるエモーショナルな歌と存在感、ドラマーレイ・ルジアー(KORN)のパワフルで重厚なリズムワーク、Stone Temple Pilotsのギターのディーン・ディレオとベースのロバート・ディレオ兄弟によるグルーヴ感、そして、Alice CooperやHollywood Vampiresで活躍するギタリストのトミー・ヘンリクセンのリードからバッキングまで多彩なテクニックによって、この日だけのスペシャルセッションにオーディエンスの興奮度はさらに高まった。

 このバンドにフィル・コリンがギターボーカルとして加わり、英ロックバンドのDeep Purpleの「Mistreated」やDef Leppardのヒット曲「Hysteria」など、往年のロックファンには堪らない楽曲を披露。更に、司会のデイブ・ムステインもギターで参加し、ギメタリックなトーンでギターソロを決める。そして、「次の曲は偉大な作曲家であるジミー・ペイジの曲です。エレクトリックギター、ベース、ドラム、ボーカル、全てがフォーク・ミュージックが主流だった当時にはぶっ飛んでた。ありがとう、ジミー、あなたに贈ります」と紹介し英ロックバンドのレッドツェッペリンの「Dancing Days」を演奏した。

ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

 そこに、米俳優のジョニー・デップがギターで参戦。日本では初めて、その演奏する姿を披露した。Stone Temple Pilotsの「Sex Type Thing」やHOLLYWOOD VAMPIRESの「AS BAD AS I AM」 などを披露。ギターを低い位置でかき鳴らすジョニーはワイルドなトーンでオーディエンスを魅了。そして、「ここで僕らのヒーローを紹介したいと思います。僕にとっても、とても特別な存在です」とジョニー・デップがエアロスミスのギタリストであるジョー・ペリーを呼び込む。

 ジョーは、レフトハンドモデルのストラトキャスターで恍惚のロックサウンド繰り出す。歳を重ねてさらに深みを増した演奏に、オーディエンスは酔いしれた。エアロスミスの「Sweet Emotion」やザ・ビートルズの「Come Together」などを演奏。リック・ニールセンも加わり、ロックファンのテンションはマックスに上がり、彼らはダメ押しとばかりに「Train Kept a Rollin'」を演奏。このスペシャルバンドで奏でられる極上のロックンロールにオーディエンスも体を自然とシェイクしていた。

ジミーペイジとジェフベック登場

 ここで、レッド・ツェッペリンのジミーペイジがステージに登場。大歓声の中「私は過去60年間でも彼が最も素晴らしいギタリストだと思っている。彼のプレイは、全ての人の想像をはるかに超えてきた。皆さんにジェフ・ベックを紹介します」とジェフベックをステージに招き「The Icon」のトロフィーを授けた。ジミーからトロフィーを受け取ったジェフは「どうもありがとう、ジミー、日本のファンの皆さん。私の人生も大きく変わった。今だけは気分が良い。まあ、“今だけ”ってのはジョークだけど(笑)皆さん、ありがとう」とジョークを交えながら感謝を述べた。

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

 そして、大トリのジェフ・ベックのステージがスタート。彼の代名詞でもある、白いストラトキャスターを手に、1曲目は1968年の『Truth』に収録されている「Beck's Bolero」を披露。別格の存在感を放ち、聴けばわかる唯一無二のトーンとギターテクニックにオーディエンスも圧倒された。続いては米シンガーソングライターのスティーヴィー・ワンダー「Superstition」をフィル・コリンのボーカルで届けた。リフが奏でられると歓声が上がる。

 ボルテージは最高潮に上がっているところで、ラストに1972年の『Jeff Beck Group』に収録されている「Going Down」をジェフ・キースをボーカルに展開。アームを巧みに使いピッチを自由自在に操り、ギターの可能性をすべて詰め込んだかのような演奏に、オーディエンスの視線が集中する。レジェンドに相応しい演奏とパフォーマンスでアワードを締めた。

 尾上は「今日はロックの真髄を目の当たりにした。ロックレジェンドの皆さんそして、さらにその上の世代のロックレジェンドの皆さんが築き上げ、伝説を残してくれたからこそ現代のロックに繋がっているということを感じました」とクラシックロックアワードを総括し、豪華共演ステージの幕は閉じた。(取材・村上順一)

セットリスト

Cheap Trick

01.I Want You To Want Me

02.When I wake up Tomorrow

03.Dream Police

04.Surrender

R. Sambora & Orianthi (Guest Hook Herrara/ Harmonica)

01.Livin’ on a Prayer

02.Wanted Dead or Alive

03.Harlem Rain

Slot Machine

01.MRT

Band Maid

01.Thrill

Sarah with Bamboo

01.ANAK

Bamboo

01.Nothing Like you

YOSHIKI

01.Space Oddity (David Bowie)

02.Art of Life (X Japan)

~Special Session~
 
01.No One Like You (SCOPIONS)

02.Rock You Like A Hurricane (SCOPIONS)

03.Modern Day Cowboy (TESLA)

04.Save That Goodness (TESLA)

05.Mistreated (DEEP PURPLE)

06.Hysteria (DEF LEPPARD)

07.Dancing Days (LED ZEPPELIN)

08.I Ain’t Superstitious

09.Search And Destroy (THE STOOGES)

10.Sex Type Thing (STONE TEMPLE PILOTS)

11.Schools Out (ALICE COOPER)

12.Another Brick In The Wall Part II(PINK FLOYD)

13.AS BAD AS I AM (HOLLYWOOD VAMPIRES)

14.Sweet Emotion JK vocal(AEROSMITH)

15.Come Together (THE BEATLES)

16.Stop Messin Round (FLEETWOOD MACK)

17.Train Kept A Rollin(THE YARDBIRDS)

Jeff Beck

01.Becks Bolero

02.Superstition

03.Going Down

YOSHIKI(撮影・Michiko Yamamoto)

YOSHIKI(撮影・Michiko Yamamoto)

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

ジェフ・ベック(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

日本初演奏を披露した、ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

日本初演奏を披露した、ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

Sarah Geronimo(撮影・Michiko Yamamoto)

Sarah Geronimo(撮影・Michiko Yamamoto)

豪華メンバーのセッション(撮影・Michiko Yamamoto)

豪華メンバーのセッション(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョニー・デップ(撮影・Michiko Yamamoto)

Def Leppard(撮影・Michiko Yamamoto)

Def Leppard(撮影・Michiko Yamamoto)

Bamboo(撮影・Michiko Yamamoto)

Bamboo(撮影・Michiko Yamamoto)

BAND-MAID(撮影・Michiko Yamamoto)

BAND-MAID(撮影・Michiko Yamamoto)

Cheap Trick(撮影・Michiko Yamamoto)

Cheap Trick(撮影・Michiko Yamamoto)

リッチー・サンボラとオリアンティ(撮影・Michiko Yamamoto)

リッチー・サンボラとオリアンティ(撮影・Michiko Yamamoto)

豪華メンバーのセッション(撮影・Michiko Yamamoto)

豪華メンバーのセッション(撮影・Michiko Yamamoto)

Cheap Trick(撮影・Michiko Yamamoto)

Cheap Trick(撮影・Michiko Yamamoto)

伊藤政則氏(撮影・Michiko Yamamoto)

伊藤政則氏(撮影・Michiko Yamamoto)

フィル・コリン(撮影・Michiko Yamamoto)

フィル・コリン(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョー・ペリー(撮影・Michiko Yamamoto)

ジョー・ペリー(撮影・Michiko Yamamoto)

Def Leppard(撮影・Michiko Yamamoto)

Def Leppard(撮影・Michiko Yamamoto)

Def Leppard(撮影・Michiko Yamamoto)

Def Leppard(撮影・Michiko Yamamoto)

演奏するYOSHIKI(撮影・Michiko Yamamoto)

演奏するYOSHIKI(撮影・Michiko Yamamoto)

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