ずばり新作はひやおろし、koma’n 異種共演で発見、新たな世界
INTERVIEW

ずばり新作はひやおろし、koma’n 異種共演で発見、新たな世界


記者:橋本美波

撮影:サムネイル

掲載:16年11月18日

読了時間:約14分

koma’n

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 男性4人組ボーカルグループ、ROOT FIVEの最年少リーダーであり、シンガーソングライターのkoma’n(こまん)が11月23日に、ミニアルバム『SEVENTEEN O’CLOCK』をリリースする。作詞・作曲・編曲を手掛けるほどの才能を発揮し、グループだけでなく様々なアイドルグループにも楽曲提供する。ソロ作となる今作は、作詞家のzopp氏や人気少女漫画家の幸田もも子氏、写真家の青山裕企氏など著名クリエイターの3人を迎え、これまでとはまた異なる彼の世界観を引き出している。今回は、新譜の制作スタイルや、コラボして気づいたこと、さらに曲にまつわる裏話などについて話を聞いた。

現代の織田哲郎さんになろうと思った「潮騒エレジー」

koma’n

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――まずkoma’nさんの遍歴について伺いたいと思います。音楽の世界に入ったきっかけはなんだったのでしょうか。

 両親が音楽をやっていたので、その流れで小さい頃からピアノをやっていました。中学生ぐらいからギターも触りだして、高校生のときにニコニコ動画に動画を投稿するようになって、そこで曲を作ったり、ピアノでアレンジをしてカバーしていました。高校を卒業すると同じタイミングで、ROOT FIVE(編注=当時は「√5」という名義)でメジャーデビューをして、そこから色々活動が広がっていって、ソロプロジェクトとしてCDを出させて頂いたり、アーティストに楽曲提供をするようにもなりました。

――音楽以外で趣味はありますか。

 お酒です。

――ちなみに一番お気に入りのお酒は何ですか?

 黒糖焼酎の長雲一番橋というお酒が好きです。奄美諸島で作られている山田酒造という所で生産されていて、その杜氏さん(編注=酒蔵の最高製造責任者)とも呑んだことがあるぐらい大好きなんです。

――本当にお好きなんですね。11月23日にリリースする『SEVENTEEN O’CLOCK』ではジャンルの垣根を超えたクリエイターさんとコラボしています。この3人とコラボすることになった経緯は?

 zoppさん自体は初めましてだったんですけど、僕がジャニーズ所属のグループの方に楽曲提供する機会がありまして。zoppさんもジャニーズさんに関われている方なので、「その曲と詞で面白いことできないかな」ということで、こちらからお願いさせていただきました。

 少女漫画家の幸田もも子先生については、幸田先生作『ヒロイン失格』を読んでいるということをTwitterにアップしたんです。そうしたら幸田先生がリプライをくれまして、さらにフォローまでしていただいたんです。その後、Twitterをみたらお互い酒呑みだってことが発覚しまして…。3年前ぐらいに「一度呑みにいきましょう」という所から始まり、そこから今も仲良くさせていただいています。要するに酒呑み仲間です。仕事している所はお互い見たことがないという(笑)。

 ジャケットを撮影していただいた写真家の青山裕企さんは、僕が昔にポエム集を趣味としてコミケで出していたんですけど、そのときも青山さんっぽい女子高生のフェチズムみたいな写真を僕も撮っていまして。その流れで、僕の仲良いweb系のサイトをやっている方が、青山さんと繋げてくれたんです。後に、インタビューで対談があってそこで初めて知り合ったのがきっかけです。

koma’n

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――zoppさんとは「潮騒エレジー」、「サクラノ下」、「ヒトクリ」の3曲を制作されています。一緒に生み出していく中でこだわった点はありますか?

 今回は作り方自体が3曲とも違っているんです。「潮騒エレジー」は、曲と詞を割と平行して作って、zoppさんが枠組みをし、「こんな世界観の歌詞で行きましょう!」というのを第一項で頂いて。そこで使えそうなキャッチーなフレーズも、僕が曲をあててまた作詞していただいて、というふうな感じで擦り合わせていったんです。

 「サクラノ下」は、詞先なんです。詞が先にある中に僕が曲をつけてという感じです。「ヒトクリ」は、逆に曲先で3曲とも全部違った作り方をしたんです。そこの差が自分的にはわかるんですけど、やっぱり曲先だと自分らしさがよく出ますし、詞先だとzoppさんらしさが全面に出るという所で、その違いを楽しんでいただければ嬉しいです。

 「潮騒エレジー」に関しては、元々がミニアルバムの話ではなくて、最初はシングルでという話だったんです。そこから、「じゃあコラボするなら色んな人とコラボしよう」とミニアルバムになって、その第一弾が「潮騒エレジー」だったんです。その時、zoppさんとテーマを決めようということで共通の好きなものを挙げていって、最終的に『スラムダンク』が2人とも好きだということがわかったんです。

 しかも『スラムダンク』と言えば主題歌は「ビーイング系」だよね。という話になりまして。それらを踏まえて、ビーイング系の曲を作ってみようということで、僕がもし織田哲郎さんだったら…というコンセプトで作りました。結構、オマージュじゃないですけどサックスが入ると、ビーイングっぽい昔の感じがするんです。サビのコード進行とかもカノン進行っていうベースが一個ずつ、音が下がっていく進行を織田さんはよくやられるんで。それもちょっとマネてみて。現代の織田哲郎さんになろうと作った1曲です。

――どの3曲とも哀愁漂う感じですよね。

 そうですね。今回は結構、古き良きと言いますか、そんな楽曲にしてみました。

――「潮騒エレジー」の出だしの所でkoma’nさんが「潮騒エレジー」とセリフを発していますよね。あれが凄いワイルドだなと感じました。

 あれはですね、ノリでレコーディングして「最後にセリフを入れてみますか?」と言って、試しにやったらスタッフさんが「いいじゃん! これで!」と…、ふざけてやったんです。ちょっとこっぱずかしいですけど、イヤホンで聴くと結構ダメージがあるかもしれません(笑)。

 歌詞も、さっきビーイング系と言ったんですけど、一行目のド頭が<ポッカリ>という歌詞は、実はこれポカリスエットのことなんです。当時、ポカリスエットのCMはずっとビーイングがやっていたんですよ。そんな裏テーマがあって、ポカリを歌詞にいれてみようということで<ポッカリ>というのが入っているんです。

――「サクラノ下」、「潮騒エレジー」、「ヒトクリ」は春夏秋冬な感じがしますよね。

 今回のアルバム自体が青春のイメージなんです。青春にはやっぱり四季もありますし、その中での「失恋とかをテーマに出来たらいいね」ということで、結局四季じゃなくて三季なんですけど(笑)。秋って難しんですよね。コスモスぐらいしかないじゃないですか? 体育祭とか、文化祭とかはありますけど、それも学校によってバラバラだったりしますし。秋の歌って少ない様な気がします。僕の中で秋は松茸食べるぐらいしかないかな…(笑)。

学校に馴染めなかった高校時代

使用

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――2曲目の「Fighteen!」は作詞・作曲・編曲を全てkoma’nさんが担当されていますが、この楽曲はどんなイメージで描かれたのでしょうか?

 聴いての通り応援歌と言いますが、ティーンズに向けて「頑張れ」という楽曲です。ポップでファンキーな感じなんですけど、「学生ってみんな頑張っているな…」と最近思いまして。大人になったらお酒とか、逃げ道いっぱいあるんですけど、学生のうちはね、ストレスのはけ口もそんなにないと思いますし。そんな学生に届けたい応援歌を作りました。

 それでも、ティーンとは言いましたけど、大人に向けても意識して書きました。大人になると、「頑張ってね」だとか「お疲れさま」とかあまり言われないじゃないですか? 親元を離れると、更に慰めてくれる人もいないですし。自分で「頑張っているぞ!」と言うのも恥ずかしいですし、情けないですけど、ちょっとは褒めて欲しい自分がいるみたいな感じなんです。そんな人への応援歌でもあります。

――今の10代の子たちにこれはやっておいた方が良いことや、koma’nさんからの助言などはありますか?

 そうですね。やっぱり、若いうちに法に触れない程度の悪い事はした方が良いと思います。恋愛もそうですし、何かとは言いませんが…(笑)。

――koma’nさんはどんな10代を送っていましたか?

 法に触れるか、触れないかは置いといて。やんちゃはしていましたね(笑)。

――青春は謳歌していましたか?

 青春は、中学生のときはしていました。高校生のときはしてないですね。あまり高校に馴染めなくて。

――そんな感じしませんよ。もっと明るく騒いでいるような。

 中学のときは騒いでいたんですけど、騒いだままのテンションで高校に行ったら、みんな真面目だったんです。でも自由な学校で、私服で髪染めてもピアスもOKで、単位制だったんです。でも公立という謎の学校だったんですよ。みんな頭が良いから真面目な部分もありつつ、でも私服だから自由な部分もあるんですけど、やっぱりふざけるとなると境界線がありました。ここは超えちゃいけないという境界線を絶対超えない良い子たちが集まっている中、僕みたいな悪い子が行っちゃったんで。「あれ?」みたいな。あんまり馴染めていませんでした。

――部活は何か入られていたんですか?

 中学の時は、バスケ部とか駅伝とか、あと合唱部でした。体力つけるために駅伝は、バスケ部に入るとやらされるんですよ。バスケの部活の前に、駅伝部が朝5時半や6時とかに走らされて、7時ぐらいからバスケ部の部活が始まるという。そんなんやっていましたね。高校は帰宅部です。

――koma’nさんのお名前は高校時代のあだ名だったりするんですか?

 あだ名ですね。「こまちゃん」と呼ばれていて。一応、軽音部に幽霊部員でいたんですけど、そのときのあだ名ですね。こまちゃんの略です。名前が駒沢で、「こまちゃん」…「こまああ」…「こまん」という流れです。

ぶりっ子"しながら頑張った

使用

koma’n

――4曲目の「つまさき少女」では、前作の「今日を取り戻せ!」でも参加した人気少女漫画家の幸田もも子先生と制作されています。これはまさに王道の胸キュンソングですよね。

 本当ですか? 響きました? 女性からしたらこういうのがいいんですかね。女性はとくに年上の男性が好きな人が多いですもんね。この曲は年上との価値観の違いで、「ククククッ」となっている女の子の歌です。幸田先生と少女漫画の世界観をイメージした歌詞なんです。

 前回、一緒に作った「今日を取り戻せ!」では少女漫画家なのに、酒飲みソングになってしまったんで…(笑)。「きゅんきゅんな曲を書きたい」とおっしゃっていたので可愛い世界感を出すために、酒を呑みながら打ち合わせしました。

――曲間に<悪い、仕事入った♪>という歌詞がありますが、あれはまさに絶望感が滲み出ていますよね。

 あれは、まさに絶望を表しているんですよね。幸田さんの漫画ってギャグ要素も多いので、ちょっと遊び心も取り入れた方がいいかなと思いまして。結構遊ばせていただきました。

――こういう少女漫画の世界をkoma’nさんが歌っていると、世の女性もノックアウトされちゃいます。

 女性目線の曲を男が歌うのって最初は抵抗があったんですけど。でも“ぶりっ子”しながら頑張りました。声も高めに出しちゃって。

――初々しい恋模様をサウンドで表すのは結構、苦戦はしなかったのでしょうか?

 僕自身が、アイドル歌謡曲みたいなのが好きなんです。この曲もちょっと昭和のアイドル歌謡みたいな感じで。こういうのは可愛いですし、作っていて楽しいのでとくに苦戦はせずスムーズにいけました。

――6曲目の「Giving You Another Name」はインスト曲になります。作曲されている、村山遼さんと田中さんとは元々交流があったのでしょうか?

 村山とは高校の同級生で彼はギタリストで先生をやったりしているんですけど、いつも僕の周りのギターを弾いてくれていて。田中は高校の一個下の後輩なんですけど、彼はドラムを叩いていたりしています。青春曲を作ろうとなったときにインスト曲を作ろうと話があがったんです。村山たちは普段ジャズとかフュージョンとかをやっているんです。なので、そこらへんで面白いコラボが出来たらいいなという所から始まりました。実は、2人も結構歪んだ人種で変わっているんですよ。

 じゃあ、僕らが表現できる歪んだ青春をインスト曲にして表そうっていう話になったんです。だけど、僕もバタついていて他の曲もやらないといけないしってことで、「インスト曲の下書きを作っておいてよ」と話を振っていたら、割と完パケに近い状態で出来上がっていて。「僕が、アレンジする隙間がないじゃない!」という感じになって。結局、僕は作曲に入っていないって感じなんです(笑)。本番一発録りをするとき、みんなで自分流に弾きながら、ソロとかは変えたんですけど。

――7曲目に収録されているジミーサムPさんの楽曲「Calc.~FAZIOLIver.~」が入っていますが、なぜこのナンバーを選んだのでしょうか?

 元々僕もピアノでカバーをさせていただいて、個人的にもライブで歌ったりして非常に好きな楽曲なんです。毎回CDを出すたびにカバーアレンジとかをやっているんですけど、アレンジをしたときに代わり映えがあった方がファンも「おお!」となるので。原曲は凄く早いロックの曲なんですけど、それをちょっとスローテンポにして、オシャレなカフェで流れていそうな曲にしたらどうなるかなと。自分が前にピアノアレンジをしたものとは更に変えて、どこまで変えられるかなというところが挑戦でした。ジミーサムPさんの曲が個人的に好きなんで、選んだのはそこなんです。

――ちなみにジミーサムPさんの楽曲でお好きなモノはありますか?

 「Reboot」も好きですし、「from Y to Y」が一番好きです。歌詞が特に好きで、結構カバーさせていただいています。

鼻の下が伸びている写真もありましたね(笑)

――今回のジャケット撮影は凄く面白味のあるデザインになっているかと思います。青山さんと撮影されてみてどうでしたか?

 お会いするのは3回目だったんで、割と打ち解けて撮影が出来ました。青山さん自体が、講義をやっていたときによく言っているのが「ポートレートは、被写体とのコミュニケーションが大事だ」とずっと言っているんですけど。なので、喋りながら撮るんですね。「学生時代の思い出は何?」みたいなインタビューしながら撮ったりとかするんです。そういう不意に見せる表情とかを、切り取るのが上手いんです。

 あと、ジャケ写って凄い同じポーズを10枚とか、何枚も撮るじゃないですか? 青山さんは「はい、ここきてー」と言ってパシャパシャ、「はい、次、こっちー」みたいにスピーディーな人で。モニターチェックとかも全然してないんですよ。だから画像が上がってくるまで、どんな仕上がりになるのか全くわからなくて。でも出来上がったのを見ると、青山さんは世界観と表情をくみ取るのが上手いな、と思いました。

――『SEVENTEEN O’CLOCK』の初回Bのジャケット写真にはkoma’nさんが飛んでいる場面もありますよね。

 飛んでいます。「せーの!!」で何回も撮りました。

――飛んでいる間は大変ではなかったですか?

koma’n いや、人並みには飛べるんで大丈夫です(笑)。女子高生と絡む写真もあったんですけど、緊張してドキドキしました。

koma’n

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――撮影では、どんな風に女子高生と絡んだんですか?

koma’n 同じ縄跳びに入って一緒に撮んだりとか、ほっぺたを指で押されたりとか。イヤホンを片耳ずつつけたりとか。手を触れるか触れないかみたいなのもありました。緊張と照れの交じりがずっとあって、鼻の下が伸びている写真もありましたね(笑)。ブックレットも32ページなんですけど、色んな写真がまだまだあるんです。写真集作れるぐらいの量を撮ったので。いつかどこかでお見せできる機会があればと思っています。

――今作は、koma’nさんにとってどんな一枚になりましたか?

koma’n 今作のタイトル自体が17時という意味なんですが夕方、昼でも夜でもないアンバランスな時期と17歳を掛けているんです。そういう青春時代を学生さんもそうですし、大人になって昔を懐かしむように聴いてくれるように、古いアレンジとかもいれています。若い子にも「つまさき少女」は少女漫画を読んでいる世代にも楽しめますし、アレンジも昔の昭和歌謡、アイドル歌謡みたいな、様々な人が楽しめる成分を入れ込めることが今回はできました。

 ファーストアルバムのときは、まだブイブイと作曲していたんで、若々しさと言いますか良い意味でとげとげしい曲を作っていたんですけど、今回はそこから2年を経て良い意味で、大人になりました。曲自体も引き算が出来るようになりましたし、悪く言ったら落ち着きすぎたって言い方もありますけど、まあ曲もおじさんになりつつあるなって(笑)。お酒で例えるとひやおろしみたいな感じです。夏を得て貯蔵されて、味が丸くなったそんなイメージで僕は作りました。

 (編注=「ひやおろし」とは、冬にしぼられた新酒が劣化しないよう春先に加熱殺菌した上で大桶に貯蔵し、2度目の加熱殺菌をしない“冷や”のまま大桶から樽に卸したことから呼ばれる手法)

――最後に、来年に向けての目標をお願いします。

koma’n まず、呑みすぎて体調を崩さないことです(笑)。あと今回、コラボさせていただいて、自分で作詞、作曲、編曲をやってしまうが故に一人の世界で完結しちゃう部分があったんです。それを今回のコラボで色々見える仕上がりに広がったりので、色んな人と仲良くなって音楽をしたり、新しい人と出会いをして新しい音楽に出会って、そういう音楽の出会いを大切にしつつ良い曲を書けるよう頑張れたらいいなと思います。

(取材・橋本美波)

作品情報

『セヴンティーン・オクロック』
▽初回盤A=CD+DVD
2500円(税込) YRCN-95266
DVD収録内容:MUSIC VIDEO+レコーディング風景+MAKING
▽初回盤B=CD+ブックレット 2,300円(税込)YRCN-95267
koma'n×青山裕企 豪華32Pブックレット仕様
▽通常盤=CD ONLY 2000円(税込)YRCN-95268

▽収録曲
1.潮騒エレジー
作詞:zopp 作曲・編曲:koma'n
2.Fighteen!
作詞・作曲・編曲:koma'n
3.サクラノ下
作詞:zopp 作曲・編曲:koma'n
4.つまさき少女
作詞:幸田もも子 作曲・編曲:koma'n
5.ヒトクリ
作詞:zopp 作曲・編曲:koma'n
6.Giving You Another Name
作曲:村山遼・田中 編曲:Pastel Penguin
7.Calc. -FAZIOLI ver.-
作詞・作曲:ジミーサムP 編曲:Pastel Penguin
※通常盤のみ全曲Instrumental収録

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