苦悩の先に見えた光、THE ORAL CIGARETTES 100の限界超えた新曲
INTERVIEW

苦悩の先に見えた光、THE ORAL CIGARETTES 100の限界超えた新曲


記者:村上順一

撮影:

掲載:16年11月15日

読了時間:約13分

一旦ゼロになった創作欲から苦悩の末に完成した「5150」

一旦ゼロになった創作欲から苦悩の末に完成した「5150」

 4人組ロックバンドのTHE ORAL CIGARETTESが11月16日に、ニューシングル「5150」をリリースする。前作「DIP-BAP」から約3カ月というスパンでリリースする新曲は、「DIP-BAP」で一旦ゼロになった創作欲から、山中拓也(Vo.Gt)の苦悩の末に完成した作品で、キラーチューンという概念も変化しつつあるという。前編ではバンドにとって重要なライブとなった地元・奈良で4月30日におこなった『THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンライブ~故郷に錦を飾りまSHOW!!~』でのことや、新曲の制作秘話、後編ではミュージックビデオ(MV)の裏話、さらにはストレスの発散方法など、メンバー4人に話を聞いた。

“お互い見つめ合っている”みたいな感じ

Vocal&Gtの山中拓也(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

Vocal&Gtの山中拓也(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

――『唇ワンマンツアー』を奈良で終えて半年が経ちますが、いま振り返っていかがですか?

山中拓也 ホールでのライブはやってみるのとやらないのとでは全然考え方も違うなと思いました。やってみてやっと分かった事があるというか。自分達がこれから先どういう方向に向かって行くのか、みたいな所です。ライブで僕達は育ってきましたけど、色んな所で出来るバンドになりたいですし、武道館が一つの最初の目標だったりもするんですけど、そこが僕らの中では最終ではなく、通過点だと思っているので、そこをどんどん上に上にと向かって行く為には絶対必要な第一歩だと今回やってみて強く思いました。

――ライブの雰囲気や趣も変わりましたか?

あきらかにあきら 汗臭くなかったですね(笑)。ライブハウス特有の、皆が「わちゃー!」となって汗だらけになる感覚がホールではやはりなかったです。ホールでは“お互い見つめ合っている”みたいな感じ(笑)。ホールでライブをやった後に作る曲は視野も広がってきましたね。なら100年会館でのライブは、思い返しても凄く大事な日だったなと思います。後からジワジワ実感しているところがありますね。

鈴木重伸 音が気持ち良過ぎて! 「こんなにイイ音が鳴るのか!」ともう弾くのが楽し過ぎました。音を鳴らすのがあんなに楽しかったのは、これまでで一番じゃないかというくらいでした。普段、自分はそこまで笑顔にならない方なんですけど、終始楽しんでいましたね。

――普段はクールで真顔が多い?

鈴木重伸 そうですね(笑)。

あきらかにあきら 荒ぶっている時もあるよね。

――それは怒っているんですか?(笑)

鈴木重伸 イヤイヤ(笑)。“オラオラ感”がライブの時は出る事がありますね。

Gtの鈴木重伸(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

Gtの鈴木重伸(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

――そういえば、シゲさんはライブでは裸足なんですよね。裸足である理由は?

鈴木重伸 それを始めた理由は覚えていないんですけど、ずっと裸足でやっています。一度、靴を履いてやってみようとなった時に、足下の機材のフットスイッチを誤って踏んでしまう事があって、「コレもう靴は履けないな…」と思って、ずっと裸足というだけです(笑)。

――裸足でフットスイッチ踏むと痛くないでしょうか?

鈴木重伸 スイッチはまだ大丈夫なんですけど、夏の野外の時の熱さはヤバいです。立ち位置にタオルを敷くんですけど、ライブをしているとタオルがあちこちに行ってしまうので、それめがけて踏みにいって休み休みで。

――忙しいですね(笑)。

鈴木重伸 飛び石みたいな感じになりますね(笑)。今後は足裏対策も考えていこうかと思います。

――中西さんは、なら100年会館ホールはどうでしたか?

中西雅哉 純粋に「音」がすごく伝わる場所だなと思いました。フェスやライブハウスで袖や客席で観ていると、音楽を純粋に「音」だけを100%楽しんでいる空間ではなく、勢いや熱量があるからこその場所だと思うんです。ホールだと純粋に「音楽が好きな人が楽しめる場所」だと思うし、そうじゃない人は来ないんだろうなと思います。“聴く楽しさ”を共有出来たと思います。

――THE ORAL CIGARETTESは“ノリ”だけではなく、音楽を聴いてほしいという事を常に提示しているバンドでもありますよね?

山中拓也 モッシュもダイブもリフトもする前提で、絶対「音楽を好きであって欲しい」という気持ちは変わらないんです。モッシュとダイブなんかをただやりに来ているというだけでは、ライブハウスに来ている意味が無いよ、という事をライブで常に言い続けているんです。それをホールでちゃんと言えたという事は自分達にとってとても大きいし、自分達のお客さんと一緒に育っていくと言うか…。僕らもそういうテンションでやるから、何をして楽しんでくれてもいいから、ちゃんと音楽というものを好きでいて下さいというのがあります。もちろんモッシュもダイブも反対じゃないし、否定するつもりも全然ないという前提で。

――ホール公演で、それは伝わった部分もあるのではではないでしょうか?

山中拓也 そうですね。セットリストを組む時など、ホールでやっている先輩バンドのクリープハイプの尾崎さんに「どんな感じなんですかね?」と電話したんです。「ライブハウスでやり慣れていたら、思っているよりレスポンスが返ってこないよ」とか、「全てにおいてあんまり期待しないで臨んだ方がいい」と言うんです。だから最初は怖かったんです。当然、ライブハウスよりはレスポンスが無かったりするんですけど、でも「ちゃんと聴いてくれているわ!」みたいな感じがだんだん楽しくなってくるんです。1曲目は緊張しましたけど、2、3曲目からはいつも通りにいけました。

――あきらさんの言う“見つめ合う感じ”で?

山中拓也 そうですね(笑)。

――現在ツアーのまっただ中で、その期間中にレコーディングがあって、8月には「DIP-BAP」も出してと、新曲のスパンがとても短いですが創作意欲が湧きすぎる?

山中拓也 そんな事もないですね(笑)。常に曲は思いついたら作っているし、メロディが出たらその度にレコーディングしていますし。「DIP-BAP」というシングルを作った時、芸術に触れる機会が多かったんです。喉のポリープの療養中という事もあって、歌えない時間を何に使うかという事で色んな芸術に触れていたので「アウトプットしたい」という欲がその時は凄くありました。Sg「DIP-BAP」は3曲全て自分の想いを込めてそこに投下したので、一旦ゼロになったんですよね。

――「DIP-BAP」で療養期間中にあったものは吐き出した?

山中拓也 それくらい重いものにしたくて、3曲とも濃くしたんです。「次何にしようか」と思った時、すごく大変でした。

難産すぎて自分的にはすごく落ちていた

Bassのあきらかにあきら(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

Bassのあきらかにあきら(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

――「5150」の制作はいつごろから?

山中拓也 曲の形がバシッと決まったのはレコーディングの直前だったんです。夏フェスの頃ですね。「DIP-BAP」が出来たのが今年1月とか、下手したら去年なので、7カ月くらいは本当に全然出来なかったんです。

――かなりの難産でしたね…。今作は歌い方がかなり変わった印象なのですが。

山中拓也 曲の感じが凄く変わったというのもあって、それも影響していると思います。

――更にエモーショナルになっていると感じました。

山中拓也 そうですね、もともとエモという部分はTHE ORAL CIGARETTESがずっと持っているもので、「楽しいだけじゃないよ」とずっと言い続けていますし、感情というものを動かせる歌を歌い続けたいとずっと言っていたので。自分達がどこに向かって行くのかと考えた時に「5150」という曲は凄くデカい曲になるだろうなと思います。

――「5150」のタイトルはどのタイミングで決めましたか?

山中拓也 歌詞が出来ているタイミングではもう決まっていました。難産も難産すぎて、自分的には凄く落ちていたんです。曲が出来ないというストレスもありましたし。復活したタイミングで自分達の環境が変わったという事もあったので、周りからのプレッシャーも倍どころではないくらいのものだったんです。本当に押しつぶされそうになったんです。そういう中で、どの曲を聴いても、自分が生み出した曲でも良いと思えなかったり、誰の音楽であっても、音楽自体が凄く嫌になった時期がちょうどその半年の中にあったんです。

――心が荒(すさ)んでいた時期?

山中拓也 そうです。4人でスタジオに入って、何か参考に出来たらいいなと思って色んな音楽を聴いていてもどれも「面白くない」って。「コレどう?」とか持ち寄ったりしてくれるんですけど、「もう音楽イヤかも」みたいな(笑)。「今は聴きたくない時期なのかも」という感じに。

――その時は殺伐としていた?

あきらかにあきら もう殺伐ですね。でも分かるんですよ。「DIP-BAP」で全部詰めた分、次に何を提示したら良いのかという感じ。曲はもちろん出来てはいる、でも納得がいかない、推し曲にはならないと。その中で、アルバムを見据えてどんどん曲を作っていかなければいけないプレッシャーと、思っている以上のものが自分の中で生まれない葛藤がこっちにも伝わってきました。

――そういう状況の中で、言い合いなど揉めたりはしませんでしたか?

山中拓也 無い事はないですけど、ケンカまではいかないですね。ちゃんとスタジオで大人になって話す感じですね。

――大人じゃない時期も?

山中拓也 それは各々にあったんじゃないですかね。メンバー間ではなく、プライベートでそれが出てしまったりとか。俺は凄く支えてもらっていたという感覚があったので、俺は無いと思っています。もしかしたら俺はメンバーに当たっちゃっていたかもしれないですけど(笑)。

一同 はははは!

――そういった中で「5150」が出来た時、皆さんどうでしたか?

Drの中西雅哉(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

Drの中西雅哉(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

中西雅哉 「DIP-BAP」以降はずっと方向性が見えていなくて、「どういうのを推し曲にしたら良いんだろう?」というのがあったんです。拓也が弾き語りでサビを歌った感じが、凄く素直に出てきた感じというのがあったんです。その後に、どういう方向性の曲をイメージして歌っているのかというのを聞いたりして、結構アップテンポの曲のイメージだったので。

――その時の弾き語りはわりとスローな感じだったのでしょうか?

中西雅哉 頭の部分を最初に歌っていて、「これはどっちにでもいけるな」という印象でした。「バラードを作ったの?」みたいな感じだったんですけど、そうではなくて推し曲としてアップテンポの曲にするという事を聞いた時に、何となく僕もサビのビートっぽい感じが良いんじゃないかなと思って、サビをちょっと合わせた時にそれがハマるなと思いました。

――シゲさんは「5150」の最初の印象はどうでしたか?

鈴木重伸 弾き語りを聴いて、同じくアップテンポの曲とは思わなかったです。メロディ押しの曲を作るのかなと思っていて、イントロのコード感を聴いたら「あれ違うな」と思って(笑)。

――その部分もアコギで弾いたのですか?

山中拓也 そこはエレキに持ち替えて、ここはこう、狂った感じを出していこう、みたいな。

――そこのパートはエグさがありますね。

鈴木重伸 そうですね。けっこう素直に出来たので、セッションで合わせる時に「それそれ!」みたいな感じになる時があって、何か不思議な感じでしたね。

――アレンジはすんなり出来た感じ?

一同 すんなりじゃないです!

山中拓也 だってサビを一度ハーフテンポにしたりしましたもん。サビを全部ハーフにしようみたいな流れがあって、「リード曲でもハーフのサビがあってもいいんじゃないか?」みたいになってきて(笑)。

――それはだいぶ奇をてらったのですね…。

山中拓也 あははは! そんなのもあったんです。

――二転三転して今のアレンジになったんですね。ライブで演奏するという事を前提にアレンジを考えていたのでしょうか?

山中拓也 そうですね。

――それだったらサビがハーフテンポというのは無いなと?

山中拓也 ライブを想定した上でハーフにしようとしたんです(笑)。

あきらかにあきら イントロが早くてカッコいい、というのが分かってサビはメロディが良いからハーフでも合う。でもそれを繋ぐAメロとBメロの流れが全くないんですよ。どう組み立てたら上手くもっていけるかというのが凄く難しくて。「どれか諦めなければいかん」となったんです。それで、ハーフを諦めたりして、コードの流れを倍にした方が良いんじゃないかとか、色々やってようやく答が見えた時は「ハア、良かった」と。嬉しかった!

――タイトルの「5150」は海外で「危険人物、要注意人物」などを指す隠語のようですが、このタイトルに込められた意図は?

山中拓也 テーマとして「光と闇が介在」する」というのも、最初曲ができない鬱憤しか歌詞の中に入ってなかったんです。この辛い状況を書こうというのではなく、今の状況をとりあえず歌詞にしようくらいの気持ちで歌詞にしたので、そこにはマイナスしかなかったんです。マイナスしかなくてずっと苦しんでいるので、今まで起きなかった現象もかなり起きたんです。吐き気がするとか、歌詞をグチャグチャにして頭が狂ってきた、みたいな。

 そういう自分を見ていたので、それは自分なんだけど自分じゃない、みたいな。それは一種の精神疾患者みたいだなと思って、「5150」という言葉をくっつけたら、そこと繋がる部分があるなという所もあったんです。あとは、苦しんで苦しんでやっと光が見えたのがこの曲だったので、「51+50で101」、“100の限界を超えた今、自分が居るんだよ”というのにもピッタリ合うなという所でこのタイトルにしました。

 シゲ(鈴木重伸)に狂ったようなリフを聴いて欲しいとリクエストしたのも大きかったです。曲作りの工程に関してはもうピュアにピュアにですね(笑)。

――そうだったのですね。てっきり「5150」はエディ・ヴァンヘイレンが使用しているギターアンプの「EVH5150」から取ったものかと思いました。拓也さんもこのアンプ使っていますよね?

山中拓也 はい。この「5150」の数字の意味を知ったのはそのアンプがきっかけでしたね。

(取材・村上順一)

作品情報

New Single「5150」
11月16日 リリース
初回盤 1600円(tax out)AZZS-54
通常盤 1200円 (tax out) AZCS-2056

▽収録曲
M1. 5150
M2. アクセス×抗体
M3. ミステイル

▽初回盤DVD内容
初のホール公演となった地元・奈良でのワンマンライブ『THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンライブ〜故郷に錦を飾りまSHOW!!〜」からライブ映像を5曲収録。

01. エイミー
02. 気づけよBaby
03. マナーモード
04. DIP-BAP
05. A-E-U-I

ライブ情報

▽THE ORAL CIGARETTES唇ワンマンTOUR 2016〜キラーチューン祭り東名阪ワンマンの巻〜
11月15日(火)愛 知・Zepp Nagoya
11月16日(水)大 阪・なんばHatch
11月22日(火)東 京・Zepp Tokyo
※全公演ソールドアウト

▽THE ORAL CIGARETTES唇ワンマンTOUR 2017
4月6日(木)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
4月8日(土)高松 festhalle
4月9日(日)高知 CARAVAN SARAY
4月11日(火)札幌 PENNY LANE 24
4月12日(水)札幌 PENNY LANE 24
4月16日(日)仙台PIT
4月23日(日)新潟 LOTS
4月27日(木)福岡 DRUM LOGOS
4月28日(金)福岡 DRUM LOGOS
4月30日(日)広島 CLUB QUATTRO
5月4日(木・祝)Zepp Nagoya
5月12日(金)大阪 Zepp Osaka Bayside

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