「ここから10曲連続でいきたいと思います」

撮影・福本和洋(MAETTICO)

撮影・福本和洋(MAETTICO)

 ここで「ここから10曲連続でいきたいと思います」と佐藤が宣言し、始めたのは「ショートホープ」。お洒落なコード進行で、さっきまでの空気感とはまた違う大人なステージを展開していく。そして、歌川菜穂(Dr)と藤本ひかり(Ba)が作り出すバウンスしたリズムが心地よい「TOKYO HARBOR」、佐藤もセクシーな歌声で歌い上げていく。更に、『純情ランドセル』1曲目に収録されている「ボール」を披露し、グルーヴィーな演奏でオーディエンスを魅了していく。

 前衛的なサウンドの「ひつじ屋さん」では、フリーダムにやりたい放題な演奏で、ステージもフロアもヒートアップ。ラブソングらしいのだが、それを感じさせない曲の雰囲気、なんとも混沌とした赤い公園らしい楽曲の一つ。更に、楽曲は続く。「のぞき穴」、「絶対的な関係」と攻撃的アッパーチューンで高揚感を煽っていく。

 ここで、歌川の「大変だ? 喧嘩だってよ?」の煽りから、佐藤が「一戦交えますか? レディーファイト!!」の掛け声で「喧嘩」に突入。藤本もベースを振り上げ暴れまくる。「ごきげんなナンバーを一つ」と佐藤が紹介すると、この梅雨の時期にぴったりの「ナンバーシックス」を披露。ここからポップなセクションへ突入する。

撮影・福本和洋(MAETTICO)

撮影・福本和洋(MAETTICO)

 母親に向けて書いたという「ハンバーグ!」では、軽快な16ビートのリズムに乗って自然と体が横に揺れる。そして、メジャー感漂うメロディラインだが、なぜかそれを感じさせないサウンドの妙を堪能できる「あなたのあのこ、いけないわたし」と赤い公園的ポップソングでライブを彩っていく。

 ここで、MCを挟む。佐藤がこのツアーで成長した話や、ツアーで回った北海道・旭川での佐藤らしい話など、楽曲同様MCでも独特の世界観を観せ、オーディエンスを楽しませる。続いて、シングルでリリースされた春を感じさせる楽曲「Canvas」へ。シンセのキラキラした感じと、バンドサウンドのコントラストが際立つナンバー。生で聴くとまた違った趣がある。

 そして、眠りや夢をテーマにしたセクションへ突入。フィンガースナップがリズムを刻み左右にパンニング「ナルコプレシー」へ。海に一線の太陽の光が差すようなライティングで楽曲の世界観を盛り上げる。曲が終わるとウィンドチャイムが鳴り響く。そうしたなか、津野がエレクトリックピアノを奏でる。

 佐藤が、白いメトロノームの針に手をかけると、規則正しいリズムの上「おやすみ」を披露、深い眠りに落ちそうな心地よい空間が広がる。メトロノームの音が無機質に会場に響く。続いて、「デイドリーム」を演奏。まさにゆらゆらとした白昼夢を感じさせるサウンドで会場を包み込んだ。

ラストは「西東京」でツアー終幕

撮影・福本和洋(MAETTICO)

撮影・福本和洋(MAETTICO)

 空間が閉じていくようなギターサウンドに導かれるように、「ふやける」へ。静から動へと感情を揺さぶり扇情していく。バンドのエネルギーがステージから放たれ、昇華していく様がわかる。何もない空間に音で絵を描いていく。複雑に絡み合うサウンドによって、意識がこの空間に溶け込んでいくようだった。

 「まだまだいけますか? 東京!!」と佐藤が叫び、ファンキーなギターカッティングが印象的な「KOIKI」へ。津野と藤本もステージ前方で楽しそうに演奏する姿が印象的。そして、開放感あふれるナンバー「NOW ON AIR」の間奏ではオーディエンスも手拍子で盛り上がり、一体感を演出していく。本編ラストは「黄色い花」。サビでは風に揺れるタンポポのように、フロアを満たすオーディエンスは腕をゆらりと横に振っていた。温もりあふれるポップナンバーで、本編を終了した。

 アンコールの手拍子の中、メンバーが再びステージに。ラストは「西東京」。立川出身の彼女たちを表現した楽曲。まずはコールアンドレスポンスの練習。「青く照らしてる」のフレーズを何度かやっていくが、ここで佐藤が暴走。アドリブでロングフレーズを歌い出し、オーディエンスはおろか、メンバーもついていけない状態に。

撮影・福本和洋(MAETTICO)

撮影・福本和洋(MAETTICO)

 そして、レクチャーを終了し「西東京」本編へ。佐藤も拡声器を使用し、中域が強調された歪んだサウンドで、ワイルドに聴かせていく。お互いがせめぎ合う激しいロックチューンで、『赤い公園マンマンツアー2016 ~咲き乱れNight?~』の幕を閉じた。

 赤い公園を言葉で表現するとすれば、まさに「自由」という言葉が合うのではないだろうか。彼女たちが紡ぎ出すサウンドには秩序やルールなどない、まさに自由な精神が感じ取れた。楽器で例えるならフレットがあるものではなく、フレットレスなイメージだ。メンバーの誰も一歩も譲らない音と音のぶつかり合いが、ケミストリーを生み、これからも新しいサウンドが作り出されていくことが、容易に予感出来たステージであった。(取材・村上順一)

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