東京発の3人組バンド、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョ・コ・パ・コ・チョ・コ・キン・キン)が、『tiny desk concerts JAPAN』(NHK総合3月2日午前0時25分〜)に登場する。舞台はNHKのオフィスを離れ、上野・東京藝術大学の「藝大部屋」で開催。特異な空間で、彼らは「世界旅行」という不敵なテーマを掲げ、極上のサウンドとグルーヴを届けた。

 【写真】CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN『tiny desk concerts JAPAN』パフォーマンスの模様

 「tiny desk concerts」は、米公共放送NPRが2008年にインターネット配信を開始して以来、瞬く間にブームとなり、テイラー・スウィフトやBTSといった世界のビッグネームも参加してきた音楽プラットフォームだ。NHKが本家NPRよりライセンス供与を受けて制作する日本版では、オフィスという日常空間で、アーティストの「生声」と楽器の「生音」のみが響き渡る。Season1では藤井風や稲葉浩志(B’z)、Season2ではASKAや石川さゆりといった豪華な顔ぶれが、この特殊なフォーマットだからこそ実現できる、新たな息吹を吹き込まれたライブを披露してきた。

 今回登場するCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINは、小学校4年生で結成。全員がギターだったため小学校5年生で一度解散。時を経てコロナ禍で再結成したDaido(Vo/Steel Pan)、Yuta(Ba)、So(DJ)による3人組バンドだ。世界各地の多様なリズムを深く探究し、独自の解釈で再構築。そこに電子音楽を絶妙なバランスで融合させ、新たな音楽的境地を切り拓いている。

「丸裸」のセッション

 今回の舞台は、通常のNHKオフィスを飛び出し、上野にある東京藝術大学・芸術未来研究場「藝大部屋」でのパフォーマンスだ。昨年6月に「ちゃんみな」が東京大学でライブを行ったのがきっかけとなり、特別編「in schools」企画の第2弾が実現。東京藝術大学の学生や地元住民が観客として取り囲むなかで行われた。CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINの面々が、至近距離に観客がいる光景を前に「異質な空間だ」と緊張を口にしていたのも印象的だった。

 『tiny desk concerts』には、音を確認するためのモニターも、観客が聴くためのメインスピーカーもない。全てが生音だ。普段、彼らの楽曲の骨格を成しているのは、緻密にレイヤーされたサンプリングと電子音である。しかし、この“小さな机”の前では、それらの武器は機能しない。

 3人は、今回のライブを「丸裸の状態」と呼ぶ。音源やライブなど、音を届ける媒介によってスタイルを変えていく彼らだが、今回の『tiny desk concerts JAPAN』では、同期演奏(あらかじめ録音した音と一緒に演奏すること)に頼らない、生音主体の新たなスタイルを提示した。

 良い演奏に不可欠とも言えるモニターすらない、一音のミスさえ許されない静謐(せいひつ)な緊張感。だが、小学校時代からの幼馴染である彼らは、その不自由さすら「音遊び」のスパイスへと昇華させた。オーガニックで生々しいダイナミズム。そこには、彼らの音楽的ルーツがより鮮明に、より美しく刻まれていた。

U-Zhaan、元ちとせ――。ゲストと共鳴する「越境のグルーヴ」

 今回のセットリストは、国境も時代も軽やかに飛び越える。タブラ奏者のU-Zhaan(ユザーン)を迎えた「ガンダーラ」では、南アジアの風が藝大部屋の空気を震わせ、「tradition」ではガーナ出身のパーカッショニスト、Nii Tete Boyeによるパンロゴ(ガーナのガ族に伝わる民族楽器)が、大地を叩くようなアグレッシブなビートを刻む。

 奄美民謡の至宝・元ちとせ、牧岡奈美(三味線)、海斗(チヂン)を招いた郷土芸能・民謡の「六調」と、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINの「秩父」とのマッシュアップも大きな盛り上がりを見せた。元ちとせは「六調」について、「とにかく賑やかに踊って、皆さんの今後の幸せとか豊かになることを願う曲なんです」と説明。「最後盛り上がっていただけたら」と語り、三味線とチヂン(太鼓)が刻むリズムに、CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINのビート感覚が憑依する。その瞬間に生まれたえもいわれぬ高揚感は、単なる「セッション」を超え、ある種の祝祭に近いものへと変貌を遂げた。

「フェイク」という名の真実。響きが作るパラレルワールド

 日本語の歌詞にも注目。彼らにとって歌詞は、シンセサイザーやギターに加える「エフェクト」に近いものだという。「tradition」に登場する<Yammi yat pala-lai>といった耳に残る印象的な言葉。彼らが標榜する“フェイクアフリカ”、“フェイクランゲージ”という概念は、特定の文化への過度な執着を避け、どこにも存在しない「不思議な場所」へと聴き手を誘う。

 「楽しくやるということが前提条件としてある」

 このシンプル極まりない信念が、幼少期からの絆によって裏打ちされ、強固な説得力を持って鳴り響く。国際放送を通じて世界およそ160の国と地域へ放たれるこの約30分間は、言葉の壁を粉砕し、世界中の音楽中毒者たちに「新しい音楽の定義」を突きつけることになるだろう。【取材=村上順一】

番組情報

NHK ワールド JAPAN(国際放送)
2月22日(日)11時10分 / 19時10分
2月23日(月)0時10分 / 6時10分

総合テレビ(国内放送)
3月2日(月)0時25分〜0時54分(※3月1日深夜)

<セットリスト>

1.ガンダーラ feat. U-zhaan
2.ワタツミ
3.キューバ
4.ハイヤー
5.tradition feat. Nii Tete Boye
6.六調(秩父)feat. 元ちとせ、牧岡奈美、海斗

<ミュージシャン>
Gt/Key:羽鳥慶(Hatori Kei)
Per:筋野優作(Sujino Yusaku)
Dr:山本直親(Yamamoto Naoya)
Chorus:真生(Mao)

<ゲスト>
Tabla:U-zhaan(ユザーン)
Per:Nii Tete Boye(ニテテボーイ)
唄:元ちとせ(Hajime Chitose)
三味線/唄:牧岡奈美(Makioka Nami)
チヂン:海斗(Kaito)

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)