秦 基博のデビュー10周年を祝し、富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催したAugusta Camp 2016

秦 基博のデビュー10周年を祝し、富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催したAugusta Camp 2016

 杏子や山崎まさよし、スキマスイッチ、元ちとせらが所属する、オフィスオーガスタによる音楽フェス『Augusta Camp 2016 ~produced by 秦 基博~』が9月17日、山梨県富士吉田市の富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催された。1999年に始まった同フェスは毎年恒例の行事にもなっている。今年は、同会場での開催は10年ぶりで、11月にデビュー10周年を迎える秦 基博がプロデュースを務め、秦のアイデアと選曲のもとに“オーガスタ”ならではのセットリストとコラボレーションで、総勢13組のアーティストが約6時間にわたり、名曲を紡ぎ、全43曲を歌い届けた。

オープニングナンバーはデビュー曲「シンクロ」

秦 基博

秦 基博

 正午過ぎ、空には太陽こそ出てはいないものの、暑さも感じさせない程よい気候。時折、心地良い風も吹いてくる中、開演前にはフードコーナーや物販などで楽しむ観客の姿があった。なんともお祭り気分な空間に待ち時間も苦にはならない。

 ライブは午後2時、定刻通りにスタート。秦 基博の10年を振り返る映像がスクリーンに映し出された。映像が終わるとゆっくりと秦がステージ袖から登場する。アコギを抱えて奏でる。“オーガスタキャンプ”の幕は、彼のメジャーデビュー曲「シンクロ」で開けた。力強く伸びやかな歌声がコニファーフォレストに響き渡った。「天気が程よい感じで良かったです」と爽やかな笑みをこぼす。

 第1部は、秦 基博の曲を、かわるがわるゲストと演奏していくというアコースティックセット。1人目のさかいゆうが秦のモノマネをしながら登場。「秦 基博の曲で3番目に好き(笑)」という「青い蝶」を2人で披露した。「世界中で数ある自転車の曲の中で一番好き」とフォロー入れるさかいに秦が「ゆずさんの『夏色』より上なの?!」と聞き返す。秦 基博とさかいゆうの歌声とギターとピアノのコントラストは心地良く、野外に滲みこんでいくようだった。

 続いて、浜端ヨウヘイと松室政哉が登場。ここで秦が浜端のことを“バタやん”と呼んでいることを明かした。そんな和やかな雰囲気の中、後輩2人と「虹が消えた日」を披露。3人のハーモニーが歌の存在感をグッと引き上げていく。ジャージ姿で登場した竹原ピストルとは「Dear Mr.Tomorrow」を秦とはまた違った曲の色を見せる男らしい歌声にオーディエンスから拍手が送られた。「これがチャンピオンの歌声」と秦の歌を賞賛する竹原。

 そして、元ちとせが登場。秦から「オーガスタの中で僕の顔が一番好みというのは本当ですか?」という質問を投げかけられる。「私、大相撲が好きで…」と返すと観客から「あ〜」という共感の声が。そんな雰囲気の中、演奏されたのは「ディープブルー」。曇っていた空から太陽が顔出す。海から海底に差し込む一筋の光のような神々しい雰囲気と相まって、元の美しい歌声が会場を包み込んだ。

 次はスキマスイッチの大橋卓弥と常田真太郎の2人がステージへ。大橋が過去に、歌詞の解釈を「これはこういうことだろ?」と尋ねたものの秦に「違います」とバッサリと切り捨てられたエピソードを持つ楽曲「僕らをつなぐもの」をセッション。大橋の情感たっぷりな歌声と秦の穏やかな歌声とが溶け合い、オーディエンスも静かに耳を澄ませた。

 大橋を送り出し、迎え入れたのは岡本定義(COIL)。引き続き、スキマスイッチの常田が鍵盤ハーモニカで参加。「休日」をゆったりと聴かせてくれた。鍵盤ハーモニカの温かい音色に岡本定義の味のある歌声が相まって心地よい空間を作り上げていたのが印象的だった。

 一転、杏子が元気良くステージに登場。岡本はベースで、ドラマーのあらきゆうこもパーカッションで参加し、「Fast Life」を披露。妖艶でハスキーな歌声で出だしを歌い終わった杏子が、<どうしたいの、秦 基博?>とオーディエンスにコールアンドレスポンスを求め、対して秦が<みんなと盛り上がりたい〜♪>と応える。それをきっかけに楽器隊も参加し、ビートの効いたグルーヴィーな演奏でオーディエンスも総立ちとなって盛り上がった。

秦 基博と山崎まさよし

秦 基博と山崎まさよし

 続いては山崎まさよしがステージに。杏子と大橋卓弥もコーラスで参加し、「風景」を演奏。なんとも贅沢なコーラス隊とともに秦と山崎の歌声から、まさに情景が見えてくるような瞬間だった。ここで、同じくデビュー10周年を迎えた長澤知之が登場。秦は「いい関係で10年来られたと思う」と同期の長澤知之との思い出を語った。そんな2人で披露したのは「アイ」。互いの絆が感じられるような共演に、温かい拍手が送られた。

 1部のラストは、福耳の「夏はこれからだ!」を出演者全員でセッション。秦 基博の乾いたアコギの音が風に乗って届けられる。アコースティック編成とはいえフルバンドのような豪華な音像。なんともアットホームな雰囲気で楽しげな「夏はこれからだ!」を聴かせてくれた。この空気感をこのままもっと堪能したいと思ったオーディエンスも多いのではないだろうか。

第2部はバンドセットで盛り上げる

秦 基博とスキマスイッチの2人

秦 基博とスキマスイッチの2人

 1部が終了し、今年1月にメジャーデビューを果たしたNakamuraEmiが登場。1曲目は「YAMABIKO」。小柄な体からは想像できないパワフルな歌声がコニファーフォレストに響く。まさにYAMABIKOとなって声が帰ってくるような力強い歌を聴かせてくれた。演奏前、丁寧に楽曲の解説を添えた「使命」では、その鬼気迫る迫真の歌にオーディエンスを惹きつけ、ゆったりとしたバラードナンバー「めしあがれ」では景色が見えてくるような歌を聴かせる。ラストは、現在の自分があるのは様々な人のおかげだということ、さらに自身への叱咤激励の想いを詰め込んだ「メジャーデビュー」を堂々と披露、その存在力をしっかりと示した。

 その後第2部がスタート。迫力のフルバンドでのセクションで、秦をホストにゲストの楽曲をコラボしていく。1人目は長澤知之、「あんまり素敵じゃない世界」をパワフルに歌い上げ、続いて、浜端ヨウヘイを呼び込み、彼のデビュー曲「結-yui-」を、さかいゆうとは一緒に作った曲「ピエロチック」をソウルフルに、エンディングでは二人でピアノの連弾を観せ、会場を湧かした。

 岡本定義との共演に秦が選んだ楽曲は「ミサイル・カウンシル」。「秦くんがこの曲を選ぶとは思わなかった。嬉しい」と意外な選曲に驚いた様子。岡本のフライングVから放たれるサウンドは荒々しいロックサウンド。そこに秦の歌声が混じり合い、また趣が違う楽曲となって届けられた。

 そして、松室政哉と「オレンジ」、元ちとせと「千の夜と千の昼」を竹原ピストルはこの日のために新曲を作ってきたと報告。意中の女性に告白ができないシャイボーイに送る曲だという「ちゅちゅちゅ I want you.」を、ゆったりとしたレゲエ調のサウンドに、ユーモラスなダンスを交えて笑いを誘う。サビではオーディエンスも挙げた手を縦に振り、抜群の一体感をみせた。

 バックバンドを務める弓木英梨乃(Gt)のディレイサウンドが会場に響き渡り杏子が登場。バービーボーイズの代表曲「女ぎつね on the run」を歌い届けた。会場一面にキツネを指で模った手が揺れる。杏子も衣装をなびかせながら華麗に回転し、華のあるステージングで魅了した。

 スキマスイッチが登場し、先ほどの「僕らをつなぐもの」の歌詞についての続きを話し始めた。<月明かりかと思ってみれば変わる間際の黄色い信号>というフレーズに「そんなことある?」と大橋が突っ込んだことを明かした。秦は、10年前に初めて出演したオーガスタキャンプで、「この曲が印象的だった」と次曲「ボクノート」を選んだ理由を語る。そして、松室政哉を呼び込み3組で「ガラナ」へ。イントロが始まるとオーディエンスの手拍子が盛大に響き渡り、終盤で「Ah Yeah!!」がマッシュアップされるとタオルが宙に投げ出される圧巻の光景が広がった。ノリの良い楽曲にオーディエンスのテンションもどんどん上がっていった。

 2部の最後は山崎まさよし。「ウコンの力」のCM共演のエピソードも飛び出し「春も嵐も」を演奏。浜端ヨウヘイもキーボードで参加し、そして、秦のアコギと山崎のエレキギターの音が絡み合い、ご機嫌なロックサウンドを聴かせてくれた。そして、山崎まさよしの代表曲の1つである「セロリ」ではグルーヴィーなリズムに体も自然と揺れる。間奏から全出演者がステージに登場し、豪華なセッションで第2部が終了した。

新曲「70億のピース」を披露

秦 基博

秦 基博

 日も落ちてきたところで、第三部の前には「元ちとせ with UQiYO」のステージが設けられた。エレクトロユニットUQiYO(ウキヨ)をサポートメンバーに迎え、ヒット曲「ワダツミの木」でスタート。低音の効いた幽玄な音像で、オリジナルとはまた違った姿を映し出した。続いてはThe Sugarcubesのカバーで「Birthday」、UQiYOのオリジナル曲「Ship’s feat. 元ちとせ」と、個性の強い楽曲を繰り出し唯一無二の世界観へ誘う。神秘的な歌声はどこまでも広がりを見せ、夜空をキャンバスに絵を描いていくようなサウンドに会場も酔いしれる。ラストは、新曲「君の名前を呼ぶ」で締めくくられた。転換の間、スクリーンに秦とゆかりのある人々からのお祝いコメントが流れた。笑い声や歓声があがり、祝福ムードに湧く場内。

 そしていよいよ第3部は、秦 基博のワンマンライブを展開。10周年を迎えた秦がどのようなステージを魅せるのか期待が高まっていく。ゆっくりとステージに登場し、アコギを抱え、1曲目は「グッバイ・アイザック」。続けて「花咲きポプラ」「SEA」と軽快な楽曲で盛り上げ、10周年と言う節目で完成した新曲「70億のピース」をライブ初披露。「シンガーソングライターとして曲を作り続けて、10年掛かってこの曲にたどり着いた気がします。今日みんなと会えていることもそうだと思うし、自分が生まれてから出会ってきた人たちとか、繋がり合いの中で自分が生きているんだという思いを曲にしました」と楽曲に込められた思いを話した。「キミ、メグル、ボク」では数え切れないほどの風船がステージ前方から大空へ放たれる演出も。

 今年2月にリリースした「スミレ」では、8人のスミレちゃんダンサーズも登場し、なんとも賑やかなステージで楽しませた。そして、今回の選曲でやりたいと思っていた曲で、10年前の「オーガスタキャンプ」でも歌ったと言う「朝が来る前に」。ステージセットが無色の照明で幻想的に照らし出される中、しっとりと歌う秦。「10年前に歌った楽曲はもう1曲あります」とラストは「鱗(うろこ)」を伸びやかな歌声で聴かせ、ステージを終えた。

秦 基博と長澤知之

秦 基博と長澤知之

 アンコールを求める拍手の中、秦がTシャツに着替え登場。長澤知之を呼び込み、2人で10年を振り返った。長澤が「皆さんやスタッフに感謝をする10年なんだろうなと思います。なので、心からありがとうと伝えたいです」と感謝を告げると、2人で長澤の楽曲である「僕らの輝き」を熱唱した。長澤のどこまでも真っ直ぐな歌声が胸に響き、秦の優しい歌声がハーモニーを加え空に広がっていくようだった。

 そして、本日の出演者を呼び込み、自身の大ヒット曲「ひまわりの約束」を皆で歌い継ぐ。オーディエンスもその心地の良いメロディに身を委ね、風に揺られるひまわりのように揺れていた。ラストはNakamuraEmiとUQiYOもステージに登場し、福耳の「星のかけらを探しに行こう Again」を全員で盛大に歌い上げた。

 杏子の合図でオーディエンスから「10周年おめでとう!」と秦 基博と長澤知之に祝福の言葉が送られた。約6時間、全43曲を披露した『オーガスタキャンプ2016』は大団円を迎えた。夜空には花火も上がり、秋の気配を感じた夜空を彩った。(取材・村上順一)

セットリスト

『Augusta Camp 2016 ~produced by 秦 基博~』
9月17日 富士急ハイランド・コニファーフォレスト

第一部 コラボパート【アコースティックセット】

M1.シンクロ
M2.青い蝶(with さかいゆう)
M3.虹が消えた日(with 浜端ヨウヘイ・松室政哉)
M4.Dear Mr.Tomorrow(with 竹原ピストル)
M5.ディープブルー(with 元ちとせ)
M6.僕らをつなぐもの(with スキマスイッチ)
M7.休日(with 岡本定義 ・常田真太郎)
M8.Fast Life(with 杏子 ・岡本定義・あらきゆうこ)
M9.風景(with 山崎まさよし ・杏子・あらきゆうこ・大橋卓弥)
M10.アイ(with 長澤知之)
M11.夏はこれからだ!(with ALL STARS) ※オリジナル:福耳

NakamuraEmi

M12.YAMABIKO
M13.使命
M14.めしあがれ
M15.メジャーデビュー

第二部 コラボパート【バンドセット】

M16.あんまり素敵じゃない世界(with 長澤知之)
M17.結-yui-(with 浜端ヨウヘイ)
M18.ピエロチック feat. 秦基博(with さかいゆう)
M19.ミサイル・カウンシル(with 岡本定義)
M20.オレンジ(with 松室政哉)
M21.千の夜と千の昼(with 元ちとせ)
M22.ちゅちゅちゅ I want you.(with 竹原ピストル)
M23.女ぎつね on the run(with 杏子)
M24.ボクノート(with スキマスイッチ)
M25.ガラナ~Ah Yeah!!(with スキマスイッチ・松室政哉)
M26.春も嵐も(with 山崎まさよしand ・浜端ヨウヘイ)
M27.セロリ(with ALL STARS)

元ちとせ with UQiYO

M28.ワダツミの木
M29.Birthday ※オリジナル:The Sugarcubes
M30.Ship's feat. 元ちとせ ※オリジナル:UQiYO
M31.君の名前を呼ぶ

第三部 秦 基博 in Augusta Camp

M32.グッバイ・アイザック
M33.花咲きポプラ
M34.SEA
M35.70億のピース
M36.パレードパレード
M37.キミ、メグル、ボク
M38.スミレ
M39.朝が来る前に
M40.鱗(うろこ)

ENCORE

M41.僕らの輝き(with 長澤知之)
M42.ひまわりの約束(with ALL STARS)
M43.星のかけらを探しに行こう Again(with ALL STARS)

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