2022年に行われた第9回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞した白山乃愛が、松村北斗が主演を務める映画『秒速5センチメートル』(2025年10月10日公開)に出演。高畑充希が演じる篠原明里の幼少期を演じた。新海誠不朽の名作にして新海ワールドの原点『秒速5センチメートル』を奥山由之監督による初の実写化。大切な人との巡り合わせを描いた、淡く、静かな、約束の物語。オーディションを経て明里役を射止めた白山に、撮影秘話や共演者とのエピソード、作品への想いを聞いた。(取材・撮影=村上順一)
全てがきれいで、感動して、胸がいっぱいになりました
――出演が決まった時の、周囲の反響はどうでしたか?
家族みんなで一緒に喜んでくれました。友達も、発表された時に「すごい!絶対観に行くね」と言ってくれました。
――完成した映画をご覧になった感想は?
全てがきれいで、感動して、胸がいっぱいになりました。一つ一つのシーンが大切な瞬間でした。
――原作であるアニメーションは観たことがありましたか?
存在は知っていたのですが、観たことはありませんでした。オーディションに合格し、役の参考のためにアニメを観ようと思ったのですが、「役作りのためにあえて観ないでほしい」と奥山監督に言われたので、最初は観ませんでした。
――そうだったんですね。撮影後に原作アニメーションを観た感想は?
「明里ちゃんはこういう子なんだな」と改めて発見があり、とても勉強になりました。監督の言葉を頼りに演じたのですが、監督が言っていた明里ちゃんと、原作の明里ちゃんは、本当にどちらも素直な女の子で共通するところがたくさんありました。
――『秒速5センチメートル』で好きなシーンは?
森七菜さん演じる花苗さんと、青木柚さん演じる高校生の貴樹くんのシーンが印象に残っていて、花苗さんが貴樹くんの袖を引っ張るシーンは本当にキュンキュンしました。
――奥山監督とはどのようなやり取りをしましたか?
どうすれば自然な演技ができるのか、シーンごとの明里ちゃんの感情はどういうものなのか、というのを監督と一緒にたくさん話し合いながら役を作り上げていきました。
――奥山監督からかけられた言葉で、特に印象に残っているものはありますか?
「明里ちゃんを演じ切るのも大切だけど、私らしさ、自分らしさを出すことも大切だよ」という言葉をいただき、それがとても印象に残っています。
――オーディションの時に意識していたことはありますか?
オーディション当日に台本をいただいたので、セリフを覚えるのに必死でした。意識したことは、相手役の男の子の目をしっかり見て演じることでした。
――演じる上で、ご自身と明里が似ていると感じる部分はありましたか?
たくさん笑うところだと思います。面白かったらちゃんと面白いと言って笑うし、悲しかったらたくさん泣いて、悲しいということをちゃんと伝えるところは似ているのかなと思いました。
――役作りで苦戦した部分はありましたか?
泣くシーンがあまり得意ではなく、不安な気持ちもありました。そのシーンは緊張しましたが、監督が色々教えてくださったので乗り越えられました。明里ちゃんが久しぶりに貴樹くんと会うというシーンだったので、「早く会いたい」という気持ちと「来てくれるかな」という不安な気持ちを大切にして演じていたら、自然と涙がこぼれてきました。
――ご自身の個性を特に反映できたと感じるシーンはどこですか?
アドリブのシーンです。素の自分と明里ちゃんを混ぜたような感じで演じることができたのかなと思っています。
――本作で特に観てほしいシーンはどこですか?
踏切のシーンです。すれ違う電車が重なるのですが、そのタイミングは限られているので、とても緊張しました。その分、特別な瞬間を撮影できたと思います。
――雪の日の撮影はいかがでしたか?
とにかく寒くて大変でした。寒すぎて演技に支障が出るかな? と心配もありましたが、スタッフの皆さんが「かまくら」を作ってくださったり、カットがかかった瞬間にカイロやコートを持ってきてくださって、そのおかげで乗り越えることができました。寒かったけどとても温かい現場でした。
――本作で白山さんが好きなセリフを教えてください。
明里ちゃんの「来年も、一緒に桜見れるといいね」というセリフです。引っ越しするかもしれない二人なのに、来年のお話をしているというのが、とても切ないと思いました。とても素直な子なんだろうなということが感じられるセリフでした。
ギャップにキュンキュンした高畑充希との交流
――貴樹の幼少期を演じた上田悠斗さんはどんな方でしたか?
ワークショップでは同じクラスの男の子と一緒にいるような感覚だったのですが、撮影がいざ始まると本当に貴樹くんにしか見えないくらい、切り替えができるところがすごいなと思いました。
――撮影がない時間はどのように過ごしていましたか?
悠斗くんと一緒にいることが多く、学校で流行っていることや他愛のない会話をしていました。悠斗くんはアイドルをやっているので、ダンスをたまに見せてもらっていたのですが、そのダンスがとても綺麗ですごいなと思いました。
――ちなみに学校でいま流行っている遊びは何ですか?
友達とよくやっているのは、腕相撲と押し相撲です。友達と力の強さみたいな話をしていて、私から「腕相撲、やろう!」と言ったのがきっかけで、女の子同士でやっています。でも私はあまり強くないです(笑)。
――大人になった明里を演じた高畑充希さんの印象は?
高畑さんが歌っているのを見るのが好きで、歌っている時の力強いイメージがあったのですが、実際にお会いしたらほわっとした優しい方で、そのギャップにキュンキュンしましたし、女神みたいな方だと思いました。
――大人になった貴樹を演じた松村北斗さんともお話しされましたか。
はい。松村さんが本好きというのを知っていたので、本の選び方や、自然な演技のやり方をお聞きしました。お会いする前はほわっとした方なのかな?と思っていたのですが、実際は明るくて面白い方でした。とても楽しかったです。
――松村さんからの演技のアドバイスはどんなものでした?
松村さんは「聞いてくれて嬉しいけど、奥山監督と一緒に考えて演じるのが一番いいと思うよ」と話してくださいました。
好きな言葉は「好きこそ物の上手なれ」と「笑う門には福来たる」
――今回の作品に出演して、ご自身の中でレベルアップしたと感じることはありますか?
自然な演技のコツを掴めたような気がしています。ワークショップで、台本がない状態で会話をして、それを台本化して演じるという経験をしたことで、自然に会話している時と演じている時の違いを知ることができ、勉強になりました。
――本作で「人が一生のうちに出会う言葉の数は、日本語だと約5万語以上。その中から一言、宇宙に残すとしたら」というシーンがありますが、白山さんが好きな言葉、座右の銘があれば教えてください。
「好きこそ物の上手なれ」と「笑う門には福来たる」です。まず、「好きこそ物の上手なれ」は、私はお芝居をするのが心から大好きなんです。この言葉を胸に、これからもどんどん上手くなれるように頑張っていきたいと思っています。そして、「笑う門には福来たる」も大切にしています。これは「笑っていたら良いことが起きる」という意味ですよね。私、実は入学式の日、ニコニコしていたら声をかけてくれた子がいて、すぐに友達ができたんです。すごく嬉しかった思い出です。だから、これからもずっと笑顔で過ごしていきたいと思っています。
――「好きこそ物の上手なれ」にちなんで、お芝居以外で上手くなりたいことはありますか?
卵焼き作りです。私の祖父がとても卵焼きを作るのが上手で、それを食べて自分も焼いてみたいと思いました。祖父に食べてもらい「美味しい」と言ってもらえましたが、アドバイスをもらいながら、これからも頑張りたいです。
――役者をやっている中で、楽しいと感じる瞬間は?
カットがかかって、監督から「OK」と言っていただけた瞬間です。特に奥山監督はすごく褒めてくださるので、その言葉を聞いて「良かった~」と安心できますし、とても嬉しくてやりがいを感じています。
(おわり)
ヘアメイク:高村三花子
スタイリスト:藤井エヴィ



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