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[インタビュー、若旦那]夏といえば夏フェス、といえるくらいに近年は各方面で盛んに野外ライブフェスが行われている。今回、紹介する『FREEDOM aozora』も注目のライブフェスの一つと言えよう。2008年にZeppのスプリットツアーからスタートし、翌年からは野外フェスとして兵庫・淡路島を拠点に毎年大盛況のイベントを敢行している。このイベントの特筆すべき点は「アーティスト主導」であることだ。
数々行われているフェスの多くは「イベンター主導」であるのに対し、『FREEDOM』は、シンガーソングライターのMINMIと、ボーカリストの若旦那(from湘南乃風)が主体となって行うイベントであり、「アーティスト主導」により行われるフェスとしては先駆けのものとして高い評価を得ている。
今年も淡路島、宮崎、そして東北の宮城と、夏にぴったりの水際でのイベントとして『FREEDOM aozora 2015』が8月に各地で開催される。今回は、プロジェクトの実行委員長でもある若旦那に、このイベントを起こした目的や今回の見どころ、そして今後目指していく方向などを語ってもらった。 【聞き手・桂伸也】
開催のきっかけは「他流試合」
――最初に、『FREEDOM』というイベントを行うこととなった経緯を教えてください。
若旦那 おおもとはレゲエフェスだと思ってもらった方がわかりやすいかな? もともと第一回のメンバーは全員、レゲエ出身者でやっていたので。ジャンル型のフェスから始まって、二回目からは野外で行うことになったんです、淡路島で。そのころ「同じことをずっとやっていてもしょうがない」という思いもあり、どこかで自分たちの成長を感じたいところがあったんです。ロックフェスに出るたびに刺激的でそんなことを考えていました。他流試合というか。ちょうどそのころ10-FEETと仲が良くなったんです。
――それはどんなきっかけがあったのでしょうか?
若旦那 京都で行われているロックフェス『京都大作戦』が始まったということもありましたね。ちょうど『FREEDOM』と『京都大作戦』は同じ時期に始まって続いているし。余談ですがお互いに「交換留学生」って呼び合って、MINMIにしろ湘南乃風にしろ向こうに登場することもあるんです。今年はMINMIが“交換留学生”として登場することになっているし、10-FEETは毎年『FREEDOM』に出てもらっている。だからそういう格好で、自分たちはそれまでにあったジャンル型フェスよりも、自分たちと志が同じ人間たちと一緒にやったら、なにか伝えられるんじゃないかということを感じ始めていたんです。
――出演されるアーティストは、10-FEETやサンボマスター、RISEにDragon Ashと、随分幅が広いですね。
若旦那 そうですね。音楽的ジャンルより、「生き方」「音楽に対する臨み方」「社会との関わり方」っていうもの、そういうものが一つのジャンルになると考え、商業的にやっていないものだと思ったものが、『FREEDOM』の形になっていると思っています。
――なるほど。今では一般的な考えですが、重要なポイントですね。話が少し戻りますが、もともと第一回のイベントを行った際には、どのような経緯で「イベントをやろう!」ということになったのでしょうか?
若旦那 実はMINMIの出産がきっかけだったんです。彼女が出産した次の年に「ツアーをやらなければいけない」ことになったんです。でもまだ生んだばかりだから、二時間も歌うのは厳しい。でもファンは待っているし、ちょうどベスト盤とかも出ていましたから…それでそのとき「30分くらいだったらいけるだろう」ということで、「それだったら仲間内で対バンとして支えて」ということになったんです。
――それはナイスなアイデアでしたね。
若旦那 フェス型のツアーだったらできるだろうと、みんな当時の仲間で第一回のZeppのツアーになった経緯なんです。その反省会と打ち上げの中で、次の年には「淡路島でやろう!」ということになりました。今ではアーティスト主導のフェスって結構いっぱいあって、その先駆けになったということで「先見の明」とかいわれるんですが、実はそういう気持ちではなかったという。
食へのこだわりも
――意外ですね。行われている場所はすべて海や湖のそばというか水際ですが、それはやはり山ではなく水際にしたいという思いはあったのでしょうか?
若旦那 そうですね、イメージ的に「アイランド」というモチーフですよね。日本は島国であり、「アイランド」で生まれる音楽だと思っています。島国の音楽、日本独特の音楽でできているなという自負と誇りを持っているし。どこかで「海に囲まれている」ということは、日本的なイメージの中にはあるのではないかと思っているんです。まあ山もいいとは思いますが、そのフェスも結構他にたくさんありますし、海でやるのもいいと思いましたんで。
――なるほど。それも大きなポイントではありますね。回を重ねていくごとに、たとえば「次はこうしたい」みたいに、新たに考えられていることはあるのでしょうか?
若旦那 そうですね…今は「食の改善」ですね。音楽の質と同じくらい、みんなフェスではご飯を楽しみにしているんじゃないか? と思うんです。ロックフェスでも、みんなでご飯を買いに行く、食べに行くことは、実はフェスの楽しみの大きな要素としてあるんじゃないかと。代々木公園で行うロックフェスの食べ物と、『FREEDOM』で食べられる食べ物が同じものだったら、ちょっと味気ない気もするでしょ?
――確かに寂しい気もしますね。
若旦那 それであれば、たとえば淡路島ならそこならではの食材を用意すれば、また楽しみの幅も増えるじゃないですか? せっかくそこでやるのであれば「地産地消」というか。変な話、音楽がなくても成立する(笑)
――なるほど。そういう意味では、地域に根差したものを目標としても見据えているところもあるのでしょうかね?
若旦那 そうですね。淡路島も、東北も宮崎も、せっかくあれだけの地域ならではのおいしいものがあるんだから、そこはちゃんとエンタテインメントにしない手はないだろうとね。今、やっとそこまで手を出せるようになってきているんです。今までは舞台づくりやらキャスティング、体制作りとか、そういう部分に時間がかかっていましたから。
――確かにアーティスト主導、しかもイノベーターという立場であると、それをどうクリアするかは大きな課題ですね。どちらかというと、一つの会の完成度を高めたい、というイメージなのでしょうか?たとえばもっと「動員を増やしたい」とか、「いろんな場所で行いたい」とかいったところが、新たに出てくる目標という印象もあるのですが。
若旦那 確かに他のイベントで、そういう目標を持たれているところもあるかもしれませんよね。でも自分たちはもっとホスピタリティを充実していきたいという方向の方が大きいですね。もちろん動員や規模の大きさも重要だけど、それは自分たちにはもっと先の話だと思う。今回の旗振りはMINMIなんだけど、彼女の考え方はそんな考え方なんですよ、「背伸びせず、地に足を着けて」って。自分たちなりのイベントを行って、来てもらったお客さんみんなに楽しんでもらう、という考えなんです。
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