INTERVIEW

蒔田彩珠

「頭の中の知識は目に出る」心に響いた恩師の教え:日曜劇場『御上先生』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:25年01月26日

読了時間:約10分

 俳優の蒔田彩珠が、松坂桃李が主演を務めるTBS系日曜劇場『御上先生』(毎週日曜よる9時〜放送中)に出演。物語の舞台となる「隣徳学院」の生徒で神崎拓斗(奥平大兼)と幼馴染の富永蒼を演じる。本作は完全オリジナルストーリーで、演劇界で活躍する詩森ろば氏が脚本を手がけ、『VIVANT』『アンチヒーロー』など話題のドラマを次々と生み出してきた飯田和孝氏がプロデューサーを務める。物語は、エリート文科省官僚の御上孝(松坂桃李)が18歳の高校生たちを導きながら権力に立ち向かう姿を描いた学園ドラマだ。インタビューでは、役作りの秘話や共演者とのエピソード、俳優業のやりがい、そして今も心に残る恩師からの言葉について話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

 【写真】蒔田彩珠、撮り下ろしカット

イメージ通りにできるのか不安だった

富永蒼(蒔田彩珠)©TBS

――台本を読んでどのようなことを感じましたか。

 これまでにやったことのない役で、ここまで明るくハキハキ喋る役は初めてで、話し方とかもギャルまではいかないのですが、とてもパワフルな役だったので、まずこの役を自分のイメージ通りにできるのか不安がありました。でも脚本のストーリーがとても面白かったので、ぜひ参加したいと思ってオーディションを頑張りました。

――オーディション振り返ってみていかがですか。

 とても緊張していて、とにかく“富永をやりたい”という一心でオーディションに臨みました。

――役作りの準備段階で取り組んでいたことは?

 撮影が始まってキャストのみんなが予想以上に元気だったので、自分ももっと明るくなるよう監督やプロデューサーと相談しながら進めました。

――富永は明るくてサバサバした性格とのことですが、ご自身と富永との共通点はありますか。

 共通点はどんな物事にでも口を出したくなる性格は似ていると思います。私は富永ほどの行動力はないのですが、こうしたらいいのに、とかこういうアドバイスをしたいといった考えが出てくるところは似ているなと思いました。逆に違うところはそれを行動に移せる富永と、移せない私です。

「目が死なないように」恩師からの言葉

蒔田彩珠

――富永はゲームが上手ですが、蒔田さんはゲームをプレイしてみていかがでした?

 私はゲームをそんなにやるタイプではないのですが、なぜか『ストリートファイター』に惹かれたときがあり、購入して一時期やっていました。全然得意ではないのですが、兄が2人いることもあって、ゲームは好きです。

――『ストリートファイター』では、どのキャラクターを使っていました?

 ダルシムです。今回練習していく中で、こんなにも(技を出す)コマンドって奥深いんだなと思いました。練習をしてちゃんと技が出せるようになりました。

――松坂さんとゲームで対戦はされましたか。

富永蒼(蒔田彩珠)©TBS

 しました。松坂さんもドラマのためにゲームを練習されていたみたいで、富永がとてもゲームが強い役ということもあり、手加減してくださいました。

――主演の松坂さんとはどのようなお話をされましたか。

 ゲームセンターのシーンがドラマの中で度々あるのですが、教室にいるとみんなもいるので、2人きりでお話しとかはないのですが、ゲームセンターで2人のシーンのときに、いろんなお話をしてくださいました。たとえばお互いに自分が今まで出演した作品で、どれを一番見てほしいか、などを発表したりしていました。

――松坂さんにどのような印象を受けました?

 現場に入る前に、映画『孤狼の血』を観たので、ちょっと怖いイメージがあったのですが、常にニコニコされていて、生徒一人ひとりに話しかけてくださったり、現場の状況を見て、スタッフさんにこうした方がいいんじゃないとか、私たち生徒たちのことを一番に考えてくださっていました。とてもかっこいいなと思いながら、席からいつも見ています。

――松坂さんが御上と重なる瞬間はありましたか。

 普段の松坂さんと御上先生とは重ならないのですが、こうした方がいいんじゃないかという意見を言ってくださったり、アドバイスをくださるところは、どこか御上先生っぽいところだなと思いました。私も学生時代にそういう先生がいたので、本当に心強くて何でもチャレンジしよう、頑張ってみようと思えます。御上先生みたいな先生がいたら私もとても嬉しいです。

――蒔田さんが学生時代の先生からかけてもらった印象的な言葉はありましたか。

 中学生のときの先生で、私が出演している作品をたくさん観てくださっていました。その先生からいただいた「ちゃんと勉強はしなさい。頭の中の知識は目に出るから。蒔田はとても目が魅力的だから、これからもしっかり勉強して、その目が死なないようにしなさい 」という言葉がとても印象に残っています。

――蒔田さんの学生生活で一番楽しかったことは?

 中学生のときに修学旅行で行ったUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)と京都です。とても学生っぽいことをしているなと思い、とても思い出に残っています。
 
――コロナ禍では苦い思いをされたりも?

 はい。高校の卒業式がちょうどコロナ禍で1クラスだけ体育館で行い、他のクラスは教室からリモートでそれを見るといった状況だったので、一般的な卒業式はできなかったんです。いま撮影で毎朝「おはよう」と挨拶をして衣裳に着替えて、「今日もよろしくね」とみんなと会えるのは、本当の学校生活みたいでとても楽しいです。

ドラマの企画書から意思の強さを感じた

蒔田彩珠

――プロデューサーの飯田さんは『金八先生』に憧れがあったと話していたのですが、蒔田さん自身、学園ものを子どもの頃に見ていて印象に残っている作品、また、やってみたいなと思った作品はありましたか。

 撮影が始まって、役をつかむのが難しくて、『ドラゴン桜』などいろんなドラマを観ました。特に初期の『ドラゴン桜』は阿部寛さんがチャーミングで面白かったです。参考にできる役はないかなと思いながら、ドラマをたくさん観たのですが、富永の役と合いそうなのがなかなかなくて。『ドラゴン桜』のキャストさん、教室の雰囲気だったり、先生との関係性などは参考にしましたが、いまだに富永のロールモデルになる人は見つけられてないです。

――松坂さんや生徒役のキャスト同士で役に関して相談したことはありましたか。

 松坂さんとは役の話はあまりしていなくて、私が明るい役を演じるのに苦戦しているというお話をしたところ、「苦戦していたんだ!?」とびっくりされていました。生徒のみんなとも役の話はしなかったです。現場がただ楽しく、それぞれ長台詞があるので、それが終わったら「次も頑張れ」みたいな感じなんです。いまもみんなと高め合いながら撮影を頑張っています。

 是枝文香役の吉岡里帆さんは、「苦戦しているみたいだね」と声をかけてくださって、監督やプロデューサーさんとたくさん話し合いを重ねていることも知ってくださっていて、しっかり話し合って慎重にやった方がいいと思うよ、とアドバイスをくださいました。

――窪塚愛流さんは再びの共演ですね。

 はい。愛流くんは1年半ぶりくらいの共演なんです。私は初めての学園ものでとても緊張していたのですが、愛流くんがいてとてもホッとしました。前回共演した映画『ハピネス』のときとは全く違う役柄で、愛流くんも私も全く違うキャラクターなので、ちょっと照れくささもありながらも刺激し合って、いま撮影を頑張っています。

――奥平さんとはプライベートでも仲が良いと伺っています。奥平さんは蒔田さんとの共演に不思議な感じがしたと話していたのですが、蒔田さんはいかがでしか。

神崎拓斗(奥平大兼)と富永蒼(蒔田彩珠)©TBS

 同じ事務所なので、いつか共演しようねみたいなお話もしていたのですが、なかなか一緒にお仕事はできていなくて。奥平くんも『御上先生』のオーディション受けたと話を聞いて、絶対一緒に出たいと思いました。いつか共演したいと思っていたので、念願が叶いました。確かにどこか照れくささがありました。

――撮影していく中で刺激を受けた方はいましたか。

 物語がシリアスなだけあって、本読みもピリッとした空気感があったのですが、北村一輝さんと及川光博さんのお2人が和ませようと冗談を言ったりしていました。作品に出演すること自体初めての生徒役のみんなも安心できるような空気感になって、お2人にとても助けていただきました。

――日曜劇場の作品に出演が決まり、撮影していて感じたことはありますか。

 『御上先生』の企画書を見たとき、他のドラマとは少し違った意思の強さを感じました。それもありとても厳しい現場なんだろうなと想像していたのですが、全然そんなことはなく、監督、プロデューサーさん、キャストのみなさん本当に明るい方たちばかりです。撮影は長丁場なのですが、みんなで励まし合いながら、一つのものに対して同じ方向を向いて作っていけていると感じています。

――衣裳は制服が主になると思うのですが、制服を着られてみていかがでした?

 制服は意外と着ることが多く、まだまだ制服も全然いけると思っています(笑)。また、私の役はギャルではなく、エリート予備軍と呼ばれている生徒なので、制服を着崩さずにちゃんと着ています。勉強もしっかりやりますし、スカートを短くしたり、袖まくったりすることはないよね、といったお話しを顔合わせでしていました。生徒役は29人いるのですが、監督とプロデューサーさんが一人ひとりの席を回ってくださって、君はこういうスタイルでいこうみたいなお話があり、私も決めていただきました。

――同じ制服でも着方がそれぞれちょっと違うんですね。

 はい。ブレザーを着ない人だったり、役柄に合ったスタイルになっています。影山優佳ちゃんや矢吹奈子ちゃんの制服の着こなしがちょっとギャルっぽい感じでいいなと思いました。

自分の気持ちはちゃんと言葉にした方がいい

蒔田彩珠

――さて、俳優業にどんなやりがい感じていますか。

 今までやったことのないような役をぜひやってほしいとお話をいただけたときは、今まで頑張ってきてよかったなととてもやりがいを感じます。一度一緒にお仕事したことがある方、「お仕事を一緒にしたかったんです」と言ってくださる方とお会いしたり、お仕事をいただくと本当に嬉しいです。

――こんな役者になりたいなど、いま芽生えてきた理想像などあれば教えてください。

 同世代の俳優さんと毎日お芝居していると、いろんなお芝居の仕方があるんだなと思いました。身近なところだと奥平くんのようにリアルで繊細なお芝居をする方とか、普段は舞台をやっているから、とても声が通る方だったり、いろんなお芝居の形があるんだなというのを実感しています。コメディやミュージカルだったり、自分がまだやったことがない役にもっと挑戦していきたいです。

――本作からコミュニケーションはとても大事なんだと思いました。蒔田さんは会話などコミュニケーションについてどのように感じていますか。

 自分は嬉しいことや嫌なことなど、その時の気持ちがとても顔に出やすいタイプで、ちゃんと言葉にした方がいいなと大人になってからとても意識するようになりました。母からも不機嫌になるんだったらちゃんと言って、と言われることが多くて(笑)。自分の気持ちはちゃんと言葉にした方がいいなと、そこは意識するようになりました。

――最後に本作ならではのみどころは?

 『御上先生』は29人それぞれの人生が垣間見えるところです。生徒が問題と向き合っていく、生徒全員に注目が集まる学園ドラマというのは珍しいと思うので、ひとつの見どころになると思います。一つの学校、一つのクラスの小さな出来事ですが、みんなが解決しようと動くことで、少しでも日本が変わっていく。“考えろ”という御上先生のセリフが何度も出てきます。クラス全員で話し合うシーンも多く、そこから行動を起こすことで、日本を変えられるのかもしれない、そんな希望に満ちたドラマになっていると思います。

(おわり)

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