INTERVIEW

ソニン

「経験が活きた」映画「モアナ2」で見せたパワフルな歌声の秘密


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:24年12月24日

読了時間:約7分

 俳優で歌手のソニンが、ディズニー・アニメーション・スタジオが手がける最新作の映画『モアナと伝説の海2』(公開中)に出演。日本版声優として、モアナが使命を背負い大きな困難を乗り越えていく上で重要なカギを握るマタンギを演じる。本作は、第89回アカデミー賞(R)、第74回ゴールデン・グローブ賞など数々の映画賞にノミネートされた『モアナと伝説の海』の続編。海を愛するモアナが新たな運命へと漕ぎ出す冒険物語を、ディズニーらしい数々の音楽が彩る感動のミュージカル・アドベンチャー。インタビューでは、初めて声優に挑戦しアフレコを体験して感じたことや、ソニンのパワフルな歌声が観客から大絶賛されている楽曲「迷え!」のレコーディングエピソード、「冒険が好き」だというソニンが考える人生の考え方について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

息を持たせるためのスタミナが重要だった「迷え!」

マタンギ ©2024 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

――今回出演が決まったとき、嬉しさのあまり道端で叫んでしまったみたいですね。

 マタンギ役に決まったことを電話で聞いたのは自宅の近くだったのですが、ちょうど人がいなかったんです。マネージャーから決定したことを聞いた瞬間、あまりに驚いて「うそ〜!ほんとに〜!!」といった感じで、つい叫んでしまいました(笑)。

――オーディションでの手応えはいかがでした?

 もちろん受かりたいと思ってオーディションに参加したわけですが、あまりにも曲が難しすぎてちょっと自信はなかったんです。『モアナと伝説の海2』が、私にとって初めての声優としてのお仕事なので、声優オーディションで合格する手応えというのも全然わからなくて。どのタイミングで合否のお知らせが来るのかもわからず、「やっぱりダメだったのかな...」って心の中で思ってしまっていたところもあったと思います。

――ソニンさんが歌唱した楽曲の「迷え!」は緩急がありセクションごとの表現力が求められる曲だなと思いました。ソニンさんはどんなところに難しさを感じていました?

 テクニック的な難しさはもちろん、音域も幅広い曲です。地声でベルディングしたりファルセットも使います。言葉がのっていないフェイクの部分が多いので、それもまた大変なのですが、一番はテンポが速いというところかもしれません。最初に聴いたとき、設定を間違えて1.3倍ぐらいで聴いてしまったのかなと思うくらい。確認したら等倍だったので、「えっ、何このテンポの速さ」と思って(笑)。特に日本語になると、言葉が詰め込まれてしまうので、そことの闘いでした。それによってブレスをする箇所がほとんどないんです。

――ブレスができない。それは確かに大変です。

 きっとマタンギだったらブレスをしなくても歌えると思うんですけど(笑)。テンポが速くてブレスができないことがすごくプレッシャーで、息を持たせるためのスタミナが重要でした。ブレスをできる場所があったとしても、テンポが速いので一瞬しか吸えないので、本番が始まる前にストローや風船を使ったトレーニングをしていました。しかもレコーディングは朝早かったので、とにかく横隔膜を目覚めさせる。まるで筋トレのようでした。

――楽曲「迷え!」は公開後大きな反響を呼んでいますが、それをパワフルに歌い上げる時にこれまでミュージカルなどで培った経験が活きたんですね。

 ずっと声帯と向き合っている仕事なので、その経験が活きました。楽曲のハードルが高く本当に難しくて、こんなにも曲と向き合っても難しいと思う曲は、ここ最近あったかな? と思うくらいでした。

人に意見を聞くことを意識

ソニン

――声優として初めてのアフレコはいかがでした。

 よく他のキャラクターとの距離感を掴むのが難しいというのは噂で聞いていました。ただ私の演じたマタンギが距離のない人と言いますか、右に行ったと思ったら左に行ったり、モアナの視界から消えたと思ったら、瞬間移動で後ろにいたりと、自由自在に動くキャラクターだったので、その感覚を掴むのがとても難しかったです。

――初めてとは思えないレベルで、何回も経験していますと言われたら、信じてしまうほどのクオリティでした。

 嬉しいです。オリジナルの声優さんをリスペクトして、研究してからアフレコに臨みました。

――ソニンさんが歌唱した楽曲「迷え!」という曲にちなんで、ソニンさんが迷ったときに心がけていることは?

 私はしょっちゅう迷っています(笑)。些細なところでは食べ物を選ぶときに迷うことも多々ありますし、人生の大きな決断をするときも、どうすればいいのかすごく迷います。でも年齢を重ねてきて、その悩みも人に委ねることもできるようになりました。人に任せてしまって、それを決断した時に「あの人が言ったから」と、その人のせいにしがちなんですけど、それは嫌なんです。人に相談して意見を聞いて、その通りにしようって委ねる気持ちも生まれたと同時に、それを選ぶのは自分だと思えたので、責任はちゃんと自分自身で持てるようにしています。それは私の信念の根底にある考えです。

――自分の中だけで決めないというのは柔軟でいいですね。

 年齢を重ね経験を積んでいるからこそ、自分の意見とか信念が凝り固まってきているなと思います。だからこそわかることもあるのですが...。

――経験が邪魔をするという考え方も聞きますよね。

ソニン

 自分のハウツーがわかっているから、そこからみんな動きたくないんです。人はブレたり、歩む道から外れることが怖いですし、これまでの経験上で今までのやり方がうまくいくと分かっている。私はそういう時こそ「人に意見を聞く」ということを意識しています。

 自分が人生を終えるまで、自分の可能性は無限大だと思っていたいタイプです。そのためには考え方など固定してしまうと成長しないと思っています。特に今だったら若い子の意見とか、今の世代の子たちのフレッシュな意見を聞いて冒険してみたいんです。

――常にチャレンジなんですね。

 もうチャレンジすることが大好きなんです。そうすると今まで私が積み重ねたもの以外の世界が見られると思っていて、そういった刺激を入れないとダメだなと思っています。

――ちなみに成長の先にあるゴールみたいなものは決めているんですか?

 私、人生をどこで終えたいかということを考えたことがあります。それは大自然の中で、デジタルとか建物、コンクリートに囲まれていないところ、本当に穏やかな自然の中で、「あぁ、この人生、すごく良かったな」って思いたい。そのビジュアルが浮かんでいます(笑)。そういう風に終えられればいいなって思っているだけで、将来どうなっていたいとか、どういうポジションにいたい、どういうものを持ちたいというのは一切決めていないです。

――冒険心が強くて、自然が好きと言うのはモアナを彷彿とさせますね。

 そうかも! マタンギがモアナに「私と似ているわね」と言うように、私はモアナとも似ているし、マタンギとも似てるのかもしれない。とにかくモアナを観て、モアナエネルギーをチャージして人生楽しんでいきましょう!

(おわり)

作品情報

映画『モアナと伝説の海2』© 2024 Disney. All Rights Reserved.

『モアナと伝説の海2』(公開中)

監督:デイブ・デリック・ジュニア、ジェイソン・ハンド、デイナ・ルドゥー・ミラー
音楽:アビゲイル・バーロウ&エミリー・ベアー、オペタイア・フォアイ、マーク・マンシーナ
日本版声優:屋比久知奈(モアナ)、尾上松也(マウイ)、小関裕太(モニ)、鈴木梨央(ロト)、山路和弘(ケレ)、ソニン(マタンギ) 、夏木マリ(タラおばあちゃん)
日本版エンドソング:ME:I
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題:Moana2
全米公開日:2024年11月27日
日本公開日:2024年12月6日
© 2024 Disney. All Rights Reserved.

この記事の写真
村上順一

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事