俳優の仁村紗和の活躍が目覚ましい。2020年放送のNHK連続テレビ小説『おちょやん』の出演で脚光を集め、昨年はフジテレビ『真夏のシンデレラ』で初の“月9”に主要キャストとして出演。そして、現在放送中の日本テレビ系ドラマ『若草物語-恋する姉妹と恋せぬ私-』では四姉妹の長女を好演中だ。芸能界入りする前に20社以上からスカウトされ、デビュー後2年間で15本のCMに出演するなど当時から注目されていた。ブレイクまでの“俳優・仁村紗和”の礎を築いたこの時期を自身はどう見ていたのか。【取材=木村武雄/撮影=村上順一】
やってきて良かった
――これまでの女優人生を振り返るとどうですか?
階段を一歩一歩上がっている印象です。やっぱり転機は、朝ドラ『おちょやん』です。あれだけ長い時間をご一緒させて頂くことが初めてで、あの作品で出会った監督やキャストの皆さんとは今も親交は続いていますし、そのご縁があって夜ドラ『あなたのブツが、ここに』にも繋がったので大きな出会いでした。
――『おちょやん』の前までは?
すごく悩んでいました。ミステリアスな役や悪役が多くて、求めて頂くイメージと自分が持っているものが少し違っているような気がして、殻に閉じ籠っていたような気持ちでした。22歳から25歳までは役柄的にも難しい時期で、例えば高校生役も出来なくなる歳頃なんです。私にとって30代に差し掛かろうというこのタイミングで、見た目年齢と役柄が合ってきているんだろうなと感じます。それと、自分のタイプ的にズコーンって行きたくなかったという思いもありました。じわじわと「この人良く出ているよね」と思われるぐらいがちょうどいいと思っていたのでいいペースでしたし、私がどういうモノを持っているのかを知る良い時間だったのかなって思います。
――仁村さんに初めてインタビューさせて頂いたのが2018年。私が思うに『地獄少女』(2019年)が今の“俳優・仁村紗和”を形成する起点になっている気がします。
『地獄少女』はのびのびとやらさせて頂いた印象があります。男前なガールズクラッシュな感じの役でしたから、自分に合っていましたし、森七菜ちゃんとの友情を超えたものというのがきちんと2人で築けた気がしてすごく満足しています。
――もちろんそれまでも多くの作品に出られていましたが、あの作品で役者としての底知れぬパワーを見た気がしました。
そう言って頂けるのはすごく嬉しいです。でも私自身この10年、自分がどういう表現ができるのか模索し続けた期間で、その作品ごとに必死に向き合い続けていたので、その時その時のことが客観的にも整理できていないです。
――外から見た場合、点と点が結ばれているように思います。その後の『あなたのブツが、ここに』(2022年、NHK夜ドラ)ではシングルマザーの主人公を好演されました。私自身、何も知らない状態でたまたまその作品を見たんですよ。素晴らしい演技をされるなと思って調べたら仁村さんでびっくりして。金髪でもあったので…(笑)
あはは!私にとってすごく大事な作品でした。『おちょやん』でお仕事した皆さんともう一度できることはすごく贅沢ですし、だからこそ良いものにしたいという思いは一層強くて。そういう機会をもらえたのに、作品が面白くならないんだったら自分はセンスがないし、役者としてダメだろうなんだろうなって思っていました。それこそ「どうなるか分からないけど思い切って飛び込もう!」という思いで臨んだ作品でした。
――そうして演じ切って周りの風景は変わりましたか。
明らかにその翌年から大事な役で呼んで頂くようになったので、きちんと次に繋がって良かったと思いました。
――『真夏のシンデレラ』で森七菜さんともう一度共演して。
『地獄少女』の時は、森七菜さんもまだ高校生だったので、また会えて嬉しかったです。『地獄少女』の時からぜんぜん変わらず明るくて。もちろん大人になったなと感じるところもありましたし、現場の雰囲気を良くしようと頑張る姿を見て素敵な女性になったなと思いました。森さんが頑張っているから私も頑張ろうと思えます!
――どうですか?月9という大きな看板をみんなと背負って。
何より台本が難しかったです(笑)。恋愛を題材にした作品の経験があまりなかったですし、シングルマザーの役だったので考える所がたくさんありましたけど、月9らしいキラキラした海がいっぱいの夏らしいドラマだったので、あの経験ができて良かったと思います。暑かったな~って感じですし、すごく焼けました(笑)。
――子供がいる役でしたが、説得力があるのはすごいなと思いました。
それこそ『あなたのブツが、ここに』でシングルマザーをやらさせていただいた経験がすごく大きいと思いますし、娘役が『おちょやん』でご一緒した毎田暖乃ちゃんでしたし、暖乃ちゃんは私のことをずっとママって呼んでくれて、自然に湧いてくる母性みたいなものに頼らせてもらいましたので、とても自然な感じでした。でもその中で恋愛をするというのが難しかったです。子供との関係と、子供が相手に思う関係とのバランスを、観ている方はどう思われるのだろうというところですごく難しかったです。しかも、結末が決まっていなかったので…。でも、みんなで細かく本についてたくさん考えながらやらせてもらったのですごく勉強になりました。
――ブレイク前から見ていたのですごいなって。
(笑)やってきてよかったな、続けるって大事だなって思います。見てくれている人はいるんだなってすごく感じました!
若草物語で長女役
――そして「若草物語」。仁村さんが演じる町田姉妹の長女・恵はどんなキャラクターですか?
長女・恵は、恋愛・結婚で悩んでいる29歳で、私と同じ年なので29歳ってそうなのかと思いながら読んでいます。(インタビュー当時29歳)
――プロット読んだ印象と、自分はどうやって作っていこうかなって思っていますか。
「若草物語」はたくさんリメイクされていますよね。その中で私は『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』という映画を観ていたので、だいたいの姉妹の個性や性格は知っていたんですけど、私の性格的には次女・涼(堀田真由)の役柄が共感するなと思いました。私が演じる恵は、こうするべきだとか普通はこうなんじゃないかという理想が強くて。でもそれは長女として妹を守るための考えでもあったりするんですけど、私にもきょうだいがいて、一番上がお姉ちゃんで4つ離れているんです。確かにお姉ちゃんにこういうこと言われたな、ということを考えながら臨んでいます。
――ドラマの場合、細かい人物像は渡されたりするんですか。
履歴書みたいな感じで渡される場合もありますが、これは有名な物語なので、令和版ならではの設定で、長女はハローワークの非正規社員で働いていて、非正規と社員との差とかいろんなハラスメントのことに関してのことが物語に入っていたり、社会派な令和の問題について取り上げているドラマなので、そういうところも見どころですし、令和にしか観れない若草物語になっていると思います。
――他の共演者の方とは初めてですよね。(次女・涼=堀田真由、四女・町田芽=畑芽育、三女・町田衿=長濱ねる)
めちゃくちゃいい子たちで、みんな末っ子なので甘え上手な方が多いですし、かわいい妹たちができてうれしいですし楽しいです。
――堀田さんは滋賀出身ですよね。仁村さんは大阪出身ですし。
いつも私につられて関西弁になってます(笑)。
――姉妹というところでコミュニケーションとか、距離はどう詰めてますか?
番宣の日にみんなでLINEを交換して、三女の衿(長濱ねる)が謎が多いキャラクターなんですけど、他の3人で撮影することも多くて、ねるちゃんがいない日には撮影の様子とかを写真付きで送ってさみしくならないようにしています。めちゃくちゃ雰囲気よくて和やかです。
――そのなかで隠れ見どころは?
私はこれまで、恋愛ものでもサバサバしているキャラクターが多かったんですけど、今回は渡辺(大知)さん演じるモラハラ彼氏(小川大河)との付き合いがあって、自分が思っていることとかもなかなか言えないキャラクターなので、そういう一面は出したことないなって、なのでもごもごしている私が観れます!(笑)
(おわり)