[写真]『KYLYN LIVE』のアートワーク

[写真]『KYLYN LIVE』のアートワーク

 ジャズ・ギタリスト、渡辺香津美(61)を中心としたスーパー・セッションKYLYN(キリン)の2作品が5月27日にハイレゾ配信された。配信されるのは79年に発表されたスタジオアルバム『KYLYN』と同年6月15日・16日・17日に行われた、六本木PIT INNでのLIVEを収録した『KYLYN LIVE』の2作品だ。ここで改めてその魅力を探ってみたい。

 17歳で衝撃のアルバムデビュー以来、常に第一線で活躍するトップ・ジャズ・ギタリスト、渡辺香津美。彼を中心に、坂本龍一(64)、矢野顕子(60)、高橋幸宏(62)、村上“ポンタ”秀一(64)、小原礼(64)、向井滋春(66)、清水靖晃(60)、本多俊之(58)、益田幹夫(66)、ペッカーといった錚々たるメンバーが集結。プロデュースは坂本龍一が行った。

 渡辺はこのKYLYNと同年に、YMOのワールドツアーのサポートメンバーとして参加。世界にその存在をアピールすることになる。

 あの「ジャズの帝王」と呼ばれるトランぺッターのマイルス・デイビスにセッションを誘われたが、言葉が分からず行けなかった苦い経験を持つ。そのセッションに参加していたマイク・スターンがバンドのギタリストに選ばれたが、もし渡辺が参加していたら、選ばれてマイルスのバンドに加入していた可能性もあった。

フュージョンとは

 フュージョンとは、ロックとジャズさてはR&Bなどが融合したジャンルで、洗練された演奏が堪能できる。コンテンポラリーなメロディとコードワークが特徴。70年代ではクロスオーヴァーと呼ばれていたものが80年代に入りフュージョンと呼ばれ始めた。主にインストゥメンタルの作品が多い。ニュース番組のBGMなどにも良く使用されているので、耳にする機会も多いジャンルだ。

 主な有名ミュージシャンにラリー・カールトンやリー・リトナー、国内ではサックスプレーヤーの渡辺貞夫やカシオペア、プリズム、F1のオープニングテーマが有名なT-SQUAREなどがいる。

 また、海外ではスムースジャズというジャンルも生まれ、フュージョンでは各楽器のアドリブパートが多い傾向だが、このスムースジャズでは都会的な洗練されたメロディを前面に押し出している。曲の長さも一般的なフュージョンに比べ、短い曲が多いので聴きやすい。歌が入っている曲もありフュージョンよりも幅広いイメージだ。

転換期にあったKYLYN

 KYLYNは、そんなクロスーオーヴァーがフュージョンと呼ばれるようになった転換期のバンドと言っても差支えないだろう。フュージョンというジャンルはとにかく、演奏力が物を言う音楽で、スタジオミュージシャンレベルのテクニックやセンスが要求される。

 このユニットで79年に作られたアルバム『KYLYN』は当時のフュージョン・シーンにセンセーションを巻き起こした。その後、このアルバムの制作後に行ったツアーから、バンドとしての一体感とエネルギーが最高潮に達した六本木PIT INNでのラスト3日間のライヴを収録したアルバム『KYLYN LIVE』を発表し、この伝説のユニットは幕を閉じた。

 今聴いても、その演奏力の高さに感銘を受ける。87年よみうりランドオープンシアターEASTで行われたの六本木PIT INNの10周年記念ライブで一度だけ再結成したが、その時の演奏もすばらしかった。

 このフュージョンの金字塔ともいえる2作品に最新リマスタリングを施し、96kHz/24bitのハイレゾ音源で配信。CDでは失われてしまっていた空気感がハイレゾ化されたことによって蘇ってきていることだろう。こういった貴重な音源が続々とハイレゾ化されることを期待したい。  【上村順二】

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