INTERVIEW

三浦翔平

「ずしずしと言葉が刺さってくる」比嘉愛未に動かされた感情:親のお金は誰のもの 法定相続人


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年10月11日

読了時間:約7分

 俳優の三浦翔平が、比嘉愛未とW主演を務める映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』(10月6日公開)に出演。成年後見に注力している弁護士、城島龍之介を演じる。本作の軸になるのは「相続」と「家族」。少子高齢化社会と言われる今、向き合うべき制度である「成年後見制度」の問題を描きつつ、時価6憶円の値打ちがある伝説の真珠を巡る、ある家族の大騒動を軸に進むハートフル・エンターテイメント作品。インタビューでは、どのような姿勢で弁護士・城島龍之介に臨んだのか、ロケ地となった伊勢志摩で体験したことや共演者とのエピソードなど撮影の裏側に迫った。(取材・撮影=村上順一)

愛とは何なのか

村上順一

三浦翔平

――どのような経緯で出演が決まったのでしょうか。

 田中(光敏)監督とお話しをする機会があり、まだタイトルも決まってない時に、お金の話を絡めた弁護士の役をやってほしいというお話をいただいていました。まだ何も決まってないから、もうちょっと形になってから改めてお話ししますとのことだったので数カ月して脚本を当て書きにしていただけることになって。それでどのタイミングで撮れるか調整して行きました。台本は小松先生が書いてくださっていて、当て書き部分を残しつつ、監督の伝えたいことがいろいろ入っているストーリーだと感じました。

――三浦さんにとってどのようなテーマがあると思いましたか。

 僕が演じる龍之介の目線から見ると家族愛がテーマです。お金に執着をしているのですが、その根本は何なのかと深堀りしていくと、家族の愛を知らずに育ってきた龍之介、幼少期にネグレクトが原因で性格は捻じ曲がり、お金に執着をするようになっていきます。監督と話しているなかで、愛とは何なのかということが龍之介にとって1番のテーマだと思いました。

――弁護士役、どのような準備をされましたか。

 クランクインの前日に弁護士の先生方が来てくださって、成年後見人制度についてや今の弁護士業界についてお話を伺うことができ、けっこう踏み込んだお話が聞けました。

――監督とはどのようなやり取りをされましたか。

(C)2022「法定相続人」製作委員会


 龍之介が心に抱えている闇というものをもっと出した方がいいんじゃないか? もっとヒール(悪役)の方に振った方がキャラとして効いてくるんじゃないか、逆に善人のフリをして実はめちゃくちゃダークといったものはどうかなど話し合いをしました。最終的には脚本家の小松(江里子)さんから絶妙なニュアンスでやってほしいとのことで、今の感じになりました。

――演じるにあたって難しかったと思ったところは?

 サパテアードというフラメンコのリズムに合わせて芝居をしてほしい、と監督からリクエストがありました。サパテアードと心情をリンクさせ、上がっていくテンポに合わせて動きと表情のみで演じるのは難しかったです。

 心情面で言えば「母親ともう一度向き合う」という気持ちがどこで決まったのかというものです。これは明確な瞬間はないのですが、憎み続けてきた母親に対してもう一度向き合う。その気持ちの切り替えどころは難しかったです。

――どのように考えていたのでしょうか。

 いまだに憎みつつもどこかで母のこと思っている自分、それにまだ気づいていない自分がいて、そこが一つのフックになりました。とあるシーンで感情を爆発させるのですが、感情が爆発して言葉には出しているけれど、自分では気づいてない。最後に比嘉さんのセリフでやっと自分もそうだったんだったと気づくのですが、次のカットではもう歩き出しているので、非常に短いスパンの中でどうしたらそれが伝わるのか、というのは監督と一番話したところでした。

プロレスラーに追われて怖かった

(C)2022「法定相続人」製作委員会


――比嘉さんと共演されて感じたことは?

 2人で対峙するシーンは感情を動かされました。感情を表に出さない龍之介にずしずしと言葉が刺さってくるんです。また、そのシーンを撮るときは雨が降ったり曇ったりの繰り返しでした。監督のこだわりで英虞湾のいい景色を見せたいという構想があったので、その日しか撮影できなかったから、それを撮るために撮影が止まってしまって。待ち時間に比嘉さんとたわいもない話をしたり、ダンスシーンをその後に撮ることになっていたので、ダンスの練習を2人でしていました。

――三浦友和さんの印象はどうでしたか。

(C)2022「法定相続人」製作委員会


 演技にすごく引きこまれました。言葉数も少ないですし、シンプルに役者さんとしてものすごい雰囲気をまとっている方だなと感じました。カメラが回ってない時は昔の映画のお話しをしてくださったり、気さくでとても素敵な方でした。

――三浦さんは小手伸也さんと一緒のシーンが多かったと思うのですが、共演されてみていかがでした?

 小手さんとははじめましてでしたが、お芝居はすごくやりやすかったです。何を投げても絶対に返してくれる役者さんだと思いました。そうそう、冒頭で登場した時の衣装には笑いましたね(笑)。また、小手さんと一緒にいる時間が多かったので、いろいろなお話しをさせてもらったのですが、小手さんは日本神話にすごく詳しいんですよ。諸説ありな部分と小手さんの仮説をお話ししていただいて。そのお話しを聞いているだけで映画を1本観たような気分になりました。

――日本神話に興味を持たれました?

 興味を持ちました。ロケが伊勢志摩だったので、天の岩戸が近くにあってみんなで見に行きました。小手さんが天の岩戸にまつわるお話しをしてくださったので、それがまたすごく興味深くて。この話を舞台化したらすごく面白いんじゃないかと思いました。

――伊勢志摩では他にどんなところに行きましたか。

 仕事の都合で東京と伊勢志摩を行ったり来たりしていたので、食事に行く時間がそれほどなくて。僕は現場に入っているときはスケジュールが割とつまっていたのですが、伊勢神宮には行きましたし、牡蠣や、伊勢海老も食べました。プロデューサーさんが三重県の方と知り合いで、おすすめのお店を教えてもらって美味しい評判のお店にいきました。

――撮影の中で刺激的だったシーンはありますか。

村上順一

三浦翔平

 冒頭で大勢のプロレスラーの方に追いかけられるシーンがあって、あのシーンは1日かけて撮りました。そのシーンは監督のこだわりだったのですが、強靭な肉体の方々に追われるなんて、なかなかないから恐ろしかった(笑)。とにかく、インパクトのある始まりになったと思います。

――鬼気迫る感じでスリリングでした。

 監督から「鬼気迫る感じで」とリクエストをもらってやっていましたから。もう朝からずっと全力疾走していました。

――過酷さが伝わってきます。出だしから見どころ満載ですね。そこから物語が加速していき、いろいろなことが巻き起こっていきます。

 セスナに乗ってデヴィ夫人が登場したり、いろいろ遊び心満載なので、細かいところにも注目してもらえたら嬉しいです。

――最後にこの作品を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

 英虞湾を舞台にした家族の話を軸に、いろいろな要素が詰まっていて様々な見方ができる作品です。僕が思う監督の伝えたいことというのは、本当に大切なものは目に見えていない。今ではなく未来のため。自分ではなく誰かのため。お金ではなく愛のため。そういったものがこの作品で伝えたいことだと思うので、ぜひ劇場でお楽しみください。

(おわり)

ヘアメイク:石川ユウキ 
スタイリスト:根岸豪

作品情報

【タイトル】 『親のお金は誰のもの 法定相続人』
【公開日】2023年10月6日(金) シネマート新宿、イオンシネマほか全国公開
【出演】 比嘉愛未 三浦翔平
浅利陽介 小手伸也 山﨑静代(南海キャンディーズ) 松岡依都美 田中要次 内海崇(ミルクボーイ) デヴィ夫人 DRAGONGATE 石野真子 三浦友和
【スタッフ】 監督:田中光敏 脚本:小松江里子
音楽:富貴晴美 主題歌:ビッケブランカ「Bitter」(avex trax)
【配給】イオンエンターテイメント、ギグリーボックス

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村上順一
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