INTERVIEW

鶴嶋乃愛

初主演で悪女役 役に入りすぎて撮影の帰り道に「嫌悪感に襲われる」


記者:村上順一

写真:冨田味我

掲載:23年01月22日

読了時間:約8分

 鶴嶋乃愛が、現在MBSドラマ特区で放送中の『あなたは私におとされたい』で、村井良大とW主演を務めている。梅涼が作画、宮口ジュンが原作の同名人気漫画の実写化。証券会社で妻・夏菜(演・宇垣美里)と社内結婚した相澤直也(演・村井良大)。オシドリ夫婦として有名だったが、新入社員の立花ノア(演・鶴嶋乃愛)の登場で事態は変わる。ゼッタイに不倫しない男とゼッタイに不倫させる女の駆け引きが繰り広げられている。ファッションモデルとしてもZ世代を中心に人気の鶴嶋は『仮面ライダーゼロワン』でヒロインのイズ/アズ役を好演して以降、映像作品への出演が続く。本作は自身初のドラマ主演で、相手を翻弄する悪女という難役に挑む。物事を深く考えることが好きという鶴嶋。その考察力が立花ノアというキャラクターに深みを付けている。本作にどのような思いで臨んだのか。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

原作に描かれてない過去を想像して

――ドラマ初主演の心境は?

 お話し頂いた時に嬉しくもあり、マネージャーさんに「座長だよ」と言われ、その響きにすごく緊張しました。でも率直に嬉しかったです。責任感もありますし、立花ノアちゃんが軸となって物語の展開が変わっていきますので、誠心誠意努めていきたいという思いです。

――キャラクターと同じ名前ですね。

 お話を聞いた時に「本当にノア?」と驚きましたが、運命を感じました。

――名前に親近感を抱いたと思いますが、ただノアは一癖も二癖もあるキャラクターです。鶴嶋さんはどういう印象を持たれましたか?

 ダメな子ですね…良くないですよね…(笑)。私としては共感できるところが少なく難しいと思いました。小悪魔さがあるという部分では、可愛さに全振りする感じと思いましたので、「自分が可愛い」と分かって行動している感じを全面に押し出して、立花ノアちゃんの可愛さを視聴者の方にお届けできたらという思いで演じています。

――それでも共感できる部分はありましたか?

 ありました。たぶん視聴者の方が持たれる立花ノアちゃんのイメージは「とんでもない悪女」だと思います。タイトルからしてそうですが、でも的を得たことを言います。監督ともお話ししていたんですが、小悪魔だけではなくて、すごく多面性がある子で表情がくるくると変わる。そのなかで、一番冷めた表情をしてポロっと言うセリフが確信を突いていて。そのセリフは私も日々同じことを思っているなと共感しています。そういう意味でも日々色んな事に対して頭をフル回転させて考えているのが立花ノアちゃんなのかなと思いました。

――鶴嶋さんは深く考えるのが好きと過去に仰ってますが、そういう所は重なりますか?

 ノアちゃんというキャラクターを、私の頭の中の辞書を使ってかみ砕いていくなかで、実は人の弱さや悲しみや孤独を知っているからこそ、相手の弱いところに入り込み、相手が一番欲しい言葉が言えているんじゃないかと思い、そう考えられた時に弱みに付け込むようなセリフも言いやすくなりました。

――自分のなかで理解できて?

 そうです。理解した上で話せるようになりました。

――原作を読んだ時に、ノアは明るい事を言っているんですけど顔の表情がシリアスで怖さを感じました。

 そうなんです。それと同じで、冷めた目をするシーンが結構あります。でも、それは理由もなくやっているわけではなくて、原作には描かれていませんが、ノアちゃんは過去に何かあったんじゃないかと。そう思ったら「大丈夫ノアちゃん!」「何があったの?」って心配になってきて。

――確かにそうですよね。ノアには何があったんだろうって気になりますね。

 ノアは、「何もなしにこんなことする?」「こんな非情、薄情なことをする?」と思われるような、かき乱す女の子ですので。でも人一倍、人の弱い所を理解しているのかなと思いました。もしかしたら周りが理解してなさすぎかもしれません。ノアの過去に悲しみや孤独があったんじゃないかと想像しながら演じています。

鶴嶋乃愛

鶴嶋乃愛

山場を乗り越え達成感

――村井良大さんなど共演者の方とはいかがですか?

 私が一番年下で、舞台が会社ということもあって上の方とご一緒させて頂くことが多いですが、和気あいあいとしています。ディープな作品とは思えないぐらいずっとワチャワチャしています。特に村井さんはすごく構って下さるので。私としては村井さんが役の直也さんにしか見えないぐらいで。関係性的にもノアちゃんは直也さんにグイグイ行くタイプなので、村井さんは13個年上ですがちょっかいを出して。でもそれを全力で応えて下さって。すごくお優しいです。

――演技について話すことはないですか?

 自然とノアと直也の関係性がなっている気がします。細かい所作や動きは「こうするね?」という感じで擦り合わせはしますけど、あまりそういうのを話さなくてもノアと直也になれているなと思います。それは村井さんが直也という役がぴったりということもありますし、話ごとにちゃんと落ちる目をして下さる。それに合わせて余裕の笑みをお見舞いできますので(笑)。「落ちていっているな」という目でお芝居できるので、話を重ねるごとにどんどん楽しくなっていっています。でもそれとは反対に視聴者の方で繊細な方は苦しくなっていくかもしれないです。私も台本を読んだ時に「なんでこうなっちゃったんだろう」と本当に苦しくなりましたから。

鶴嶋乃愛

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――ドラマ特区はこれまでも刺激的で挑戦的な作品が放送されていますが、どういう印象を持たれましたか?

 映像が綺麗な作品だなと思っていて、メインビジュアルもすごく綺麗で、出演が決まった時にいくつか見させて頂きましたが、『少年のアビス』もすごく綺麗で、『恋と弾丸』も花がパーッと舞っていて、普通のドラマではあまりやらないような美しい演出も印象的で。漫画原作が多くて非現実的な面白さをすごく美しく撮っている印象があります。

――そんなディープな作品の撮影で、これまで経験してこなかった挑戦もたくさんあると思いますが、不安に思っていたことはありますか?

 あまりなかったです。撮影の現場が楽しいということもありますが、私としての山場を撮り終えましたので、まだ撮影はありますが達成感があります(笑)

――「大丈夫かな?」と思っていたシーンは乗り切れたんですね?

 不安と言うか「これはどうなるんだろう」と思っていたシーン、原作でも有名な悪いキスをするシーンがあります。ノアちゃんの悪女感と小悪魔感が満載で、そのシーンを乗り越えまして「よし!」と(笑)。あのシーンは原作ファンの方も気になっているところだと思いますので、その場面の前後の表情も注目して頂きたいです。小悪魔というよりも悪魔の表情になっていて、その前後で表情の移り変わります。短い時間軸ですが、三重人格ぐらい様々な表情をしています。それと、このドラマでは私から攻めていくことが多く、それも難しいと感じました。恋愛ものは男性から行くことが多いですが、このドラマでは女性からいく。なおかつそれを美しく見せないといけませんので難しかったです。

鶴嶋乃愛

「鶴嶋乃愛」に戻るように

――この撮影を通していろんな引き出しが出来て役者としてはいいですよね。

 いろんな引き出しを蓄えている最中ですので、新境地の役で嬉しいです。

――ご自身のキャリアの現在地をどう捉えていますか?

 まだまだです。女優としては3年くらいしか経っていませんので、引き出しを増やしている段階です。ですので常にその時の作品を大事にしていますし、それと同時進行で次の作品を見据えて引き出しを作っていかないといけないと思っています。今はまだ「理想の鶴嶋乃愛」に追いついていないです。

――理想像は?

 完璧主義ですので理想は高いです。何でもできる自分ではないと納得できなくて。そもそも褒められることが嬉しくて…。そうでした!立花ノアちゃんも褒められると伸びるとタイプなんです。そこも私と似ています。

――どんどん褒めた方が伸びる?

 そうですね。なので自分の事を毎日褒めています。撮影が終わった後に「よし天才!えらい」と自分のご機嫌をとっています。でもまだまだ理想像には遠いので、毎日お芝居をやっていくなかで、それこそ立花ノアちゃんは小悪魔だけでなく多面性のある役なので、やっていくなかで日々小さなことにも学びを得られたらと思っています。

――向上心のかたまりですね。

 上に上がることしかできませんから。走り続けないと不安です。止まれないです。

鶴嶋乃愛

鶴嶋乃愛

――物事を深く考えられてる鶴嶋さんですが、役としてはそのキャラクターの心情をどれだけ深く理解し内面にそれをどれだけ持てるかで、表現も変わってくると思いますが、それは演じる上で大事にされていることですか?

 大事にしています。今回の作品で言えば、鶴嶋乃愛としての感情と反することが多くて、撮影終わりの帰り道に嫌悪感に襲われることが多くあります。でもそれは「カメラの前でノアちゃんとして生きられているんだな」と正解の一つとして自分を褒めるようにしています。

――撮影期間中は役に支配されているんですね。

 そうです。ですので、鶴嶋乃愛に切り替えるようにしています。そうではないと役に飲み込まれそうで怖くて。台本を読んでいるだけで辛かったので。相澤夫婦のシーンは、ノアからしたら関係ない、むしろノアがそういう状況を作っていますが「なんでこうなっちゃったんだろう、私のせいだ」と責任を感じてしまい辛くなってしまって。精神を使う内容でもありますので、なるべく「鶴嶋乃愛」に戻るように心がけています。ですので現場では村井さんと楽しく話しています(笑)

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(おわり)

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