桑田佳祐が2022年12月28日、30日、31日の3日間、横浜アリーナで『桑田佳祐 LIVE TOUR 2022「年末も、お互い元気に頑張りましょう‼」supported bySOMPOグループ』の追加公演を行なった。本ツアーは日本エンタメ史、前人未到の記録を達成。ソロアーティスト史上初“3度目の5大ドームツアー”となり、コロナ禍にもかかわらず、全公演が完売し、総動員数は40万人を超えた。本公演を含む年末の横浜公演3DAYS、セミファイナルとなる30日の公演のもようをレポートする。【取材=平吉賢治】

桑田の唯一無二の記録

桑田佳祐(Photo by 関口佳代)

 桑田佳祐という生粋のエンターテイナーが放つライブは、興奮があり、楽しみがあり、安心もあり、快感があり、刺激があり、笑いも涙もドラマもある。会場にいる全ての人々が桑田の音楽を共有し、感情を共感し、温かい気持ちを持ち帰ることができる。桑田の持つオールマイティーな音楽力、表現力、そして、人間力があってこそ演奏されるライブを、今年のねぎらい、そして来年の糧として、横浜アリーナ満杯のオーディエンスに出力していた。

 桑田は、「日々様々なことが起こる先行きの見えない世の中を共に前向きに過ごして行きたい」という思いも込めて、『お互い元気に頑張りましょう‼』というタイトルを冠し、2022年11月2日、約束の地・宮城のセキスイハイムスーパーアリーナ公演2DAYSを皮切りに、“5倍返し”ならぬ5大ドームを巡るツアーを敢行した。

 さらに、追加公演として発表した“年末も、お互い元気に頑張りましょう‼”と題した横浜アリーナ追加公演を3日間開催。ソロミュージシャンによる3度目の全国5大ドームツアー(東京・名古屋・大阪・福岡・札幌)は、桑田が史上初となる。

 また、サザンオールスターズとしても3度目の全国5大ドームツアーを開催している桑田は、バンド・ソロの両方で5大ドームを開催しているアーティストがいまだかつていない中、それぞれの活動で3回以上5大ドームツアーを開催しているという点で唯一無二の記録を更新。“音楽人”桑田佳祐は、エンタメ史において前人未到の領域に足を踏み入れたと言えよう。

満員の会場中に広がる笑顔

ライブの模様(Photo by 関口佳代)

 オーディエンスが会場一杯に埋まる壮観な景色。全客席から優しく大きな拍手がサラウンドにこだまし、「こんな僕で良かったら」のイントロと混じりつついざライブスタート。満面の笑みと情熱的な歌を放つ桑田は、会場全方位に目線を向け、声を届け、“お互い元気に頑張りましょう‼”というライブタイトルに込めた気持ちを音楽として愛と共に広げる。

 続く「若い広場」では琥珀色に照らされたステージでゆったりと温かい空気感を醸す。「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」では一斉に清涼感のあるブルー、パープル、グリーンと、次々と照明が変化し、雄大でドラマチックな空間を作り出した。

 「1年ぶりに横浜アリーナに帰ってまいりました!」というMCでの桑田のコール。会場中からは感謝と期待と興奮の入り混じった大きな拍手が長く響き渡る。お客さんへのねぎらいの言葉を投げかけ、時にジョークを挟みつつ、ライブの迫力と対比ともなる安心感のあるMCで絶妙な緩急をつけ、序盤以降のライブへの期待感を高めてくれる。

 2022年12月30日、ちょうど1年前にこの場所で行なったライブで桑田は、あらゆる人が感じた様々な心境に深く寄り添う愛溢れる空間を創り出し、たっぷりと楽しませてくれたことは今でも記憶に新しい。桑田とメンバーが発する音と言葉とパフォーマンスは、多くの人たちを温かく支えてくれるエネルギーを発し、会場でライブを楽しむ全ての人たちを輝かせていた。

 そして、この日も桑田はライブで、超満員のお客さんの心に火を付ける。印象的な音階のイントロからの「可愛いミーナ」で桑田はダイナミックでエモーショナルな歌唱を魅せる。そして、普遍的なアプローチのロックギターフレーズが刻まれ、ドラムのスネアの打拍と会場からのクラップが曲中終始同期した「真夜中のダンディー」へと進む。サビのシャウトは「待ってました」と言わんばかりの桑田節。この曲のみならず、セットリストの大半の曲中で、オーディエンスからのクラップが曲中鳴り止まなかったのは“会場一体”というライブそのものを力強く物語っていた。

 希望を掻き立てるピアノの音色と共にしっとりと「明日晴れるかな」が演奏され、「いつか何処かで (I FEEL THE ECHO)」では夢見心地な雰囲気で会場を包み込む。横浜の街並みをバックスクリーンに美麗に映しつつ披露された「ダーリン」、激流のギター独奏から差し掛かった「NUMBER WONDA GIRL~恋するワンダ~」でロックンロールサウンドを横浜アリーナに轟かせる。さらに「SMILE~晴れ渡る空のように~」ではオーディエンスのリストバンドが各々の“スマイル”のように輝かしく照らされ、コーラス部では桑田と会場の全員が同じ方向に腕を突き上げるという絶景を見せた。

 ポップな歌唱あり、ロックな勢いは十分に、バラッドは気持ちに寄り添い沁み入り、エネルギッシュなステージアクションを見せ、オーディエンスと同期しつつ調和し、超一流ミュージシャンの巧みな演奏で圧倒する。

 桑田のライブはいつだって多種多様に、ありとあらゆる角度からオーディエンスを楽しませ、「前回はこういうところが素敵で――今回はこういうことをやってくれて――」と、毎回フレッシュな感想を抱かせてくれる。それは、前述した“エンタメ史において前人未到の領域に足を踏み入れた”桑田佳祐だからこそ更新できる、秀逸なアクションの進化と言えよう。

横浜アリーナでの温かい約束

桑田佳祐(Photo by 関口佳代)

 ライブ中盤、アコースティックコーナーでは「鏡」「BAN BAN BAN」「Blue ~こんな夜には踊れない」が披露された。桑田が手がける各楽曲がアコースティックバージョンで演奏されると、各曲のメロディや歌、アンサンブルの持つ音自体の強さがより明瞭になり、ライブにさらなる展開を加えた。ツアーのためにアレンジされた楽曲を堪能できるのは桑田のライブで体験できる貴重なポイントのひとつと言えよう。

 グッとムーディーな大人の雰囲気を味わわせてくれたあとは新曲コーナー。ソロ活動35年間の歩みを35曲に凝縮した2枚組ベストアルバム『いつも何処かで』から2曲続けてのパフォーマンス。神奈川県逗子市の海辺に実在した洋式ホテル・なぎさホテルから着想を得て書かれた「なぎさホテル」では渚や海をイメージさせる光がドリーミーに降り注ぎ、情熱的に桑田の最新の歌唱が披露された。

 続く「平和の街」はポジティブなロックチューン。<大好きな人に巡り逢える Someday>、<あなたと共に 今日を生きよう>、<平和の街で 共に生きよう>といった、リスナーを鼓舞する詞が心身に染みわたる。

 ライブも終盤。「現代東京奇譚」では赤く染め上げられたステージで桑田は激情を歌い上げ、ピアノとオルガンのサウンドがノスタルジックに映える「ほととぎす [杜鵑草]」に続き、ブラス隊の燃え盛るような導入からの「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」に突入。故・アントニオ猪木への哀悼とリスペクトを込めつつ桑田は闘魂あふれる熱唱を魅せ、ダンサーの振り付けとシンクロ、間奏では渾身のブルースハープ演奏と、本公演のハイライトのひとつとも言えようテンションを提示した。

 勢いは右肩上がりのまま、「悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)」へ駆け抜け、サイケデリックかつポップなスクリーン演出と共に「ヨシ子さん」と畳み込むようにアップテンポは止まらず、会場はエキサイティングな熱気ではちきれんばかりのボルテージだ。

 そして、故・美空ひばりが“憑依”した桑田は「真赤な太陽」のカバーを披露。その流れから「波乗りジョニー」で大勢の水着ダンサーと共に桑田はステージを縦横無尽にサーフィンし、最高潮の会場は笑顔と幸福感で満たされ、本編は華麗に締めくくられた。

ライブの模様(Photo by 関口佳代)

 桑田はアンコールに4曲応え、まずはエッジの効いた「ROCK AND ROLL HERO」をパワフルにパフォーマンス。興奮止まぬ中「銀河の星屑」と続き、「白い恋人達」では美しいメロディと壮大なアレンジを生きた音で煌びやかに響かせ、横浜アリーナ全体を光の演出と共にロマンティックな黄金色で染め上げた。そして、ラストは快活なダンスビートの「100万年の幸せ!!」で大団円を迎える。約2時間半の公演は終始、笑顔と、幸せと、感謝と、感動の情念で満ち溢れていた。

ライブの模様(Photo by 関口佳代)

 「元気でね! また帰ってくるよ!」と、桑田は最後にお客さんに投げかけてステージを後にした。シンプルなメッセージかつ、温かい言葉である。桑田がまた帰ってきてライブをしてくれると、どこまでも粋なおはからいをもってして、様々な音楽とパフォーマンスで楽しませてくれて、奮い立たせてくれる。「楽しめること」を約束してくれる。唯一無二の記録を更新している屈指の音楽人・桑田佳祐だからこそ為せるライブを観ると我々はいつだって、“お互い元気に”、前を向くことができる。

セットリスト

『桑田佳祐 LIVE TOUR 2022「年末も、お互い元気に頑張りましょう‼」supported by SOMPOグループ』
2022年12月30日@横浜アリーナ

01. こんな僕で良かったら
02. 若い広場
03. 炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]
04. MERRY X’MAS IN SUMMER
05. 可愛いミーナ
06. 真夜中のダンディー
07. 明日晴れるかな
08. いつか何処かで (I FEEL THE ECHO)
09. ダーリン
10. NUMBER WONDA GIRL~恋するワンダ~
11. ご当地民謡 赤い靴〜SMILE~晴れ渡る空のように~
12. 鏡
13. BAN BAN BAN
14. Blue ~こんな夜には踊れない
15. なぎさホテル
16. 平和の街
17. 現代東京奇譚
18. ほととぎす [杜鵑草]
19. Soulコブラツイスト~魂の悶絶
20. 悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)
21. ヨシ子さん
22. 真赤な太陽 美空ひばり(カバー)〜波乗りジョニー

ENCORE

EN1. ROCK AND ROLL HERO
EN2. 銀河の星屑
EN3. 白い恋人達
EN4. 100万年の幸せ!!

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