小林愛香「最高を更新し続けたい」アーティスト活動への想い
INTERVIEW

小林愛香

「最高を更新し続けたい」アーティスト活動への想い


記者:村上順一

撮影:

掲載:22年12月09日

読了時間:約14分

 小林愛香が12月7日、「MI-RA-I miracle circle」(NHK EテレTVアニメ『宇宙なんちゃら こてつくん』主題歌 )を 含む全5曲入りの1st EP『syzygy』(シジジー)をリリース。

 スクールアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン !!」の津島善子役として、作品内ユニットAqoursのメンバーとしても活動する中、2020年にシングル「NO LIFE CODE」でメジャーデビュー。TVアニメ『真・中華一番!』OP主題歌「Tough Heart」、本人も声優として出演したTVアニメ『さよなら私のクラマー』のOP主題歌「AMBITIOUS GOAL」、映画『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』の主題歌「空は誰かのものじゃない」など、リリースした楽曲が多くの主題歌を担当。

 インタビューでは、約1年半ぶりのCD作品となった1st EP『syzygy』の制作背景に迫りながら、アーティストとして追求していること、クリスマスにあるとテンションが上がるものなど、現在の小林愛香に迫った。(取材=村上順一)

“今が一番楽しい”を積み重ねることによっての未来がある

1st EP『syzygy』通常盤

―現在行われているツアーも後半戦、どんな心境でステージで立たれていますか。(取材日は11月中旬)

 ライブひとつひとつが楽しいです。ステージに上がる前はちょっとドキドキしますが、上がると楽しいしかないです。

――ステージの演出などは小林さんがアイディアを出されたり?

 今回のツアーでは、“星空ナレーション”を入れています。プラネタリウムみたいなイメージです。みなさんの休憩部分になるかなとも思いつつ、想像を膨らませてもらえる時間ができたらいいなって。今回の繋がりとして「星空」「空」というのを考えていた演出でした。今作「syzygy」も惑星直列という意味があり、ライブ後も星空を思い浮かべて、色んな思い出をつくってほしいなという想いもあります。

――ロマンティックですね。

 ちょっとロマンティック過ぎちゃうかなとも思いましたが、そのあとに曲に関するワードなどを散りばめさせてもらっていたので、良い導入になりましたし、歌の始まりもいい感じにできたので「こういうのもありだな」と、色んな可能性を感じました。

――小林さんにとってライブとはどんな場所、存在でしょうか。

 楽しいし、みんなと繋がれる場所というイメージが凄くあります。みんなで同じ音楽を通して同じ気持ちになったり、一緒につくっていくものだと思っているので。ライブハウスというところもあるかもしれませんが、心の距離も縮まったと感じます。

――来年4月に開催されるZeppツアーではどんなステージを?

 カッコいい部分を出せる曲も増えてきたので、そこもみなさんに観せられたらいいなと思います。そして、変わらずに「ここが一番楽しい場所」みたいなものがライブで届けられたら嬉しいです。ライブハウスでのツアー“syzygy”をまわってきたからこそできるライブがあると思っていて、そこに向けて成長した姿をみなさんに見せられたらいいなと思っています。

――成長を感じる瞬間は?

 曲が強すぎるというのがあって自分が負けそうになる時もあります。でも、みなさんと一緒にライブをしているとみんなからもらうものも凄く大きいんです。私がパワーを皆さんにあげている側だと思っていたんですけど、それだけではなくて。だからライブを重ねるごとに、強い曲を強く歌えるようになってきたという成長を感じることができています。前まで息切れしていたけど、ジャンプしながらでも歌えるようになってきたなとか。

――ライブ前のルーティーンはありますか?

 あえて、そんなにルーティーンを持たないようにしているんです。「いつも右から靴を履く」「お守りを入れる」というようなルーティーン、ジンクスは、それができなかった時が怖くなっちゃうというか。あまり決めないで「ここがちょっと不安だな」と思うところを解決できるようにしたり、自分の曲をセットリスト順に並べて聴きながら現場に行ったりします。あとは早起きをするくらいかな。早起きをして喉をしっかり起こしてからライブ会場に向かいます。道中で寝てしまうと声に影響がでるので、新幹線など移動中は寝ないように気をつけていることぐらいです。

――自分なりのやりかたが大事ですよね。さて、1st EP「syzygy」ですが、“syzygy”という言葉は初めて知りました。

 アニメ『宇宙なんちゃら こてつくん』の「MI-RA-I miracle circle」からイメージした、宇宙や空といったキーワードを入れたいなと思っていて、ネットで調べていたら宇宙関連のワードがたくさん載っているサイトがあったんです。そこで、“syzygy”という言葉がインパクトがあって、文字が可愛いなと思いました。「何て読むんだろう?」という引っ掛かりが一つあるというのもいいし、おしゃれだなと思ったんです。意味も「惑星直列」ということで、まっすぐで、繋がっているなど凄くプラスな意味が想像できてポジティブなイメージがありました。まっすぐ届けたいという想いとも重なり、ぴったりだと思って提案させて頂きました。

 もともとツアータイトルのために私が考えたものだったんですけど、チームの中でもみんなこの言葉がしっくりきていて。今回EPをリリースするにあたり「この曲たちをまとめる言葉って何だろう?」と思った時に「syzygy」しかないと思いました。

――楽曲のバラエティーに富んでいることもあり、曲のタイトルではないところから付けたほうがいいと思ったんですね。

 そうなんです。それを小林愛香がまっすぐ歌っていて、ひとつひとつの色んな想いと、惑星もひとつひとつ特徴が全然違うことと、「それが直列している、ぴったりじゃないか」みたいな感じになりました。本当に色んな意味として大きく捉えることができる言葉に巡り合いました。芯を持っているような言葉だなと思って私は気に入っています。まっすぐという言葉が凄く好きなので。『宇宙なんちゃら こてつくん』も「まっすぐ」とか、「MI-RA-I miracle circle」の中にも「一直線」という言葉が出てきたりするので、今回一つまとめるとすると「syzygy」が凄くぴったりだったなと感じています。

――「MI-RA-I miracle circle」は、ダンス動画を上げていましたね。

 振り付けは槙田紗子さんに、めちゃめちゃ可愛いのを付けて頂きました。『宇宙なんちゃら こてつくん』は、幅広い年代の方々に観て頂けるのではないかということで、「踊ったりできたらいいよね」という話から「TikTokとかでもみんなと何かできたらもっと盛り上がるんじゃないか」と。ライブも意識して、声を出す以外の楽しい見方の提案の意味もあって、挑戦してみた部分でもあります。

 今回は、こてつくんが猫ということもあってサビに“肉球ポーズ”を入れてもらったり、そのほかの部分でも動物っぽいポーズを入れてもらったりしました。無重力とか宇宙要素、惑星要素も入れてもらっているんです。こちらがポンポンと出したキーワードを綺麗にまとめてくださいました。凄くかわいいダンスだし、作品自体が凄くまとまりのあるものになったなと思っています。

――動きひとつひとつに作品の要素が絡んでいるのですね。ところで、好きな惑星は?

 地球でしょうか。あと月も好きで、先日の皆既月食の時も思ったのですが、あれも惑星直列と感じたので、「syzygyだ!」と写真を撮りました。皆既月食の時も、みんなで同じ月を見て、同じタイミングで写真を撮って、ひとつのイベントみたいな感じで楽しかったです。

――「MI-RA-I miracle circle」のタイトルにちなんで、未来を想像することはよくある?

 想像することもありますが、基本は今を懸命に生きています。過去にはとらわれ過ぎず、未来のこともみるけど、近い未来をみて、結局今が一番楽しいを積み重ねることによっての未来があるなと思っているので、今が一番大事だと思っています。よいことや物なども、昔のことも取り入れつつ、新しいことも挑戦していくことが大事だと思います。

クリスマスにテンションが上がるものとは?

1st EP『syzygy』初回生産限定仕様 CD+BDジャケ写

――これまでと今があっての未来、ですね。さて、1曲目「Holiday!!」はどんな曲になりましたか。

 音数が少なめの楽曲です。最初はみんなのことを応援するような楽曲になるのかなと思いました。「今のうちら、最強だよね」みたいなワードが広がってこの曲が出来たので、今のうちらならどんなことだって楽しいし、今一番楽しいよねと。明日のことなども何も考えずに「今を楽しもうよ」みたいな曲が出来上がったので、凄く自分にも合っているんです。

 明日の予定はわからないけど、とりあえず今空いているから小さいカバンを持って友達と一緒に「どこか行こう!」みたいな。それが今っぽいなと思ったんです。先のことがわからなかったりする今だからこそ、こういう曲があると未来がワクワクするものになるなと感じました。想像するだけでも楽しくなれるような曲に私は救われると思ったので、凄くいい曲に巡り会いました。

――レコーディングはいかがでした?

 いつもは田代(智一)さんがディレクションしてくださるんですけど、今回は(岡嶋)かな多さんがメインとなってディレクションしてくださいました。なので、また新しい雰囲気でした。かな多さんは陽キャな方なので、楽しくレコーディングさせて頂きました。

――ちなみに田代さんのディレクションはどのような感じなのでしょうか。

 わかりやすくて的確です。例えば「20%もうちょっと明るめの声の成分でやってください」など、数字で表してくださることが多いです。「あと5%オフで」とか、そういう調整を上手い具合にしてくれるディレクションです。キャラ的な表現で「歌の上手いお姉さんが出てきたので、今は出てこないでください」と、イメージしやすいディレクションをしてくださいます。

 かな多さんは、「いいねえ! 次やったらもっといけちゃいそうだから! とりあえずやっちゃおう?」みたいな感じです(笑)。

――ハイテンションなディレクションなのですね。

 語尾に星のマークがつくような感じで(笑)。凄く楽しかったです。同じ日に「Gimme the mic, gimme the light」もレコーディングしたので、引き続きかな多さんがディレクションしてくださいました。この曲は、「遅いくらい後乗りでいいから。やっちゃって☆」みたいな感じや、「もっと癖のある歌い方しちゃって☆」など、そういうディレクションをして頂いたので、また新しい自分の声の成分に気づけた感じがありました。

――この曲の歌い方、クールですよね。

 私はリズムに遅れないようにと思いながらレコーディングしたり、しっかりテンポに合わせたりすることを心がけているんです。今回はポップな感じではないからこそ、後乗りのカッコよさを表現するのが難しかったです。でも、かな多さんにディレクションして頂いたのでかっこよく録れたと思います。

――「Gimme the mic, gimme the light」の歌詞に関してはどのように捉えていますか。シンガーとしての決意みたいなものも感じられました。

 私がクールな歌を歌いたいと思う原点は、憧れの存在である安室奈美恵さんなんです。それは今も昔も変わることはなくて。誰かにとっての憧れの存在なりたいという想いもあるからこそ、今私もステージに立たせてもらっているというのもあります。そういう風に夢を与えられるような存在に「みんな自身もなれるんだよ」という想いも入れたいなと思っていて。

 一人ひとりのステージがあって、その場所でみんなも光を受けて輝けるということをこの曲の中では伝えたいと思っていました。強いことを言いながらも自分も力をもらうし、これからも頑張らなきゃと鼓舞されるような感覚もあります。そして、みんなのことも応援するような、きっと一人ひとりはそういった素質とポテンシャルを持っていて、あとは輝くだけ、みたいなことを待っているということも伝えたいなと、色んな想いを込めた歌でもあります。

――意識するかしないかというのも大きく、この曲で気付きを与えている部分もあるのですね。

 気付いてほしいです。みんな凄いから。

――3曲目「HO! HO! HO!」はクリスマスソングになっていますが、レコーディングで心がけていたことは?

 軽やかに歌うことです。最初のコーラスは私だけの声で16声重ねているのですが、メロディラインが全て違うので難し過ぎてくじけそうでした。でも重ねていくごとに完成されていき、よいものが出来ているという確信ができました。この部分は凄く大変でしたけどやりがいがありました。

――注目のポイントですね。編曲を手がけた、やしきんさんによるキラキラとしたアレンジも素敵で。

 クリスマスソングは12月限定の曲みたいに思いがちですが、いつ聴いても楽しいクリスマスが想像できるような楽曲だなと思います。そしてこの<HO! HO! HO!>というコーラスで、いつかみんなと盛り上がれるんじゃないかなと思っています。みんなでプレゼントを持って、みんながサンタさんみたいな。

――「HO! HO! HO!」はどんなイメージでつけられたんですか。

 これは私から出たワードなんです。「何か入れたい言葉ある?」と聞かれた時に、サンタさんが笑い声が「ほっほっほ」というイメージだったので、そこからなんです。サンタさんの笑い声って特殊じゃないですか? 私の中ではフックとなってずっと覚えていたことでした。笑い声っていいなと思いましたし、ライブも想像できましたし、これもまたいつか未来が楽しみになるような曲です。

――ちなみにクリスマスで「これがあったらテンションが上がる」というものは?

 絶対に食べたいのはケンタッキーフライドチキンです。クリスマスの時期になるとあの味と匂いが恋しくなるのもありまして。カーネル・サンダースも「ほっほっほ」と笑っていそうじゃないですか?

――確かに! 繋がりましたね。

 だから凄く食べたいなという気持ちになります。あとピザもテンションあがります!

最高を更新し続けたい

――5曲目「Happy ∞ Birthday」は、ご自身が10月23日に誕生日を迎えたということも関係しています?

 この曲が出来たきっかけは、自分が誕生日をお祝いされることだけではなく、母やまわりの人に「ありがとう」を伝えるような日でもあると思うところからスタートしました。みんなにとっても嬉しい日、みんなで分かち合う幸せな日みたいなものに気付いてほしい、より楽しめるきっかけになってほしい曲です。

 あと、「∞」のマークはリボンをイメージしている可愛いポイントです。一つ一つの散りばめられた部分としては、プレゼントを選ぶ時間も相手にとってのプレゼントになるなと思うんです。「あの人に似合うかな、喜んでくれるかな」と思いながら選んでいる時間が凄く素敵だなと思います。私がみなさんからプレゼントを頂く機会で、それを選んでくれている時間、お手紙を書いてくれている時間などもありがたくて幸せだなと感じるんです。

――選んでくれているところを想像するのも楽しいですね。

 プレゼントして喜んでもらうのがゴールではありますが、それだけがしたいことではないと、それが伝わればいいなと思っていて。だから<選ぶ時間さえ Happy>というのは歌詞に入れたいなと思いました。言葉のチョイスは相談していきながら歌詞にして頂いたので、私らしく歌える曲になったなと思いました。曲のポイントとしてもう一つ、最後に鳴っているシャッター音は私のカメラの音なんです。シャッター音を録ったのがファンクラブの収録の時だったんですけど、マイクを4台くらい使って録りました。

――MVはどんな仕上がりになっていますか。

 とにかくハッピーです! 小林愛香史上一番可愛い感じで、ケーキの上に乗っているイチゴが私、というイメージです。このMVは一年に一回は観てほしいし、誰かが誕生日の時なども聴いてほしい一曲になったので、凄く素敵な曲に巡り合えたなと思います。

――最後に、小林さんが「今、追求していること」は?

 最高を更新し続けたいので、最高を追い求めています。小林愛香として「最高」というのはキーワードなんです。「Can you sing along?」という曲で<最高過ぎるよ、全部最高>というワードがあって、シンプルだけどそれが全てなんです。ライブでも、何をやっていても、今この瞬間全て最高を出し切ることによって最高がどんどん更新されていくと高まっていくしかないから、それって素敵なことだなと。「今が一番最高」と言えるのが凄くカッコいいなと思うので、これからも最高を更新し続けられる人でありたいと思うし、みんなとだったらできるんじゃないかなと思います。この言葉に救われているし、最高を更新したいという想いで突き動かされている部分はあるなと思います。

(おわり)

作品情報

1st EP『syzygy』

・初回生産限定仕様 CD+BD(BD収録内容:Happy ∞ Birthday Music Video, syzygy Special Interview)TFCC-86884 ~ 86885 / 3,300円(税込)
・通常盤CDのみ TFCC-86886 / 2,200円(税込)

M1:「Holiday!!」作詞:Kanata Okajima, 作曲:田代智一, 編曲:Teje
M2:「Gimme the mic, gimme the light」作詞:Kanata Okajima, 作曲:田代智一 / Kanata Okajima, 編曲:Teje
M3:「HO! HO! HO!」作詞:松本有加 , 作曲:田代智一 , 編曲:やしきん
M4:「MI-RA-I miracle circle」作詞/作曲:Q-MHz, 編曲:佐伯 YouthK
M5:「Happy ∞ Birthday」作詞:PA-NON, 作曲:田代智一 , 編曲:岩崎隆一

ライブ情報

【小林愛香Zepp TOUR 2023 "syzygy"】

4月13日(木)Zepp DiverCity Tokyo
4月15日(土)Zepp Nagoya
4月23日(日)Zepp Namba
5月2日(火)KT Zepp Yokohama

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