INTERVIEW

織田ひまり

「自然な演技を身につけたい」初主演映画を経て生まれた新たな探究心


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:22年12月02日

読了時間:約6分

 織田ひまり(16)が、映画『泥の子と狭い家の物語』(12月2日公開)に出演。主人公・内田小豆を演じる。織田はガールズポップユニット BREAK TIME GIRLSのメンバーとして活動しながら、テレビ東京系「みなと商事コインランドリー」、NHK Eテレ「すイエんサー」などに出演。今年2月に『第9回日本制服アワード』で、応募総数約3000名の中からグランプリを獲得し注目を集めた。織田は映画『泥の子と狭い家の物語』が映画初出演、初主演となる。本作のストーリーは大阪で平凡に暮らす内田家に、加賀美と名乗る女が祖母・松子の介護の手伝いに来たことから始まる、家族の崩壊と再生の物語。キャストには、田中美里や月丘七央ら実力派の俳優が脇を固める。インタビューでは初主演となった本作に臨む気持ちから、撮影の舞台裏、この作品を通して見えたこれからの展望など話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

自分が演じる役のことを理解するだけではダメ

村上順一

織田ひまり

――出演が決まった時の心境は?

 マネージャーさんからの電話で合格を知ったのですが、その時のマネージャーさんのテンションが、落選したような感じでした。なので、私は「ダメだったのかなあ」と思ったんですけど、まさかの合格ですごく驚きました。嬉しい気持ちもありましたが、主演なので不安な部分もありました。

――オーディションはいかがでした?

 作品のワンシーンをオーディションで行ったのですが、監督さんから、褒めていただけて嬉しかったのを覚えています。

――本番前の準備はどんなことをされていました?

 舞台に出演したことはあっても、演技経験がほとんどなかったので、マネージャーさんが先生を紹介してくれました。台本の読み解き方などを教えていただいて、シーン毎の解釈を深めていきました。

――発見もありました?

 はい。印象的だったのは、小豆の気持ちだけではなく、相手からどのように思われているのか考えることです。自分が演じる役のことを理解するだけではダメなんです。例えば、今回家族を中心としたお話なのですが、家族というと何年も一緒に暮らしていてお互いのことをよく知っている間柄というのも、考えなければいけなくて。先生が付いてくださらなかったら、自分の役のことしか考えていなかったかもしれないです。

――織田さんが演じる内田小豆はどんな人物だと思いましたか。

 明るいキャピキャピした感じではなくて、ちょっと暗いイメージであまり言葉も発さないような子なんです。思春期で家族に対して不満を持っていて、心に留めておくようなタイプなんですけど、自分とちょっと似ているところもあるなと思いました。小豆は闇を抱えている部分もあるので、そこは私と違ったので、理解しなければいけないところでした。

――ご自身と重なる部分もあったんですね。

 私の場合、母に反抗すると倍くらいになって返ってきてしまうので、自然と留めてしまうんです(笑)。特にそれがストレスではないんですけど、そういうところはチョット小豆に似ているのかなと思ったり。

――撮影で印象的だったことは?

 雨で私がずぶ濡れになって帰宅するシーンなんですけど、洗面所の前で着替えようとしているときに、いきなり塩をかけられるシーンです。何回か撮影したんですけど、その度にスタッフさんが身体や髪に付いた塩を落としてくださって、もう一回ずぶ濡れになって(笑)。そんな経験はこれまでなかったので、すごく印象に残ったシーンでした。

――大変だったんですね。共演者の方とは、お話しされたりしました?

 撮影時は中学3年生で、受験をしていた時期だったので、そのお話をしたら「大変やなあ」と皆さん優しく話しかけてくださいました。台本の読み合わせも、私は人見知りのところもあるので、話しかけてくださって嬉しかったです。

――人見知りは克服できそうですか。

 初対面だとなかなか難しいんですけど、話しかけてくだされば、それに答えていけるので、そうしているうちに打ち解けてきて大丈夫だと思います。ただ、こんなこと話して大丈夫かな? とか、いま忙しそうだから話しかけない方がいいかな? とか色々考えてしまうんです。

――お芝居についてお話しされたりは?

 泣くシーンがあったので、母親役で出演されている田中(美里)さんに、泣く演技について相談しました。田中さんはしっかり台本を読んで、その時の感情になるのが良いとアドバイスをくださいました。しっかり小豆の気持ちにならないといけないんだなと思いました。泣くシーンのみの撮影だったのですが、その前のシーンもしっかり思い出しながら演じました。ただ、1回目の撮影では涙を流すことができたのですが、別角度からもう一回撮る時は泣けなくて...。それは今回の撮影の中で悔しかったことです。

――本作のストーリーはいかがでした?

 実際、この映画のような暮らし方をしている方もいるんじゃないかと思えるくらいリアルな部分もあったり、魔女という存在や泥人形があったりして、そこはちょっと怖さを感じたストーリーでした。

――本作は家族がテーマとしてあると思うのですが、織田さんの家族はどんな感じですか。

 賑やかな方だと思うのですが、私が一番大人しいかもしれません。父と母はけっこうボケるタイプで、そこに妹がつっこむスタイルです。私はそれを横目で見ている感じです(笑)。あと、母からは「ひまりは中々自分のことを話してくれないよね」と言われます。お仕事でイベントとかあっても、自分から詳しく話したことはあまりなくて。

――『制服アワード』でグランプリを獲った時もお母さんに教えてなかったり?

 グランプリ受賞の報告は一緒にいたので、2人で盛り上がりました! 『制服アワード』の受賞式が終わってから母に「ステージに立った感想は?」とか、聞かれたりして。

――インタビューですね(笑)。

 そうなんです。結局自分からは話さなくて、母が聞いてくれたことに答えてました(笑)。

――そんな織田さんが思う家族円満の秘訣は?

 あまり自分のことを話さない私が言うのもあれなんですけど、絶対に自分のことは話した方が上手くいくと思います(笑)。もちろん今も悪くないのですが、もっと良くなるんじゃないかなって。家族が一番身近にいて、一番話しやすいですし、絶対に味方になってくれると思うので、どんどん話した方がいいと思います。

――この作品の中でも周りから「小豆のことがわからない」といったセリフもありましたね。

 小豆も無口な方なので、喋らないんですよね。

――挙げ句の果てに、みんなから「悪魔」と呼ばれたり。

 演技ではありましたけど、言われた時はすごくショックでした。「私、悪魔かあ...」って。

――ショックを受けるということは、それだけ役に入り込んでいたということですよね。ダンスシーンもありましたけど、あそこは素の織田さんが見れた気がしました。

 生き生きしていたよね、と言ってもらえました(笑)。

――そういえば、織田さんは絵も得意なんですよね。

 はい! 共演させていただいた方に、撮影が終わってお礼のお手紙を書くんですけど、そこにイラストを添えたりしています。自分の気持ちを伝えられるところで絵を描くのはすごくいいなと感じています。

自然な演技を身につけたい

――さて、この作品を経て新たな目標など見つかりましたか。

 完成したものを観た時に、共演者の方の演技がすごく自然で、普通の会話ほどすごく難しいんだと感じました。私も自然な演技を身につけたいなと思いました。

――今後チャレンジしてみたい役はありますか。

 今回はちょっと性格が暗い子の役でしたが、明るい元気な役とか、頭が良い役とかやってみたいです。幅広い演技ができる役者さんが格好いいなと思っているので、そうなれるように頑張りたいです。

――織田さんがいま追求していることは?

 演技を追求していきたいです。もっと演技の勉強をしていきたいので、幅広いジャンルの作品に触れたいと思っています。そこから色んなスキルを吸収していきたいです。映画やドラマは視聴者として観るのも良いのですが、これからは役者としての目線でも観たいと思っています。

――作品を観る目線はどんどん変わっていきそうですね。

 今でも撮影の裏側とか考えてしまうんです。例えばこのシーンはここにカメラがあるのかな? とか。そういうことを考えるのもすごく楽しいです。

(おわり)

ワンピース 53,900円(taxin)/AOIWANAKA 03-6876-6855 その他スタイリスト私物

ヘアメイク:土肥千夏
スタイリスト:前 璃子(JOE TOKYO)

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