INTERVIEW

夏川椎菜

「ちょっとでもリーダーっぽく見えたら」初主演舞台に臨む姿勢:舞台『オルレアンの少女-ジャンヌ・ダルク-』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:22年09月18日

読了時間:約9分

 声優やアーティストとしても活動する夏川椎菜が、フリードリヒ・フォン・シラー原作の舞台『オルレアンの少女-ジャンヌ・ダルク-』に出演。主人公ジャンヌ・ダルクを演じる。公演は10月6日~10月9日東京・シアタートラム、10月15日~10月16日まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで行われる。舞台『オルレアンの少女-ジャンヌ・ダルク-』は、2021年に「深作組ドイツ三部作」と銘打ち、『火の顔』を始めとするドイツ戯曲を三作品上演した深作組が、「新ドイツ三部作」の第一弾として公演。深作健太が演出を手掛け、夏川椎菜、溝口琢矢、松田賢二、峰一作、宮地大介、愛原実花が出演する。インタビューでは、初舞台で初主演となった本作に臨む意気込みから、この作品で届けたいメッセージ、自身が見せたい姿まで、多岐に亘り話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

1年目の気持ちで臨みたい

村上順一

夏川椎菜

――先日26歳になられた夏川さん、何か心境の変化はありますか。

 自分の意識が変わったというよりは、周りの方からの見られ方が変わるのかなと思います。25までは20代前半でしたが、ここから20代後半戦。一歩大人の女性として見られることが、今後多くなるのかと思うと背筋が伸びる思いではあります。20歳は成人ではありますけど、やっていることはまだまだ大人ではなかったなと思います。

――キャリアを積めば、後輩も増えてくると思うので、その辺りも気持ちに変化が訪れそうですね。

 確かにそうですね。事務所にも新しい子が入ってきて、私が一番下だった頃と比べると、より一層頑張らないといけない、少しでも経験を積んでいる人らしくいられたらなと思っています。でも、遊び心だったり、考え方の新しさは大事にしていきたいです。

――そして、今回初舞台で初主演が決まりましたが、どんな心境ですか。

 声優としてお仕事をさせてもらえるようになってから10年が経ちましたが、ここにきてまだ新たな挑戦があるんだなと思いました。自分が新人として飛び込める場所があるのは、すごく貴重でありがたいことだと思うので、1年目の気持ちで臨もうと思っています。

――夏川さんは学生時代、演劇部に入られていたんですよね。

 はい。中学の3年間演劇部にいました。それ以降演劇はやっていなくて、声優になるためのレッスンやお仕事をしていました。

――夏川さんの中では声優と舞台、どのような違いを感じていますか。

 声優と舞台演劇は全然違うんです。大事にしているところも練習の仕方や稽古の臨み方も違うので、私は慣れないことというイメージはあります。でも、中学でやってきたことを活かせるところがあるので、当時を思い出しながらやっていこうと思っています。

――当時はどのような演目をやられていたのでしょうか。

 「春一番」、「厄介な紙切れ」などの作者さんの作品が、私が通っていた学校は好きだったのでやっていました。同じ演目でキャストを変えてやったりもしていました。

――この時は主演でした?

 いえ、重要な役ではあったんですけど、主演ではなかったので、今回の『オルレアンの少女-ジャンヌ・ダルク-』が、本当に初主演なんです。

――その主演というところで、不安があるとコメントされていましたが、現在はいかがですか。

 コメントを出した当時はまだしっかり台本を読み込めていなかったですし、ジャンヌ・ダルクのパブリックイメージからのプレッシャーだったり、ジャンヌは色んな人が演じてきているので、そこに自分も加わることへの不安がありました。でも、今は徐々にいろんなことが具体的になってきて、実感が湧いてきたといいますか、緊張を通り越して、自分ごととして受け入れるようになってきたと思います。

ジャンヌ・ダルクは今の人気者にも通ずるところがある

村上順一

夏川椎菜

――ジャンヌ・ダルクはどのようなイメージで映っていますか。

 史実ベースで言うと、激動の時代のど真ん中に入れられてしまった人というイメージがあります。世相や国民の意識だったり、政治だったり自分ではどうしようもないよねという力に、振り回されてしまった人なのかなと、自分が調べた中では感じました。そのあと色んな戯曲だったり、作品になる中で色々脚色されたりしているのを見ても、色々振り回されているなと思いました。自由や解放の象徴だったりする女性なのに、そこに対する違和感は正直あります。色々なイメージを押し付けられている感と言いますか。

 その中で、現代でもジャンヌのような人は生まれるのだろうかと考えたんですけど、TikTokでバズったみたいなものなのかなと思ったり。もしかしたら、今の人気者にも通ずるところがあるんじゃないかなと思いました。

――その発想は面白いですね。今回の脚本は史実に基づいて書かれているんですか。

 原作の『オルレアンの少女-ジャンヌ・ダルク-』が、史実と離れたことも書かれているということもあって、脚色も入っていると思います。その分ドラマチックに描かれていて、そこに深作さんの解釈で変えているところや、抜粋しているところが変わっています。ジャンヌの生き様や生い立ちを描くと言うよりは、ジャンヌの歴史を通して、その根底にある思想を伝えるのが、劇作家シラーの戯曲だったのかなと。ジャンヌを知る物語というよりは、ジャンヌを通して考える物語になっていると思います。

――重要な役になりますね。

 先日、深作(健太)さんを交えての本読みがあり、稽古の初日ということもあってお話も色々させていただきました。その中で、舞台には役として立っているんだけど、その役だけではなくて、自分自身としても立って欲しいとお話ししてくださいました。この物語をただ演じるのではなく、キャスト自身も考えを持った上で伝えて、お客さんにも考えてもらいたいというのが大事なのかなと思いました。

 私はジャンヌしか演じないのですが、他のキャストさんは4つぐらい掛け持ちでやるんですけど、その中にはナレーションもあって、愛原(実花)さんでしたら、愛原さん自身の言葉で発するシーンがあるというのは、この舞台の特徴かもしれないです。私はそういったナレーションはないのですが、ジャンヌを通して考えた戦争のことや愛国心、自由ということに対して考えを持って舞台に立とうと思っています。セリフや表情を通して、それらを伝えられたらなと思います。

――これは一瞬も見逃せないですね。

 深作さんとは朗読劇でご一緒させていただいたことがあって、台本の中に傍点がふってあったり、カッコがあったりと強調して書いてある部分があります。お客さんには台本は見えないので、それを私たち朗読者が伝わるように、もっと強調して読んでくださいと言われてました。それは今作でも同じで、台本にはそれらに加えて太字もあったり、「マイクに向かって」と書いてあったりします。

――マイクに向かってとは?

 まだ本格的な稽古は始まっていないので、どうなるかはわからないんですけど、おそらく客席に向かって、そのセリフは言うようになるんじゃないかなと思いました。(取材時)

――共演者の方とはどんなお話を?

 本読みの時に愛原さんが隣だったので、お話させていただきました。私が本格的な舞台の稽古というものが初めてだったので、セリフを頭に入れていくタイミングのことなど聞いたりしました。声優の場合、ある程度完成した状態で現場にいくので、家で練習することがすごく多いんです。ただ、舞台の場合は稽古期間が1ヶ月間あるから、それをずっと本番だと思ってやったらいいのか、あくまで本番は10月なので、そこまでに完成度を高めていければいいのか。それをプロの方はどういう風にやっているのか気になったので、聞いてみたんです。愛原さんはラフな感じで現場に行って、やりながら体で覚えていくというスタイルみたいなんです。

 舞台は完成させすぎないというのも重要なんだなと思いました。いくら稽古をしても本番は別の日なので、本番でやったことが正解になる、お客さんに届くものになるから、あえて正解を作らないというのが正しいのかなと。その日に出たものを大事にするという感じがしました。

――余白を残しておいた方がよいみたいな感覚ですね。

 はい。私は同じことを繰り返すのがちょっと苦手なんです。それで学生時代もすごく苦労したんですけど、毎朝同じ時間に起きて、同じ場所に行くのがすごく辛くて。舞台の稽古もどこかそういうイメージで、同じ稽古場に同じ台本を持って行くみたいな感じでしたが、そうではないのかもなと思い始めました。毎日違うジャンヌ・ダルクを演じることができるし、それを試しに行くのが稽古なんだなって。その中で自然と覚えていくものなのかなと思いました。

自分には出来ないと思わないようにする

村上順一

夏川椎菜

――ファンの皆さんにはどんな姿を見せたいと思っていますか。

 座長なので、「ちゃんと座長やってるんじゃん」「座長、似合うじゃん」と思ってもらいたいです(笑)。TrySailというグループでは私は最年少ですし、ソロ活動ではアットホームな感じでライブをやっているので、皆さんから「頼もしいなあ」とは、たぶん思われていないんじゃないかなと思っていて(笑)。大勢を率いているリーダーみたいなイメージはないと思うので、ちょっとでもリーダーっぽく見えたらいいなと思っています。

――舞台には動きがつきものですが、どんな練習をされていますか。

 そうなんですよね。中学の時に演劇をやっていたので初めてではないのですが、殺陣みたいなものはやったことはないんです。なので、変な癖がついてしまうかもしれないので、自分で練習して行かない方が良いのかなと思っています。一旦まっさらの状態で参加して、深作さんのつける演出に染まろうと思っています。わからないことが多いので、他の共演者の方に頼ろうと思っています。

――今、不安に思っていることは?

 いつもは左手に台本を持っているのですが、舞台では何も持たないので、空いた左手をどうしようと思っていて。ライブでは左手にマイクを持っているので、何もないというのが初めてなんです。左手がすごくぎこちなくなりそうで怖いです(笑)。

――左手に注目ですね(笑)。さて、いま夏川さんが活動して行く中で、一番大切にしていることはなんですか。

 自分には出来ないと思わないようにすることです。決めつけすぎない、肩書きに捉われないようにすることを大事にしています。実際それを続けてきて、今があるなと思っています。やったことがないことに挑戦するのはけっこう好きな方で、声優以外のお話をいただいた時も、あえて飛び込むことが多いんです。うまく行くかわからないけど、飛び込んでやってみたことが、他のことにも繋がったりしているなと思いました。よく思うことは、私自身は木の幹で、その枝葉として声優や小説、歌の活動、舞台があるんだと思っていて、私が心動く方に活動を広げて行くというのは、これからも大事にしていきたいです!

――失敗することは恐れてはいない?

 確かに新しいことに挑戦して、失敗してしまった姿を見られたくない、という人もいらっしゃると思うんですけど、むしろ私はできない姿を見てもらった方が安心できるんです。自分のダメなところを知っておいてもらった方が良くて。そもそも新しく挑戦したことが、上手くできるとも思っていないんです。出来ない自分をどんどん皆さんに見せていって、できるようになっていく様を見てもらいたいです。

――最後に読者の方へメッセージをお願いします。

 この舞台を見て何か学びがあったり、考えるきっかけになる作品になればいいなと思っているので、皆さんも自分自身をさらけ出して、心の扉を開けて観ていただけたらと思います。私も自分で解釈したジャンヌ・ダルクを皆さんに見せられたらと思っていますので、ぜひ楽しみにしていて下さい。

(おわり)

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