ディズニー初の公式アカペラグループ・DCappella、6人が大切にしている信念とは
特別企画

DCappella

6人が大切にしている信念とは


記者:村上順一

撮影:冨田味我

掲載:22年09月01日

読了時間:約14分

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 ディズニー初の公式アカペラグループ、DCappella(ディカペラ)が、8月5日の東京公演を皮切りに3年振りのジャパン・ツアー(全国7カ所/計22公演)を開催。合わせて今回の来日を記念して特別に編集された日本独自企画アルバム『マジック・リイマジンド』を7月22日にリリースした。アルバムには、ツアー公演曲目、最新EP収録曲、デジタルのみで配信されている楽曲など、CD初収録曲を多数含む全26曲収録している。インタビューでは3年振りに来日を果たしたDCappellaメンバーの6人にインタビューを実施。来日して驚いたことから、6人がDCappellaの活動を通して大切にしていることなど、多岐に亘り話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

日本に来て驚いたこととは?

――皆さんが来日されて驚いたことはありますか。

ジョー 驚かせられるのは、日本人のみなさんがすごく優しいことです。そして他人への思いやりと配慮があることです。何をやるにもそれらを感じられるのが素晴らしいと思いますし、それは他の国にはないことだと思います。あとは食べ物が10倍美味しいです!さりげないちょっとしたことに対して我々は感謝していて、日本が第二の故郷だと思えるからこそ毎回来たいと思うんです。そして、ライブでも日本のお客さんは少しでも聴き逃さないようにと熱心に聴き入ってくれるのが素晴らしいと思います。

ジョー・サントーニ(バス)

RJ 今回特に気づいたのですが、ちょっとしたことにも凄く気が利いたことが行われているという発見がありました。例えば、駅で鳥のさえずりの音が鳴ること、電車が来たことを知らせる為の音楽が流れるところがいいなと思いました。あと、日本が誇るTOTOのトイレが各所にあることも、細かい所への気遣いが感じられ素晴らしいと思います。

RJ・ウェスナー(テノール)

ケイレン 和食が美味しいのは期待通りだったのですが、他の国の料理も美味しいんです。地中海料理やイタリアンやメキシカンも、どのレストランに行ってもどこの国で食べるよりも美味しいんです。お気に入りは焼きそばです。

ケイレン・ケリー(メゾソプラノ)

――日本の好きなところをたくさん言ってくれて嬉しいです。さて、今回再び来日されてツアーが行なわれますが、7月にリリースされた来日記念盤『マジック・リイマジンド』のお気に入り曲を教えてください。

ケイレン 2曲目の「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」(『メリー・ポピンズ』)です。映画『メリー・ポピンズ』が大好きで、作品に登場する曲の楽しさやお茶目さなどがしっかり再現されながらも、自分たちならではの今風のポップに仕上げたアレンジになっているんです。ステージ上でパーティーが行なわれるような、お客さんを巻き込んで盛り上がる曲なので是非みなさん注目して聴いて頂けたらと思います。

オーランド 私は「Nobody Like U」(『私ときどきレッサーパンダ』)です。これは90年代から2000年代くらいの懐かしいポップスを再現したような曲なんです。聴くとタイムマシーンでその時代に戻ったかのような気持ちになる凄く楽しい曲です。是非そのあたりをみなさまにもライブで感じ取ってほしいなと思います。

オーランド・ディクソン(バリトン)

モーガン 「ディズニー・ブロードウェイ・イズ・バック・メドレー」です。私はミュージカルが大好きで、下積み時代もありました。メドレーの中に『ニュージーズ』という作品の「シーズ・ザ・デイ」という曲があるのですが、これは実際にそのミュージカル公演に参加してツアーを行なったという思い入れもある曲なんです。あとは、今回コロナ禍を経てブロードウェイのミュージカル公演再開を記念してレコーディングして発表したというところも大きいです。

モーガン・キーン(ソプラノ)

――モーガンさんの思うミュージカルの魅力とは?

モーガン どちらかと言うと演者の観点ですが、作品の登場人物になって表現すること、歌うこと、演じることが本当に大好きなんです。DCappellaでやることはそれとは違い、歌を通して自分自身を表現していることは私にとって違う楽しみがあります。ミュージカルに関しては、ブロードウェイのコミュニティがあって、そこに友達も大勢いて、演者間のコミュニティ、ミュージカルでお客さんに伝える感動、物語が凄く好きです。

――ジョーさんのお気に入りの収録曲は?

ジョー 「キス・ザ・ガール」(『リトル・マーメイド』)です。自分は主に低音を担当していますが、これは他の曲とは違いRJと僕が2人で前に出て歌うんです。女性陣がハーモニーを加えて、オーランドとアントニオがビートという構成になっています。非常にロマンティックな曲なので、実際にライブでのパフォーマンスでカップルを見つけた時、彼らを煽るというわけではないですけど、ロマンティックな気持ちになってもらう演出もあったりするので凄く好きです。

――どんな演出だったんですか。

ジョー 前回、コロナの影響の心配がない時は客席に降りてカップルの目の前に立って歌いました。今回はコロナ禍ということもあるので、何か工夫したいと思っています。

――カップルがいなかったら?

ジョー 実際にありました。カップルかとおもったら兄妹で(笑)。その場合はちょっと笑えるようなかたちになると思います。

――他人同士をカップルとしてくっつける方法もありそうですね。

ジョー 「あなたと君!」って?

モーガン 無理無理(笑)。

ジョー アハハ! でも、お客さんを巻き込むのは凄く楽しいですよ!

――さて、アントニオさんのお気に入りの収録曲は?

アントニオ 僕はバラードが好きで日本語で僕たちの曲を聴きたいという人にピッタリなのが「美女と野獣」(『美女と野獣』)です。自分たちにとっても初めて日本語でカバーした曲なんです。歌ってみると日本語は本当に美しい表現ができると痛感しました。

アントニオ・フェルナンデス(ボイス・パーカッション)

――アントニオさんは基本パーカッションですが歌う場面もある?

アントニオ 6人編成になり、みんなで振り分けているところもあるんです。「美女と野獣」はライブステージでも歌うのでぜひ僕に注目して聴いてほしいです(笑)。

――RJさんはどの曲が特にお気に入りですか。

RJ アルバムの中で特に気に入っているのは「とびら開けて」(『アナと雪の女王』)です。かなりオリジナルに忠実なアレンジだと思いますし、自分の声に凄くピッタリな曲になっているので歌うのが大好きです。曲の意味、メッセージも好きで、全く新しい生まれ変わった自分、新しい生き方をするんだというところで偶然な出会いや特別な瞬間があるようなところが凄く共感できて大好きな曲です。

――RJさんが特別な出会いを感じた瞬間は?

RJ パンデミックになる直前にある人と偶然出会い、実はその人と結婚をして今スペインで一緒に住んでいます。そんな特別な出会いがありました。

DCappella版『スター・ウォーズ』を撮っているみたいな気持ちに

――私は『スター・ウォーズ』が好きなのですが「酒場のバンド」(『スター・ウォーズ/新たなる希望』)はとても感動しました。MVもすごかったですね。

ケイレン 凄くクールな経験でした。私たちはウォルト・ディズニー・ワールドのディズニー・ハリウッド・スタジオにある「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」のオーガズ・キャンティーナでビデオ撮影をした唯一のグループなんです。演出も『スター・ウォーズ』にちなんで、それぞれのメンバーが『スター・ウォーズ』のキャラクターのような登場します。アントニオなんてホログラムでジェダイの騎士のように登場します。撮影自体はお客さんが帰ってから、夜の10時から朝の5時まで夜中2日間かけて撮影しました。DCappella版『スター・ウォーズ』を撮っているみたいな気持ちになって特別な時間でした。

――アントニオさんの登場の仕方はずるいですよね(笑)。

アントニオ Yeah, I like that!

――みなさんからのリクエストもあった?

ケイレン DCappellaのチームとディズニーパークのチームが協力し合って作ったんです。撮影は2021年だったんですが、それまで3年程の準備期間がありました。というのも、パークのあの場所を撮影に使うということで色々な許可を得なければいけなかったんです。我々から絵コンテを出して、そこからOKを出してもらうまでにかなり時間を要したんですけど、それくらい革命的な試みだったんです。唯一、私の方からお願いしたのが、妹と夫をエキストラとして出演させてもらえませんかとお願いしました。妹は黄色い服を着て、その横で赤い服を着た人が夫なんです。

――注目ポイントですね!さて、「酒場のバンド」のパフォーマンスでこだわった点は?

アントニオ 楽器だけで構成されている曲、インストを声だけで再現するということで、歌声を限りなく楽器に近い音で再現することです。「この楽器のパートをどの声で出そうか」ということをスタジオで試行錯誤しながらチーム全体で力を合わせながら探して、それを形にしていく方法をとりました。新境地が開けたと感じました。

――特に聴いてほしいパート、再現度の高い部分としては?

アントニオ チューバッカ(『スター・ウォーズ』で登場するキャラ)を表現しているところだね(笑)。あと、オーランドとRJでスチールドラムの音を交互に出しているのがいい感じになっています。

RJ 三声和音で重ねた速いテンポでやっているパートもね。サックスと、いわゆる木管楽器の音を声でハーモニーにして出しているんです。「Nobody Like U」(『私ときどきレッサーパンダ』)や 「サークル・オブ・ライフ」(『ライオン・キング』)など、他の曲でもそれぞれ必要であればそういう楽器の音を再現しています。

――パートはシームレスなんですね。

インタビュー風景

ケイレン 「こういう音を出したいよね」と、みんなで力を合わせて考えるのが凄く楽しくて。プロデューサーのディーク・シャロンが「こういうアレンジにしてきたよ」と青写真を作ってきてくれるのですが、そのアレンジを声で再現するにあたって、どういう風にやろうかとみんなで考えます。「Nobody Like U」はハイパスフィルターをかけたような音があるのですが、それをどのように出すのが一番いいのか、試行錯誤するのが楽しいんです。

――後で音の処理をするのではなく、自力で出すのですね。

ジョー そう。レコーディングの時はある程度加工を加えることはありますが、公演で再現できるものでなければならないので、自分たちがマイクでその音を歌えるものという範疇の中で考えなければいけないんです。

メンバーそれぞれが大切にしていることとは?

DCappella

――最後に、みなさんが音楽活動をするうえで大切にしていることは?

ジョー コロナ禍を経て、自分たちがやりたいことがいつできなくなるかわからないことを凄く実感しました。今こうして活動ができていることをありがたいと思っています。そうすると謙虚な気持ちにもなるので、みんながDCappellaのような活動ができるわけではないということを肝に据えながら、自分たちは恵まれているということを自覚して、目の前のことをありがたく受け止めています。

オーランド レガシー、何かを残すということが凄く大事です。それはこのプロジェクトをやるうえで自分にとって凄く大きいんです。常に、先人たちが残してきたものを引き継いで、自分がまた何かを作ってそれを残していけるということが他にはない、このプロジェクトだからこその経験だと感じます。コロナ禍の後、DCappellaで大切なものを未来に残すことを通して爪痕を残したいというところを意識してやっています。

 その気持ちは、もともと自分が持っていた考えでもあるのですが、12歳からずっと芸能の世界でやってきましたが、実は家族として先祖代々伝わるそういう考えがあるんです。何をやるにしても、自分がやることに対して何か爪痕を残していくということをしっかりと意識してやることが大事だと思います。それは前に比べてさらに強くなりました。

モーガン 私は座右の銘などはないのですが、凄く大事にしているのは自分を大切にすることです。例えば睡眠をとるとか、自分に対して何か嫌な影響を与えるような人とはなるべく距離を置くなど、そういうことを意識するようになって、自分にとってより良い選択をすることができるようになってきたと思います。この6カ月で自分が大きく変わったという実感もあります。より色々なことに対して喜べるようになって明るくなり、前向きになりました。色んなことが自分でもできるようになったと思っているし、とにかく自分を大切にすることを今は凄く大事にしています。

RJ ここ2、3年の大変な時期を経て、今はとにかく目の前のことにしっかり意識を向けることを大事にしています。それが自信や自分の落ち着きに繋がったりします。それによって感謝の気持ちも実感するしパフォーマンスも変わってきたと思います。やはり目の前のこと、自分が今いる状況、今に意識を向けることを楽しむことを今は大事にしています。

アントニオ コロナ禍で感じたのが、物事はいつか終わるんだということなんです。今起きていることはいずれ消えてなくなるかもしれないし、人間の命だっていつかは終わってしまうんだなと。死んでしまうということを暗く考えるのではなく、だからこそ今を大切に、今置かれている状況に感謝する気持ちが芽生えると思っています。私が心がけていることは、目の前のことや、やらなければいけないことに埋もれてしまう代わりにズームアウトすることです。ひょっとしたら目の前で凄く大きな壁に立ちはだかってみえるものが、人生全体的に俯瞰して見てみると、ちょっとしたコブくらいのものなのではないかという風に考えられるようになりました。そうすることで、自分が何のためにこれをやっているのか、これを聴きたいと思う人に対してしっかり音楽を届けるという自分の役割がわかってきますし、しっかり今に気持ちを集中させることができるようになっています。

ケイレン このグループを始めた時と今とでは、グループ自体もそうだしグループに対する考え方が変わってきました。当初はオーディションを通して結成して、1回のツアーだけのためのグループという意識だったんです。その時に「みんなそれぞれにキャラクター要素をつけましょう」とチームから提案されて、「じゃあメゾソプラノの人はちょっと強気な女の子」「ソプラノの人はお姫様」みたいな感じのキャラ付けされていました。ある意味、演じるというのが自分の役目なのかなという演技者のような感じだったんです。

 でも今グループとしてずっと活動していく中で、本当の自分らしさ、一人一人の個性、グループの味が凄く出てきました。そのぶん、自分らしさを創造性に結びつけることができるようになりました。お互いの信頼感もあるので、ディズニーの曲を歌う際に、演じなければいけないというわけではなく、自分らしさを表現することができるんだと思えるようになりました。だから今、最初に思っていたのとは全く違う活動をしていると自覚しています。DCappellaと自分の今後の人生をみた時に、そういった自由に自分のやりたいものを作るということが大きなことになるのかなと思います。

(おわり)

DCappella

ライブ情報

【東京公演】 8月5日(金)~8月21日(日) 東急シアターオーブ(終了)
【大阪公演】 8月25日(木)~8月28日(日) オリックス劇場(終了)
【広島公演】 8月30日(火)18:30開演 広島文化学園HBGホール(終了)
【福岡公演】 9月2日(金)18:30開演 福岡サンパレス
【鹿児島公演】9月4日(日)17:00開演 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
【名古屋公演】9月6日(火)18:30開演 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
【札幌公演】 9月9日(金)19:00開演 札幌文化芸術劇場 hitaru

いずれもS席 9,800円A席 7,800円、 B席 5,800円、 VIP席 14,800円(税込み・全席指定)3歳以下入場不可
VIP席の特典:10列目以内の席保証、 サウンドチェック見学、 トークセッション、 VIP限定オリジナルグッズ、 公演オリジナルグッズ先行販売

作品情報

ディカペラ 『マジック・リイマジンド』

『マジック・リイマジンド』ジャケ写(C)Disney

2022年7月22日(金)発売・配信
UWCD-1110/3,000円(税込)
Walt Disney Records
https://store.universal-music.co.jp/product/uwcd1110
https://umj.lnk.to/MR_JP
■ディカペラ ユニバーサル ミュージック公式サイト:https://www.universal-music.co.jp/dcappella/
■ディカペラ日本公式 Twitter:https://twitter.com/DCappellaJapan

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