chelmico、“gokigen”な仲良しユニットの今に迫る
INTERVIEW

chelmico

“gokigen”な仲良しユニットの今に迫る


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:22年06月17日

読了時間:約14分

 RachelとMamikoの友達2人組で結成されたラップユニットchelmicoが6月1日、4枚目となるアルバム『gokigen』をリリース。2018年にワーナーミュージック・ジャパンのunBORDEよりメジャーデビュー。これまで『POWER』『Fishing』『maze』と3枚のアルバムをリリースしている。最新アルバム『gokigen』は、メンバーのRachelが結婚と出産を経て完成した作品で明るく踊れるナンバーを中心に全14曲を収録。先行配信された「三億円」をはじめ、RIP SLYMEのDJ FUMIYA、tofubeats、Tomgggらと制作した楽曲など、彼女たちの歴史の中で重要なアーティストとの共作で、伏線を回収したご機嫌なアルバムに仕上がった。インタビューでは『gokigen』の制作背景や、仲良しユニットの素顔に迫った。【取材・撮影=村上順一】

「O・La」はchelmicoなりの“オラオラパレード”

村上順一

chelmico

――お2人が出会ったのは西日暮里のマクドナルドとのことですが、どんな出会いだったのでしょうか。

Mamiko 趣味で写真を撮っている共通の友人からの紹介でRachelと出会ったんですけど、その友人が西日暮里の近くに住んでいたからなのかな?

Rachel 違うよ、下町の雰囲気が写真が映えるから西日暮里だったんだよ。

Mamiko そうだった! ラムネとか持って撮影したのを覚えています。私は西日暮里に行ったのはそれが始めてで…。

Rachel 違うよ、ここで昔バイトしてたとか言ってたよ。

Mamiko そうだ私、西日暮里のかき氷屋さんで昔バイトしてたんだ!

――その時に音楽をやろうと誘った感じではなかったんですよね。

Rachel そうです。当時は2人とも特に何をするでもなく写真を撮ってもらいながら街をプラプラして。Mamikoと世間話は弾んでいたので、会話に困るみたいなことはなかったです。

Mamiko その時からテンション感、面白いと感じるポイントは一緒なんです。

――一緒に音楽をやろうとお誘いしたのはどちらから?

Rachel 私が誘いました。「一緒にラップしない?」って。

Mamiko 誘われた当時は音楽はやってなくて、受験勉強中にRachelから連絡が来て「いいよ」みたいな感じで即答したのを覚えています。OKしたのは、現実逃避みたいなところもあったと思います。大学へ行きたいかどうかも分からないまま、受験勉強をしてるみたいな感じだったので、そのストレスもあって一回やってみようかなって。

――大きく人生が好転し始めた瞬間は?

Mamiko chelmicoを始めた瞬間ですね。そこからずっと転がり続けてます(笑)。

Rachel 常に次のステップがある感じでした。一回ライブをやって終わる予定だったんですけど、ライブを観ていたシンガーソングライターの人が「自分のイベントに出てほしい」と誘ってくれて。そのイベントに出たら、それを観た別の人が誘ってくれて、というのが続いて今に至ります。

――雪だるま式に膨れ上がって。さて、chelmicoは仲良しユニットと形容されることが多いと思いますが、今お話を聞いていても本当に仲良しですね。

Mamiko そうなんです!

Rachel 本当によく言われるよね。

Mamiko 私たちからすると、仲が良いことがそんなに珍しいのかな? と思うんですけど。

――お互いのことをわりと喋れるのでは? と思いました。

Rachel 話せます! もうMamikoのことは語れます!!

――それが仲良しユニットと呼ばれる所以かなと。

Rachel そうかも(笑)。この間サマソニのチケット予約のメールが届いて、新しく発表されたアーティストにキャッチがついているんですけど、私たちは「友達2人組ユニットchelmico」と書いてあって(笑)。二人組だけでもいいんだけど、友達というのを付けていただいて。でもそれぐらい仲良しということが認知されてるのかなって。

――この雰囲気に憧れている方も結構いらっしゃると思うんですよね。ラップ、私もやってみようかな、というところにも一役買ってるんじゃないかと思いました。

Rachel 私たちはRIP SLYMEさんに憧れてラップを始めたのですが、私たちもそういう存在になれていたら嬉しいです。「chelmicoができるんだから、私たちもできる!」と思って欲しいよね。

Mamiko RIP SLYMEさんってずっと楽しそうじゃないですか。サークル活動みたいな感じの雰囲気がすごく良くて。

――お2人は伏線回収と仰っていましたけど、今回RIP SLYMEのDJ FUMIYAさんとコラボされています。いただいた曲を聴いていかがでした?

Mamiko めっちゃテンション上がりました。「わ〜DJ FUMIYAさんだ!」って。しかも3曲も作っていただいて、それもすごく嬉しくて。私たちから「こういうのどうですか」と提案したアイデアを元にして作ったものと、もう一つはサンプリングのビートを使った曲、3曲目が今回収録した「O・La」なんですけど、それがDJ FUMIYAさんがchelmicoにやらせてみたかったというトラックで、わりと汗臭い感じなのですが、私たちも「それやりたい!」となって。

Rachel うんうん。DJ FUMIYAさんが私たちにやらせてみたいトラックとchelmicoがいいなと思ったトラックが一致していたので、それもすごく嬉しかった。

Mamiko どの曲も格好良かったからあとの2曲もやりたいよね。

――この「O・La」を聴いてイメージしたビジョンというのはあったのでしょうか。

Rachel この曲を聴いた時に、夜の道を歩いているようなイメージが浮かんだので、パレードみたいな感じはどうかなという話をしてて。でもただのパレードじゃなくて、ちょっとドヤ感というかchelmicoなりの“オラオラパレード”みたいな感じで歌詞を書きました。DJ FUMIYAさんの曲ってディズニーっぽい感じがあって、ビジョンのイメージとしては『ダンボ』で悪夢のようなシーンのイメージです。

『COZY』とは対照的な作品になった『gokigen』

村上順一

chelmico

――今回約2年ぶりのアルバムでRachelさんが結婚、出産を経ての初めてのアルバムになるので意気込みも違ったのでは?

Rachel 景気よくビート感強めでノリノリで行きたい、というのが二人の中でありました。

Mamiko 復帰のアルバムだったからRachelが好きなビート感を多く出していきたいと思いました。速くて強くて踊れるようなトラックが多いんですけど、私もRachelが子育てをしている時にソロ作品をリリースして、それが静かな音楽だったので、その反動で強いのやりたかったというのもありました。それで、「ご機嫌でいたい」という気持ちがあったので、アルバムタイトルも『gokigen』になりました。

Rachel 昨年リリースしたミニアルバム『COZY』はゆっくり聴くようなイメージで作っていたので、今作は対照的な作品になりました。

――インタールードが入っていると、すごくコンセプチュアルに感じますね。

Rachel 並べた時にすごい難しくて、楽曲のカラーが前半と後半でガラッと変わるから、それらを繋ぐような役割の曲があったらいいなと思って。

Mamiko 毎回アルバムにインタールードを入れているんですけど、構成として面白いなと思ってます。

――アナログ盤を意識されているようなイメージもありますね。

Rachel 確かにインタールードを入れている人って最近はあまりみないかも。

――今この曲数でリリースするアーティストもそんなに多くはなくて、14曲はかなりボリューミーですよ。

Mamiko 我ながらよくやったなと思います(笑)。

――制作は大変でしたよね?

Rachel 曲の制作自体はそんなに大変じゃなかったんですけど、子育てでスケジュールが圧迫されていたので、そこが大変でした。子供がいるアーティストで、音楽活動を続けてる人って本当にすごいなと思いましたから。あと、ここまで色々曲を作ってきて過去と同じことをやってもしょうがないと思っているので、いくつかひねり出した曲もありました。

――出産してから活動復帰も早かったなと感じています。

Rachel 止まりたくなかったという不安もありました。活動から離れることによってファンの皆さんが遠のいてしまったり、自分のモードがこれまでと違う感じになってしまったらどうしようとか。音楽は自分の楽しみで、なくなったら、ただ辛いだけの毎日になってしまうので。

――お二人の中でchelmicoとして新しい一面を見せたい、というのは強くなっている?

Mamiko 今回のアルバムも新しいこと、今までのchelmicoがやってなかったことを挑戦した部分はあります。もちろん、これまでの延長の曲もあるんですけど。

――特に新しい一面を見せられたなと思う曲は?

Rachel 全部といいたいところですが、「三億円」はここまでトピックス感を押し出して、強い口調やビート、フローもやってなかったことです。この曲が出来たことによって私たちのできることの幅が広がって、「moderation」という曲は「三億円」があったからこそ、できた曲なのかなと思います。

――Mamikoさんは?

Mamiko 「moderation」かな。「Roller Coaster」もそうなんですけど、歌うところがなくて、フックは踊る感じの「moderation」も新しいなと思ったり、声の出し方とかも、それぞれの曲で変えてみました。その中でも「moderation」が一番その要素が多いと感じています。

――「intro」からの「Roller Coaster」の流れもすごくいいですね!

Mamiko 「Roller Coaster」は、「これがご機嫌ですよ!」というテーマが一番わかりやすい曲だなと思って。

Rachel 明るくて、爽やかで、踊れて、今までのchelmicoらしさもある。

Mamiko 歌詞は気分の浮き沈みの話をしているんですけど、どっちも楽しんじゃおうみたいな。その姿勢が『gokigen』のテーマにぴったりだし、色んなご機嫌があるよねということを提示してくれる曲なんです。

――ちなみに『gokigen』というタイトルは全曲揃ってから考えたんですか。

Mamiko 最初です。『gokigen』にした理由はシンプルに可愛かったからです。響きや小文字の雰囲気が可愛いといった感じで決めました。今思えば私達がタイトルに引っ張られて、そういう曲が出来たのかもしれないです。

――小文字も意味があったんですね。

Rachel chelmicoも小文字だしいいなと思って。

――タイトルといえば曲名の「bff」はBest Friends Foreverの頭文字?

Rachel そうです。これも可愛いから小文字にしました(笑)。bffはスタンプでもあるし、外国でもギャルが使っている感じです。

Mamiko 最初はお互いのこと書くみたいな感じで始まって、「GREEN」という曲があるんですけど、手紙を書いてる感じで歌詞を書いていたので、今回はちょっと違う感じにしたいな思いました。『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』という映画があって、親友同士のお話なんですけど、それをモチーフにしたと言いますか、その映画の主題歌を作るみたいな感じで書きました。自分たちのことを書いた部分もありますけど、どちらかといえば映画の方が強いです。

――映画がモチーフになることもあるんですね。ご自身の中でお気に入りの映画はありますか。この映画が自分を形成してるみたいな。

Rachel 私は「ファイト・クラブ」です。好きなポイントはブラッド・ピットが格好いいからと、作品の全体的な空気感、資本主義に対する懐疑的な目線みたいなところがすごくいいなと思って。

Mamiko やっぱり「ファイト・クラブ」は入ってくるよね! 私は色々あって悩みますけど「コーヒー&シガレッツ」です。オムニバスという形式が最高だし、コーヒーとタバコを軸に人々が会話劇をするのが面白くて。この表情でこんなこと言う? みたいなのを互いに読み合ってるところがめちゃくちゃいいんです。

Rachel Mamikoは普段から会話を聞くの好きだよね。

Mamiko うん。ラジオとかおしゃべりとか好きで、観察できるものが好きなのかも。

Rachel だからMamikoが「コーヒー&シガレッツ」を挙げたのはすごくピンときたし、「あぁ、そうだよな」となりました。

Mamiko 格好いいし、構図もすごくいいんです。

レコーディングで欠かせないものとは?

――レコーディングで新しい試みはどんなことがありましたか?

Mamiko 私はマイクを変えました。これまではRachelと同じマイクだったんですけど、ディレクターさんに「マイク変えたい」というお話したら、エンジニアさんがマイクを提案してくれたんです。

Rachel 音に敏感な人だったら気づくかもしれない。

――お二人はレコーディングなどで、欠かせないアイテムはありますか。

Rachel カフェオレのような甘い飲み物か、缶コーヒーです。これまでも飲むことは多かったんですけど、レコーディングの時、毎回飲むようになったのはわりと最近で「三億円」ぐらいの頃から必須になって。レコーディングはすごく疲れるから甘いものを飲むと脳が喜んでる(笑)。

Mamiko 私はコンビニで販売してるカップのカフェラテが好きで、レコーディングには欠かせないです。あと、ドライフルーツにハマっていた時期もありました。

Rachel 「gokigen」の時にドライフルーツ率が高かった気がする。あとはプロデューサーさんが持ってきてくれたお菓子やカレーパンも嬉しかった。

――色々あるんですね。今回1枚作り終えてみて、新しい発見はありましたか。

Mamiko まだまだchelmicoは伸び代があるなと思いました。

Rachel 新たな挑戦をしてみて、これできたからもっと精度が高いもの、応用編みたいなものが、ここからできるかもしれないという感覚がありました。私たちはまだまだできる!と安心しました。

Mamiko 音楽を作ることがやっぱり楽しいと思いましたし、これからもずっと作ることは楽しいんだろうなって、確信を得たアルバムでもあります。

――もっと曲数を入れたアルバムもできそうですね。

Rachel アルバムは時間をかけさせてもらえるのであれば、20曲入りとかも挑戦したいです。

――すごい意欲があってポジティブで気持ちいいですね。

Mamiko Rachelのこの明るいところにみんな救われていますから。

――ジャケ写もお2人の明るい雰囲気が出ていて印象的ですね。監視カメラに映った映像をイメージしたものだとか。

Rachel 海外の画像サイトとかで、友達同士が監視カメラに向かって「イエーイ」とやってる画像をあげてる人が結構いるんです。

Mamiko 監視カメラがあるエレベーターとかで、一緒に写真撮ったりね。

Rachel それってすごいご機嫌だよなあと思って。デザイナーの大倉くんが考えてくれました。

ビートを浴びて楽しいと思ってもらえるようなステージに

村上順一

chelmico

――今作は伏線回収としてRIP SLYMEのDJ FUMIYAさんもそうなんですけど、他にもあるんですか。

Mamiko インディーズの頃から知ってる人、tofubeatsさん、Tomgggさん、TSUBAME(TOKYO HEALTH CLUB)さん、NVDESさんもずっと好きだったけど、一緒にやったことはなかったので声をかけさせていただいて、実現しました。chelmicoの歴史が詰まった人が集まっているので、伏線を回収したなと思っています。

――ここから新たに伏線を回収できることもあるんですか。

Rachel RIP SLYMEさんとはグループとしてはまだご一緒できていないので、いずれ叶えたいです。あとはヒイラギペイジ君という私たちに一番最初に曲を作ってくれた方がいるんですけど、今は連絡が取れなくなっちゃって...。ペイジ君と今のchelmicoで曲を作ったら面白いので実現したいです。他にも昔一緒にライブ出てたパブリック娘。はいまも仲がいいけど、コラボしたことはないので、何か一緒にやってみたいです。

――まだまだ色々あって楽しみですね、さて、6月10日から「chelmico gokigen TOUR」が始まりますが、どのような気持ちで臨みたいですか。

Mamiko 楽しもうという気持ちは絶対にあります。緊張するのでライブはあまり得意じゃなくて、人前にもあまり出たくない、というのも昔はあったんですけど、ツアーをやり始めてからすごく楽しくなってきました。今回ツアーができることになって、楽しむ気持ちを一番大事にしたいというのと、特に地方はお客さんも久しぶりに会う人ばかりだから、すごく楽しみです。

Rachel 始めての人も沢山来てくれると思うので、それも楽しみです。

Mamiko お客さんも全力でライブを楽しみに来ると思うので、その期待に応えたいし、みんなでライブを作り上げられたらいいなと思います。振り付けとかも私たちが教えます。

Rachel 「三億円」には振りがあるんですけど、他にも予定している曲があるので、新たにみんなで何か一緒にできたら楽しそうだなと思っています。

Mamiko 今回のアルバムの曲は踊れる曲がたくさん入ってるし、声を出さなくても楽しめる曲がいっぱいあるので、ビートを浴びて楽しいと思ってもらえるようなステージにしたいです。

――最後に、仲の良いお2人、それぞれ一言いまお互いに伝えたいことはありますか。

Rachel う〜ん…今なら「また一緒に映画観に行こうね」ということですね。

Mamiko いいよ(笑)。私がいまRachelに伝えたいことは、「一緒に髪の毛を切りに行こう」です。ちょっと2人でイメチェンして心機一転したいなと思って。

Rachel おっ、一緒に美容室に行くのって面白いね。

Mamiko ここから季節も変わるしね。

Rachel じゃあその日に映画も観れるね! あっ、すみません、ただの約束になってしまいました(笑)。

――chelmicoらしくていいと思います(笑)。

Rachel あとは、この記事を見た人がこの約束が果たせたのか、皆さんそれぞれが思いを馳せてくれたら面白いかも。そして、達成できたかどうか、ツアーで確認しに来ていただけたら嬉しいです!

(おわり)

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