紗羅マリー「1人ではできないものも2人いたら」映画『ニワトリ☆フェニックス』主題歌に込めた想い
INTERVIEW

紗羅マリー

「1人ではできないものも2人いたら」映画『ニワトリ☆フェニックス』主題歌に込めた想い


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:22年04月19日

読了時間:約8分

 モデル、歌手、役者とマルチに活動する紗羅マリーが、映画『ニワトリ☆フェニックス』(4月15日公開)で月海を演じる。『ニワトリ☆フェニックス』は2018年に公開された『ニワトリ★スター』の続編で、パラレルワールドのような位置付けとなっている作品。前作に引き続き『ニワトリ☆フェニックス』は井浦新、成田凌、LiLiCo、津田寛治、阿部亮平も参加。『ニワトリ★スター』で紗羅は薬物中毒のシングルマザーという役を見事に演じたが、今作では謎の花嫁という前作とは180度違った役に挑戦。どのようなマインドで臨んだのか、同作の主題歌も担当した経緯など、多岐に亘り話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

草太と楽人がこれからも生きていくための一つの物語

村上順一

紗羅マリー

――『ニワトリ☆フェニックス』のお話を聞いていかがでした?

 かなた狼監督とは定期的に連絡を取り合っていたので撮影することはわかっていました。『ニワトリ★スター』が終わってからも、ずっとこんなのやりたいよね、とか話をしていて、『ニワトリ☆フェニックス』をやるぞ、というお話が来たときに私は「待ってました!』いう感じでした。

――前作では薬物中毒のシングルマザー役でしたが、今回は謎が多いですけどハッピーな役で、同じ月海でも趣が180度違いますね。

 ハッピーでしたね。『ニワトリ★スター』のことは引きずらずに、監督も「そんなに気負わずに、そのままでいてくれたらいい」と話してくださって。それは、『ニワトリ★スター』で1回月海をやってるので、月海は自分の中に意識しなくてもあると思うから、そんなに考え込まずに楽しんでくれたら、という感じでした。

――『ニワトリ★スター』では薬物中毒の役ということもあり、かなりダイエットされたみたいですが、今回はそういうことはなかったんですか。

 若干やせてほしい、と言われました(笑)。私は謎の花嫁役ということもあり、ウェディングドレス着ることになっていたので、1キロぐらいダイエットしました。無事にドレスが着れて良かったです。

――紗羅さんのスタイルだと1キロ痩せるのも大変ですよね?

 それが夜中のお菓子をやめただけなので、全然大変ではなかったです(笑)

――これまではお菓子を夜中に食べていたんですか?

 ポテチとか食べてましたね(笑)。流石におにぎりはやめましたけど(笑)。私の場合、夜中におにぎりを食べる方がどんどん太るんですよ。なので、その代わりにちょっと小さめのポテチに変えました。

――小さめというのがポイントですね。ところで、今回の撮影はどんな雰囲気だったのでしょうか。

 “狼組”のみんなから「ありがとうをみんなに届けたい」というテーマから始まっているので、すごいいいチームワークで、監督とも定期的に連絡を取り合ってましたし、役者のみんなとも個々に連絡を取り合っていました。コロナ禍にはインスタライブを(井浦)新さんと成田(凌)さんがやっていたので、それを私は見て、コメント残したりとか。狼組はファミリー化していて、みんなで楽しくやっていたので、そのチーム感がすごく出た映画だなと思いました。みんなそれぞれに楽しんでいて、信頼し合ってるので、すごく面白かったです。

――今作の撮影では、雨屋草太を演じる井浦さんや星野楽人を演じる成田さんとは接点があまりなかったのでは?

 自分の撮影じゃない日も現場に行って、2人の車の運転の練習とか、後部座席に乗ってカメラの位置がどうとかやってました。「ちょっとこれ持って」とか頼まれたり(笑)。

――スタッフさんみたいな役割をされていたんですね。紗羅さんが印象に残っているシーンは?

 伊勢の、その時その瞬間にある自然の音が物凄く良くて印象に残っています。蝉の鳴いている声、透き通った川の音、二人の呼吸やタバコが燃える音。本当にその場に居合わせている気持ちになります。あと、火野正平さんや、奥田瑛二さんのシーンも本当に素晴らしいです。監督から出てきたセリフがお二人の重ねてきた人生に乗っかり、言葉の説得力と、包み込んでくれる優しさがあり、感動しました。
 
――私は『ニワトリ☆フェニックス』を見させていただいて、改めて人生って何なんだろうと考えさせられました。

 私は作品に携わっているので、もう「愛しかない」と思うんですけど、監督が一番伝えたかったのは、「なにかから少しだけ逃げたかった」という部分なんじゃないかと思います。

――その言葉、キャッチコピーとしても書いてありましたね。

 コロナもそうだし、人生もそうですけど、よくないことがいっぱい起こる中で、それでも突っ走っていかなければいけないほどつらいものはない。けど、一瞬でもいいから嫌なことを忘れて面白いことをしたいとか、そういう時間がすごく救われることなんじゃないかなと思うので、この草太と楽人のロードムービーは、2人がこれからも生きるための一つの物語だと思うんです。何かから少し逃げたかったから、2人でいることを選んで旅をする、というのがこの映画の一番のところかなとは思いますね。

――紗羅さんも何かから逃げ出したい、と思ったことは?

 13歳からモデルのお仕事をさせてもらっているので、自分の年齢と同じ幼さでいられるわけではなく。仕事をする。というのは責任がついて回るので小さいながらに無理矢理大人にならざる得ない自分から逃げたかったという時期はありました。今は、マネージャーさんからのこれどうするか決めてください、って言う毎日のメールから逃げたい(笑)冗談です(笑)。若い頃の方が、逃げ出したい事は多かったですね。

――だんだんその数は減ってきてはいるんですね。

 減ってきてるけど、たぶん大人になればなるほど、逃げたいことが出てきたときの内容が濃いものだな、とは思いますね。そのときに自分はどうするか、それは考えておかないとな。でも一人では無理なので、信頼する友達に連絡するんだろうな、と思います。

生きていくために“人に頼る”

村上順一

紗羅マリー

――さて、紗羅さんは今作で主題歌も制作されています。タイトルは「ありがとう」ですが、ありがとうを伝えたい、という映画のテーマを汲み取った曲になったわけですね。

 そうですね。でも、実はタイトルは何でもよかったんです。「ありがとう」からできた曲だったから、「ありがとう」にしようと監督と話をして決めました。歌詞に関しては『ニワトリ★スター』と『ニワトリ☆フェニックス』2作品を自分で経験してきた上で、草太と楽人の2人が映画越しに見せてくれたもの、感情だったり、今の人達がどういうふうに生きて生活してるのか、というのを考えて書きました。

――主題歌を紗羅さんが担当するお話は最初から決まっていたんですか。

 いえ、それが急に「主題歌作ってくれ」と監督から連絡をもらって。突然のお話しで驚きましたが、こんなに嬉しい事はないですよね。すぐにやります!とお返事させてもらいました。

――「ありがとう」は、DJ FUKUさんと作曲の共作されていますが、どんなスタイルで作り上げたのでしょうか。

 DJ FUKUさんがバックトラックを作っていただいて、そのトラックに私がメロディーと歌詞を付けました。なので、作曲クレジットが連名になってるんです。

――自身がお好きな音楽とか反映されている部分もあるんですか。

 主題歌に関しては、やっぱり、一人でも多くの人に届き、伝わることが大切だと思うので、自分の趣味で、とか、カッコつける事はゼロにしました。みんなと寄り添えるもの、それを一番大切に作りました。

――ちなみに、音楽の趣味が変化した部分もありますか。美空ひばりさんがお好きだとお聞きしています。

 今はインドっぽいものが好きです。最近はもっぱら家で作業をしてたり、とかするときはシーラ・チャンドラというアーティストを聴いてますね。

――そういった音楽はどんなところから知ることが多いのでしょうか。

 レコードショップのワールドミュージックのコーナーとかで自然と見つけたものもあるし、ジャケ買いしていいなと思ったり。でも今ってサブスクとかで自分の好きな曲を検索すると、それに付随してくる関連も出てくるじゃないですか。それを聴いて見つかることも多いです。

――サブスクも活用されているんですね。かなた狼監督は「ありがとう」を聴いて、どんな感想を?

 「いい曲できたな」って言ってくれました。レコーディングのときも監督もいたし、メロディー考えている時から歌詞を書いているときも、連絡を取り合っていたので、お互いが着地点を見つけてできあがったものなので、「いい曲できたな」という言葉をいただいて、それは一番の褒め言葉をもらえた気がしています。

――歌唱する上でこだわったところはどこでしたか。

 歌としてこだわったところは、この映画の中のカケラをくっつけていく、言葉に表していくというものと、1人ではできないものも2人いたらできるよね、という感情を大事に歌いました。

――今の紗羅さんはお子さんもそういう対象にはなってくるんですか。

 そうですね。

――子育てしながらもこういう活動もされているってことで、すごく大変だと思うんですけど、両立させるというところでは、どんな意識で動いていますか。

 人に頼ることですかね。1人で何でもできると思ったらお門違いだし、私は1人じゃ何もできないですから。1人で家にいることもできないし、1人で寝ることもできない。自分のためだけにご飯だって作る気もないんですよ。誰かが必要だし、その誰かがいることによってできることや、やってあげられることが増えたりとか、感情の部分も倍になったりするんです。

――それは昔とは変化した部分ですか。

 昔は人に甘えるのはすごく苦手で、お願い事とかもできなかったと思います。うまくできたことも、うまくできなかったものも、全て自分の責任というすごく過酷な修行僧みたいなところにいたんですけど、子どもを産んでから、人に頼らなくては生きていけないということを痛感しました。それが格好悪いことでもなんでもなくて。子どもがいるのに仕事なんかできないし、そういう部分では人に甘えられるようになりましたね。

――最後に、いま紗羅さんが追求されていることは?

 漬物を追求してます。もともと私はお米とお味噌汁と漬物が好きなんです。それでお家で漬物を作り始めたときに、何と何を掛け合わせたらおいしいのか、というものにハマり始めて、まさにいま研究しています。

――一番好きな漬物は?

 赤かぶですね。今一番、好きなお漬物です!

(おわり)

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