INTERVIEW

奥平大兼

同世代との群集劇から学び「個よりも全体を意識」:『卒業式に、神谷詩子がいない』


記者:木村武雄

写真:

掲載:22年03月19日

読了時間:約6分

 奥平大兼が、日本テレビZドラマ『卒業式に、神谷詩子がいない』(毎週日曜日昼13時45分-14時15分)に出演する。高校生6人の青春群像劇。奥平はそのなかの一人、寺島史也役を演じる。映画賞で新人賞4冠を達成した『MOTEHR マザー』以降、話題作への出演が続く奥平だが、自身初となる同世代との群像劇からは多くの学びがあったという。役者として更なる高みを目指す上でも大切な体験になっているという本作。その裏側を、役者としての“現在地”とともに聞く。【取材・撮影=木村武雄】

同世代との共演で意識したこと

 本作は、茅島みずき演じる神谷詩子ら高校生6人の青春群像劇。詩子のダンスをきっかけに意気投合した6人は「ファンファーレ」を結成し、共に時間を過ごす。一緒に踊り、夢を語り合い、かけがえのない仲間になっていくが、青春を脅かす数々の敵に次第に心の距離は広がっていく。そして迎えた卒業式、そこに詩子はいなかった。その時、史也は…。

 自身も現役高校生の奥平。今年3月に卒業を迎えるが、コロナ禍で思うような時間を過ごせなかった。しかし、この現場は青春を体験している感覚があった。「6人でお芝居しながら学校生活を楽しんでいる感じでした。学校生活に代わるような感覚もあって楽しいです」。その空気感は番組公式サイトで公開している動画にも表れている。

 奥平が演じる史也は、大手スーパーの御曹司で頭脳明晰、何でもそれなりにこなし、友達と騒ぐことがあってもどこか冷静で俯瞰しているキャラクター。高校に入学して出会った詩子とともに大きな転機を迎える。

 演じるにあたっては、役柄としての個人だけでなく「全体的なバランス」に注視したという。

 「同世代が多くいるなかでお芝居するのはあまりなかった経験でした。本読みの段階で史也の人物像を把握しつつも大事にしたのは全体のバランスです。明るい健(工藤健介)にはどういう対応をするのかとか。自分の視点で相手を捉えるのではなく客観的にみたらどうなのかを考えました」

 天才AI開発者役として出演した日本テレビ系『ネメシス』でも、広瀬すずや櫻井翔をはじめ多くのキャストが同じ場所で一堂に会する撮影に臨んだ。当時も「貴重な体験になりました。先輩に囲まれて芝居をするので、初めは緊張で弱気になるところもありましたが、弱気では務まらない役なので、途中から気持ちを切り替えて臨みました」と語っていたが、今回は同世代。自然と生まれた全体を見通す意識。それこそ彼の成長の証ともいえる。

 共演の「ファンファーレ」の仲間は、神谷詩子役の茅島みずき(17)、安藤しず香役の田鍋梨々花(18)、工藤健介役の中川大輔(24)、宮田萌役の莉子(19)、小林真斗役の杢代和人(17)と年齢が近い。

 「同世代ともあって刺激にもなります。最近はいろんな方とお芝居する機会がありそのたびに刺激をもらえています。相手の芝居を受けて返すのが今は楽しいです。自分ひとりが評価されるのではなく、共演者の方と評価されたらいいなと思います」

 全体を観るようになった奥平。役者として深みを増す現場となりそうだ。ここからは一問一答。

奥平大兼

普段から仲良く

――演じるにあたって全体のバランスを考えていたと話していましたが、具体的に取り組んだことは何ですか? 史也を演じる上で意識した点も含めてお願いします。

 ネタバレになるところもありますので詳しくは言えませんが、毎話毎話6人に降りかかる問題があるんです。その問題に関わる人物に対して、僕が演じる史也はどういう立ち位置でいればいいのかを事前に考える必要があると思いました。最初に本読みをした時に、6人みんな仲が良いという設定でしたが、僕には史也という人物はそう見えなくて。仲が良い人同士だと会話のテンポ感も違いますし、仲が良い相手だからこそ伝わる言葉もありますが、それ自体もこの史也に対しては分からないと。とは言ってもベースがあるので、まずは皆と仲良くなるところから始めようと。役としてだけでなく普段接するときから仲良くなっていったらお芝居にも自然に表れてくると思いました。それに加えて健介がふざけた時には僕がツッコむ必要があるとも思いました。そうしないと健介だけ浮いてしまいますし、史也があまり前に出ないのもおかしいかなと。6人という集団でとらえた場合、仲の悪さは比較的表現しやすいと思いますが、仲の良さは普段から仲良くないとにじみ出ないと思いました。そこはちゃんと考える必要があると思いました。

――それは、これまで演じてきたものとは違う感覚ですか?

 同世代の6人とずっと芝居する事自体が初めての経験でしたので違う感覚です。同じような6人がメインになるオーディションがあって、その時に僕が、したいお芝居を突っ走ってやってしまったんです。自分がやりたいようにやるというのはもちろん大事ですが、作品として見た場合に成り立たないというか、その時に最低限合わることは必要だということに気付かされました。なので今回この6人でやるとなった時に、そういう事をちゃんと考えてやらないといけないと思い考えました。

――すごく良いタイミングだったんですね。

 恵まれていると思いました。役個人ではなく、集団で作品を見せるとなった時に、個人の演技ではなどうにもならない、皆さんと一緒に作っていくことが大事。今回の作品で言えば、仲の良さを表現するためには本当に仲良くないとできない。笑っている瞬間はお芝居の笑いではなく心の底から笑っていて。嘘偽りのない、ある種ドキュメンタリーのような、生のものを届けられると思います。

奥平大兼

作品ごとに転機

――『MOTEHR マザー』もそうですが、心に闇を抱えた難しい役どころがこれまでも多くて、学生役や天才開発者など様々な役も挑んできましたが、こう心の底から笑える役回りはそう多くなかった印象です。この「笑い」という経験はご自身にとってどういう体験になりそうですか。

 この世界に入らせて頂いてから大人の方と接することが多く学ぶこともあって感謝しています。ただ、例えば小学生の時は純粋に公園で楽しめていたものが中高になるとそうではなくなって遊び方も楽しめるところも変わってくるように、純粋に腹を抱えて笑うという感覚が、コロナ禍で友達と会えなくなったということもあって、ここ最近忘れかけていて。でも今回お芝居でそういうシーンが何回もあり、ちょっとオーバーかもしれませんが幸せだなというか。こういう時期にこういう機会を頂けて、忘れていたものを取り戻せるきっかけになったというか。役者としてもそういう引き出しがあるのはいい事だと思います。

――これまで上向きに突っ走ってきたという印象ですが。先ほどの気づきも含めて、何か役者として考え方が変わる転機かもしれないですか?

 作品ごとが転機といえるくらい勉強になっています。色んな方と接するので、役者としてだけではなく人としてもたくさん学んでいます。その座組や撮影環境、相手によって、芝居は本当に変わりますし、似たような感情でも言葉が違うだけで全く変わることもたくさんあって。そういったことを改めて気付かされる現場が最近続いています。今までは一つの現場でシーンを共にするのが1、2人だったのが、今回は6人。その6人でもそれぞれにお芝居があって、それを受けるのは楽しいなって思っています。役者としてのキャリアで見た時にこの期間は大きな転機とも言えますが、作品をやるごとに転機になっています。

――とても充実していますね。

 充実しています。いますごく楽しいです。

――今回の作品の動画でもそれは伝わってきます。

 もう役を通り越していますね(笑)リアルでいいと思います。

(おわり)

この記事の写真
木村武雄

記事タグ

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事