「直接届けられる瞬間」中嶋ユキノにとっての“歌う”こととは?
INTERVIEW

中嶋ユキノ

「直接届けられる瞬間」中嶋ユキノにとっての“歌う”こととは?


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年12月20日

読了時間:約6分

 浜田省吾プロデュースのシンガーソングライター中嶋ユキノが12月8日、EP盤「ギターケースの中の僕」をリリース。表題曲である「ギターケースの中の僕」はNHK『みんなのうた』書き下ろし楽曲。夢に向かって進む人々の苦悩と挫折、その先にある喜びと希望、ミュージシャンとして生きていく軽やかな決意など、中嶋ユキノらしい言葉を覚えやすいメロディとシンプルなアレンジに乗せたミドルチューン全4曲を収録。MusicVoiceではメールインタビューを実施。2021年を振り返りながら、「ギターケースの中の僕」の制作背景、中嶋ユキノにとって歌うことの意味など、回答してもらった。【取材=村上順一】

『みんなのうた』は自分の気持ちとリンクしていた

――2021年も残りわずかですが、この1年間を振り返るとどんな一年でしたか。

 今年は「再出発の一年」でした。2020年は、ライブをすることができなくて、この先どうなってしまうのだろうという不安な一年でしたが、2021年は新たな気持ちでリスタートすることができました。

――11月に『アコ旅 2021 秋~リスタートライン~』を行っていましたが、ツアーを完走してどんな手応えがありましたか。

 このコロナ禍で、会場に足を運んで下さったみなさまに、心から感謝しています。きっと、行こうかどうしようか迷われた方もいたと思うんです。それでも、声が出せない分、精一杯の手拍子と拍手で応えて下さったり、メッセージが書いてあるうちわを、私たちに向けて下さったり、本当に「待っていたよ!」という温かい気持ちが伝わってきて、胸が熱くなりました。

――目標としていた『みんなのうた』に楽曲が決まった時の心境を教えてください。

 「本当に?本当に?」と、はじめは疑っていました(笑)けど、レコーディングなどが進むにつれて、だんだん実感がわいてきて、嬉しさが溢れてきました。

――中嶋さんにとって『みんなのうた』というのは、どのような存在だったのでしょうか。

 小学校の合唱団に入っていた時に「NHK全国学校音楽コンクール」に出場したこともあって、2008年にアンジェラ・アキさんの「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」が、コンクールの課題曲になり、『みんなのうた』でも放送された時に「絶対将来私も、みんなのうたとコンクールの課題曲を作りたい!」と思ったんです。私は、曲を書くときに、世代を超えて時を超えてずっと長く、人に愛される楽曲を意識することが多いのですが、「みんなのうた」は、自分のそういう気持ちとリンクしていたので、ずっと憧れていました。

――「ギターケースの中の僕」は、夢に向かっていく強い意志を感じました。中嶋さんはどんな心境の時にこの楽曲が生まれたのでしょうか。

 私自身、シンガーソングライターでメジャーデビューするという夢が、長年叶わなくて、とても辛く苦悩した日々を何年も過ごしました。そんな中で、諦めたいと思ったことは、数えきれないほどあったのですが、諦めるという選択肢が自分の中になくて、また苦しんで。だけど、そんな私だからこそ、同じように夢に向かって頑張っている方に寄り添える楽曲を書きたいと思いました。

――作曲は浜田省吾さんと共作ですが、どのような流れで作られたのでしょうか。浜田さんとのやりとりなどお聞かせください。

 最初に、私が歌詞と曲を書いて、浜田さんにお聞かせしました。その時は、AメロとBメロしかなったのですが、浜田さんが「この歌詞で、こんな感じでサビをつけてみたらどうですか?」と、その場でギターを弾きながらメロディーを歌って下さったんです。「いいですね!」ということで、浜田さんのサビのメロディを入れさせていただき、デモ作りをしていきました。

――苦悩と挫折が描かれているところもありますが、中嶋さんがそういったことに直面した時に支えになっているものは何ですか。この言葉や人に救われた、などあれば教えて下さい。

 高校は演劇科というところに通っていたんですが、その時の演技指導の先生が「初心を忘れずに」ということを教えてくださいました。「こうなりたい!」と夢を描き始めた時の気持ちって、物凄くピュアな気持ちだと思うんです。なので、歌詞の中にある通り、思い悩んだ時は、初心にかえるようにしています。

 あと最近では、スポーツドクターの辻秀一さんの本の中のお言葉で、「口に入れる食べ物で体ができているように、耳に入れる言葉で心ができているのです。」というのを読んだ時に、思い悩んでいる時って、どうしてもネガティブな言葉をウダウダ言ってしまうのですが、そんな時こそ、ポジティブな言葉を口にした方が、心が軽やかになるという事を気づかせてくれました。

心に小さな明かりが灯るきっかけに

――今作には4曲が収録されていますが、すごくコンセプトのあるEPだと感じました。どのような想いを込めて選ばれた楽曲なのでしょうか。

 「ギターケースの中の僕」を作ったあとに、他の3曲を書いたのですが、聴いて下さる方の心に、そっと寄り添える楽曲たちにしたいなと思って書いていきました。

――今作に収録された楽曲の中で、ご自身の中で新しい試みはありましたか。

 今までは、デモ音源を参考程度にして編曲をしていただいていたんですが、今回は、デモ作りの段階で「ピアノのこのフレーズは残したい」「この雰囲気のままでいきたい」というのが明確だったので、編曲に初めて参加させていただきました。

――このEP作品がリスナーにどのように感じてもらえたら嬉しいですか。

 心折れそうな毎日を送っている方が、楽になったり、前向きになったり、泣きたいのに涙を流せなかった方が、思い切り泣くことができたり、みなさんのそれぞれの日常の中で、心に小さな明かりが灯るきっかけになれば嬉しいです。

――中嶋さんにとって「歌うこと」とはどんな意味を持っていますか。

 「歌うこと」=「生きること」です。「歌うこと」というのは、私の人生にとって一番欠かせないもので、ライブなどで直接「歌」を届けられる瞬間に、やりがい、生きがいを感じます。

――ご自身が今、追求されていることはありますか。

 「歌いあげる」のではなく「語りかける」こと。以前は、バラードなどをフルボリュームで歌い上げていたんですが、今は、目の前の人に、言葉を話すように歌うということを追求しています。ここで強弱をつけてー、と考えながら歌う、テクニックがある歌の上手い人はいくらでもいますが、そうじゃなくて、ちゃんと心に言葉が届く歌を歌っていきたいと思ったからです。

――2022年はどんなことにチャレンジしていきたいですか。もしくは実現したいことなどお聞かせください。

 老若男女問わず、もっと沢山の方と自分の音楽を共有していきたいし、「ギターケースの中の僕」という楽曲を、いろんな学校などで一緒に合唱したい!あと、47都道府県で、歌いにいけていない場所がまだまだあるので「初めまして!」とライブしに行きたいですね。プライベートでは、運転免許を取って、車でひとり旅してみたいです。これ何年も言っていますが…(笑)

――クリスマスが近づいてきました。中嶋さんの印象的だったクリスマスの思い出はありますか。

 小学校3年生の時。サンタさんにお願いしたプレゼントが、当時ハマっていた「ミラクル☆ガールズ」の電子手帳だったんですが、早く欲しくて、待ちきれなくて、その夜ベッドに入っても眠れなかったんです。サンタさんへのお手紙も、ベッドの手すりに、セロファンテープで固く止めていたんですけど、真夜中、プレゼントを持ってきたサンタさんが、それを頑張って剥がしている姿を見てしまいました(笑)。

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

 2021年、止まっていた音楽の時間が動き出し、みなさんと一緒にまた「リスタート」することができました。応援していただいたみなさま、ありがとうございました! 2022年、まだ私の音楽を知らない方にも沢山想いが届くように、ライブや制作活動をしていきたいと思っています。お会いできた時は、笑顔で、温かな時間を一緒に過ごせることを願っています!

(おわり)

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