あいみょん「みんなのおかげで日々が楽しい」武道館で見せた歌う意義
『AIMYON 弾き語り TOUR 2021〜傷と悪魔と恋をした in 武道館 〜』
(撮影=鈴木友莉)
シンガーソングライターのあいみょんが11月30日、東京・日本武道館で全国ツアーの追加公演『AIMYON 弾き語り TOUR 2021〜傷と悪魔と恋をした□ in 武道館 〜』(□は白抜きハートマーク)を行った。ツアーは5月12日の北海道を皮切りに、全17公演をおこなうというもの。ライブでは弾き語りで「マリーゴールド」、「ハート」、「君はロックを聴かない」など全17曲を届けた。そして、ライブの最後にはあいみょんから自身初となるファンクラブツアーと自身最大規模となるアリーナツアーを来年開催することが発表された。この日はメジャーデビュー5周年当日で特別な一夜となったライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】
みんなの前に立って歌っているこの5年間は幸せ
開演時刻になりあいみょんがステージに登場すると、盛大な拍手で迎えられた。ギターを手に取り音色を確認するあいみょんは、ツアータイトル曲でもある「傷と悪魔と恋をした!」で武道館公演の幕は開けた。照明の演出により歌っている表情、全貌は確認はできないが、抒情的な歌声が会場に響き渡る。そして、スポットライトが当たりあいみょんの姿が露わになり「青春と青春と青春」を披露。甘酸っぱい濃い模様と爽やかな風を運んでくれるような歌だった。木漏れ日のような光があいみょんを照らすなか、指で弾くアコースティックギターの音色と情感豊かな歌声のマリアージュを堪能した「ポプリの葉」と3曲続けて披露した。
この日、初めてのMCであいみょんは2年ぶりの武道館について「楽しみにしてくれていました?」と投げかけ、観客に話しかけながらほっこりとした空間を作り上げる。「今日ゆったりしているでしょう?こんな日はあまりないんじゃないかなと思うし、特別な武道館なんじゃないかなと思っています。最後の最後までよろしくお願いします」と述べ、2年前の武道館公演で1曲目に歌唱した「マリーゴールド」を披露。楽曲に描かれたノスタルジーな情景を歌声で見せてくれるあいみょん。そして、青い光に照らされる中シリアスな表情で届けた「スーパーガール」、ワイルドなコードストロークと力強い歌声の一体感がテンションを上げてくれる「朝陽」と幅広い曲調で楽しませる。
あいみょんは初めての弾き語りツアーについて「もともとこのスタイルで路上でやっていたけど、声とギターだけというのは緊張するなと思いつつ...」と、一人でステージに立つ心境を話す。そして、コロナ禍で声を出してあいみょんに話しかけることができない観客はスケッチブックを使ったり、ジェスチャーであいみょんにメッセージを送る。それを見てあいみょんも友達と雑談するかのように楽しんでいる姿も印象的だった。武道館という大きさを感じさせない、アットホームな空間に変えてしまうのは、あいみょんの魅力の一つだと感じさせてくれた。
ここから雰囲気を変えてミディアムなゆったりとした楽曲を届けるセクションへ。まずは、昨年リリースされた10枚目のシングル「裸の心」を、楽曲で描いた想いを丁寧に声に乗せてしっとりと披露。続いて、「恋をしたから」、11月24日にリリースされたばかりの新曲「ハート」と、切ないラブソングで観客の心を扇情させ、ライブは中盤戦へ。
みんなのおかげで日々が楽しい
11月30日はあいみょんがメジャーデビューした日で、今年は5周年当日という特別な1日だ。あいみょんは「一緒にこの空間にいるのが貴重だなと(ライブが)決まった日からドキドキしてました。音楽を続けるのは一人でも続けられるけど、みんなが目の前にいてくれて歌い続けていくことは難しいと思っています。みんなの前に立って歌っているこの5年間は幸せ。みんなのおかげで日々が楽しいです」と、想いを語った。
18歳頃に作った楽曲で大阪の路上で披露していたという「夜行バス」、「19歳になりたくない」の2曲を歌唱。きっとあいみょん自身は当時の感覚に戻っているのではないか、と思えるような表情を見せていた。過去の曲を歌うことで自分自身も初心に戻れる、ここまで披露してきた楽曲とは趣が違うことを感じさせてくれた瞬間だった。現在、ライブでしか聴くことができない「TOWER OF THE SUN」では、床から天井に向かって扇状に伸びる光、まさに太陽の塔を想起させる光の演出が印象的。そして、薄暗い中で、生きていくことへの強いメッセージを発信した「生きていたんだよな」を披露。聴く人の感情を揺さぶりかけるこの2曲はシンガーソングライターとしての真価を感じさせてくれた。
「曲を届けることが一番嬉しいし、私が何かやることで誰かの生活が豊かになるんだったらいいなと思っていて、大好きな音楽に付き合ってくれて嬉しい」と、この言葉からあいみょんの活動の原動力を感じさせたMCに続いて届けたのは、今年リリースされた「愛を知るまでは」。約4年前に書いた曲で、この曲を制作していた時が「音楽に対してどうしたらいいかわからなかった時期だった」と当時を振り返るあいみょん。その曲を26歳になってリリースできて、武道館で歌えていることが嬉しいし、一つひとつ夢が叶っていっているんだなと感じます」と語った。凛とした歌声に乗って、悩んでいる人々の背中を押してくれる。それはあいみょん自身も悩みながら歌い続けているからこそ説得力が増している、しっかりとその経験が歌にも反映されていると感じさせてくれた。
観客の手拍子も加わり、武道館が一体となった「今夜このまま」から、「サラバ」へ。「サラバ」で出だしの歌詞を間違えてしまい、仕切り直す場面も。あいみょんはこのミスに「まだまだ新人やわ」とこぼし、改めて楽曲を届けた。ステージ後方から放たれる光に包み込まれる中、丁寧かつエモーショナルに歌い上げる姿に観客も静かに耳を傾けていたことだろう。
「(デビュー)5年のシンガーソングライターあいみょんをみんなに観てもらえて幸せ」と、ラストは「君はロックを聴かない」を歌唱。観客は手拍子で、あいみょんの歌を盛り立て、ライブならではの一体感を作り出した。「いっぱい曲を作ってツアーをやります」と、来年1月よりスタートする、あいみょん初となるファンクラブツアー「AIMYON FANCLUB TOUR 2022 “PINKY PROMISE YOU”」と、4月よりスタートする全国14都市28公演開催予定のアリーナツアー「AIMYON TOUR 2022 “ま・あ・る”」を発表した。
日本武道館という広い空間に、あいみょん一人。歌とギターのみという包み隠すものがない、誤魔化しの効かないスタイルによって、より彼女の歌の説得力と原点を垣間見ることができ、路上で演奏していた時の光景が思い浮かぶかのような不思議な空間だったと感じさせ、観客の前で歌うことの楽しさも同時に伝わってきたステージだった。このツアーは12月12日に開催が延期されていた沖縄公演を行う。そして、大晦日には『第72回NHK紅白歌合戦』に出場が決定している。年内もまだまだあいみょんの歌を堪能できそうだ。
セットリスト
『AIMYON 弾き語り TOUR 2021 〜傷と悪魔と恋をした□ in 武道館 〜』
11月30日@日本武道館
01.傷と悪魔と恋をした!
02.青春と青春と青春
03.ポプリの葉
04.マリーゴールド
05.スーパーガール
06.朝陽
07.裸の心
08.恋をしたから
09.ハート
10.夜行バス
11.19歳になりたくない
12.TOWER OF THE SUN
13.生きていたんだよな
14.愛を知るまでは
15.今夜このまま
16.サラバ
17.君はロックを聴かない