INTERVIEW

福原遥×工藤阿須加

それぞれの原動力とは、『アイの歌声を聴かせて』裏話


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年11月10日

読了時間:約7分

 福原遥と工藤阿須加が、アニメ映画『アイの歌声を聴かせて』(吉浦康裕監督)で主人公の同級生役の声を務めた。本作は、ポンコツ“AI”のシオンとクラスメイトが織りなす、爽やかな友情と絆に包まれたエンターテインメントフィルム。シオンに振り回されながらもいつしか大切なものの存在に気付かされていく物語だ。主人公のシオンを土屋太鳳が演じ、もうひとりのヒロインであるサトミを福原遥、幼馴染のトウマを工藤阿須加が演じる。工藤は本作がアニメ声優初挑戦、どのような思いで挑んだのか。そして、福原はサトミにどのような願いを込め、声を吹き込んだのか。そして、二人の原動力とは。【取材・撮影=木村武雄】

(C)吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会

自分の声があまり好きじゃない

――声での出演が決まった時の心境と物語についてどう感じましたか。

工藤阿須加 僕自身、アニメが大好きなので参加させて頂けることを聞いた時は本当に感激しました。台本を読み終わった後に泣いてしまって、素敵な作品でしたので気合が入りました。終盤の人間とAIの垣根を越えた友情が描かれていて、シオンはシオンで実は自立してサトミのことを小さい頃から見守っていた。それを実行に移していて、それがつながった瞬間はすごく心を動かされました。

福原遥 私はオーディションでしたが、台本を読ませて頂いたときに泣きました。人と人との愛、絆の強さがストレートに描かれていて「この作品大好きだな」って本心から思いました。その思いを吉浦監督に伝えたぐらい、この役を絶対にやらせて頂きたいという気持ちが強くて。ですので、受かった時はすごく嬉しかったです。不安もありましたが頑張ろうと思いました。

――工藤さんは、アニメ声優初挑戦です。

工藤阿須加 アニメ声優はいつかチャレンジしたいと思っていながらも、自分の声があまり好きじゃなくて。収録もどういう形になるのか不安でしたが、吉浦監督に相談させていただきながら、なんとか最後までやり切ることが出来ました。

――初めてと思えないぐらいでした。青年の素直さと心の葛藤が声に表れていてすごいなと。どういうところを意識されて取り組まれましたか。

工藤阿須加 声のキーを上げました。自分の地声のキーよりも上げて、音を乗せる時に、マイクにストレートに当てるのではなくて、少し拡散させるように、息が少し抜けるような感じを意識して演じました。興奮するときは当て気味にいきましたが、当てすぎると意思が強すぎるような印象もありましたので、強い声というよりは、不安な時や、喉を震わせるような少し抜け感があったほうが柔らかくなるかなと思い、試してみました。吉浦監督もそんな感じでいいよと言って下さいました。

――臨む前から色々考えたんですね。

工藤阿須加 考えていました。アニメが好きなので普段から観ていてそのなかで色んな声優さんの声を聞きながらこんな声の出し方なら出来るかもと、いろいろやっていました。ドラマなどの役でも、たまにキーを変えたりします。トウマならこういう出し方がいいかなとか。でも、やっていくうちに疲れてしまい地声に戻るときもありました。監督からもキー上げてと言われて(笑)。収録は二日間くらいで、声を入れたのは僕が最初でした。もっと時間が掛かってしまうと思っていたんです。でも声優のみなさんはもっと短くて、この作品なら一時間も掛かないと聞いて、驚きました。

工藤阿須加

クールな表面、優しさあふれる内面

――福原さんはいかがですか。

福原遥 最初、工藤さんの声に聞こえなくて、知った時は「えっ!これ工藤さんなんだ!」と驚きました。初めてとは思えないぐらいナチュラルで、掛け合いもすんなりとキャッチボールが出来て、工藤さんが自然体でボールを投げて下さって、それに答える感じでしたのでとてもありがたかったです。

――サトミ自身はどういうふうにアプローチしようと思いましたか。

福原遥 自分の声とサトミのイメージが違うのかなと感じていました。サトミは心の奥にいろんな思いを持っていて、それを表に出すような子ではないという印象を受けましたので、少しクールさや声のトーンを下げてみたり、気持ちが乗るところ以外はそうした意識で声を演じていこうと思いました。

――終盤に向けてどんどん心が開いていくというか、明るくなっていきます。その辺も意識されて?

福原遥 シオンとも出会って徐々にサトミの本性や明るい気持ちが出てきますので、そこはちゃんと変えたいというのはありました。

――冒頭はクールさもありましたが、それでもどこか優しさが感じられて、それは福原さんだからこそ出せたのかなと。

福原遥 出ていたら嬉しいです。サトミは、本当は素直で心優しくて、正義感が強くてお母さん思いですので、セリフや表情に、優しさが滲み出ている部分はあると思いました。ですので、柔らかい感じにしようとあえて考えずにやりました。

――シオンは土屋さんが声を演じられました。

福原遥 難しい役だと思います。AIということで、最初は気持ちを乗せない所から徐々に気持ちが乗っていく所が本当に驚いて鳥肌立ちました。歌も、ただ歌うだけではなくて、AIっぽい歌い方で、でもそこに気持ちが乗っていて。言葉一つ一つに心動かされている自分がいて本当に素晴らしいなと思いました。

工藤阿須加 声がびっくりするぐらい透りますよね。すごく耳にダイレクトに入ってくる。それがすごく聴き心地良くて、歌声も心の中にすっと入ってきて。AIっぽくなく感じてしまう所もありました。気付いたら普通の女の子。でも「あっ! AIだよね」って。そういうことを一瞬忘れさせられる力を感じました。

福原遥

お互いの印象

――ところでお互いの印象は?

福原遥 出会ったのが別の作品で、今回またご一緒し、たくさんお話しさせて頂きました。すごく優しい方です。最初からたくさん話しかけて下さいますし、現場のみなさんに対しても気配りされて、紳士で素敵な方だなという印象です。

工藤阿須加 いや~褒められるのは慣れないですよ(笑)。あまり褒められすぎると逆に怖いですけど…(笑)。福原さんは、素敵な女優さんというのはもちろん知っていますし、映像でも何度も観させて頂きました。今回ご一緒できるということで、どういう感じの声で臨まれるのか楽しみでした。アニメが好きだからこそ言わせて頂けたら、福原さんの声質はサトミのキャラクターにハマるだろうなと思っていました。でもいざ女優さんとして映像に出たときにまた違う声色が出て、その引き出しの多さにずっと魅力を感じていたので、ご一緒出来て嬉しかったです。ただ何よりも福原さんの声を聞きながらやりたかったなって。そうすれば、僕も色んな声が出たかもしれない(笑)。

――工藤さんとトウマの共通点は?

福原遥 性格が合っている! こだわりはすごくある方なんだろうなと思いました。作品に対しての想いや熱量というのはすごいだろうなっていうのはひしひしと感じていて、『教場』(フジテレビ系ドラマ)のときもそうでしたが、突き進む感じというのはトウマくんに似ているのかなと感じます。

工藤阿須加 真横で褒められるのは恥ずかしいですよね…(照笑)。

福原遥 本当にみんなに気を遣って下さって素敵だなって…(笑)。

工藤阿須加 もう大丈夫ですよ(笑)

――工藤さんは、福原さんとサトミの似ていると思うところは?

工藤阿須加 スイッチの切り替えが本当に早いなって思います。作品に入った時、雰囲気が変わるので、集中力が一気に上がっているなって隣にいて感じます。そういう真面目な所は似ているなと。サトミは真面目だからこそ、色んな事を自分の中で抱えて考え込んでいる印象があって。それを福原さんにも感じるんです。一つの事に対しての集中力、「自分はもっとこういう事が出来るんじゃないか」とすごく考えているんだなというのがすごく伝わってきます。そういう所が似ているのかなって勝手に思っています。

福原遥 嬉しいです!

工藤阿須加 常に集中して向き合っているから苦しいと思うんですが、それを全く感じさせない。年下ですが、年上と感じる事の方が多いので。サトミよりしっかりしていますね!

原動力

――シオンはみんなに力や明るさを与えますが、同じように力を与える立場として原動力になっているものは?

工藤阿須加 ずっと誰かのきっかけになりたいと思っていて、その思いはずっと変わらずにもっています。自分自身のためより誰かのため。誰かのためにと思えるからこそ頑張れますし、苦しいことがあっても耐えられます。それが僕の中の原動力です。

福原遥 私も一緒です。家族もそうですし、ファンの方もそう、周りの人が喜んでくれたり、私の歌や作品などで「元気や勇気を頂けました」というお手紙や声を頂くと「やって良かったな、役に立てられたんだな」と思えてもっと頑張れます。それが原動力です。もっと心を動かせられる作品を届けていけたらと思います。

(おわり)

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