INTERVIEW

大西桃香

舞台で見せる「生き様」。『ミュージカル 悪ノ娘』でクラリス役


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年10月09日

読了時間:約4分

 AKB48の58thシングル「根も葉もRumor」選抜メンバーに入った、チーム8奈良県代表/チーム4兼任の大西桃香。最近は舞台など芝居にも精力的に活動している。そんな彼女は先月上演された舞台で「生き様を見せることが大事」と気づきを得た。現在上演中の『ミュージカル 悪ノ娘』で自身初のミュージカルの舞台を踏んでいる。どのような思いで臨んでいるのか。※取材は稽古期間に実施。【取材・撮影=木村武雄】

転機

 先月上旬にEX THEATER ROPPONGIで上演された舞台『真・三國無双 ~荊州争奪戦 IF〜』は、人気ゲーム『真・三國無双』20周年を記念したもので、三国時代の赤壁の戦い後の要地・荊州をめぐる三国の戦いを、孫呉の大都督・周瑜の視点で描いた。

 その妻・小喬を演じたのが大西。大扇を用いたアクションが魅力的だが、物語の8割を占めるアクションに「失敗しないように」と当時はプレッシャーがあった。しかし演出家の西田大輔氏と、周瑜役の平野良の言葉にハッとした。

 「殺陣が中心だったので失敗してはいけない、迷惑をかけてはいけないというのが頭にありました。でも平野さんが『舞台の上では制約を持ち込まない方がいい』とアドバイスしてくださって、稽古場でやってきたものを舞台でやるのはもちろんですが、『舞台で起きたことが正解』だからと。今回の殺陣は舞うように綺麗に見せるものが多くて、普段はステージに立って歌って踊る身なのでいかに綺麗に見せるかというのが体に浸み込んでいました。でも西田さんは『舞台はお披露目会ではない生き様を見せる場。ただ役として一生懸命に生きることが大切』と。お二人のアドバイスを聞き、考え方が変わりました」

 舞台上に生きる――。大西は芝居、特に舞台の醍醐味である「生き様を見せる」ことをこの公演で学んだ。

 それを経て迎えるのが、今回の自身初のミュージカル作品となるミュージカル『悪ノ娘』だ。

クラリスを演じる大西桃香(AKB48)

クラリスの恋心に注目

 本作は「mothy_悪ノP」の楽曲「悪ノ娘」を原作に、滅びゆく王国と運命に翻弄された姉弟の絆を描く。大西が演じるのは「クラリス」。やや異色のキャラクターだ。

 「私の演じるクラリスは少し情緒不安定です。というのも周りにいる人たちとは違う民族のため幼い頃から蔑まれ、周囲と違う白い髪と赤い瞳にコンプレックスを抱いてきた子です。だから口癖も『死にたい。生まれてごめんなさい。」小さな頃からの境遇を経てのクラリス、一緒にいるミカエラ(天城サリー=22/7)に抱く恋心などに注目してほしいです」

 稽古は「順調です!」という明るく答える大西。「今まで経験したお稽古とはまた少し違って自分の中では毎日が新鮮でした! “ミザンス(全体の配置)”というものがありますが、自分のシーンのお稽古の時、何も決めずとりあえずやろうってなって自分で色々考えながら動いてみたら、演出家のトクナガ(ヒデカツ)さんに『あなたとても上手ですね』って褒めていただけてとっても嬉しかったです!」。

【動画】ゲネプロで、クラリスに扮する大西桃香の登場場面。圧巻の芝居を見せる。歌では選抜入りした「根も葉もRumor」の振りも

不安の歌も今は楽しく

 初のミュージカルともあって当初抱いた不安は「歌」。稽古が始まった今、どうだろうか。

 「初めての歌稽古の時に歌の先生に『問題ないね、ちゃんと歌うだけじゃなく気持ちが入っていてお芝居できているから』と言っていただけて不安な気持ちがなくなり、今は楽しくできています!」と胸を撫でおろす。

 とは言え、課題でもある。

 「お稽古を見ていて全員、歌が上手でとってもかっこよくて。たくさん刺激を受けています。現在もボイストレーニングに通っていますが、もっと頑張りたいです」

 稽古も終盤に差し掛かり、カンパニーとしての団結力は更に高まっている。

 「スタッフさん含め皆さんが優しくてお稽古中も笑いが絶えない現場です。1人1人が素敵な魅力を持っていて、お互いに切磋琢磨していけていると思います」

 そのなかでいよいよ迎える本番。(※現在上演中)

 「ファンの方に私の演じるクラリスを見てもらえることが楽しみです! 初めてのミュージカルなので今までとは違う自分を見ていただけるんじゃないかと今からワクワクしています」

大西桃香

俳優としての成長

 大西にはもう一つ楽しみにしていることがある。それは「俳優としての成長」だ。

 「今までしてきた演技のお仕事は、舞台、映像、朗読劇、そして今回のミュージカル。他とは全然違う新たなジャンルを自分の中で開拓できて嬉しいです。やっていてとても楽しいですし、成長している実感もあるので、この経験を生かしていつかまたミュージカルにチャレンジしたいです」

 『真・三國無双 ~荊州争奪戦 IF〜』で学んだ「生き様」。本作では、「クラリス」としての生き様を見せる。

 ミュージカル『悪ノ娘』は10月12日まで東京・赤坂の草月ホールで上演される。

大西桃香

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