「なにやってもうまくいかない」がTikTokでバズったmeiyo、その素顔に迫る
INTERVIEW

meiyo

「なにやってもうまくいかない」がTikTokでバズったmeiyo、その素顔に迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年10月09日

読了時間:約9分

 音楽家のmeiyo(メイヨー)が9月26日、配信シングル「なにやってもうまくいかない」をリリースしメジャーデビューした。バンド活動を経て2015年からワタナベタカシとして本格的にソロ活動をスタートし、2018年に活動名をmeiyoへと改名。2021年にTikTokアカウントを開設しオリジナル曲「なにやってもうまくいかない」の投稿がバズり、楽曲を使った投稿は4.5万件超えた。そんな、TikTok内急上昇チャートで1位を獲得し話題となったmeiyoにインタビュー。音楽活動の変遷を振り返りながら、自身の心情をダイレクトに反映した「なにやってもうまくいかない」の生まれた背景、そしてこれからの展望について話を聞いた。【取材=村上順一】

meiyoの由来とは

meiyo

――音楽を好きになったきっかけはどんなものだったのでしょうか。

 小学三年生の時に、ゲームセンターで『pop'n music』というゲームを音楽を始めるまで熱心にやっていました。そして中学生の頃からBUMP OF CHICKENさんやASIAN KUNG-FU GENERATIONさんなど、当時流行っていた“邦ロック”を好きになって「こういう音楽をやりたいな」と思ったのが音楽を始めたきっかけです。

――本名でバンド活動をされていましたが、meiyoに改名したきっかけとしては?

 僕は当時からワタナベタカシという名前にずっと違和感があったんです。なんか普通すぎるし…。本名の頃はドラムボーカルで、奥田民生さんなどに影響を受けたような感じのポップなロックをやっていたんですけど、当時の活動を見てとあるTVプロデューサーの方が「すごく面白いから一緒にやらせて」と言ってくれまして。

 それで改名するタイミングとしてもいいなと思って、そのTVプロデューサーに相談して改名することにしました。その時にカメラマンのワタナベアニさんとプロデューサーとスタッフ数名の方々から名前のアイデアを出して頂いて、自分もいくつか出しました。でも、自分が出したものよりも人からどう見られるかのほうがいいのかなと思って、アニさんが出してくれたmeiyoという名前がいいなと思って。

――ご自身ではどんな名前を考えていたのでしょうか。

 「スコット・シンプソン」とか、外国のワタナベタカシみたいな名前でもいいかなと思ったんです(笑)。

――そうだったんですね。ところでmeiyoの意味は?

 meiyoの意味は、中国語で「没有」と書いて「ない」という意味らしいんです。「没」というものが「有」といって「ない」という、ひねくれ具合も丁度よくて。

――自分の精神性や、やりたいことに係るものもあるなと?

 そうです。最初はピンときていなかったんですけど、だんだんその通りだなという気持ちになってきました。

――逆に、名前に引っ張られそうになることもありませんか。「これじゃ名前に反する」みたいな。

 当時ありました。自分がやっている音楽はmeiyoという名前に合っているのかって。去年くらいから打ち込みっぽい曲を作り始めたんですけど、「すごくピッタリくるな!」と、ようやく思い始めました。

――2018年に出されたアルバムはバンドサウンドで、ワタナベタカシ時代のものが色濃く残っているのかなと思いました。ただ、今作から入ると「この約2年間で何があったのか」と、遡ることで謎が深まるんです。

 バンドっぽい曲を作って、「madeal」というCDを2019年の夏頃に出したんですけど、そのCDに入っている「いつまであるか」という曲が出来てもうベストが出た気持ちになりました。これでワタナベタカシ、meiyoと、1回区切ることができるという気持ちになった曲でした。

 それで、もうちょっと時代に寄り添った曲を作ってみたいなと思って、最先端のものを取り入れようと思いました。「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」という海外の大きなイベントに出ていた最先端のアーティストのライブパフォーマンスを観ていて、そのなかで、僕がリリースした「KonichiwaTempraSushiNatto」の影響を受けるきっかけとなった曲がそこで見つかって。

 『ユーロビジョン』で聴いたその曲が本当によくて、バンドっぽい曲ではないんですけど、生ではこの恰好よさは出せない音楽だと感じました。その曲を研究して、何がこの曲をこんなによくしているのだろうと耳コピをしたり。

――分析したんですね。根気のいることだったのでは?

 時間がかかりました。「KonichiwaTempraSushiNatto」を作っている時はその曲をリファレンスにして、この気持ちよさが出るまでは公開できないと思って。「何か違うな、もうちょっと出るはずだな」と思いながら2カ月くらいやってました。

――結局、答えとしてはどこだったのでしょうか。

 キックとベースの配置です。フレーズとしてベースがキックにかぶらないように、16分の裏で入ることによって、スネアなどがない曲でもビートが出てくる、キックの4つ打ちとベースだけでノリが生まれることを知りました。それはバンドだとあまり体感しなかったことでした。

真正面から言った“大弱音”

「なにやってもうまくいかない」ジャケ写

――TikTokを始めたのは今年に入って?

 はい。今年の3月頃です。その時に色々アドバイスをくれていた人が「今、TikTokがきてるぞ」と教えてくれて、やり始めたのが最初です。ちょうど「うろちょろ」という曲のMVをもっとみんなに観てほしいなと思っていた時期だったので、TikTokにアップしたら20万回再生ぐらいいって当時びっくりしました。それでユニバーサルさんから連絡をいただいて。

――そんなスピード感だったのですか!

 はい。「こういう風に投稿していったらいいんじゃない?」みたいな感じのことを考えてもらって、「Aメロだけ作ろう」とか「Bメロだけ投稿しよう」「サビだけ投稿しよう」みたいな感じでTikTokで使ってもらいやすいようなことを意識しながら動画投稿を続けて行きました。

――そんななかで出来たのが今回の「なにやってもうまくいかない」ですね。これもTikTokに上げるために悪戦苦闘して結果的にその気持ちをぶつけた曲とのことで。

 そうなんです。僕は「TikTokでバズらなければいけない」と決めて動いたので、曲がめちゃくちゃ作りづらい感覚に陥った時がありました。もう、さじを投げかけて「うまくいかないな」って。TikTokもそうなんですけど、これまでの音楽人生もそうだし、一番バーンと真正面から言った“大弱音”です(笑)。

――ストレートに自分の感情をぶつけた結果ですよね(笑)。

 自分は「なにやってもうまくいかない」という言葉を使わないでうまくいっていない様子を表現することをこれまで頑張ってきました。ただ、思い切ってそれをメインのフレーズにもってきて。まるっとそのままオブラートに包まず言ってしまうという。<なにやってもうまくいかない>のメロディと歌詞を最初に思いついて、そのまま一旦19秒の尺を作って公開して。「KonichiwaTempraSushiNatto」は完成まで2カ月かかったんですけど、「なにやってもうまくいかない」の19秒は1日で動画まで完成して。

――ジャケ写も面白いですね。割り箸上手く割れなかった」など、うまくいかなかったことが書いてありますね。

 「うまくいかなかったことを教えて」という動画をTikTokに投稿したら、1,600件くらいみんながうまくいかなかったことが届いて「みんな、そんなにうまくいってなかったんだね」と(笑)。

――そこからチョイスした言葉だったんですね。

 そうです。ひとつ、ジャケットを描いてくれたトキチアキさんが「コンビニでプリン買ったのに箸を入れられた」というのを考えてくれていたものがひとつ決まっていて。それに関連した「割り箸上手く割れなかった」も採用して。プリンを買って箸を入れられて、仕方ないからその箸で食べようとしたらその箸すらうまく割れなかったというストーリーが生まれるなと思って、「割り箸」と書いてあるだけのコメントから発展させて(笑)。

 あと、「おみくじ何回引いても吉」というのは、おみくじを何回引いても「凶」だったら、それはもうネタになっちゃうけど全部「吉」ってなんにもないというか(笑)。いいことも悪いことも書いていないというのがテーマに合っているなと思って。

――出だしに喋っているところがありますが、歌詞を見ると4行あるのですが、これ全部重なっているんですか。

 はい。4つが重なっていて、そのなかのいくつかが目立っている言葉があって。

――このアイディアはどこから出てきたのでしょうか。

 突然降って湧いてきました。1回で聴きとれなかったら何回か聴いてもらえるんじゃないかという打算的なところもあったんじゃないかなと思います。

ベースは主役級でならなくてはいけない

――そしてベースに草刈愛美(サカナクション)さんが参加されていますが、ベースを生にしようと思ったのはなぜでしょうか。

 TikTokで公開しているものは打ち込みでやったんですけど、フル尺として歌詞を完成させたら、どこか人間っぽくなったというのがまずありました。この曲においてベースは主役級でならなくてはいけないと思ったんです。人間味を入れる要素があるとしたらベースしかなかったので、誰かに弾いてもらいたいなと思って、それで草刈さんにオファーさせていただきました。僕から草刈さんに無理は承知で、「ベースを弾いて欲しい」という想いをラブレターっぽい感じで送って。

――ラブレターいいですね!

 「自分はこれまでどういう生き方をしてきて、サカナクションさんとはこういう風に出会って…」という想いを送ったので、「凄く色んな気持ちにさせられる曲ですね」と、お返事を頂いて。草刈さんの中の、なにをやってもうまくいかなかった頃の気持ちみたいなものも込めて弾いてくれたんじゃないか、と自分は想像しているんですけど。

――そして、音が入って聴いた時はどう感じましたか。

 「そうそう! これこれ!」と(笑)。僕の想像を超えていました。

――さて、「なにやってもうまくいかない」という言葉が回転数を上げたようなピッチが高い感じの音になっていますよね。あれは手法的にザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」の一節<おらは死んじまっただ>的な?

 (笑)。狙い的にはとにかく声をいっぱい重ねたかったんです。「帰って来たヨッパライ」も知っていますけど、僕のイメージ的には「はじめてのチュウ」のほうがピンとくる感じです。

――「なにやってもうまくいかない」を新たに聴いて頂ける方に、どんな風に聴いて頂けたら嬉しいという点などはありますか。

 たぶん、うまく行っている人は少ないと思うので、わりとラフに聴き流しながら「自分まだマシかも」と思ってほしいです(笑)。本音というかパッと思ったことをそのまま歌詞にした感じなので、共感してもらえそうな気がしています(笑)。

――最後にメジャーデビューされての目標をお伺いします。

 自分の想像を超えるような所、大きいライブハウスのツアーをしたいです。そのためにライブ映えする曲、バンドっぽい曲、「だけどmeiyoだよね」と言ってもらえるような曲をこれからも作っていかなければと思っていて。meiyoらしさをどんどん確立させていけたら、どんな曲を出してもmeiyoになれると思っています。自分らしく、幅広く活動したいと思っているので応援よろしくお願いします。

(おわり)

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