[写真]SEAKAI NO OWARI『Dragon Night』

10月15日に発売されたSEAKAI NO OWARIのニューシングル『Dragon Night』初回限定盤B

 今年大みそかの第65回NHK紅白歌合戦(午後7時15分)への初出場内定が報じられているSEKAI NO OWARI。きょう26日にも正式発表される見通しだ。SEKAI NO OWARIのは男女4人からなるバンド。ボーカルが赤髪で、ピエロがいるというイメージが強い。最近ではボーカルのFukaseが歌手のきゃりーぱみゅぱみゅとの熱愛が報じられていることでも注目されている。その彼らは独創的な曲の世界観とそれを現実世界で再現するステージ演出で、若い世代を中心に人気を集めている。彼らがなぜここまで注目されているのか、改めて彼らの魅力に迫ってみたい。

 SEKAI NO OWARIは2010年に「幻の命」でインディーズデビュー。2011年8月に、ミスチルやゆずが所属するトイズファクトリーから「INORI」でメジャーデビューした。メンバーはVo&GtのFukase、GtのNakajin、KeyBoardのSaori、DJ LOVEの男女4人だ。

 インディーズ時代は「世界の終わり」と漢字で表記していたが、メジャーデビューの際に、世界進出を念頭においてローマ字「SEKAI NO OWARI」にかえた。初めは「End Of The World」との名で海外でも活動していたようだが、同名のアーティストがいるとのことで前記の通りになった。

 珍しい名前だが、音楽の歴史においてこれまでに様々なバンド名が既出していると差別化を図るためにこのようなバンド名も有りとも言える。実際にインパクトもある。ただバンドとしての音楽性が伝わりづらいところもあろうが、このネット社会、調べればすぐに音源やミュージックビデオ(MV)も視聴出来るのでさほど問題ではない。

なぜ若者に支持されているのか、背景に現代社会

 今に始まった訳ではないが、このところメディアへの露出が増えている。独創的な音楽の世界観を紹介するものもあれば、ボーカルFukaseのキャラクターや私生活を報じるものもある。いずれにしても注目されているバンドである。彼らのファン層は主に中高生が多い。レコチョクが今年3月に実施した『10代が選ぶ好きなアーティストランキング』でもAKB48に次いで2位にランクインした。他の調査でも憧れのバンドに彼らを選ぶ人が多いことが明らかになっている。

 しかし、なぜここまで支持されているのか。

 楽曲のクオリティは高く、そして、独自の世界観もある。しかしそれだけなら他のバンドでも持ちえるところだ。彼らが他のバンドよりも一線を画している点はMVやライブにみられる演出だ。

 ライブは一つのショウやパレードの要素を取り入れている。曲に合わせてポップなアニメが踊ったり、ウォータースクリーンで文字を表示、更にライブイベント『TOKYO FANTASY』に見られるようにステージ上には大きな樹木が植えられ、ファンタジー映画の舞台をほうふつさせるような幻想的なつくりだ。これなら楽曲を知らなくても十分に楽しめる。

 彼らは“見せる力”と“ステージ力”を曲と同じようなパワーバランスで見ている感がある。映像の比重が大きい現代ではバンドのアドバンテージにもなっている。言葉をかえれば視覚に訴えかけているとも言える。

歌詞に広がる幻想感、そしてあたたかみ

 そしてもう1つ注目したいところは歌詞である。他のバンドと明らかに違うと断言しても良い個性的な作詞力だ。最新曲「Dragon Night」を始めロールプレイングゲームや、あるいはテーマパークを思わせるさせるような世界観で書かれている詞が多い。例えば2014年1月に発売された彼らの代表曲の一つ「スノーマジックファンタジー」のサビはこのような内容だ。

 スノーマジックファンタジー
 雪の魔法にかけられて
 僕は君に恋した
 もしかして君は雪の妖精?

 僕は星の降る雪山で、
 君を見るまではオカルトの類はまったく信じていなかったのだけれども
 君が住む山は“スノーランド”
 1年中、雪の降るこの国で私は生まれたの、と君は話してくれたんだ

 そのファンタジックな世界観が10代に支持されている要因ではないかと推察される。逆に年齢が上のリスナーにはファンタジックし過ぎてしまいメッセージ性が希薄になるところも否めないものの、それでも柔らかさや温かみを感じる。この柔らかさと温かみが若者の心を掴んでいるようにも見える。

 インディーズ時代を知る音楽関係者はこう話す。

 「私が彼らのライブに行くようになった頃は既に人気があり、ライブハウスには多くのファンで溢れかえっていました。あの独特の空気感は今でも脳裏に焼き付いています。特にFukaseさんの水面を歩く妖精のような歌声は一瞬にしてファンの心を掴み、会場にいる女性ファンの中には泣いている方もいました。当時のインディーズシーンは青春ロックなどが盛んでしたから、彼らのようなスタイルは他にみられない特別な存在感でしたね」

柔軟性のあるバンド

 最近は、単純なロックサウンドではなく、マーチングバンドのようにパレードなどで流れていそうな音楽を取り入れた楽曲が多い。初期の頃にはロキノン系ギターバンドサウンドやサカナクションのようなダンスミュージックとRockを融合したような曲もあり割とジャンルは多様性に富んでいる。

 作曲や編曲にも関わるGtのNakajinはtwitterで「『炎と森のカーニバル』では花火の音をDrumのバスドラに使った」と綴っている。フィールドレコーディングも取り入れているようでアレンジに注意して聞いてみるのも面白い。

 音楽に対して柔軟なスタイルを持っているバンド。それがSEKAI NO OWARI。今後もどんどん音楽性も変わって行くのではないかと思われる。現に最新曲の「Dragon Night」では、オランダ出身の実力派DJのニッキー・ロメロがサウンドプロデューサーとして参加し、EDMを取り入れている。ジャンルという枠に縛われずSEKAI NO OWARIの音楽を追求していく、その音楽性はリスナーにも伝わっている。

 さて、紅白歌合戦への初出場が決まった。SEKAI NO OWARIとしての壮大なステージングが紅白ではどのように作り出されるか。かつて小林幸子と美川憲一が競った大掛かりな衣装対決のように、紅白の“目玉”ともなりえる可能性があり、注目したいところだ。

 ちなみに、SEKAI NO OWARIは来年2015年1月14日にセカンドアルバムが発売される。発売されたばかりのシングル「Dragon Night」や「RPG」「Death Disco」「スノーマジックファンタジー」「炎と森のカーニバル」「PLAY」「マーメイドラプソディー」が収録予定。曲数はまだ未定で初回限定版には炎と森のカーニバル-スターランド編(さいたまスーパーアリーナ)の映像をフル尺で収録予定だ。  【上村順二】

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