松村北斗(SixTONES)が、2021年度後期放送の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(11月1日スタート)で、ヒロイン・上白石萌音演じる橘安子の運命を動かす青年・雉真稔を演じる。連続テレビ小説初出演。現場に刺激を受けているという松村は「大切な経験になっています」と興奮の様子で語った。【木村武雄】
稔の内面
3世代100年で紡ぐファミリーヒストリー。連続テレビ小説『ちりとてちん』の藤本有紀氏が、ラジオ英語講座と、あんこと野球とジャズと時代劇を題材に書き下ろす。3人のヒロインが戦前から戦後、そして令和まで物語を紡いでいく。上白石萌音演じる初代ヒロイン安子は、戦争で夫と死に別れ、娘を置いてアメリカに渡るしかなかった。松村演じる雉真稔(きじま・みのる)はその安子に大きな影響を与える重要な役どころだ。
オーディションで初めて台本を読み、役柄に親近感を持ったという松村。だが出演が決まり、方言や稔が生きたその時代の背景が分かると当時と見え方が変わってきたという。演じる雉真稔は、安子の地元・岡山にある雉真繊維の社長・千吉の長男で、家業である繊維業を海外に展開させることを志す大学生だ。地元で有名な名家・雉真家の跡取りで英語が堪能な好青年だが、松村にはどのような人物として映ったのか。
「稔は、周りからしっかりしているように見られていますが、一人の男として、長男として大成の道を歩き始めているように見えます。でも全貌を知っている僕からすると人間的で、いまの10代後半よりもよっぽどしっかりしています。ただその一方でしっかりしなきゃという気持ちや成長しきれていないところ、完成しきれていないところもあって。そこに危うさも感じています」
そうした完成しきれていないところ、周囲の期待に対して葛藤を抱く稔に共感を抱いた。
「しっかりしないといけないという自覚や、本当はこういう姿が楽なのに、ということも隠すしかない。どんどん周りが望むもの、自分が正解、楽だと思う根っこの部分はどんどん後回しになり、それが積み重ねられ沈んでいく。それは僕も分かりますし、きっとみんなもそうした体験はあるんだろうなと思います」
稔は、安子の運命を動かしていく役どころでもある。その安子を演じる上白石への印象を「年齢不詳」と大人びた内面にその言葉で敬意を表しつつ、「一貫した芯の強さが主演たるものを物語っている気がします。作品の軸としてどっしりしていて素敵だなと素直に思っています。穏やかそうに見えますが肝の強さは感じます。ただ、上白石さんだけでなくお会いした俳優さんはみな肝が据わっています」
父・千吉(段田安則)と母・美都里(YOU)の長男でもある稔には、弟・勇(村上虹郎)がいる。松村自身にも兄がいる。
「役の上では僕が長男。本来ではあれば村上さんの位置にいる性格です(笑)。村上さんは自分よりも下の兄弟がいると言っていたので、多く話し込んでしまうと立場が逆転してしまう、僕が弟の部分が出てしまうなと思いました(笑)」
朝ドラの現場に刺激
連続テレビ小説への出演は本作が初めてとなる。
「朝ドラでしか経験できないものがあります。ここで芽生えたものが他の作品やお芝居以外のところでも活かされていく、伸びていきそうな強いパワーを感じていいて。これからの活動においても大切な経験になっています」
「朝ドラしか経験できないもの」それは何か。
「朝ドラの歴史は、その名前だけでなく、現場や格式の高さからも感じられます。そこに挑む体験、何年も続いている朝ドラだからこそ感じられるものがあります。1話をぎゅっと凝縮してほぼ毎日放送する、それを作ると思うと、30分や1時間のドラマを作るのとは異なっていて、1話1話に物語の展開やメッセージが詰まっていて濃密。それを必死に理解して表現するのはこんなにも難しいのか、余白が許されない。良い意味ですごく翻弄されました」
だが、現場で見るものすべてが新鮮だ。
「朝ドラの空気感は全体的にのほほんとして和やかな印象もありますが、現場で撮影に向き合っている時はのほほんとしている人は誰一人いないです。すごい世界だなと思います。1話のなかでも喜怒哀楽がたくさん入れ替わって、それをこの台本の分量で描いていたのかと思うと書く方も演じる方も怪物だなって。展開が早いのでついていってください(笑)」
撮影で毎日刺激を受けている。期待していることは何か。
「松村北斗としてこの現場に立てていることに意味がすごくあると思っています。いつかもっと成長してまた戻ってきたいと思えるような場所でもあります。僕自身は初めての朝ドラでいっぱいいっぱいで未熟。でも未熟なりに見出して視聴者の皆さんに良いと思ってもらえたらこの作品の恩返しになると思っています。この人を応援しようかなと思えたらありがたいですし、作品だけでなくてもメンバーに対しても何か返すことができたかなと思えます。ファンの方から頂いた声で、まだ放送前ですがこの作品を通じて祖父母と同じ話題で会話ができたという話も聞きます。自分を介して世代を超えて会話ができる、そういう自覚というか責任みたいなものも芽生えてきました」
「責任」を胸に、稔として時代を生き抜く。