竹渕慶「倍音のようにどんどん重なって」新たなスタートラインで想うこととは
INTERVIEW

竹渕慶

「倍音のようにどんどん重なって」新たなスタートラインで想うこととは


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:21年08月05日

読了時間:約9分

 Goose Houseの元メンバーで現在ソロアーティストとして活動中の竹渕慶が7月7日、1stフルアルバム『OVERTONES』をリリース。本作は「Torch」「24 Hours」「あなたへ」「クリスマスの話」といったシングルトラック、そしてこれまでにライブでも披露されてきた「Tokyo」や中島みゆき「糸」のカバー、さらには完全新曲2曲を含む全11曲を収録。マルチクリエイターのYAMOが全楽曲とアートワークをプロデュースした。1stフルアルバムをリリースした現在の想いについての話題を中心にアンケートをおこない、竹渕の今の心情をあらゆる角度から答えてもらった。【平吉賢治】

ソロだからこその“一人でないと歌えないメッセージ”

『OVERTONES』ジャケ写

――1stフルアルバムをリリースした現在の率直なご心境はいかがでしょうか。

 独立してから2年半の間に生まれた曲たちが愛おしいという気持ちと、今までに出会ってきたすべての人達への感謝がただただ溢れるのと、そしてまた新しいスタートラインに立って、さぁこっからまた何を作っていこう!という気持ちです。自分、何とかやってきたじゃん、という気持ちもあります。あと家族とYAMOさん、本当にありがとう。

――直近の音楽活動で特に印象的だったことは?

 1年半振りに有観客のワンマンライブができたこと。自分にとってライブがこんなにも必要な、大事なものだったということに改めて気づかせてもらえました。

――影響を受けたアーティスト、シンガーとして、宇多田ヒカル、椎名林檎、Celine Dion、Christina Aguileraなどを挙げていますが、最近特に注目している音楽はなんでしょうか。

 Madilyn Baileyというアーティストの方と、韓国のK-POPは映像も含めやはりかっこいい…Madilyn Baileyさんは、ロサンゼルスで活動しているアーティストなのですがスモールチームで素晴らしいクリエイティブと挑戦をいつも見せてくれて、尊敬はもちろん勝手に同士のような気持ちで刺激を受けています。アーティストとしてキャリアがもう十分にあるのについ最近アメリカのオーディション番組”America’s Got Talent”に出演していて、本当にファンをびっくりさせるし挑戦を続けているなと改めて。しかも披露した曲が、自分のYouTube動画についた「歌最悪」「下手クソ」「歌やめろ」などのヘイトコメントだけで作った曲で、それを最高の歌唱で披露して会場と審査員を沸かせて…本当にかっこいいです。彼女の曲や活動に姿勢には、常に社会を良くしようという思いが感じられてそういった面でもインスパイアされます。

――これまでの音楽活動で、ターニングポイントと感じたことは?

 一つだけ選ぶとしたら、現段階ではGoose house(旧Play.You house)のメンバーになったことです。

――8年間のGoose houseとしての活動を経て2018年11月、フリーのソロシンガーソングライターとして再始動したきっかけや、その時の心境などはどのようなものだったのでしょうか。

 Goose houseは私をアーティストにしてくれた、この道を選ばせてくれた場所なので本当に感謝しているし、グループでの活動は毎日刺激的でやり甲斐だらけで、間違いなく自分を成長させてくれました。その日々の中でも自分の中にずっとあった「ソロで活動がしたい」という気持ちがなくなることはなく、グループだからこその良さがあるのと同じように、一人でないと歌えないメッセージ、ソロだから書ける、説得力が生まれるメッセージもあるという思いも抱き続けていました。決断しなかった未来で誰かのせいにしないために、厳しい道でも自分で選択して自分のせいにする方が良いと思って決断しました。

共鳴し合って重なる『OVERTONES』

――本作『OVERTONES』は「倍音」という意味で、コロナ禍にファンとリモート共作詞と合唱をした曲や、3カ国で5,000人以上とレコーディングした曲などを含み、ファンと響き合うように制作した作品たちやその繋がりを包括するタイトルとなっているそうですが、このようなタイトル、アプローチをした想いについてお伺いします。

 汲み取って頂いたように、これまでファンのみんなと作ってきた作品を一緒に形にするという思いもありますし、聴いてくれた人とこのアルバムが共鳴し合って、倍音のようにどんどん重なって広がっていけ!という思いも込めました。倍音がコンセプトなので、聴いてくれた人の耳に心に届いて共鳴した瞬間に初めて作品となるアルバムです。

――本作の2曲の新曲はどのような過程で制作されましたか。

 M1.「Trust You That You Trust Me」は、最初にYAMOから曲のデモが送られてきて、そこに自分が歌詞をつけたのですが、送られてきた時点で「Trust You That You Trust Me」という言葉だけが入った状態でした。そこから「人を信じる」という当たり前のようで難しい、小さいようでとてつもなく大きいテーマで書きました。世界中にたった一人でも自分のことを思ってくれている、信じてくれていると分かった瞬間、どうして人って強くなれるんでしょう。たった一人でもただ一人。1対1の信頼関係は、広げていくと国と国、世界規模の信頼関係に広がっていく。私とYAMOの関係、ファンとの関係、社会、世界との関係…近いようで遠い、小さいようで大きい、宇宙のような曲を作りました。

 M2.「Invisible」は、これもYAMOからデモが送られてきてそこに自分が歌詞をつけたのですが、自分も今年30歳を迎え周りの親しい人たちもそれぞれライフステージが進んでいく中で、年を重ねたからこそ書けた曲かなと思います。誰かと話したその内容やその人の心情が心から離れなくなって曲を書くことが多いのですが、この曲もそうやってできた曲です。20歳の自分では書けなかった曲だと思いますね。

――中島みゆきの「糸」をカバーしたいきさつは?

 中島みゆきさんの糸は、YouTubeチャンネルの「糸電話で糸をカバーする」という動画で歌わせてもらった曲でした。この企画も24時間生配信の中で視聴者の方から募集して採用させて頂いた企画だったのですが、響きあう、出会う、共鳴、重なり、というコンセプトのこのアルバムと「共鳴」するメッセージなのでリスペクトも込めて収録させて頂きました。動画の音源とアルバムに収録した音源では、実はとある大きな違いがあるのでそこにも注目して楽しんでもらいたいです。

――本作のレコーディングで、特に力を注いだ点、こだわった点、印象的だった点などは?

 この回答は是非、クリエイティブパートナーであり全曲のプロデュース/編曲/ミックス/マスタリング、ジャケ写制作を担当しているYAMOに託したいと思います!

YAMO 本作は、商業スタジオを一切使わずに、ほぼ二人だけで作り上げたアルバムです。時間と情熱はかけましたが、恥ずかしながらお金はほぼかかっていません。皆さんが持っているようなパソコンにありったけの想いを詰め込んだ、現代的なクリエイティビティーの結晶だと思っています。

 スモールチームでありながらも、大人数のファンの方に合唱や作詞で参加してもらったことで壮大さも出せたつもりですし、コロナ禍でも海外の音楽家(Carol Kuswanto)にリモートで演奏してもらえたことで表現の幅も出せたのではないかと感じています。この作品を通して、情熱と工夫次第でスモールチームや個人でも大きな挑戦が出来るんだということを体現できていれば幸いです。

“歌って正解はない” ソロシンガーとしての想い

――竹渕さんが歌を歌う際に最も大切にしている姿勢、心情とは?

 伝える歌を歌うこと。Goose houseで活動して、大勢の人の前で歌うようになって初めて、それまでは自分のためだけに歌っていたんだということに気づきました。それからは、自分が歌うことを楽しめているかはもちろん大事ですが受け取ってくれる人に届く歌かどうかということはとても意識しています。自分の頭の中に流れている映像や心の伸縮、色の変化を、自分の声を通して聴き手との間の見えないスクリーンに映し出している感覚です。通訳者のような。でも時には色々と考えずにただただ楽しんで爆発するような歌が一番届くこともあるし、歌って正解はない。逆に言えば響くのであればすべてが正解だとも思います。

――ライブや本作のリリース、YouTubeチャンネル『竹渕慶 / Kei Takebuchi』の数々の動画など、様々な活動をみせる竹渕さんが、これから新たなチャレンジとして構想していることなどは?

 この状況が落ち着いたら早くまた海外での制作、撮影をしたいなという気持ちはあります。それと、podcastをYouTubeでやってみたいなと思っています。ここでYAMOさんにも構想を聞いてみます!

YAMO 色んな企画を考える中で、竹渕慶は気乗りしないことは全然やってくれないのですが、逆に「これだ!」と燃えるような内容には、すさまじい集中力や情熱をかけてくれます。二人とも、やったことのないことや見たことのないものにワクワクしがちなので、必然的に「新しい表現」を追求していくのではないかと思います。海外にはそのようなそのようなワクワクがたくさん待ち構えているので、コロナが収まったらまた海外文化にも触れたいです。こうしている今も、東京にいながらでもたくさんの新しい情報や価値観に触れられるので、常にアンテナは高く建てていたいです。また、個人的にも竹渕慶の歌や音楽のファンなので、「自分自身が良いものを鑑賞したいから」という公私混同っぷりを武器に、ファンの皆さまと一緒に楽しめる創作物を一つでも多く作って届けていきたいです。

――竹渕さんの歌を聴いていると癒される気持ちになります。竹渕さんが癒されるひとときはどんなときでしょうか。

 ありがとうございます。そうですねぇ…寝ている時ですね! いや、正確に言うとベッドに入ってから眠りに落ちるまでの時間が癒しです。「あぁこれから私、寝れるんだ」という。あとはお酒を飲んでいる時と、愛犬と触れ合っている時と、仲間と楽しい時間を過ごしている時と、夕暮れの散歩のときと、自然に身を任せている時…結構ありますね(笑)。 恵まれています。

――楽曲「あなたへ」の<あなたと生きた時代を 私は愛す>という一節がとても好きです。特殊な状況下が続く今の時代、一番必要なことはどんなことだと思われますか。
 
 ありがとうございます。特殊な状況下が続く今の時代、一番必要なことは、まずは自分が壊れないこと。心身ともに健康でいること。それってつまり誰かの幸せや心身の健康に繋がっている。同時に、自分が心身ともに健康でいるためには自分が他者に感謝できて愛せるような、そして感謝され愛されるような状況にいることが大切だと思っていて。鶏と卵じゃないですが、その連鎖が他者から始まるのを待つよりもまずは自分から伝えて愛する方が、自分も周りも結果的には世界も幸せになるのではないかと思います。

――今後の展望として具体的に掲げることは?

 自分も日々刺激をインプットしながら、一人でも多くの人に自分たちの音楽を、メッセージを、歌を届けることです。なので貪欲になるところは貪欲にならないといけないと思っていますし、数字そのものではなくその向こうにいる人を浮かべながら、どんどんこの共鳴の輪を大きくしていきたいです。

(おわり)

作品情報

竹渕慶 1stアルバム「OVERTONES」

2021年7月7日 RELEASE

配信は8月7日から開始

Goose Houseの元メンバーで、現在ソロとして活動中の竹渕慶ファーストフルアルバム『OVERTONES』。アルバムには、“Torch”“24 Hours”“あなたへ”“クリスマスの話”といったシングルトラックは勿論、これまでにLiveでも披露されてきた“Tokyo”や中島みゆき“糸”のカバー、そして完全新曲2曲を含む全11曲を収録。マルチクリエイターのYAMOが全楽曲とアートワークをプロデュース。「OVERTONES」は「倍音」という意味。コロナ禍にファンとリモート共作詞と合唱をした曲や、3ヵ国で5,000人以上とレコーディングした曲などを含み、ファンと響き合うように制作した作品たちやその繋がりを包括するタイトルとなっている。

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