AKB48のヒット曲「恋するフォーチュンクッキー」に合わせて民間企業や地方自治体などが踊る動画が数多く作られ、話題を集めた。自治体の中で比較的早く参加表明した神奈川はこれまでに400万回の再生数を記録、県のアピールにも繋がった。せ同じ関東圏でも出遅れた埼玉では、作詞、作曲、振り付け、踊りも全て県民が行う「メイドイン埼玉」の動画が作られた。「ありのままの埼玉を表現したかった」と主催者。“ダサイタマ”を逆手にとって「少し贅沢な深谷ねぎ」や「海に行くだけで旅行になる」など県の特長や自虐ネタを取り入れた歌詞で県の魅力を発信している。

◆写真=動画の曲を歌う6才児

 AKB48が昨年夏に発売した「恋するフォーチュンクッキー」は、HKT48指原莉乃がセンターを務めた事でも話題を集め、150万枚を超えるヒット曲となった。この音楽ビデオでは、指原が所属するHKT48の活動拠点でもある福岡市中央区の道路を貸し切って、地元住民も参加した。思わず踊りたくなるその振り付けに、投稿サイトでは同曲に合わせて踊る動画が次々とアップされ、企業や地方自治体なども参加するなどちょっとしたブームとなった。

 地方自治体で代表的なものと言えば、神奈川県や佐賀県などがあげられる。佐賀県の動画はこれまでに200万回が再生され、神奈川県に至っては400万回を超えた。この評判を受けて各自治体も参加表明している。その中で埼玉ではちょっと変わった展開を行い、話題を集めている。

 「恋するフォーチュンクッキー」を使用せず「6才児」というロックバンドが作った曲に合わせて県民が踊るというものだ。この活動を仕掛けたのは音楽や映像制作を行う団体「天下茶夜」。作詞、作曲はメンバー全員が埼玉県民の「6才児」が手掛け、振り付けは県民から募集した。動画には県内46の企業・団体、総勢837人が出演。深谷市長や春日部市長、越谷市長などの16の市の首長が“埼玉ポーズ”で参加している。

 この曲を歌う「6才児」は、メンバー全員が埼玉県民の平均年齢33歳の男性4組バンド。ブルーハーツに憧れて20歳の頃に結成した。現在はサラリーマンとして働きながらも土日などの休日を利用して活動を行っている。うち3人は妻子がいる。バンド活動も行うにも妻の許可がいるという。

 この動画の構想は昨年。セカンドアルバムを作成するにあたり、地元埼玉を題材にした曲を作りたい、と思っていた矢先に、神奈川県のAKB48「恋するフォーチュンクッキー」バージョンが話題になった。そこで、音楽ビデオに組み込む企画を立ち上げ、県内の企業や自治体に参加を呼びかけた。

 この企画を主導した天下茶夜の関係者は「私も県民ですが『ダサイタマ』というワードは全国的にも知られていると思います。けど開き直るのではなく、ありのままの埼玉を全国に知ってもらうため、率直な気持ちを歌に込めた」と語っている。その話の通り歌詞には県の特長を踏まえつつ自虐ネタも出てくる。

 例えばこのような感じだ。「出かける場所を探しに行こう、そうだ埼玉♪」の出だしから始まり「新幹線2コ止まるよ」「市の数日本一、だけど海がほしい」「この街に生まれて良かったと毎日思わないけど、嫌だと思ったこともないぜ、そうだ埼玉。そうだ埼玉」「少し贅沢な深谷ねぎ」「海に行くだけで旅行になる」などなど。

 動画は現在、ユーチューブなどで公開されており4万件を超える再生数を記録している。この動画に関するコメントも「共感できる」といったもの。県内高校に通う女子高生の話によると「みんなはAKBの曲でやるのに、埼玉が独走(迷走)している意味合いでもダサイタマの向こう側と私達は呼んでます」と話題を集めているようだ。

 最後のフレーズには「千葉とは和解」という言葉が出てくる。「私のなかでは東京を取り巻く周辺地域は神奈川が先行しており、埼玉と千葉が張り合っているイメージ。千葉からも何らかのアクションを起こしてほしいとの思いでこのフレーズを組み込みました。大げさですが“和解”して両県が手を取り合い互いに発展できればいいなと思っています」(前記・主催者)。

 地域に根差したご当地キャラやアイドルは定着しつつあるなかで、県民を巻き込んだバンド活動なども今後、増えていきそうだ。

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[写真]6才児が制作した埼玉県動画が話題に-1
[写真]6才児が制作した埼玉県動画が話題に-2

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