上野優華「どんどん学んでいきたい」“好き”を追求する姿勢
INTERVIEW

上野優華

「どんどん学んでいきたい」“好き”を追求する姿勢


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年06月09日

読了時間:約11分

 シンガーの上野優華が9日、ミニアルバム『ヒロインにはなれなくて』をリリース。2013年にシングル「君といた空」でデビュー。失恋・片想いソングに定評があり、”いま、泣ける声”と称されている上野優華。今作は3月に先行配信された川崎鷹也が楽曲提供した「愛しい人、赤い糸」、5月に配信された「好きが残った」を含む全7曲を収録し、上野自身も4曲の作詞、2曲の作曲に携わった。インタビューでは、『ヒロインにはなれなくて』の制作背景から、“好き”という感情について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

『ヒロインにはなれなくて』に込めた想いとは

上野優華

――最近、楽しいことはありましたか。

 3~4年前からハマっている謎解きゲームが好きなんですけど、『リアル脱出ゲーム』のイベントで新宿や下北沢に友達とよく行っていたんです。でも自粛期間でそれがなかなかできなくて残念だと思っていたんですけど、オンラインでできる脱出ゲームがあって、おうちでお酒を飲みながらそれを友達とやったりして楽しんでます!いつも脱出できなくて悔しいんですけど(笑)。

――(笑)。ところで、新たにやってみたいことは?

 私はコーヒー好きでカフェに行って友達と話をするのが好きなんですけど、それもなかなかできなくて。今なにか新しいことをやるというより、いつか前みたいに気軽に出かけられるようになったら、という気持ちの方が大きいです。それを取り戻せたらいいなと思います。

――お友達との会話から歌詞のインスピレーションを受けたりも?

 はい。私が書くものは、自分が感じたこともそうなんですけど、友達から恋愛の話を聞いてそれをもとに書くことも多かったんです。だからなかなか今は友達から話を聞くこともないですし、友達も新しい恋愛も以前ほどできなくなったじゃないですか? なので前に書き溜めておいたものから引っ張り出してくる方が最近は多いです。

――友達から恋愛相談を受けたりも?

 受ける方が多いです。

――その中で「こういうことで悩んでいるんだ」と驚くこともありますか。

 私の恋愛観と全く違う部分、好きで好きで忘れられない感情だったり、それが私には引きずったり未練を持つ気持ちがあまりないんです。そういう話を聞くと、そこまで想っているのは凄いなと、一途になれる感情は学べます。

――上野さんはわりと上書きタイプ?

 たぶんそうなんだと思います。スパッとするタイプだと今のところ思っています。

――さて、今作は片想いというか、一途に想っているシチュエーションの曲が多いですよね。これは自然と?

 今回は自分で4曲作詞をしていて、私の歌、ラブソングを共感してくれている方というのは、相手に想われているというより「自分が相手のことを好きなのにどうして」という方が多いのかなという印象を受けました。なので、自然というよりそういう方に共感して頂きたいなという気持ちを持って書いています。

――今作では「ヒロイン」という曲があって、ミニアルバムのタイトルは『ヒロインにはなれなくて』ですが、このタイトル名になった経緯は?

 このタイトルは叶っていない恋の曲が多かったので、好きな人の人生のヒロインという特別な立場になりたかったなと願う女の子の曲がたくさん詰まっている、「ヒロインには私はなれなかったな」というのをふと思って。“ヒロイン”というワードもそうですし、切なさもありつつ、ちょっとドラマチックな要素が入っている言葉だと思ったので提案させてもらいました。

――ジャケ写もタイトルとリンクされていると感じました。床に花が散らばっていますが、これは?

『ヒロインにはなれなくて』初回盤ジャケ写

 アネモネの花です。花言葉が「はかない恋」で、その意味がこのアルバムにぴったりなんじゃないかということで、全部白く塗って頂いたんです。衣装や小物も全部白くしてもらいました。

――撮られている時のこの表情はどのような感じなのでしょうか。

 『ヒロインにはなれなくて』というタイトルなので、あまりハッピー感が強くても良くないよねという話になって、メイクさんとも相談しながら顔の雰囲気もつくりました。タイトルが、「ヒロイン“に”なれなくて」じゃダメで、「ヒロイン“には”なれなくて」が凄くポイントになっているんです。

 彼の人生のどこかしらに私はいるだろうけど、そこにはたどり着けないという。なので、あまりナチュラルでも可愛すぎても派手すぎてもダメだし、いい意味でちょっと幸薄い感じというか(笑)。それを演出したいというので衣装も派手すぎず地味すぎずというところを全部良い感じに狙いました。

――「好きが残った」はどのような想いを落とし込みましたか。

 これは曲を先に頂いていて、前々作のアルバムの「会いたくない、会いたい」という楽曲でご一緒させて頂いた鶴崎輝一(※崎はたつさき)さんに曲を提供して頂いて、私が作詞をさせて頂きました。失恋、片想いというテーマで私が作詞をするとなった時に、この曲は失恋を書きたいなと思ったんです。失恋をした後って、心の中はどうなっているんだろう、何が残っているんだろうなと考えたときに、やっぱりまだ好きだという感情がきっと残っていて、それに苦しむ方が多いんじゃないかと思って書いたのが「好きが残った」でした。

――“残った”感情はどんなものでしたか。

 未練とはまた少し違うような気持ちと言ったらいいんでしょうか…未練というと、もうすでに何か幸せな思い出があったり、すがりつくようなものがそこにはあるけど、叶ってもいないしこの先叶うこともないであろうもの、ただすがるものもなくて自分の心の中に好きという感情だけが残っているような切なさを描いてみたいなと思いました。

――歌詞にある<少し癖のある笑った声も>とか、ちょっとクスッとしますね。

 グサッとしてくれたらいいなと思って書いています(笑)。私は人の癖とか笑い声など、ちょっと変わっているところに凄く気がいっちゃうというか、「ああ、この人こんな笑い方するんだ」と思っちゃうタイプなんです。やっぱり自分の要素も入れたいので、私もショートカットだし、大きいピアスを付けることも多いから私らしさも入っているんです。私が歌ってしっかりはまるようにというのも考えました。

――笑い方フェチのような?

 それちょっとあると思います(笑)。そういうところは、私は好きな人だったらたぶん思ってしまうだろうし、そういうところに私らしさを入れつつ、みんながきっと共感してもらえるような部分も入れたので。聞いた話というよりも、私の中で色々と繋げて物語を作り上げていったという方がこの曲は多いかなと思います。

攻めている女の子を書きたかった「ヒロイン」

上野優華

――楽曲「君の街まで」は元Shiggy Jr.の原田茂幸さんが作詞・作曲・編曲されています。アップテンポで他の曲とは歌い方も違いますね。

 この曲だけ軽快に歌うことを意識しています。原田さんが作る楽曲のイメージの女の子の明るさや可愛らしさを今回はしっかり声でも表現したいなと思ってレコーディングに臨みました。

――原田さんの書く歌詞の特徴は?

 女の子の可愛い部分が凄く詰まっていると思います。女の子から見て「この女の子可愛いな」と思う女の子を書かれる方だなと。純粋に恋をしている気持ちとかワクワク感、「言えない」みたいないじらしさも、切なさではなく可愛い方向にしっかり描いてくださるのが凄く素敵だなと、私も聴いていて凄くときめきますし、女の子として勉強になります。

――出だしの<午後5時過ぎ帰りを急ぐ>の、“ご”がこんなに続くのもインパクトありますね。

 確かにそうですね! そこのインパクトはあります。そこは私が先に気づいて言いたかったな…(笑)。

――そして、楽曲「ヒロイン」はディレクターの時乗浩一郎さんと作曲で共作ですが、土台は上野さんが?

 色々、時乗さんに相談しながら作り上げていきました。今回はコーラスっぽいところをしっかりBメロに入れた曲を作りたいという自分の土台があって「じゃあこういう感じにしよう」と。自分がその時にハマっているものもあると思うんですけど。コーラスがいいなとか、打ち込みがいいな、などそういう細かいブームがきていて、それが反映された曲だと思います。

――歌詞は今作のアルバムのテーマに沿っているものかと思いますが、書いている時に一番こだわったポイントは?

 失恋、片想いというところで、気持ちが内気な女の子を描くことが多かったので、もうちょっと攻めている女の子を書きたいなと思いました。私はこう思っているけど女の子からこういうことは言わないから、あなたから言ってねという感じで。これは“女の子あるある”な部分が詰まっている歌詞なんじゃないかなと思います。曲調もキャラクターも今というよりバブリーな時代の感じにしたかったので、全部が良い時代感を描くものになれたらいいなと思いました。

「好き」を追求していきたい

上野優華

――「今日も君でした」は希望に溢れる感じをサウンドから受けました。この曲を聴いた時、どのように感じました?

 ずっとaokadoさん(青葉紘季、角野寿和)は私のほとんどのアルバムに曲を提供して、毎回大好きでお願いをしていて、作詞の岩里祐穂さんもずっとご一緒させて頂いているので、上野優華の王道なんです。曲を頂いた時も「私だったらこう歌えるかも」という楽しさやワクワク感もありつつ、aokadoさんに書いて頂いた今までの曲も、ライブでオープニングで歌うか、ラストに歌うか迷うくらい、ライブで映える曲がたくさんあるので、今作もライブの景色が最初に聴いた時から見えました!

――タイトルもユニークですが、どう感じましたか。

 ドラマみたいでいいですよね。「好き」とかそういう言葉ではなくても「凄く好きなんだな」というのが伝わってくるタイトルだなって。それが私にはないドラマチックさというか、描けなかった爽やかさ、可愛らしさの部分なので勉強になります。

――上野さんは「好き」という言葉をストレートに使われる方かと思うんですけど、今後「好き」という言葉を使ったバリエーションがどうなっていくのかという楽しみもあります。

 私の中で「好き」という言葉が凄く特別なものなんです。それをそのワードとして伝えることの良さ書いていきたいんです。行ける限りは「好き」という言葉でどんな恋愛を歌えるかというのを追求していきたいと思います。「好き」をどんどん学んでいきたいし、「好き」を増やしていきたいです。

――「好き」への哲学者ですね。ラストの「幸せ」はどういった気持ちで書かれましたか。

 幸せのかたちって恋愛においても人それぞれだなと。色んな人から話を聞いても、YouTubeのコメント欄を見ていてもそうだし、私が思うこともそうだし、色んな幸せがある中で女の子の中ではよく話にあがるんですけど、自分が好きな人と一緒にいるのが幸せなのか、自分のことを好きな人と一緒にいるのが幸せなのかと。

――永遠のテーマですね。

 そう思うんです。私は、自分が好きな人と一緒にいることが幸せだと思うから、それを書きました。色んな話を聞いていると自分でも「私はこうだな」というのを感じていて、恋愛も常日頃から叶った恋が幸せだとは限らないと私は思っていて。叶った恋の中でも「これだったら別に片想いで良かった」というくらい悲しいこともきっとあるんじゃないかな、と思っている失恋片想いの中でもまたちょっとジャンルが違う「叶っているけどこんなに切ない」という恋を描きたいなと思って書きました。

――作詞はスムーズでした?

 歌詞が完成するまですごく早かったと思います。たしかワンコーラスを30分くらいで書けたんじゃないかな。曲からのイメージと自分が書きたかったことが合ったんだと思います。

――この曲はライブでどのあたりで歌いたいですか。

 とことん落ちたところで歌いたいです。私は落ちるような曲、救いのないような悲しい曲もたくさんあって、この「幸せ」もその中の一つだと思っていて、とことん落ちたところで歌いたいです。意外とイレギュラーな恋愛のかたちだと思うんですけど、「ああ、共感する」というだけではなくて、グサグサと抜けないくらいの傷を与えるような曲なんじゃないかなと思います。

――この曲をアルバムの最後にもってきた意図は?

『ヒロインにはなれなくて』通常盤ジャケ写

 曲調がラストっぽいなというのもあったんですけど、好きな気持ちって自分にしかないし、片想いでも両想いでも自分が幸せって思うような恋愛がしたい、という想いがここに詰まっているので、ラストにぴったりなんじゃないかなと思って。

――今作『ヒロインにはなれなくて』を聴いて、例えば20年後の上野さんがどんなラブソングを歌うのか楽しみになりました。

 私が幸せを掴んでなかったら、きっと歌っている内容もどんどん闇に向かっていると思います。掴んでいたらわからないです。

――まだ幸せは掴めていない?

 まだ掴んでないです! これからなんです私の人生! きっと今しか歌えないような歌というのを詰め込んでいると思うんです。5年後にはこんな感情にはなれてないかもしれないし、20年後もその時だけのものを歌っているんだと思います。

――さて、7月にワンマンライブが決まっていますが意気込みは?

 1年半ぶりの有観客でのワンマンなので、同窓会のような「元気だった?」みたいな懐かしい気持ちになるんじゃないかなと思ったりもしていて。この間、お客さんを入れたライブをやった時は、懐かしい感情よりも「これが新しいライブのスタイルなんだな」と凄く感じました。マスク着用や声をだせなかったり、色んなルールがある中で、今までのものを全力でやるというよりも、この形で私の最大限を見せるという方向に頭を働かせないといけないなと思って。私も新たなスタートという気持ちで、自分らしく歌えて楽しめたらいいなと思います。

(おわり)

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