星野源、最新シングル「不思議」に幻視する新垣結衣の面影と二人の夫婦像
「恋」へのアンサーソング?

星野源
星野源と新垣結衣が19日に結婚を発表し、世間を驚かせた。一部報道では今年の1月からの五カ月交際でゴールインしたと言われている。4月27日にデジタル配信された、最新シングル「不思議」には星野の新垣に対する想いが込められているのではないか。
星野源はもともと、インストゥルメンタルバンドのSAKEROCK(2015年に解散)のリーダーとして知られる存在だった。その時には彼の恋愛観など知る由もなかったが、2010年のソロデビュー作『ばかのうた』は、思春期から老年期まで“日常”的な恋愛観のイメージに溢れた歌詞が印象的だ。振り返れば、これまで「SUN」「恋」など彼は一貫して彼の考える恋愛を歌にして来たように思う。彼が国民的なシンガーソングライターになり得たのも、徹底的に日常に寄り添う視線を持ち続けた稀有な存在だったからだろう。
最新曲「不思議」も例に漏れず、ラブソングである。TBS系ドラマ『着飾る恋には理由があって』の主題歌として、すでに耳馴染みでもある。星野は、今作について「自分にとっての愛とか恋はこういうことだと思っている、というのをちゃんと歌にしようとした」と、インタビューで語っている。俳優の川口春奈が演じる真柴くるみと、横浜流星が演じる藤野駿がルームシェアをする中で恋愛に落ちていく、まさに現代的な“日常の恋”を描く作品の主題歌としてピッタリである、と星野が結婚を発表する前は思っていた。
星野と新垣は16年放送のTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で共演。契約を前提とした偽装夫婦から、やがて本当の夫婦の関係になる恋愛ドラマを経て、プライベートでも夫婦となった彼ら。星野が執筆したエッセイ集『いのちの車窓から』(KADOKAWA、17年発売)で「あなたは本当に素敵な、普通の女の子である」と新垣の魅力についても書いている。
「不思議」も今聴くと、そこに新垣の面影をふと幻視してしまう。例えば<彷徨う心で 額合わせ 口づけした 正座のまま>という1番Bメロの歌詞。『逃げ恥』で星野演じる津崎平匡と、新垣演じる森山みくりが初めて結ばれる場面で、二人はシングルベッドの上でお互いに向き合い正座したままキスをする。サビでは<“好き”を持った日々を ありのままで 文字にできるなら 気が済むのにな>と歌う。これはエッセイを書き綴る文人としての星野の願望が率直に表れている。エッセイ中、新垣への言葉は何も偽りはないのだろう。
そして、この曲は<君を想った日々を すべて 乗せて届くように詰め込んだ歌 孤独の側にある 愛に足る想い 二人をいま 歩き出す>と締めくくられる。もう完全にストレートな告白にしか聞こえない。さらに、これは『逃げ恥』の主題歌「恋」のラストサビ<夫婦を超えてゆけ 二人を超えてゆけ 一人を超えてゆけ>へのアンサーソングと捉えることもできる。まさに夫婦を演じた二人がその関係を超えて愛を育んでゆく、その決意を星野は歌っている。
『逃げ恥』の共演から互いに意識し始めていたことを思えば、その間の楽曲群を交えて考察するのが前提であるのは最もであるが、今回は交際をスタートさせたという1月以降ということで「不思議」を選曲した。また、この曲も交際以前から構想があったかもしれないので、あくまで筆者個人の想像の範囲を出ないことは申し付けておく。【文=松尾模糊】