オダギリジョー、尾野真千子は「同期のような存在」
映画『茜色に焼かれる』完成報告会
石井裕也監督最新作『茜色に焼かれる』の完成報告会が27日、都内で行われ、主演の尾野真千子をはじめ、新人俳優の和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏、石井監督が出席した。
コロナ禍の現代、弱者ほど生きにくい時代や世間に翻弄されながらも、正面から現実に立ち向かう一組の母子の姿を力強く描く人間ドラマ。始まりはコロナ禍の2020年夏、突然どうしても撮りたい映画を思いついたという石井監督が短期間で脚本を仕上げ、賛同した豪華キャストとともに撮影をスタート。真正面から愛と希望をテーマに描いた渾身の作品だ。
不器用ながらも己の信念に従って強く生きる主人公・良子を演じた尾野は、「台本を読み、自分が伝えなきゃと思うことがたくさんつまっていました」と出演の決め手を明かした。撮影現場では、「精神的に辛い時はありました。でも、そうやって自分の気持ちが変化していくのは、すごく楽しい現場だなと思いました」と撮影当時を述懐した。
その息子・純平役の和田は、オーディションで役を獲得。「カナダ留学から帰国して2年ぶりのオーディションで緊張していましたが、石井監督に初めてお会いした時、気さくで話しやすい方だなと思いました」。台本を初めて見た時は、「セリフが多くてプレッシャーがありましたが、それ以上に選んでいただいて光栄だなと思いました」と振り返った。
良子の同僚・ケイ役の片山は、「この役はわたしに演じられるかどうか不安や恐怖がずっとありました。乗り越えられた達成感はないけれど、それに負けないように頑張りました」と、演じる上での挑戦を明かした。
事故で亡くなる父親役のオダギリは、コロナ禍での撮影を述懐。「いま現場ってこうなってるんだと。本番ギリギリまでフェイスシールドをつけて、ご飯もひとりで食べてくださいと。今までのシステムがひっくり返っていました。現場のスタッフの数も少なかった。でも、そんな中でも監督は日々戦いながら作品に立ち向かっていた。コロナ禍だからこそ描こうとしていたと思う」と、石井監督の苦労をねぎらい、撮影を振り返った。
母子を見守る風俗店店長役の永瀬は、「世の中の理不尽なことや、監督の想いがたくさんつまっている作品になったと思う。僕も参加させていただいて自慢できる作品になったので、観ていただいたみなさんも観たことを自慢できる作品になればいいなと思っています」とあいさつした。
石井監督は、「明らかに個人や人間の感情が置き去りにされているので、映画監督としてはどうしてもそこを描かないといけないと思って作った。マスクで隠されているけれど、みな内面はズタボロだと思う。今の時代にしか描けない愛や希望を映画にしたいと思いました」と想いを語った。
また、イベント中、オダギリは尾野との共演歴に触れ、「大げさにいうと(尾野は)同期のような存在。同じ時代を歩いてきた仲間のような気がします。今までの作品を全部観ましたけど、この作品が一番です」とアピール。ところが、「書いてほしいので言いましたけど、ひとつ申し上げると全部観たはウソです(笑)」と告白。聞いていた尾野は、「先輩だと思っていた(笑)」と笑顔で感謝していた。
最後に尾野は、「映画を撮る前に命がけで頑張ります、と監督に言いました。コロナでもう仕事ができないのではないかとかいろいろ思うなか、この台本が飛び込んできて、今やらないと無理、ここで止まっていたらアカンやんと、自分の背中を押してくれた。自分にとって大切な作品で、みんなで力を合わせてもがいて頑張って、ジタバタしながら撮りました。自分にとって最高の映画だと思います。映画館で観られるようになってほしい。どうぞよろしくお願いします」とまとめた。
映画『茜色に焼かれる』は5月21日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。【取材・撮影=鴇田崇】