長年所属した事務所を独立して一年が経った女優の栗山千明が、映画『種まく旅人〜華蓮のかがやき〜』に出演した。本作は「食」をテーマにシリーズ化された映画の最新作で、栗山はシリーズ2作目に続いて農林水産省で農業の活性化に向けて頑張る主人公・神野恵子役を好演。石川県金沢市の伝統野菜でもある「加賀れんこん」を題材に、後継者不在に苦悩する農業の現実を見つめ直す重厚な内容に加え、農業で活躍する女性たち、いわゆる「農業女子」を登場させて、心温まるヒューマンストーリーに仕立てた。
「30歳を超え、今は年齢に合ったものが増えたように思います」語る栗山は、「そういうものに一個一個、確実に向き合いたい。そういう実感をしながらお仕事をしたいと思うようになり、それが今少しずつできるような環境になってきたところです」と、独立後の一年を述懐した。主演映画のことや、現在の心境を聞く。【取材=鴇田崇】
前回との違い
――農林水産省で農業の活性化に向けて頑張る主人公・神野恵子役は、シリーズ2作目に続いての登場ですが、どういうキャラクターでしょうか?
真っすぐな人で、人を動かす力がある人ですよね。あんまり理屈どうこうではなく、やってみればいいじゃないと、その一押しがあることで周りが動き出すような魅力がある。一見すると明るい普通の子なのですが、何かを起こす力がある人です。
――この作品は、「食」をテーマにシリーズ化された最新作でもあるわけですが、続投されていかがでしょうか?
前回は淡路島で玉ねぎを題材にした作品でしたが、その時初めて「種まく旅人」に参加しました。最初はストーリーやキャラクターに意識がいっている状態で撮影が始まりましたが、でも撮影を終えてみると改めて食への感謝が残ったり、いろいろな環境の中で食材がスーパーに並び、食卓に並ぶという当然のことを認識しました。その後も淡路島産の玉ねぎを見ると、心躍ったりもしました。
それを踏まえて今回は、前回とちょっと気持ちが違い、わたしが体験したことを観ていただきたいし、伝えたいと思うようになりました。同じ目線で観てほしいというか、金沢に行ったことはなくても、スーパーで金沢のれんこんを見つけて食べてもらいたいですね。もちろん映画としてストーリーを楽しみながらも、そういうことも思ってくださる映画になればいいなという気持ちで臨みました。それが前回との違いでしたかね。
――金沢でのロケはいかがでしたか?
もっといろいろと食べる機会があればよかったのですが、どうしても撮影が、飲食店がやっていないような時間に終わるので、なかなかそういうタイミングがなかったですね。ただ、その前にも舞台で二泊くらい金沢に行く機会があり、毎回ご飯を美味しく食べました。お野菜も美味しいけれど、のどぐろを食べたり、おでんも美味しかったです。食の魅力は、金沢は強いなと思いました。
――今年6月に竹中直人さんと「百万石行列」を金沢で予定されていると思いますが、これがきっかけだったのでしょうか?
主催の方とそういうお話があったわけではないのですが、わたしは縁を感じています。もともとこの映画の公開はもっと早い予定だったのですが、それがこの時期というタイミングになったので、そういう意味でもご縁がありましたよね。
10代、20代、そして30代のいま
――ところで、独立され一年が経ちます。これまでの芸能活動をふりかえり、思うことはありますか?
デビューして10代までは何がなんだかわからない状態で、芸能界のことはもちろん、お芝居に対してもがむしゃらでした。今でも求めていただくことに精一杯応えようとする姿勢は変わらずではあるのですが、当時は一個一個のことにちゃんと向き合えていたのかなと、せわしない感じは正直ありましたね。
やがて20代になると等身大の役なども演じさせていただくようになり、10代の頃の個性的な役柄から幅が広がったのかなと思うなかで、30歳を超え、今は年齢に合ったものが増えたように思います。その時の自分ができる役もあると思いますし、そういうものに一個一個、確実に向き合いたい。そういう実感をしながらお仕事をしたいと思うようになり、それが今少しずつできるような環境になってきたところです。
――今回の作品はメッセージ性がありますが、そういう作品に今後も出たいですか?
わたしは何かを選ぶような立場ではないのですが、今までとちょっと違うなと思うのは、もっと自主性を持ちたいとうことですね。お膳立てをしてもらったからやるのではなく、ひとつひとつを自分で責任を持ちたいです。それは表から見た場合、伝わらないことなのかもしれないのですが、そうすることでその作品を届けたいという思いにもつながっていくと思うんです。
――いま仕事で大切にしていることは何ですか?
以前と変わらないことを言うかもしれないのですが、モノづくりをする時は意見がぶつかることもあるけれども、そのチームや関わった人たちがみんなハッピーになることが理想だと思っています。その時はよくないかもしれないけれど、出来上がってみんな幸せみたいな感じになることがいいんです。もちろん観てくださる方が大事ですし、そういう方がいるからこそものを作るわたしたちがいる、それは不可欠なのですが、いろいろな役者がいるなかで、わたしが参加している意味を考えた時に、みんながハッピーになったほうが絶対よくて、そのほうがみんなの中に何かが残ると思うんです。
というのも30代に入ると、スタッフさんや俳優さんに初めての方が少なくなってくるんですよね。昔は助監督さんだった人が監督になっていたり、もう何作も一緒という方たちがどんどん増えてくる。そうすると今までの思い出が蓄積しているから、前回会った時よりもいいものを作りたい、もっとコミュニケーションを取りたいなど、上に上に向かう気持ちになるんです。その時に前回の愚痴で会いたくない。たぶん誰もがそうだと思いますが、またお会い出来た、また頑張ろうとか、それがモチベーションになるんです。前回よりもよくなったところを見せたい。そういう向上心がいい作品になるはずなので、いい想い出を蓄積してレベルアップしていきたいんです。
――最後になりますが、映画を待っているみなさんにメッセージをお願いします。
実際に農業をされている方が違和感を覚えないで楽しんでいただければと思います。高いハードルではあると思うのですが、そうであったらすごくうれしいです。あと、れんこんの栽培法を知らない若い人たちにも食材への興味を持ってもらえたらいいなと思うので、農業をまったく知らない人にも観てほしいです。
全国順次公開中







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