佐藤ミキ、“信じる気持ちを考えた”『裏世界ピクニック』ED曲に込めた想いとは
INTERVIEW

佐藤ミキ

“信じる気持ちを考えた”『裏世界ピクニック』ED曲に込めた想いとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年03月10日

読了時間:約10分

 2020年12月にメジャーデビューしたシンガーの佐藤ミキが3月10日、2ndシングル「You & Me」をリリース。「You & Me」はTVアニメ『裏世界ピクニック』エンディング主題歌として現在O.A.中で、“あなた”を信じている“わたし”を信じる決意の歌。人との繋がりの中で生じる不安な気持ちも、自分次第で変えられることに気付いていく心の変化が描かれている。作詞は、佐藤ミキと、Crystal Kayなどへの楽曲提供で知られるシンガーソングライター坂詰美紗子との共作。作曲・編曲は、デビューシングル「名もない花」も手掛けた、新進気鋭の音楽プロデューサーmaeshimasoshiが務めた。インタビューでは、今作の制作背景から、佐藤が考える信じるとはどういうことなのか、ルックスの雰囲気も変化した佐藤ミキに話を聞いた。【取材=村上順一】

いろんな感情を知りたい、経験をしたい

「You & Me」通常盤ジャケ写

――前作から見た目の雰囲気がすごく変わってびっくりしました。

 スタッフさんからも「わからなかった!」と言われるくらい変わりました(笑)。前作の「名もない花」の時は白と黒を基調としたイメージのジャケ写とアーティスト写真だったんですけど、今回はカラフルな色がつきました。

――この変化は佐藤さんからリクエストされた部分もあるんですか。

 はい。「You & Me」はアニメ『裏世界ピクニック』のエンディング主題歌で、裏世界というのがテーマにあったので、MVは渋谷の裏世界をテーマに撮影しました。

――MVはちょっと懐かしさもあります。

 自分の中で90年代のファッションが可愛いなと思っていて、そこに今っぽさも加えたいなと、衣装に今春流行りのゼブラ柄を取り入れたりしました。あと、アニメでもグリッチエフェクトが出てくるので、それをMVでも入れてみたり。

――あと、ダンスも披露されていますね。

 初めてダンスを披露しました! いずれダンスは挑戦してみたいなと思っていたんですけど、こんなに早くお披露目できると思っていなかったので嬉しいです。撮影は楽しかったんですけど、プロのダンサーさんのAyanyさん、YURIAさんと一緒に踊らせていただいたので緊張しました。

――ダンスの練習期間はどのくらいだったんですか。

 時間はそんなになかったんです。でも、その中でやれるだけのことはやろうと思いながら練習してました。これからもダンスをしながら歌える曲も増えたら良いなと思っているので、楽しみにしていて欲しいです。

――MVでベンチに座って歌っているシーンから人や街を観察をしているようにも見えたのですが、観察するのは好きですか。

 どうでしょう(笑)。でも、友達からは「よく見てるよね」と言ってもらうことはあります。アンテナと言いますか、人と通りすがった時もただ通り過ぎるのではなく、どんな表情で歩いているのかな、上を向いているのか、下を向いて歩いているのかなど、気にしちゃう傾向はあります。そこから歌詞に繋がることもあるんです。

――音楽制作の一端を担っている部分もあって。

 歌詞もそうなんですけど、歌にもそれは出ていると思います。例えば「ありがとう」という言葉でも、ニッコリ笑って「ありがとう」なのか、ちょっと切ない「ありがとう」とか表現が色々あると思うんです。それも色んな人の表情から考えて、歌に反映していることもあって。出来るだけ色んなものを見て、いろんな感情を知りたい、経験をしたいなと思っています。

――無関心というのももったいないですよね。MV撮影で変わったことはありました?

 アーティスト写真は夜の街中で撮影したんですけど、お腹が出ていたり衣装の露出が多かったので、めちゃくちゃ寒かったです。

信じる気持ちを考えた「You & Me」

「You & Me」配信用ジャケ写

――さて今作の歌詞は坂詰美紗子さんとの共作となっていますが、どのような流れで制作されて行ったんですか。

 スタッフさんから坂詰さんを紹介していただきました。曲のテーマを信じるとは何か、というのにしたいなと思っていたので、お互いに作詞をしながらディスカッションして行きました。坂詰さんとご一緒させていただいて、自分だけでは気づかなかった色んな信じるがあるんだなと勉強になりました。自分が思う信じるという気持ちだけだったら、今作みたいな歌詞には絶対にならなかったと思うんです。

――共作の良さが出たんですね。ちなみに佐藤さんはどんな信じるという気持ちをイメージされていたのですか。

 『裏世界ピクニック』を見ていて信じるというのはどういうことなのかなと思いました。その中で自分が誰かを信じる時は、相手を信じるという基準を作るのも自分で、相手を信じるということはその基準を決めた自分を信じる、相手も自分も肯定する事だなと思いました。相手と自分がいないと成り立たないということもあって「You & Me」というタイトルになりました。

――アニメを見て感じたことを歌詞で書かれていますが、きっとご自身のことも重ねた部分もあると思います。その中で「You」の部分はどんな人をイメージしていましたか。

 自分の周りにいる人、近い人をイメージしたところはあります。例えば学校に通っていても仲良くなる人とならない人、仲良くなっても今はそうではない人、卒業してからも仲がいい人とかいると思うんですけど、その時に自分がずっと一緒にいる人ってどういう人なんだろう、なんで一緒にいたいと思うんだろう、というのは考えました。

――ちなみにその答えというのは見つかりましたか。

 もしかしたら5年後10年後にはまた答えは変わっている可能性もあるんですけど、今の答えとしては自分の信じるというのは正しいか正しくないかではなくて、自分が思ったことを良いことでも悪いことでも素直に話してくれる人だなと思いました。周りからどんなに評価が高い、人気がある人でも自分がそう感じられなかったら、私はその人とはなかなか仲良くなれないかもしれないなって。自分に対して嘘がない、まっすぐな人を自分も信じたいなと思います。

――この曲の核になっている言葉は?

 <誰かを信じる/それは自分を信じること>というのが、この曲のキーワードになっている言葉です。最初は塞ぎ込んでいて自分は傷つきたくないという感情が出ているんですけど、そこから相手がきっかけとなって「信じたい」という気持ちに変わっていく作品になっているので<誰かを信じる>というのは凄く核になっている言葉だと思います。

――歌詞の<君を信じていくよ/そう決めたわ>という言葉もすごく強さを感じます。

 大人になっていくと期待しない方が楽だなとか、信じなければ裏切られない、という気持ちになる事がいつか訪れると思うんですけど、でもそれって寂しい、悲しいなと思っています。その中で何歳になってもまっすぐな人っているじゃないですか。そういう人が自分のことを信じてくれた時に、自分はちゃんと信じられる人になりたいなと思ったのでこの言葉が出てきました。MVでも最初は雨宮由乙花さんが北原帆夏さんの手を引っ張って行くんですけど、最後は北原さんが雨宮さんの手を取って行くという逆の展開になるんです。歌詞と映像がリンクする部分でもあるので注目してもらえたら嬉しいです。

――アニメともリンクしてる感じがあるんですね。アニメの登場人物の仁科鳥子と紙越空魚2人も初対面で最終的には信じていくという。

 私は信じる信じないというのには時間というのはあまり関係ないのかなと思っていて、鳥子の眩しさや絶対的なまっすぐさみたいなものは破壊的だなと思っていて(笑)。彼女のような人だったら私も出会ってしまったら絶対信じるだろうなと思いました。空魚も最初は鳥子に対して心を閉ざしていますけど、どんどん彼女も積極的になっていて鳥子を探しに裏世界へ飛び込んで行くので、その世界観と曲とMVがリンクしていればいいなと思って。

――この「You & Me」はNight Tempoさんによるリミックスも収録されています。

 Night Tempoさんのアレンジは90年代、シティポップ感がすごく素敵で、この曲の雰囲気とすごくマッチしているので、是非このバージョンも聴いてほしいです。

明るい曲に明るい歌詞を乗せたくなかった

「You & Me」アニメ盤ジャケ写

――「Plan A B C」はすごくリズミックなアップチューンですが、佐藤さんはどのような意識を持ってレコーディングに臨みましたか。
 
 この楽曲を頂いた時にリズム感が大事になるなと思いました。メロディーがあって歌詞があっての音楽なので、しっかりとリズムに歌詞を乗せつつ、フレーズを聞いた時に皆さんの心に言葉がしっかり残るような歌になったらいいなと思いました。楽曲は明るくて楽しいイメージの曲なんです。なのでレコーディングしてる時からすごく楽しかったんです。でも、歌詞は曲調のイメージとはちょっと違う、恋愛の不平等さ、フェアじゃないという感情を歌っているんです。

――そんな明るいイメージの楽曲になぜ恋愛に不平等さというテーマで歌詞を書こうと思ったのですか。

 良いことがあると悪いことがある、みたいなことを私はよく考えることがあるんですけど、その癖が出たのか明るい曲に明るい歌詞を乗せたくなかったんです(笑)。恋愛というのは自分がその人のことを好きでも絶対にうまくいくとは限らないですし、自分の努力だけではどうにもならない、相手の気持ちありきのことだと思っていて、恋愛ってフェアじゃないなとその時思ったんです。ちょうどそんなことを考えていた時にこの楽曲を頂いたので、そのフェアじゃないという気持ちをこの曲調に乗せたいなと思いました。

――プラスとマイナスの関係性ですね。「Plan A B C」というタイトルも面白いですね。

 この曲はタイトル候補もいくつかあって最初は歌詞にも出てくる「Love is no fair」にしようと思っていました。聴いてくれる人たちが強くなれるような曲にしたいなと思っていて、恋愛だけの要素ではなくどういう選択をしたら人生、考え方が変わっていくというような、選択肢のような曲だなと思いました。どのプランを選ぶかも自分次第だし、どうなるかも自分の行動次第だと思ったので「Plan A B C」にしようとこのタイトルに決めました。

――そして、3曲目の「Last minutes」は切ないですね。

 この曲は詞が先で曲、メロディを後から付けていただいたんです。今回のシングルの発売日が3月10日、卒業シーズンということで環境が変わる節目の月、この時期は出会いによりも別れの方が多くなる月だと思ったので、お別れの曲を作りたいなと思いました。でも、私は聴いてくれている人たちが強くなれるような曲を作りたいと思っているので、お互いが真摯に向き合って恋愛をしていて、結果終わりを迎えてしまったけれども、それはお互いが幸せになるためにした選択なので、運命の人だったというのは変わりはない、終わったことを受け入れ幸せになるために次に進んで欲しい、と思いました。最後は<あなたと永遠のサヨナラ>と強めの言葉にしました。この言葉には「もう振り返らないぞ」という強い気持ちを込めたんです。

――この曲には実体験も含まれているのでしょうか。

 はい。自分の過去の別れの経験から書いた部分もあります。自分はこうだったけど、この曲のように思える女の子になれたら良かったなとか、願望も踏まえて書いたんです。失恋した女の子がこの「Last minutes」に登場する女の子のように立ち直って欲しい、という思いがありました。

――サビのメロディがつながっている感じとか、ブレスの位置など、すごく歌うのが難しそうな曲だなと思いました。

 私がいただく曲はどの曲も難しいなと思っているんですけど、この「Last minutes」は特に難しかったです。ハイトーンの部分はすごく高くて、メロディーも一貫性がないんです。例えば1番の初めの歌い方と、2番の初めではメロディーの切れ方が違ったり。作詞が先だったということもあって歌詞がすごく大事になってくる、言葉の伝え方、歌い方で印象がすごく変わってくる楽曲だなと思ったので、気持ちが伝わるように表現するのがすごく難しかったです。

――フェイクも印象的でした。R&Bの雰囲気もあって。

 ありがとうございます。フェイクというのは言葉にならない感情や気持ちが出てくるものだと思っているので、もしかしたらそういったところでR&Bの要素を感じて頂けたのかなと思います。

――最後に今年の意気込みをお願いします。

 緊急事態宣言も続いていて、外に出れない、直接会えないというのはいま仕方ないことだと思います。その中でできることを考えながら私を応援してくださる人たちと、いろんな思い出をたくさん作れる1年にしたいなと思っているので、楽しみにしていてください!

(おわり)

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事