千田耀太(ちだ・ようた)と菅野陽太(かんの・ようた)によるボーカルユニット「D.Y.T」。先日、菅野陽太がテレビ東京『THE★カラオケバトル』に出演し、美声を轟かせた。1月にはテレビ朝日系『関ジャム完全燃SHOW』で音楽プロデューサーの蔦谷好位置が気になった曲として、彼らが昨年10月に発表したシングル「Juliet」を挙げた。実はこの曲、彼にとって新たな表現のスタイルを確立させた転機になる曲だという。
柔らかみのある歌声が特徴で、その歌唱力は業界内からも高く評価されている。だが、勝負をかけた2019年12月発売シングル「キライになれたらいいのに」の矢先に菅野陽太が肺気胸になり、再スタートを切るタイミングで新型コロナによって音楽環境は著しく変わった。期待されている人ほど試練は多いというが、まさに彼らはそれが当てはまる。しかし、そんな状況だからこそ気づけたものがある。
「僕たちが探していたものが見つかりました」
昨年10月発売の「Juliet」は、恋心を歌った曲だ。ストリーミングサービスでの総再生数は70万回超え。R&Bの曲調で、彼らの持ち味である菅野陽太の甘い歌声に、今回は千田耀太によるラップが彩りを加えた。このラップにこそ転機と言える変化が見られる。
千田耀太「これまでツインボーカルとしてやってきましたが、ラップを取り入れてはどうかと言われて、初めて挑戦しました。もともと好きでしたが、やった時にこれだ! 僕らの強みはこれになるかもしれないと手応えを感じました」
オーディションで受かった2人は、抜群の歌唱力を武器に、ツインボーカルとしてデビューした。空前のダンス&ボーカルグループブームと言われる昨今にあって、千田は「ただ歌が上手いというだけでは埋もれてしまう危機感がありました」と振り返る。
過去に発表した「I WILL」は“永遠の愛”をテーマにした恋愛ソング。彼らの歌声、そして実話をもとにしたドラマ仕立てのMVが好評を呼び、再生数は26万回超え。コメント欄には「2人の声大好き」「せつないけれど暖かい曲」などの声が寄せられている。こうして見ると曲作りは順調に思えるが、彼らは「なにか」を探し続けていた。
ラップに転向した千田は菅野の歌声を高く評価する。「僕がラップにまわることでコントラストが生まれると思います。彼の抜群の歌唱力とメロディさえあればもっと届けられるはず」
「Juliet」で新しいカタチが見えたいま、彼らの行き先は明るく開かれている。
千田耀太「トラックも歌詞も自分達で作って行こうと決めて、実際に作っています。これまで恋愛ソングばかりを作ってきましたが、それに限らず自分達が思ったことを発信していきたい」
いま目指しているのは時代の移り変わりに左右されない「長く慕われる曲」。
菅野陽太「その時に愛され続けるメロディと歌詞が大事と思いました。恋愛に限らず幅広いテーマを歌っていきたいです」
とりわけ歌詞に対するこだわりは強い。歌は、音と言葉の相性が問われるが、いまのスタイルを菅野は「歌詞が良いと思ったら迷わずメロディを変えます。伝えたいことを表現するのに必要な言葉と音の相性を常に考えています」
千田耀太は「いくら思いが募っても伝わらなければ意味がないと思いますので、どの表現を使えば一番伝わるかを考えています。その上では楽曲作りもそうですし、ボーカル+MCというスタイルは僕たちに合っていると思います」
ウィズコロナの時代。その中で掴んだ新たな音楽のスタイルで、聴く者の心に寄り添っていく。【取材・撮影=木村武雄】