TOWA TEI「自己流でいたい」30周年を迎えた想いと新譜で魅せた“音宇宙”
INTERVIEW

TOWA TEI

「自己流でいたい」30周年を迎えた想いと新譜で魅せた“音宇宙”


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:21年03月03日

読了時間:約6分

 TOWA TEIが3日、10thアルバム『LP』をCDおよびアナログLPでリリース。本作は、Deee-Liteのメンバーでデビューして音楽活動30周年を迎えたTOWA TEIの前作より約4年ぶりとなるオリジナルアルバム。先行シングル「MAGIC」「BIRTHDAY」を含む全10曲収録。今作では、細野晴臣、高橋幸宏、HANA、清水靖晃、砂原良徳、伊賀航、森俊二、猪野秀史、カシーフ他豪華ゲストが多数参加し、アートワークは五木田智央、ミックスをGOH HOTODA、マスタリングを砂原良徳が手掛けている。30周年を迎えた現在の心境、そして本作の話題、アナログレコードの魅力などについてメールインタビューをおこなった。【取材=平吉賢治】

30周年の節目、音楽を続ける秘訣は“MIND POWER”

――Deee-Lite、Sweet Robots Against the Machine、METAFIVE、TOWA TEIとして、また、他にも様々な音楽活動をされて30周年、振り返るとどのような心境でしょうか。

 音楽をつくってる上では、圧倒的に楽しさしか無いので30年は早かったです。その間に色々と頭や体の痛い事はありましたが、長く生きていれば、色々ありますよね。26歳でプロデビューはしましたが、丁度16歳で最初のシンセを購入して自己流で音を重ねるようになって56歳。40年間も飽きずに音楽をつくってる訳ですが、未だ自己流です。こうなったら終わりの時を迎えるまで、自己流でいたいなと思ってます。

――30年間、音楽活動を続ける秘訣は?

 MIND POWERでしょうか。心身ともに健康であると同時に老人力をつける事。
老いに抗わない事、頑張らない。トレンド、周りを気にせず、自分の音楽をやる事。

――ターニングポイントと感じた点や時期などはあるのでしょうか。

 21世紀になって2000年の春に軽井沢へ移住して、初めて軽井沢で、かつノートパソコンで(それまではタワー型)音楽をつくるようになって、フットワークが非常に軽やかになって生まれたのが4枚目のソロアルバムである『FLASH』。それ以降、「いつでも、どこでも、つくりたい時につくる」感覚は、今でも続いてます。

――現在、コロナ禍という特殊な状況下ですが、音楽活動面や心境の変化などについてお伺いします。

 音楽活動面や心境の変化に全く影響が無い人はいないと思うのですが、此処にはコロナの歌は入っていないので、『LP』40分足らずは、是非コロナの事は忘れて。“音宇宙”を楽しんでもらえたらです。掃除や家事のBGMにでも!

■レコード偏愛を綴ったという『LP』

「LP」ジャケ写

――CDおよびアナログLPでリリースされる本作、『LP』というタイトルに込められた想いは?

 「ロングプレイです」とは言え、LPとしては短めの方ですね。音圧を優先したかったので。

――アナログ盤の魅力について、TOWA TEIさんが感じられることをお伺いします。

 無宗教だと思ってた自分は、いつの間にか今はディープなレコード教団に所属しています。『LP』は入門用の踏み絵のような壺のようなものなので、まずは1枚買って聴いて欲しいかなと。よかったら2枚3枚当たり前に買って人にギフトしたり、勧めて欲しい。レコードを取り出して眺めて拭いて、ターンテーブルに乗せる一連の作法。溝から小さな針が振動を拾う…音楽に対峙して、音楽を聞く儀式として、レコードがやはり最高だと気がつきました。音だけでなく、アートワークや印刷等を含めて。「この喜びを広めたい!」と、今は熱心な信者だと思います。

 CDやmp3は便利になったものの、レコードの持つ豊かな音楽の楽しみがいつの間にか薄れていました。ハッキリ言って、便利教団に洗脳されてました。このままでは音楽との関係が希薄になりそうで危なかったです(笑)。

――本作を拝聴し、サウンドや様々なアプローチ面など、とても内容の濃い作品と感銘を受けました。アルバムのコンセプトなどはあるのでしょうか。

 特に無いですが タイトルや歌詞を選ぶ上で、(上記)レコード偏愛を綴りました。恋人はサンタクロースじゃなくて恋人はレコード達。今日も明日も何枚も届きます。

――本作では、様々な方々がゲスト参加されていますが、どのような経緯で作品に加わったのでしょうか。

 ファーストアルバム(FUTURE LISTENING!)からの長い付き合いもいますよ。(高橋)幸宏さんのレコーディングには立ち会って、細野(晴臣)さんはコロナのこともあるので立ち会えなかったんですけど。でも細野さんはベースやってもらうときでも、菓子折だけ持ってちょっと話してって曲のことは全然話さないんですよね。でも今回はそれもなしで、お願いします、というのを間接的に言ってもらいました。

 ヴォーカリストのHANAちゃんは、YMOのトリビュートライブで見たのがキッカケでした。それを見てこの子は歌えるなと思ったんですよね。彼女は、今聴くと『MAGIC』も良かったけど、後から作った『BIRTHDAY』とか。やっぱりダブルでやってる低い声が良い。HANAちゃんは色んなタイプの声が出せる人ですね。最初会ったときは13歳。もう孫世代ですよ。

――本作を制作される際、これまでとは異なるアプローチや、今作で初めて使用した機材などはあるのでしょうか。

 毎回新しい機材はいつも出入りしますが、今回はやはり多くの古いレコードが1番活躍した楽器だったかなと。

――最近のご心境や、今後の展望などはいがかでしょうか。

 白紙。真っ白なキャンバス。とにかく音楽を聞いてつくるのを楽しんでます。

――現在、注目されている音楽は何でしょうか。また、最近気になられる音楽シーンやアーティスト、または、音楽以外にも注目しているカルチャーなどはありますか。

 特に無いです。毎日届く(主に古い)レコード盤でしょうか。

――最近、または昨年から現在まで、印象的だった“出会い”は?

 『マンダロリアン』には救われました。凄いクリエイティビティとクオリティ!(※ルーカスフィルムが製作するアメリカのインターネットテレビドラマシリーズ。『スター・ウォーズシリーズ』初となる実写ドラマ作品)

――音楽を制作する上で、心情やスタンスなど、最も大切にしていることは?

 チャンスオペレーション、チャンオペ。

――TOWA TEIさんにとって“インプット”となることとは何でしょうか。

 毎日届く(主に古い)レコード盤でしょうか。あとはマンダロリアンや他の映画、ドラマ。珍しく今季は日本のドラマとかも見ています。「おちょやん」、クドカンの「俺の家の話」など。それと温泉、サウナでリフレッシュです。

――30年前と現在で、音楽シーンはあらゆる面で劇的な変化を遂げたと感じますが、TOWA TEIさんにとって変化を感じる点は何でしょうか。

 エンタメの中では、音楽を買う事が随分蔑ろになった。便利教団の普及、CDすら再生機を持ってない若い人が多いですね。同時にレコード教団(レジスタンス)の復権。

――今後、どういった想いでどのような音楽制作、音楽活動をされていくのかという展望をお伺いします。

 全くわかりません。40年間筋肉を鍛えるような音楽をやってこなかったので、今のまま、コンピューターと電気を使って音楽をつくってると思います。しかしそろそろイイ加減、マウスを使ってでは無い、新しいUIでの打ち込みを期待してます。

 先日久々にSCANDALというグループのリミックスを請け負ったのですが、楽しかったです。自分のつくった楽曲ばかりではなくて、たまには人様のつくった楽曲を触らせて貰うのも楽しいなと思いました。現場DJをすっかりしなくなったからですかね。リミキサーになりたいです(笑)。

(おわり)

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