MAN WITH A MISSIONが10日、『ONE WISH e.p.』をリリース。本作はEPながらも“「MAN WITH A "BEST" MISSION」-Album Release Special Showcase-”からのライブ音源を含む12曲入り、そして映像付きとボリューム感満載。収録曲には新曲が4曲、そのうち3曲は10月から3カ月連続で29日(肉の日)にリリースしていた配信シングル。コロナ禍での連続配信シングルを含むMAN WITH A MISSIONの最新作について迫りたい。【平吉賢治】

狼たちからのライブ体験さながらの熱量

 <光が再び射す日まで>というフレーズが印象的な「Telescope」。サウンド感はフレッシュながらも骨太なビートにギターサウンドがリスナーを覆う。歌詞から汲み取れるのは、リリース時期の2020年10月29日という、コロナ禍という状況が晴れる見通しが不透明な時期にあてられたメッセージも含まれるのだろうか、希望の光を射すようなナンバーだ。

 翌月の11月29日にリリースされた「All You Need」はエレクトロビートの導入から圧巻のギターアンサンブルが耳に、体に飛び込む。攻めた歌詞と共にダンサンブルに刻まれるサウンドが高揚感をかきたてさせる。また、同曲はMasayuki Nakano(BOOM BOOM SATELLITES)もアレンジに加わっている。

 そして3カ月連続配信のラストを飾った12月29日リリースのナンバー「evergreen」は高速BPMの疾走感あふれるテイスト。全英歌詞のリズミックなボーカルとヘヴィーなサウンド、爽快なアンサンブルが心踊らせてくれる。

 「Telescope」「All You Need」「evergreen」と、三種三様のアプローチで配信リリースをコンスタントに重ね、このたびEPとしてパッケージされた本作。“ほぼアルバム”的なボリューム感の『ONE WISH e.p.』を通して聴くと、ライブ体験さながらの熱量を感じることができる。

「ONE WISH e.p.」通常盤ジャケ写

 10周年を経たMAN WITH A MISSIONは新たなスタートアップとも捉えられるエネルギッシュな作品を叩きつけてきた。フルキャパシティでのライブ開催が困難な現在、ロックバンドはあらゆる方法で音楽を発信している。オンラインライブやYouTubeなどのプラットフォーム、そしてSNSでの活動と、その方法は多岐にわたる。

 そう考えた時、ライブなどの公演とは軸が異なるかもしれないが、ロックバンドにとって重要となってくるのは音源のリリースではないだろうか。「ライブ」と「音源」の二本柱は、バンドにとっての核と思われる。そこでMAN WITH A MISSIONは、コロナ禍という困難な状況下において、「音源の発信」という重要性を3カ月リリース、そして本作のボリューミーなEPリリースとして提示した。

 現在の特殊な状況下、改めて、大勢での環境ではない「リスニング」が重要視されるのではないかと思われる。30年近くコンスタントに音源リリースを重ねる、あるロングキャリアのミュージシャンはインタビューで、「(コロナ禍は)ライブとは違う自分の空間で、好きなオーディオやスピーカーを見つけて、CDやレコードをしっかり聴くという時間をつくるチャンス」と、今の時期は家で音楽を聴く環境をブラッシュアップさせるチャンスという旨を述べていた。

 ライブやイベントに行く予定が少なくなった時間や予算を、自宅のリスニング環境の強化に充て、MAN WITH A MISSIONのようにパワーを溜めまくって放つ音源を、自分のリスニング空間を高めつつ聴くのも、逆境をチャンスに変える一つの方法なのではないだろうか。

 そこで今作のような、3カ月連続リリースからのボリューミーなEPリリースというアクションは、生ライブ体験への、ロックバンドの熱量への希求を大いに膨らませてくれる。バンドのエネルギーが溢れんばかりにコンパイルされたMAN WITH A MISSIONの最新音源は、生ライブでその溜まり溜まった熱量を大放出させるためのトリガーとなるのかもしれない。

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