村沢憲治を演じる加藤シゲアキ(NHK提供)

 加藤シゲアキが2日、ドラマ『六畳間のピアノマン』(NHK総合、毎週土曜よる9時、全4回)のリモート取材会に出席した。

 安藤祐介氏の『六畳間のピアノマン(改題=逃げ出せなかった君へ)』が原作。ビリー・ジョエルの名曲「ピアノ・マン」に乗せて、「ピアノ・マン」を動画投稿サイトで歌う「六畳間のピアノマン」と名乗るひとりの青年と周囲の人々の4つの物語を描く。足立紳氏が脚本を手掛ける。

 加藤シゲアキは、ピアノマンこと夏野誠(古舘佑太郎)の元同僚・村沢憲治を演じる。パワハラを受けた誠が交通事故で亡くなってから8年、人との関わりを避けるように生きてきたが、派遣先の職場で再びパワハラを目にした村沢は、動けなかったかつての自分との葛藤に苦しむ。

 取材会の冒頭、制作総括の内田ゆきチーフ・プロデューサーは「この時代に心と心を繋ぐ物語です」と紹介。加藤も「今こそ放送されるべき内容だと思いました。人との物理的な距離をとらないといけない時代ですが、それとは別に心の距離を縮められるのではないかと思いました」。

 オムニバス形式の全4話。その第1話に主演する。「重責はありました」というが、5歳から10歳まで過ごした大阪での全編ロケで充実感もあった。「笑いの絶えない現場でした。アットホームの空気感で、それと同時に撮影が始まったら引き締まるメリハリもありました。より良い作品にするという志が強い現場でした。撮影中にコロナにかかりご迷惑をおかけしました。でも温かく迎えてくれて、オールアップしてホッとしています」と安堵。

 劇中では、組織のなかで苦悩する村沢の姿も描かれる。演じるなかで気づきもあった。「組織に抗うことの難しさもありますが、逃げた方が勝ちと言うケースもあるということに気づきました。会社を去るというアクションがその後の会社を動かす。組織にいる人間全員が人間らしさを失わないように一人一人が意識することがより良い会社になっていくことを感じました」

 その加藤は「何かを変えたかったら行動することが大事」とし、「作家になったきっかけはこのままではどうにもならない」とアクションを起こした結果であり「行動が今に繋がっています」とも。

 また、中学受験のため一時活動休止していたが「戻るときに掛け合ってくれなくて、直接ジャニーさんに連絡したら『YOU来ちゃいなよ』と。色んな事を考えても物事は変わらない。その時にアクションを起こすことで皆の目が変わると思います」と、自身の経験をもとに行動を起こすことの大切さを語った。

 本作では、ビリー・ジョエルの名曲「ピアノ・マン」が使われる。「ピアノ・マン」を動画投稿サイトで歌う「六畳間のピアノマン」と名乗るひとりの青年が残した歌声が、周囲の人々の心に灯をともし、やがてお互いの人生が交錯して気づかぬうちにそっと助け励ましあうように、音楽が大切な存在として関わる。

 NEWSのメンバーとして音楽活動もする加藤にとっても音楽は特別な存在だ。

 「言葉で言うのはとても難しいぐらい大切な存在です。小さい時から身近にあり、今となっては音楽を発信する立場でもあるので、一言で表すのは難しいものですが、間違いなく僕にとっては必要なものです。小説も書かせてもらっていますが、思いを言葉で伝えるよりも、音色に乗せることでぐっと思いが伝わる、感動させることができたり、人の気持ちを動かすことができる。音楽の力は無限の可能性を感じています」

 言葉だけでなく、映像作品でも劇中を彩るなど大きな役割を担う音楽。今回のドラマでは、ビリー・ジョエルの名曲「ピアノ・マン」がその役割を担い、そして人々の気持ちを動かす。

 その音楽も、エンタメも含めコロナ禍ではその力、役割が問われた。しかし加藤は「そう思う時もありましたが、やっぱりいかに重要なのか再認識していると思います」とこう語る。

 「映画では興行収入を塗り替えることもありましたし、音楽もそうです。エンターテインメントの力を改めて感じたのではないかと思います。ただ発信する側としては何を発信するべきかということを非常に問われていると思います。リスナーや視聴者の方がエンターテインメントに対する見方がグッと高まっていると信じていますし、そういう意味では下手なものは出せない、きっと制作側の意識も高まっていると思います」

 取材会の冒頭で「今こそ放送されるべき内容だと思いました」と語った加藤は現場は「良い作品にしようという意識があった」とも紹介していた。そういうなかで作られた本作。「苦悩した人間が乗り越え、その先に行けるか、希望に溢れたドラマです」と自信を見せる一方で「メッセージ性はありますが、押しつけがましくなく観て頂ければ」とも伝えた。

【出演】加藤シゲアキ 段田安則 原田泰造 南沙良 三浦貴大 古舘佑太郎 上地雄輔 細田善彦 麻生祐未ほか
【放送予定】2021年2月6日(土)~27日(土)<全4回>(総合)毎週(土)よる9時

Photos

記事タグ